- 作成日 : 2025年9月22日
店舗の内装工事費用はいくら?坪単価の相場から費用を抑えるコツまで解説
店舗の内装工事にかかる費用は、お店の業態や規模、物件の状態(スケルトンか居抜きか)によって大きく変動します。費用相場がわからず、事業計画を立てにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。この記事では、店舗の内装工事費用の坪単価相場から、詳しい内訳、坪数別のシミュレーション、そして費用を賢く抑える方法まで、わかりやすく解説します。計画的な資金準備のために、ぜひご活用ください。
目次
店舗の内装工事費用はいくらかかる?
店舗の内装工事費用を考えるうえで基本となるのが坪単価です。物件の状態や業態によって相場は大きく異なるため、ご自身の計画に近い条件で費用感を把握することが大切になります。
物件の種類別の費用相場(坪単価)
内装工事の費用は、何もない状態からつくる「スケルトン物件」か、前のテナントの設備が残っている「居抜き物件」かで大きく変わります。
- スケルトン物件の場合
建物の骨組みだけが残った状態から、壁、床、天井、電気、ガス、水道、空調などの設備をすべて新設するため、費用は高くなる傾向にあります。デザインの自由度が高い点が大きなメリットです。 - 居抜き物件の場合
既存の設備や内装を活かせるため、スケルトン物件に比べて工事費用を大幅に抑えられる可能性があります。ただし、設備の劣化やデザインの制約があるため、どこまで再利用できるかの見極めが重要です。
物件の種類 | 費用相場(坪単価) | 特徴 |
---|---|---|
スケルトン物件 | 30万円~80万円 | デザインの自由度が高いが、費用は高額になりやすい |
居抜き物件 | 15万円~50万円 | 既存設備を活かせば費用を抑えられるが、制約もある |
業態別の費用相場(坪単価)
業態によって求められる設備やデザインが異なるため、坪単価も変動します。とくに飲食店は、厨房設備や給排水、排気設備など専門的な工事が多く、費用が高くなる傾向にあります。
業態 | 費用相場(坪単価) | 費用の特徴 |
---|---|---|
飲食店 | 30万円~70万円 | 厨房設備、給排水・ガス・排気工事などで高額になりやすい |
物販店 | 20万円~50万円 | 飲食店に比べ設備工事が少ない。デザインや什器で変動 |
美容室・サロン | 25万円~60万円 | 給排水設備や専門的な美容器具の設置費用がかかる |
オフィス | 10万円~40万円 | 大規模な設備工事は少ないが、ITインフラ整備が必要 |
店舗の内装工事費用の内訳と金額が決まる仕組み
内装工事の総額がどのように決まるのか、その内訳を理解しておきましょう。費用は主に「設計・デザイン費」「内装工事費」「設備工事費」「その他諸経費」の4つに分けられます。適正な見積もりを見極めるうえでご参考ください。
設計・デザイン費
設計・デザイン費は、店舗のコンセプトを形にするための設計図やデザインを作成するための費用です。工事費全体の10%~15%程度が目安とされています。デザイナーや設計事務所に依頼する場合に発生し、依頼先の実績や知名度によって費用は変動します。
費用を抑えたい場合は、設計施工を一括で請け負う内装会社に依頼する方法もあります。
内装工事費
内装工事費は、壁、床、天井、建具、造作家具など、店舗の見た目を直接つくる部分の工事費用です。使用する素材のグレードや施工範囲によって金額が大きく変わるため、見積もりの中でもとくに注意深く確認したい項目といえるでしょう。
- 床、壁、天井の仕上げ工事
- 建具(ドア、窓)工事
- 造作家具工事
- 塗装工事
- 外装・看板工事
設備工事費
設備工事費は、店舗運営に不可欠なインフラを整備するための費用です。とくに飲食店や美容室など、専門的な設備を必要とする業態では、この設備工事費が総額の大きな割合を占めることも少なくありません。
- 電気設備工事(配線、照明器具設置など)
- ガス設備工事(ガスの引き込み、配管など)
