- 作成日 : 2025年9月25日
居酒屋の照明で売上アップ?経営者が知るべき光の使い方のコツ
居酒屋の照明は、単に店内を明るくするための設備ではありません。料理の魅力を引き立て、お客様が過ごす空間の居心地を左右し、ひいては売上にも影響を与える経営上の重要な要素です。適切な照明計画は、お店のコンセプトを伝え、顧客満足度を高める力を持っています。
この記事では、居酒屋の照明に関する基本知識から、法律上の注意点、お客様を惹きつける具体的なテクニックまで、経営者の方が知っておくべきポイントを網羅的に解説します。
目次
居酒屋の照明が店の印象を決定づける
居酒屋の照明計画は、お店のコンセプトを具現化し、お客様の体験価値を高めるうえで欠かせません。光の色や明るさ、当て方ひとつで、空間の雰囲気や料理の見え方が大きく変わるからです。
照明が顧客心理に与える影響
照明は、人が空間から受ける印象を大きく左右します。たとえば、明るく活気のある照明はにぎやかな大衆酒場の雰囲気を演出し、一方、少し暗めで落ち着いた照明は、ゆっくりと会話や食事を楽しみたいお客様向けの空間を作り出します。
このように、ターゲットとする客層やお店のコンセプトに合わせて照明をコントロールすることで、お客様の滞在時間や満足度に好影響を与えることが期待できるでしょう。
料理の魅力を最大限に引き出す光
照明は、料理の見た目、つまり「シズル感」を演出する重要な要素です。適切な照明の下では、食材の色がより鮮やかに見え、料理の温かさや新鮮さがお客様に伝わりやすくなります。反対に、照明選びを間違えると、せっかくの料理が色あせて見えたり、美味しそうに見えなかったりする原因にもなりかねません。
居酒屋の照明選びで押さえるべき基本のコツ
お店の魅力を高めるためには、照明の基本的な要素を理解しておくことが大切です。とくに「色温度」「照度」「演色性」の3つは、居酒屋の照明計画における土台となります。
光の色を決める「色温度(K)」
色温度は光の色合いを示す単位で、ケルビン(K)で表されます。数値が低いほど赤みがかった暖かい光(暖色)になり、高くなるほど青みがかった涼しげな光(寒色)になります。
- 暖色(2700K~3000K程度): 温かみがあり、リラックスできる空間に適しています。料理を美味しく見せる効果も高いため、多くの居酒屋で採用されています。お客様が落ち着いて過ごせる雰囲気を演出しやすい色です。
- 白色(4000K~5000K程度): 自然な光に近く、清潔感や活気のある印象を与えます。厨房や手元をはっきり見せる必要がある場所に向いています。
- 昼光色(6500K程度): 青みがかったシャープな光で、オフィスや勉強部屋で使われることが多いです。居酒屋の客席で使うと、料理が冷たく見えたり、お客様が落ち着かなかったりする可能性があるため、あまり向いていません。
空間の明るさを決める「照度(lx)」
照度は、光に照らされた面の明るさを示す単位で、ルクス(lx)で表されます。JIS(日本産業規格)の照明基準では、レストランや食堂の客席は用途に応じて100~500ルクスの範囲が推奨されています。
ただし、これはあくまで目安です。高級感を演出したい場合や、落ち着いた雰囲気を重視する場合は、あえて照度を低めに設定することもあります。「暗い」と感じさせすぎず、メニューが読める程度の明るさを保つことが大切です。
色の再現性を表す「演色性(Ra)」
演色性は、照明が物体の色をどれだけ自然光に近く再現できるかを示す指標で、Ra(アールエー)という単位で表されます。Ra100が自然光の下での見え方を基準とし、この数値が高いほど、色がより忠実に再現されます。
とくに料理を提供する飲食店では、演色性がきわめて重要です。一般的に、Ra80以上あれば日常生活では問題ないとされますが、料理の彩りを鮮やかに見せるためには、Ra90以上の高演色な照明を選ぶとよいでしょう。演色性が低い照明の下では、新鮮な食材も色あせて見えてしまうことがあります。
コンセプトを表現する居酒屋の照明テクニック
照明の基本を押さえたら、次はお店のコンセプトに合わせて光をデザインしていく段階です。ここでは、空間に奥行きと表情を生み出すための具体的な照明テクニックを紹介します。
「多灯分散」で空間にメリハリをつける
部屋全体を一つの照明(主照明)で均一に明るくする「一室一灯」の方式は、のっぺりとした印象になりがちです。そこでおすすめしたいのが「多灯分散」という考え方です。
これは、複数の小さな照明器具を効果的に配置し、空間の中に明るい場所と暗い場所を作る手法です。たとえば、テーブル席はペンダントライトで重点的に照らし、通路はダウンライトで足元の安全を確保する程度に抑える、といった具合です。光の陰影が生まれることで、空間に立体感と落ち着きがもたらされます。
