- 作成日 : 2025年9月25日
売れるお店のコンセプトとは?決め方を5つのステップで徹底解説
お店の開業を目指す上で、必ず向き合うことになるのが「お店のコンセプト」です。しかし、いざ考え始めると、何から手をつければ良いか分からず悩む方も多いのではないでしょうか。
お店のコンセプトは、事業の方向性を定める重要な「設計図」といえます。この記事では、コンセプトの基本的な考え方から、具体的な決め方の手順、参考にしたい事例までをわかりやすく解説します。
目次
お店のコンセプトとは事業の成功を左右する設計図
お店のコンセプトとは、「誰に、何を、どのように提供して、どのような価値を感じてもらうか」を示す、事業の根幹となる考え方です。コンセプトが明確であれば、お店が進むべき方向がはっきりし、日々の運営における判断基準にもなります。いわば、事業の成功を左右する設計図といえるでしょう。
コンセプトがお店のあらゆる活動の土台になる
コンセプトが定まっていると、お店作りに関わるさまざまな要素に一貫性が生まれます。たとえば、提供する商品やサービス、価格設定、店舗の内装や外装デザイン、接客スタイル、広告宣伝の方法まで、あらゆる意思決定の拠り所となります。この一貫した姿勢が、顧客に安心感と信頼感を与え、お店のブランドイメージを構築していく上で重要な要素となります。
競合との差別化を図るための羅針盤
現代はモノや情報があふれ、多くのお店が競合となります。その中で自店を選んでもらうためには、他店にはない独自の魅力、つまり「差別化」が必要です。明確なコンセプトは、他店との違いを際立たせ、顧客に対して「このお店を選ぶ理由」をはっきりと提示する羅針盤の役割を果たします。価格競争に陥らないためにも、コンセプトに基づいた独自の価値提供が求められます。
売れるお店のコンセプトを決めるための基本要素
お店のコンセプトを具体化していくためには、いくつかの要素に分解して考えると整理しやすくなります。「5W2H」のようなフレームワークを用いるのが一般的で、これに沿って検討することで、必要な要素を抜け漏れなく洗い出すことができます。
Why:なぜこのお店をやるのか?
お店を始める動機や目的、事業を通じて実現したい想いを言語化する、コンセプトの核となる部分です。「地域の人々の憩いの場を作りたい」「本物の味を手頃な価格で提供したい」など、事業の根源的な目的を明確にしましょう。この「Why」が強固であるほど、事業の軸がブレにくくなります。
Whom:誰に商品やサービスを届けたいか?
ターゲットとなる顧客層を具体的に設定します。年齢、性別、職業、ライフスタイル、価値観などを細かく描き出すことで、顧客のニーズがより鮮明になります。たとえば、「健康志向の30代女性」や「平日のランチを手早く済ませたいビジネスパーソン」など、ターゲットが具体的であるほど、提供するべき商品やサービスが明確になるでしょう。
What:何を提供するのか?
お店の主力となる商品やサービスを定義します。単に「ラーメン」や「洋服」とするのではなく、「濃厚魚介つけ麺専門店」や「サステナブル素材にこだわった普段着」のように、特徴やこだわりを明確にすることが大切です。他店にはない独自の価値は何か、顧客にどのような満足を提供できるのかを考えます。
Where:どこで提供するのか?
出店する立地やエリアを指します。ターゲット顧客が多く集まる場所か、お店の雰囲気と街のイメージが合っているかなどを検討します。駅前、住宅街、オフィス街など、立地の特性によって客層やニーズは大きく異なります。オンラインストアの場合も、どのプラットフォームで販売するかが「Where」にあたります。
When:いつ利用してもらうのか?
営業時間や営業日、顧客がお店を利用するシチュエーションを考えます。ランチタイムが中心なのか、ディナーなのか、あるいは週末の特別な時間を過ごす場所なのか。時間帯によって顧客の求めるものは変わるため、それに合わせた商品構成やサービスを準備する必要があります。
How:どのように提供するのか?
