- 作成日 : 2025年8月19日
飲食店で一人で切り盛りするには?メニュー戦略とワンオペのリスクまで解説
飲食店を一人で切り盛りするには、調理や提供だけでなく、仕込み・接客・会計までを効率的に回せる体制づくりが欠かせません。すべての業務を無理なくこなすには、メニューの絞り方や業態ごとの工夫、作業負担を軽減する仕組みの導入が重要です。
この記事では、ワンオペ経営を安定して続けるためのメニュー戦略から、実際の店づくり、会計やオーダー業務の効率化方法までをわかりやすく解説します。
目次
飲食店を一人で切り盛りするためのメニュー戦略とは?
飲食店を一人で切り盛りするには、調理・提供・清掃などの作業を最小限に抑えるメニュー設計が欠かせません。
ワンオペ営業においては、すべての工程を一人で回すことになります。限られた時間と体力のなかで、ミスなくスムーズに提供するには、仕込みや提供時間に配慮したメニュー構成が重要です。ここでは、作業負担を減らしつつ、顧客満足度を保つための基本的な考え方を解説します。
メニューの種類を絞り込む
メニューが多いと調理工程が増えるだけでなく、在庫管理や仕込みの負担も大きくなります。たとえば10種類のメニューを用意した場合、それぞれに異なる食材と手順が必要になり、効率が大きく落ちてしまいます。対して、3〜5品に絞れば仕込みも共通化でき、調理工程も単純化されます。
また、選択肢が少ないからといって満足度が下がるとは限りません。「この料理ならこの店」といった印象づけができれば、メニューを絞ったことがむしろ強みに変わります。
専門性を高める
特定のジャンルやメニューに特化することで、専門性を高めることができます。たとえば「パスタ専門店」「カレーライス専門店」のように、限られたメニューでクオリティを追求すれば、お客さんに強い印象を与え、集客にもつながるでしょう。
仕込み重視で提供の手間を減らす
提供するメニューは、仕込みに時間がかからないものや、事前に多くの準備ができるものが理想です。煮込み料理、マリネ、茹で置き野菜など、あらかじめ準備しておけるものを中心に構成すると、営業中の手が止まりにくくなります。
たとえば、カフェ業態であればサンドイッチや焼き菓子などは前日から仕込んでおくこともでき、ピーク時には提供のみで対応できます。逆に、注文ごとに火を入れたり盛りつけが複雑であったりする料理は避けるのが無難です。
食材を共通化して在庫を抑える
複数のメニューで同じ食材を使える構成にすると、仕入れや保管の効率が大幅に向上します。たとえば鶏もも肉を使えば、唐揚げ、照り焼き、親子丼などに展開できるため、無駄なく活用できます。
このような設計は、在庫の回転も早まり、食材ロスの削減にもつながります。とくに一人で営業していると、在庫管理に割ける時間も限られるため、シンプルで循環しやすい構成が理想です。
注文を平準化する仕組みをつくる
「日替わり定食1種類」のように、注文を1本化する方式を採用することで、調理のブレや混乱を避けられます。たとえば、東京都の「未来食堂」では、1種類の「日替わり定食」を基本としつつ、客のリクエストに応える「あつらえ」という独自の仕組みを設けています。メニューの選択肢を工夫することで効率的な運営と顧客満足度を両立させ、固定ファンを獲得しています。
複数のメニューに対応するよりも、一定のリズムで同じ作業を繰り返す方が、一人営業では圧倒的に安定します。
ワンオペ飲食店のメニューを絞り込むメリット
ワンオペ営業では、調理・接客・会計などすべての作業を一人でこなす必要があります。メニュー数が多いと、仕込みや調理が複雑になり、全体の流れに支障をきたしやすくなります。反対に、あらかじめ厳選したメニューに絞ることで、各工程の負担が軽減され、結果として安定したサービス提供が実現しやすくなります。
食材ロスを減らせる
メニューを絞ることで、使用する食材の種類が限られ、管理がしやすくなります。在庫回転率が高まり、賞味期限切れによる廃棄リスクが減るため、原価の抑制にもつながります。
とくに、仕入れ量の少ない小規模経営では、食材の無駄が経営に直結します。複数のメニューで使いまわせる汎用性の高い食材を中心に据えることで、ロスを減らし、原材料費を抑えることができます。
調理の流れがシンプルになる
品数が少ないと、仕込みと調理の手順が自然と単純化されます。決まったパターンの作業を繰り返すだけで済むようになり、オペレーションにブレが出にくくなります。忙しい時間帯でも慌てずに対応できるようになり、調理ミスや提供遅れのリスクも減らせます。
たとえば、昼営業の定食屋で「日替わり1種」「常設定食2種」に絞った場合、仕込みは朝の段階でほぼ完了し、営業中は盛りつけや温めに集中できます。
在庫管理がラクになる
使用食材が限定されることで、冷蔵・冷凍・常温すべての在庫を把握しやすくなります。発注漏れや重複仕入れのようなミスも起こりにくくなり、日々の発注作業にかかる時間とストレスを減らせます。