壁や天井を照らす「間接照明」
間接照明は、光を直接人や物に向けるのではなく、壁や天井に一度当てて、その反射光で周囲を照らす手法です。光源が直接目に入らないため、眩しさを感じさせず、柔らかく上質な雰囲気を作り出せます。
天井や壁の高い位置にコーブ照明やコーニス照明を取り入れたり、カウンターの下や棚の奥に仕込んだりすることで、空間に広がりと高級感を演出できます。リラックス効果も高いため、お客様にゆっくりと過ごしてもらいたいお店にはとくにおすすめです。
目的の場所を照らす「ゾーニング」
店内の空間を「お客様が食事をするエリア」「スタッフが作業するエリア」「通路」など、機能ごとにゾーン分けし、それぞれに最適な照明を計画することをゾーニングと呼びます。
- テーブル・カウンター席:料理が主役になる場所です。ペンダントライトやスポットライトでテーブルの上をしっかりと照らし、料理を美味しく見せます。周囲は少し暗めにすると、プライベート感が生まれ、落ち着いた雰囲気になります。
- 厨房:安全かつ効率的に作業をおこなうため、十分な明るさが必要です。清潔感を印象づける白色系の光で、手元が影にならないように照明を配置します。
- 通路:お客様やスタッフが安全に通行できる最低限の明るさを確保します。フットライト(足元灯)などを活用し、眩しすぎないように配慮するとよいでしょう。
居酒屋の照明で注意したい顧客への配慮
居酒屋の照明計画では、デザイン性だけでなく、お客様への細やかな配慮も求められます。とくに安全性と、多様化する顧客ニーズへの対応は重要です。
女性客に喜ばれる「メイクが映える照明」
近年、とくに女性客をターゲットにするお店では、「メイクが綺麗に見えるか」という視点も照明計画で考慮されるようになっています。
顔に強い影が落ちる真上からの照明は、シワやクマが強調されて見えることがあるため避けたほうが無難です。斜め前から柔らかい光を当てる、あるいは壁からの反射光を利用すると、顔が明るく見え、健康的な印象になります。
また、演色性の高い照明を選ぶことで、肌の色やメイクの色が自然に見えるため、お客様の満足度向上につながるでしょう。パウダールームの照明にも気を配ると、お店の評価がさらに高まるかもしれません。
居酒屋におすすめの照明器具とコスト削減
照明計画を実現するためには、適切な照明器具を選ぶことが不可欠です。ここでは、居酒屋でよく使われる照明器具の種類と、ランニングコストを抑えるためのポイントを解説します。
用途で使い分ける照明器具の種類
お店のコンセプトや場所に合わせて、複数の照明器具を組み合わせるのが一般的です。
- ダウンライト:天井に埋め込むタイプの照明で、空間をすっきりと見せられます。全体を照らすベースライトとしても、特定の場所を照らすアクセントとしても使えます。
- スポットライト:特定の場所をピンポイントで照らすのに適しています。壁のアートや看板、テーブルの上などを照らし、視線を集める効果があります。ライティングレールに取り付ければ、位置や向きを自由に変えられます。
- ペンダントライト:天井から吊り下げるタイプの照明です。デザイン性が高く、空間のアクセントになります。テーブルの真上に設置すると、料理を効果的に照らし、親密な雰囲気を作り出せます。
- ブラケットライト:壁面に取り付ける照明です。補助的な光として、また装飾的な要素として空間に奥行きを与えます。
長期的な視点で考えるLED化のメリット
初期費用は白熱電球や蛍光灯に比べて高くなりますが、LED照明への切り替えは長期的に見ると大きなコスト削減につながります。LEDの主なメリットは以下のとおりです。
- 長寿命:白熱電球の約20~40倍も長持ちするため、電球交換の手間とコストを大幅に削減できます。
- 省エネ:消費電力が少ないため、月々の電気代を抑えることが可能です。
- 多様なデザイン:熱をあまり発しないため、これまで難しかった場所への設置もでき、デザインの自由度が高まります。
初期投資を抑えたい場合は、リースや補助金を活用する方法も検討するとよいでしょう。
魅力的な居酒屋づくりは最適な照明計画から始まる
居酒屋における照明は、お店の売上やブランドイメージを左右する、きわめて戦略的な要素といえます。単に明るさを確保するだけでなく、お店が目指す雰囲気やコンセプトを光によって表現することが大切です。
料理を最高に美味しく見せ、お客様が心からリラックスできる空間を創り出すために、色温度、明るさ、演色性といった基本をふまえ、多灯分散や間接照明などのテクニックを効果的に取り入れてみてはいかがでしょうか。自店の魅力を最大限に引き出す照明計画が、お客様に選ばれ続けるお店づくりの第一歩となるでしょう。
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