商品やサービスの提供方法を具体的にします。たとえば飲食店であれば、セルフサービスかフルサービスか、内装の雰囲気、接客スタイルなどが含まれます。小売店であれば、商品の陳列方法やオンラインでの販売戦略なども「How」の一部です。顧客体験をどのようにデザインするかが問われます。
How much:いくらで提供するのか?
価格設定は、事業の収益性を左右する重要な要素です。商品やサービスの価値、ターゲット顧客の所得水準、周辺の競合店の価格などをふまえて総合的に決定します。安さだけを売りにするのか、高品質に見合った価格で提供するのか、コンセプトによって価格戦略は大きく変わります。
お店のコンセプトの決め方を5つのステップで解説
それでは、実際にコンセプトを決めるための手順を見ていきましょう。コンセプトは、思いつきだけでなく順序立てて考えることで、より強固なものになります。ここでは、初心者の方でも実践しやすいよう、5つのステップに分けて解説します。
ステップ1:自己分析で「想い」や「強み」を掘り下げる
まず、自分自身が「なぜこのお店をやりたいのか」「何を実現したいのか」という原点を深掘りします。これまでの経験で培ったスキル、自分が持つ情熱やこだわりなどを客観的に分析することが第一歩です。自分の「好き」や「得意」を事業の軸にすることで、説得力のあるコンセプトの核が生まれます。
ステップ2:市場・競合を調査して機会を見つける
次に、事業を取り巻く外部環境を分析します。出店を検討しているエリアの市場規模や成長性、競合店のコンセプトや強み・弱みを調査しましょう。インターネットでの情報収集に加え、実際に足を運んで顧客としてサービスを体験することで、より深い洞察が得られます。市場のニーズと競合が提供できていない価値を見つけることが、差別化のポイントになります。
ステップ3:ターゲット顧客を具体的に設定する
ステップ1と2の分析をふまえ、お店が価値を提供する対象となる顧客層(ターゲット)を明確にします。年齢や性別といった属性情報だけでなく、ライフスタイルや価値観、抱えている課題といった心理的な側面まで掘り下げ、具体的な人物像(ペルソナ)として設定すると、より顧客視点に立った企画が可能になります。
ステップ4:提供価値を定義してコンセプトを言語化する
設定したターゲット顧客に対し、自店がどのような独自の価値を提供できるのかを定義します。それはこだわりの商品かもしれませんし、居心地の良い空間や、専門知識に基づいた接客かもしれません。この提供価値と、ステップ1で掘り下げた「想い」を組み合わせ、コンセプトを簡潔な文章で表現します。誰が聞いてもお店のイメージが伝わるような、具体的で分かりやすい言葉でまとめることが重要です。
ステップ5:事業計画に落とし込み実現性を検証する
最後に、言語化したコンセプトがビジネスとして成立するかを検証します。コンセプトに基づき、具体的な商品メニューやサービス内容、価格設定、必要な資金額、売上予測などを事業計画に落とし込み、収益性を確認します。この段階で実現性に課題があれば、前のステップに戻り、コンセプトを再検討する柔軟性も求められます。
【事例集】参考にしたい飲食店や小売店のコンセプト
コンセプトの作り方を理解するために、実際の成功事例を参考にすることも有効です。ユニークなコンセプトで顧客を魅了している飲食店や小売店の例を紹介します。なぜそのコンセプトが支持されているのかを分析することで、自店のコンセプトを考える上でのヒントが得られるでしょう。
おもしろい飲食店のコンセプト例
競争が激しい飲食業界において、記憶に残りやすいユニークなコンセプトは大きな強みとなります。
- 未来食堂(東京都千代田区)
- コンセプト:「誰もが受け入れられ、誰もがふさわしい場所」
- 特徴:「あつらえ」という、その日の食材で客の要望に応じた一皿を作るシステムや、50分間の労働で一食が無料になる「まかない」制度が特徴です。単に食事をする場所ではなく、コミュニティのハブとしての機能も果たしており、独自の価値を提供しています。