また、食材の使い回しがしやすいため、予期せぬ来客数の増減にも柔軟に対応しやすくなります。余った食材をアレンジして提供するなどの工夫もしやすくなり、無駄なく回せる体制をつくることができます。
専門性を印象づけやすくなる
品数を絞った分、味の仕上がりに集中できるため、質の高い料理を提供しやすくなります。「この店ではこれを食べたい」と思わせる印象をつくれると、リピーターの獲得にもつながります。
たとえば、「チキン南蛮だけの定食屋」や「オムライス専門店」といった形で特化した店舗は、メニューの少なさをむしろ強みに変えています。少数精鋭のメニュー構成は、広告やSNSでの発信にも一貫性が出るため、ブランディングの面でも有効です。
一人で切り盛りする飲食店のメニュー作りの考え方
一人で飲食店を回すには、作業負担を軽減しながらも、魅力的な料理を提供できる構成が求められます。ここでは、目的に応じた設計の考え方から、業態別のメニュー例、成功事例までを紹介します。
事前仕込みができるメニューを選ぶ
多くのメニューは、オーダーが入ってからゼロから作るのではなく、ある程度仕込みをしておけるものが適しています。たとえば、煮込み料理やマリネ、ソースなどは事前に作っておくことで、提供時にかかる手間を大幅に減らせます。
提供時間の短いメニューを検討する
お客さんを長時間待たせないためにも、提供時間の短いメニューを中心に構成しましょう。麺類や丼物、簡単な定食などは、オーダーから提供までの時間を短縮しやすい傾向にあります。
汎用性の高い食材を使う
一つの食材で複数のメニューを展開できると、食材の無駄が減り、仕入れも効率的になります。たとえば、鶏肉であれば唐揚げ、親子丼、チキンソテーなど、さまざまな料理に活用できます。
ドリンクメニューの構成
ドリンクメニューも、一人で提供しやすいものを中心に選びましょう。ビール、焼酎、日本酒など、注ぐだけで提供できるものは効率的です。カクテルのように手間のかかるものは、種類を絞るか、提供しない選択も考えられます。
【業態別】一人で切り盛りする飲食店のメニュー例
一人で飲食店を切り盛りする際は、業態ごとに合ったメニュー構成を考えることが重要です。それぞれの業態には、効率性を重視した成功パターンがあります。
カフェのメニューの例
カフェは、ピークの時間帯が限定され、軽食中心のため仕込みと提供を分けやすい業態です。手間のかからない構成にすることで、オペレーションが安定します。
- ドリンク:ドリップコーヒー(マシンで抽出)、アイスティー(ピッチャーで仕込み)、フルーツジュース(業務用濃縮や市販品活用)
- フード:バタートースト、クロックムッシュ、手作りスコーン、パウンドケーキ
仕込みを前日に済ませておけば、営業中は「温めるだけ」「盛りつけるだけ」で提供できます。1プレートで提供し、カトラリーの準備や洗い物も最小限に抑える工夫が効果的です。
居酒屋のメニュー例
居酒屋では滞在時間が長く、注文が分散しやすいため、調理時間のばらつきを抑える工夫が必要です。加熱・非加熱を組み合わせる構成が現実的です。
- すぐ出せる料理:冷奴、白菜の浅漬け、ポテトサラダ(あらかじめ盛り分けておく)
- 温かい料理:鶏の唐揚げ(下味を付けて冷蔵保存)、牛すじの煮込み(営業前に仕込み)、出汁巻き玉子(電子レンジ使用も可)
- ドリンク:サーバーから注ぐだけの生ビール、ハイボール、瓶ビール、日本酒(一合ずつ提供)
焼き物など時間がかかるメニューは控えめにし、事前準備で済む料理に特化すれば、混雑時の回転も崩れにくくなります。
定食屋のメニュー例
定食スタイルは、食材の共通化と副菜の固定で、効率と満足感のバランスがとれます。昼営業を中心に据える場合に適しています。
- メイン:豚の生姜焼き(スライス肉で手早く調理)、鯖の塩焼き(冷凍焼成品を活用)、鶏の唐揚げ(仕込んでおき営業中に揚げる)
- 副菜:ひじき煮、きんぴらごぼう(作り置き可能)、冷やしトマト
- 汁物:味噌汁(鍋でまとめて作成)または具材を変える日替わりスープ
主菜のみを日替わりにし、副菜と汁物は固定すれば、仕込み時間も短く、食材ロスも減らせます。ワンプレートに盛るなど工夫すれば配膳もスムーズです。
メニュー以外で考えるべき飲食店での一人経営のポイント
飲食店でのすべての業務を一人で回すワンオペ営業では、「いかに動かずに済ませるか」「いかに人の手間を減らすか」が運営を続けるための鍵になります。ここでは、メニュー以外で押さえておきたいポイントを解説します。
店舗レイアウトは「動かずに済む」構造にする
厨房とホールの行き来を最小限にすることで、提供・片付け・洗い物の負担が減ります。たとえば、厨房の横に配膳カウンターを設けることで、ホールへの往復を減らせます。調理→提供→片付けまでの導線をできるだけ短く設計することがポイントです。
