- 作成日 : 2025年9月25日
インバウンド接客完全ガイド|英語が苦手でも大丈夫な基本のコツ
日本を訪れる外国人観光客が増加する中、インバウンド接客の重要性はますます高まっています。しかし「語学に自信がない」「どう対応すればいいかわからない」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
インバウンド接客で大切なのは、完璧な語学力よりも、相手を思いやるおもてなしの心です。この記事では、具体的な心構えから、すぐに使えるフレーズ、便利なツールまで、英語が苦手でも安心して外国人のお客様を迎えられるインバウンド接客の基本をわかりやすく解説します。
目次
インバウンド接客でまず押さえるべき基本の心構え
インバウンド接客を成功させるためには、テクニック以前に、外国人のお客様を温かく迎え入れる心構えが大切です。語学力への不安を乗り越え、お客様に「また来たい」と思ってもらうための、基本となる3つのポイントを解説します。
完璧な外国語は必要ない
インバウンド接客において、必ずしも流暢な外国語が必要なわけではありません。もちろん話せるに越したことはありませんが、つたない言葉でも一生懸命に伝えようとする姿勢は、お客様に好意的に受け取られます。
大切なのは「歓迎している」という気持ちを伝えることです。自信を持って、知っている単語やジェスチャーでコミュニケーションをとることから始めましょう。
笑顔とアイコンタクトを意識する
言葉が通じにくい状況だからこそ、非言語コミュニケーションが大きな意味を持ちます。にこやかな笑顔は、国籍を問わず歓迎の意を伝える万国共通のサインです。お客様の目を見て話すアイコンタクトも、相手に安心感を与え、信頼関係を築く上で効果的です。まずは、普段よりも少しだけ口角を上げることを意識してみてはいかがでしょうか。
わかりやすい言葉(やさしい日本語)を使う
意外かもしれませんが、簡単な日本語なら理解できる外国人観光客は少なくありません。難しい敬語や回りくどい表現は避け、「です・ます」調を基本に、短い文章で、はっきりと話す「やさしい日本語」を心がけましょう。たとえば「少々お待ちください」を「少し待ってください」と言い換えるだけで、伝わりやすさは大きく変わります。
【シーン別】これだけは覚えたいインバウンド接客の基本用語
ここでは、実際の接客シーンですぐに役立つ基本的な英語フレーズや用語を紹介します。すべてを暗記する必要はありません。まずは自店でよく使うものから選び、指差しで使えるシートを用意しておくだけでも、現場でのコミュニケーションが格段にスムーズになります。
飲食店で使える基本フレーズ
飲食店では、入店から注文、会計まで、お客様と会話する機会が多くあります。基本的な流れに沿ったフレーズを覚えておくと、落ち着いて対応できます。
- 入店時:”Hello. For how many people?” (いらっしゃいませ。何名様ですか?)
- 注文時:”Are you ready to order?” (ご注文はお決まりですか?)
- おすすめを尋ねられた時:”Our recommendation is the Tempura.” (当店のおすすめは天ぷらです)
- 会計時:”That will be 3,000 yen.” (お会計は3,000円です) “We accept credit cards.” (クレジットカードも使えます)
アパレルで使える基本フレーズ
アパレル店では、お客様の好みやサイズに関する質問が中心になります。お客様が自由に店内を見られるよう、声かけのタイミングにも配慮が必要です。
- 声かけ:”Hello. Please let me know if you need anything.” (いらっしゃいませ。何かお探しでしたらお声がけください)
- サイズ確認:”What size are you looking for?” (どのサイズをお探しですか?)
