• 作成日 : 2025年9月25日

飲食店はどこに出すべき?商圏調査の基本と都心・郊外の違いも解説

自分のお店を持ちたい方にとって「場所選び」はもっとも頭を悩ませる問題ではないでしょうか。その大事な立地選びの精度を、ぐっと高めてくれるのが「商圏調査」です。

この記事では、飲食店を開業しようと考えている方へ向けて、商圏調査の基本的な考え方から、自分でもできる調査方法、繁盛店を作るための分析のポイントまで、わかりやすく解説していきます。

飲食店経営に欠かせない商圏調査の基本

「商圏調査」と聞くと、難しそうに感じるかもしれません。しかし、その基本はとてもシンプルです。ここでは、まず「商圏」という言葉の意味と、なぜ飲食店にとってこの調査が大切なのかを理解していきましょう。

そもそも商圏とは?

商圏とは、簡単にいえば「自分のお店にお客様が来てくれる可能性のある範囲」のことです。この範囲は、お店のジャンルや場所、周りのライバル店の状況、道路や電車の便など、さまざまな要因で広がったり狭まったりします。自分のお店の商圏を正しく知ることが、効果的なチラシの配布エリアを決めたり、Web広告を出したりする上でのスタート地点になります。

なぜ飲食店に商圏調査が必要なのか

商圏調査をおこなうと、出店を考えているエリアに「どれくらいの人が住んでいるの?」「家族連れと一人暮らし、どっちが多い?」「ライバルのお店は繁盛してる?」といったことを、客観的なデータで知ることができます。

これによって、自分のお店のコンセプトがその場所に合っているか、きちんと利益が出せそうかを、開店前に判断できるのです。勘だけに頼った出店は大きな賭けになりますが、商圏調査は失敗のリスクを減らしてくれる、頼れる道しるべになってくれます。

【立地別】飲食店の商圏範囲の目安

「うちのお店には、どれくらいの範囲からお客さんが来てくれるんだろう?」これは、誰もが気になるところだと思います。飲食店の商圏は、お店がある場所によって、その広さが大きく変わってきます。ここでは、代表的な立地ごとの商圏範囲の目安を見ていきましょう。

駅前・繁華街エリア(徒歩5〜10分圏内)

駅前や繁華街は、電車を利用する人や買い物客など、多くの人が行き交う活気のあるエリアです。しかし、日常的に利用してくれるお客様となると、その範囲はぐっと狭まり、一般的には「徒歩5分圏(約400m)」が主な商圏とされます。

ライバル店もひしめいているため、いかにこの範囲内にいるお客様に「あのお店に入ってみよう」と思ってもらえるかが成功のカギになります。

住宅街エリア(徒歩10〜15分圏内)

住宅街にある飲食店のお客様は、主にその地域に住んでいる方々です。ふだん使いが中心になるため、商圏は「徒歩10分圏(約800m)」くらいが目安。

一度きりのお客様よりも、何度も通ってくれるリピーターをいかに増やせるかが経営のポイントになるため、地域の人々に愛されるようなお店づくりが大切です。

郊外・ロードサイドエリア(自動車5〜15分圏内)

大きな道路沿いなど郊外のお店は、お客様の主な移動手段が車になります。そのため商圏は一気に広がり、「車で10分圏内」などが一つの目安です。

これだけ広い範囲からお客様を集めるには、十分な広さの駐車場を確保することが必須であり、「わざわざ車であのお店に行きたい」と感じさせる、強い個性や専門性が求められます。

飲食店における商圏調査の具体的な方法

商圏調査は、専門家でなくても、実は自分でもできることがたくさんあるのです。ここでは、すぐにでも始められる調査方法から、便利な無料ツールまで、具体的なやり方を紹介します。

現地調査(フィールドワーク)で確認すること

データだけでは決してわからない、その場所の「リアルな空気感」を知るために、必ず自分の足で候補地周辺を歩いてみましょう。

  • 人の流れ:平日と休日、朝・昼・夜で、どんな人(サラリーマン、学生、主婦など)が、どちらの方向へ向かって歩いているのかを観察します。
  • 競合店の状況:ライバルになりそうなお店をリストアップし、お昼時や夕食時にどれくらい混んでいるか、どんなお客様が多いのかを実際に見てみましょう。
  • 周辺施設:人が集まるオフィスビルや商業施設、学校などはプラス要因に。逆に、人の流れを妨げる大きな道路や川などがないかもチェックします。