座席数も、一人で回せる上限を意識しましょう。10席前後であれば、ピーク時でも対応可能なケースが多く、席の間隔やレイアウトを工夫すれば、少人数でも回転率を保てます。
接客スタイルを見直す
接客はお店の印象を左右しますが、ワンオペでは物理的な限界があります。負担を軽減するために、一部セルフサービスを導入するのもひとつの方法です。
- 水やおしぼりはセルフで取れる場所に設置
- メニュー表ではなく、壁面掲示や写真付きPOPを活用
- 提供はカウンター越し、会話は最小限でも丁寧に対応
こうした工夫により、お客さま自身が自然に動ける環境を整えることができます。
注文・予約・会計をデジタル化する
業務の一部をデジタルに置き換えることで、対応時間を短縮できます。とくに注文や会計業務は、ミスや待ち時間の原因になりやすいため、仕組みで防ぐのが有効です。
- タブレットやQRコードを使った注文システムを導入する
- キャッシュレス決済を基本にする(PayPay、クレジット、交通系など)
- 事前予約はWeb予約サイトやLINE連携で受け付ける
これらを活用すれば、店内での対応時間を削減し、本来注力すべき調理や提供に集中できます。
業務をルーティン化し、無理のない運営にする
ワンオペ営業を長く続けるためには、すべての作業を「迷わず回せる」ようにルール化することが欠かせません。毎日の清掃や在庫チェック、仕込みの順番まで、流れをパターン化しておくと、無駄な動きや抜け漏れを防げます。
たとえば、
- 営業前は「仕込み→床清掃→トイレ点検」の順で進める
- 営業後は「売上確認→器具洗浄→ゴミ出し→閉店」までを習慣化
こうした流れができていれば、忙しい日でも冷静に対応しやすくなります。
一人で切り盛りする飲食店を効率化するには
一人で飲食店を効率的に運営するためには、作業を効率化できれば、提供スピードの安定だけでなく、ミスやストレスの軽減にもつながります。アナログな作業を減らし、デジタルツールを取り入れることで業務時間を大幅に短縮できます。
POSレジとクラウド会計ソフトで会計業務を簡略化する
注文や売上管理に手書きの伝票を使っていると、締め作業や集計に時間がかかり、ミスの温床にもなりかねません。POSレジを導入すれば、注文・会計・売上集計をワンストップで行えます。さらに、会計ソフトと連携すれば、売上データが自動で反映され、月次の経理処理も格段に楽になります。
たとえば、クラウド型の「マネーフォワード クラウド会計」や「freee会計」などは、Airレジやスマレジとの連携が可能で、個人経営者にも導入しやすい仕様です。領収書のスキャン機能やスマホからの仕訳登録などもあり、現場での負担を抑えられます。
オーダー業務を簡略化する
注文を取る時間を減らすことも、一人営業では効果的です。QRコード注文やタブレット注文などを導入すれば、お客さま自身で操作できるため、注文ミスや聞き間違いを防ぐと同時に、ホール業務を圧縮できます。
また、キッチンプリンターを併用すれば、厨房に注文内容が直接届くため、配膳以外の動線が最小限になります。注文から提供までの流れが滞りにくくなり、ピーク時の対応にもゆとりが持てるようになります。
食材の仕入れと在庫管理を整える
一人営業では、食材の発注ミスや在庫のダブりがそのまま損失につながります。仕入れ業者を1〜2社に絞り、発注曜日と分量をパターン化しておくと、余分な作業を減らせます。
また、小ロットでの納品やカット済み・冷凍加工品などをうまく取り入れれば、仕込み時間の短縮にもつながります。在庫管理アプリを使ってロスを可視化する方法も、限られたリソースの中で有効です。
清掃やメンテナンスの手間を減らす工夫をする
閉店後の作業時間が長くなると、翌日の体力にも影響します。厨房の清掃やごみの整理などは、営業中に「気づいたらすぐ行う」習慣をつけると、退店後の負担を減らせます。
たとえば、揚げ物に使う油は定期交換の頻度を決めておき、閉店時のルーティンをチェックリストで管理すると、漏れなく短時間で終えられます。
飲食店を一人で切り盛りするには仕組みと工夫がすべて
飲食店を一人で切り盛りするには、無理のないメニュー設計と、業務全体の仕組み化が不可欠です。メニューは品数を絞り、仕込みと提供を簡略化。店内の動線や接客方法もシンプルに整えることで、日々の負担を減らせます。
また、POSレジや会計ソフトの活用、オーダーや予約の自動化といった効率化ツールを取り入れることで、継続しやすい経営体制が築けます。すべてを完璧にこなすのではなく、「回せる形」に整えることが、一人で続けていくためのコツになります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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