- 試着の案内:”Would you like to try this on?” (ご試着なさいますか?) “The fitting room is over there.” (試着室はこちらです)
- 免税の案内:”We offer tax-free shopping.” (免税でのお買い物ができます)
指差しで使える接客シートのすすめ
よく使う単語やフレーズを、日本語と外国語(主に英語)、可能であればイラスト付きで一覧にした「指差しシート」を作成し、レジ横や手の届く場所に置いておくことをおすすめします。これがあれば、言葉に詰まったときでも、指を差すだけで意思疎通ができます。たとえば、アレルギーに関する項目や、支払い方法のロゴなどを載せておくと非常に便利です。
文化の違いを理解するインバウンド接客の注意点
良かれと思っておこなった対応が、文化や習慣の違いから、意図せずお客様を不快にさせてしまうことがあります。ここでは、インバウンド接客で特に配慮したい、文化や宗教、習慣の違いに関する注意点を解説します。
宗教上の配慮(食事・礼拝)
イスラム教徒(ムスリム)のお客様には、豚肉やアルコールを含まない「ハラル」に対応した食事の配慮が求められることがあります。メニューにピクトグラム(絵文字)を使って、使用食材をわかりやすく表示すると親切です。また、礼拝の時間や場所を尋ねられた際に、静かなスペースを案内できると、より丁寧な印象を与えます。
トラブルを招きかねないジェスチャー
日本では一般的なジェスチャーでも、国によっては全く違う意味や、失礼な意味に受け取られることがあります。たとえば、手で「こっちに来て」と招く動作は、国によっては「あっちへ行け」と捉えられます。人を指すときに指を一本立てるのも避けましょう。ジェスチャーを使う際は、手のひら全体で方向を示すなど、誤解の少ない丁寧な動作を心がけることが大切です。
支払い方法の多様性に対応する
日本では現金での支払いがまだ主流ですが、海外ではクレジットカードやデビットカード、モバイル決済が一般的な国が数多くあります。とくに中国ではAlipayやWeChat Pay、欧米の多くでは非接触型のタッチ決済が広く普及しています。さまざまな決済手段に対応していることは、お客様の利便性を高め、販売機会の損失を防ぐことにもつながります。利用可能な決済方法は、レジ周りや入口にステッカーで明示しておきましょう。
言葉の壁を乗り越えるインバウンド接客の便利ツール
語学力に自信がなくても、現代ではさまざまなツールがインバウンド接客を力強くサポートしてくれます。これらのツールをうまく活用することで、言葉の壁によるストレスを軽減し、より質の高いサービスを提供できるようになります。
翻訳アプリ・AI翻訳機
スマートフォン向けの無料翻訳アプリは、年々精度が向上しており、日常的な接客で十分に活用できます。テキスト入力だけでなく、音声入力やカメラで撮影した文字を翻訳する機能もあり、メニューや商品説明をその場で翻訳して見せることが可能です。よりスムーズな会話を求めるなら、双方の言葉を瞬時に翻訳する、専用のAI翻訳機の導入も効果的です。
多言語メニュー・POPの作成
飲食店であればメニュー、小売店であれば商品説明や店内案内のPOPを多言語で用意しておくことは、インバウンド接客の基本です。英語、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語の4言語に対応しておくと、多くの訪日外国人観光客をカバーできます。無料のテンプレートを提供しているサービスや、専門の制作会社もあるため、自店の状況に合わせて活用しましょう。
免税手続きの案内
外国人観光客にとって、免税(Tax-Free)は大きな魅力のひとつです。免税店であることを示すシンボルマークを店頭に掲示し、手続きのプロセスをまとめた案内を用意しておくと、お客様は安心して買い物を楽しめます。手続きにはパスポートの提示が必要であることや、対象となる購入金額などを、わかりやすく図示して説明しましょう。
インバウンド接客スキルを証明する「インバウンド接客外国語検定」
インバウンド接客への取り組みを体系的に進めたい、あるいは従業員のスキルアップを目指したいと考える経営者や店舗責任者の方には、関連資格の取得も選択肢のひとつです。ここでは「インバウンド接客外国語検定」について紹介します。
インバウンド接客外国語検定とは?
「インバウンド接客外国語検定」は、一般社団法人みんなの外国語検定協会が主催する、各業種に特化した接客スタッフ向けの外国語検定です。実際の接客現場で求められる基本的なフレーズや単語を学ぶことができます。
英語、中国語の2言語に対応しており、小売や飲食などの業種ごとに受験が可能です。
2025年の検定概要と学習方法
インバウンド接客外国語検定は、PCやタブレットを使って、指定された期間内に自宅から受験できるオンライン対応の検定です。
受講者はまず、オンラインで提供される接客講座を受講し、検定試験を受けます。検定の合格者には、オリジナルのバッジやステッカーが配布され、外国語でのコミュニケーション力を客観的に証明できます。店舗として資格取得を奨励することは、従業員のモチベーション向上や、外国人観光客へのアピールポイントにもなるでしょう。
詳細情報は主催団体の公式発表をご確認ください。
心を伝えるインバウンド接客がお店のファンを増やす
ここまで、インバウンド接客における心構えから具体的なテクニック、便利なツールまで解説しました。日本を訪れる外国人観光客は、日本の商品やサービスだけでなく、日本人との交流にも期待を寄せています。完璧な英語やマニュアルどおりの対応を目指すこと以上に、一人ひとりのお客様に「歓迎しています」という気持ちを伝えようとすることが大切です。
その心のこもったおもてなしは、言葉の壁を越えてお客様に伝わり、お店の、ひいては日本のファンを増やすことにつながるのではないでしょうか。まずは笑顔での挨拶から、インバウンド接客を始めてみましょう。
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