無料で使えるツールを活用した調査

今は国が提供する統計データを誰でも無料で、しかも簡単に地図上で見ることができます。これを使わない手はありません。

  • jSTAT MAP(ジェイスタット マップ):総務省統計局が提供しているウェブサイトです。地図上で好きな場所を中心に円を描くだけで、その範囲の人口や家族構成などを自動で集計してくれます。まずはここから始めてみるのがおすすめです。

出典:jSTAT MAP|総務省統計局

有料の商圏分析ツールの活用

もっと詳しく、専門的な分析をしたい場合は、民間の会社が提供する有料ツールを使う選択肢もあります。

最新の人口データはもちろん、年収データや消費行動のデータといった、より深い分析ができるのが強みです。月額数万円から利用できるものもあり、本気で成功を目指すなら頼れるパートナーになるでしょう。

繁盛店に導く飲食店の商圏分析のポイント

集めたデータをどう読み解き、自分のお店の作戦に活かしていくか。ここが「商圏分析」の腕の見せどころです。調査で得た情報を繁盛店のヒントに変えるための、分析のポイントを解説します。

商圏人口と世帯の特徴を把握する

商圏内の人口が多いからといって、安心はできません。大切なのは、自分のお店のターゲットとなるお客様が、そこにどれだけいるかです。

たとえば、高級ディナーのお店を考えているのに、学生向けのワンルームマンションばかりのエリアでは苦戦するかもしれません。人口の内訳(年齢、家族構成など)をしっかり見極めましょう。

競合店の調査と分析

商圏内のライバル店を分析し、「このエリアで自分のお店が輝けるポジションはどこか」を探します。

たとえば、「ラーメン店は多いけれど、女性が一人で入りやすいおしゃれな雰囲気のお店はないな」といった、市場の隙間を見つけられることがあります。ライバルは敵ではなく、市場を教えてくれるヒントの宝庫です。

昼間人口と夜間人口の違いを考慮する

街の顔は、昼と夜でがらりと変わります。オフィス街は昼間人口が多くランチ需要が見込めますが、夜や休日は閑散とします。

逆に住宅街は、昼間は静かでも夜になると住民が帰ってきてディナー需要が高まります。あなたのお店は、どちらの時間帯をメインに狙いますか?この昼夜の人口差も、jSTAT MAPで調べることができます。

駅の乗降者数データの活用法

駅の近くに出店するなら、その駅の一日の「乗降者数」は必ずチェックしたい大事な数字です。これは、駅をどれだけの人が利用しているかを示す、エリアのポテンシャルそのもの。

数字が大きければ大きいほど、潜在的なお客様が多いといえます。データは各鉄道会社のウェブサイトなどで確認できます。

郊外でも成功する飲食店の商圏調査と戦略

家賃も安く、広い店舗を構えられる郊外での出店は、大きなチャンスが眠っています。ただし、郊外で成功するには、都市部とは少し違った視点での商圏調査と戦略が求められます。

広い商圏を設定する必要性

郊外は人口が分散しているため、都市部のような狭い範囲では、商売に必要な客数を集めるのが難しい場合があります。そのため、車での来店を前提とした広い商圏(たとえば半径5kmなど)を想定し、その広い範囲のどこからでも「あのお店にわざわざ行きたい!」と思ってもらえるような、強い魅力づくりが欠かせません。

駐車場の有無が生命線になる

郊外のお店にとって、お客様が車を停められる駐車場の有無は、まさに生命線です。お店の前に十分な台数が確保できるか、もし無理なら、近くにコインパーキングなどがあるか。物件選びの際には、料理の味と同じくらい、駐車場のことを真剣に考えましょう。

ターゲットを明確にしたコンセプト設定

広いエリアからお客様を集めるには、「誰にでも好かれるお店」を目指すより、「特定の誰かに深く愛されるお店」を目指す方が成功しやすくなります。「子連れファミリーが気兼ねなく楽しめる大型カフェ」「地元の新鮮野菜だけを使った創作イタリアン」など、コンセプトを思いきり尖らせることで、遠くからでもわざわざ訪れる理由が生まれるのです。

精度の高い商圏調査が飲食店の成功確率を高める

ここまで、飲食店の開業に欠かせない商圏調査について、基本から分析のポイント、立地ごとの考え方までご紹介してきました。

商圏調査は「お店を出す前だけ」のものではありません。たとえば、売上が伸び悩んでいるときに原因を探る「お店の健康診断」としても有効です。

データに基づく商圏調査は、一度きりではなく、経営を続ける限り活用できる頼れる武器になります。まずは無料の調査ツールから、自分のお店にぴったりの立地戦略を描いてみましょう。


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