出典:未来食堂公式サイト|未来食堂
- 筋肉食堂(東京都内ほか)
- コンセプト:「今日の食事が明日の自分のカラダを創る」
- 特徴:高タンパク・低糖質・低カロリーなメニューに特化し、「カラダづくりを志す人々のための食堂」という明確なポジショニングを確立。アスリートやボディメイクに関心のある層から強い支持を得ています。
出典:【公式】筋肉食堂|株式会社TANPAC
小さい飲食店ならではのコンセプト例
限られたスペースやリソースを強みに変えた、小さい飲食店ならではのコンセプトも存在します。
- 立食い寿司 根室花まる(東京都・北海道)
- コンセプト:「もっと、もっと、気軽にお寿司を」
- 特徴:北海道根室発の鮮度の高いネタを、立ち食いというスタイルで手頃な価格で提供しています。立ち食い形式にすることで客の回転率を高め、高品質な商品を低価格で提供することを可能にしています。「手軽に本格的な寿司を楽しみたい」という顧客ニーズに応えた好例です。
出典:立食い寿司 根室花まる|株式会社 根室花まる
小売店のコンセプト例
小売店においても、独自のコンセプトで熱心なファンを獲得しているお店は数多くあります。
- AKOMEYA TOKYO(東京都ほか)
- コンセプト:「一杯の炊き立てのごはんから広がるおいしい輪」
- 特徴:全国から厳選した米を主役に、ご飯をおいしく食べるための食品や食器、調理道具などを総合的に提案。「一杯の炊き立てのご飯から、つながり広がるしあわせ」をテーマに、日本の食文化の豊かさを伝える世界観を構築し、丁寧な暮らしを志向する層に支持されています。
出典:AKOMEYA TOKYO(アコメヤ トウキョウ)公式サイト|株式会社AKOMEYA TOKYO
作成したお店のコンセプトを事業に活かすには
時間をかけて作り上げたコンセプトも、実際の事業活動に反映されなければ意味がありません。コンセプトを組織内外に浸透させ、ブレない経営の軸とするための方法について解説します。
コンセプトシートで「見える化」し共有する
コンセプトの構成要素(5W2Hなど)を一枚のシートにまとめ、「コンセプトシート」として文書化することをおすすめします。このシートを経営者自身が常に参照することはもちろん、従業員や取引先といった関係者と共有することで、目指すべき方向性に対する共通認識を醸成できます。
あらゆる判断基準をコンセプトに置く
新メニューの開発、内装の変更、販促キャンペーンの企画、スタッフの採用など、日々の業務で発生するさまざまな意思決定の場面で、「これはお店のコンセプトに合致しているか?」を判断基準とします。コンセプトを一貫した判断基準とすることで、お店のブランドイメージが強化され、顧客からの信頼も高まるでしょう。
定期的にコンセプトを見直す
市場環境や顧客のニーズは絶えず変化するため、一度決めたコンセプトが永続的に最適とは限りません。事業年度の終わりなど、定期的にコンセプトが現状と乖離していないかを見直す機会を設けることが望ましいです。ただし、事業の核となる「Why(想い)」は維持しつつ、時代に合わせて「What(提供価値)」や「How(提供方法)」を柔軟に調整していく視点が求められます。
愛されるお店の鍵は、しっかりとしたコンセプトにあり
お店のコンセプト作りとは、あなた自身の「想い」を形にしていく大切な作業です。それは単なる経営戦略ではなく、お客様に「このお店が好きだ」と感じてもらうための、心の通った約束のようなもの。
たくさんのライバル店の中から選ばれ、長く愛されるお店になるためには、この「ブレない軸」が欠かせません。この記事が、あなただけが持つ独自の価値を見つけ出し、それを確かなコンセプトとして育てていくための一助となれば幸いです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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