- 給排水設備工事(厨房やトイレの給水・排水管工事)
- 空調・換気設備工事(エアコン設置、排気ダクト工事など)
- 厨房設備工事(業務用冷蔵庫、コンロ、シンクなどの設置)
その他諸経費
工事そのものの費用以外にも、さまざまな経費が発生します。たとえば、工事車両の駐車場代、廃材の処分費用、現場の管理費用などです。見積書では「諸経費」や「現場管理費」として一式で計上されることが多いですが、内訳を確認することもできます。
【坪数別】店舗の内装工事費用のシミュレーション
ここでは、具体的な坪数を例に、内装工事費用の総額がどのくらいになるのかをシミュレーションします。今回は「20坪の飲食店」を例に、スケルトン物件と居抜き物件の2パターンで見ていきましょう。
坪単価はあくまで相場であり、デザインの凝り具合や導入する設備のグレードによって費用は大きく上下します。
20坪の飲食店(スケルトン)の内装工事費用
スケルトンから20坪の飲食店をつくる場合、坪単価を40万円~70万円と仮定すると、総額は800万円~1,400万円程度が目安となります。厨房設備にこだわる、あるいはデザイン性の高い内装を目指す場合は、これ以上の費用がかかる可能性も十分に考えられます。
- 坪単価:40万円~70万円
- 総額目安:20坪 × (40~70万円) = 800万円~1,400万円
20坪の飲食店(居抜き)の内装工事費用
前のテナントも飲食店であった居抜き物件を改装する場合、既存の設備をどれだけ流用できるかで費用が大きく変わります。坪単価を20万円~50万円と仮定すると、総額は400万円~1,000万円程度が目安です。厨房設備や空調がそのまま使える状態であれば、費用をかなり抑えられるでしょう。
- 坪単価:20万円~50万円
- 総額目安:20坪 × (20~50万円) = 400万円~1,000万円
店舗の内装工事費用を賢く抑える7つのコツ
内装工事費用は高額になりがちですが、工夫次第でコストを抑えることは可能です。ここでは、費用を賢く削減するための具体的な方法を7つ紹介します。
1. 相見積もりをとる
複数の内装会社から見積もりをとる「相見積もり」は、費用を比較検討し、適正価格を把握するために不可欠です。最低でも3社程度から見積もりを取得しましょう。
金額だけでなく、提案内容の質、担当者の対応、工事範囲の明確さなどを総合的に判断することが、良いパートナー選びにつながります。
2. 居抜き物件を活用する
初期費用を抑える最も効果的な方法のひとつが、居抜き物件を選ぶことです。とくに開業したい業態と同じであれば、厨房設備や給排水、排気ダクトなどをそのまま流用できる可能性があります。これにより、大幅なコスト削減につながるケースもあります。ただし、設備の老朽化や配置の制約も確認が必要です。
3. 補助金や助成金を活用する
国や地方自治体では、新規開業や事業転換を支援するためのさまざまな補助金・助成金制度を用意しています。たとえば、事業再構築補助金や小規模事業者持続化補助金、各自治体独自の創業者向け補助金などが該当します。申請には条件や公募期間があるため、早めに情報を集めて準備を進めることが大切です。
関連:【2025年最新】起業・開業時に使える助成金・補助金まとめ|個人事業主や女性におすすめの制度も解説
4. 素材や設備のグレードを見直す
内装材や設備のグレードは、費用に直接影響します。お客様の目に触れやすいエントランスや客席の壁には質の良い素材を使い、バックヤードなど見えない部分は安価な素材にするなど、予算配分にメリハリをつけることでコストを調整できます。すべてを最高級にするのではなく、こだわりたいポイントを絞りましょう。
5. 分離発注を検討する
分離発注とは、通常は内装会社に一括で依頼する工事を、設計、内装、設備工事、什器購入などをそれぞれ別の専門業者に直接発注する方法です。内装会社に支払う中間マージンを削減できる可能性がありますが、施主自身が進捗管理や業者間の調整を行う必要があり、かなりの手間と専門知識が求められるでしょう。
6. DIYを取り入れる
専門技術を必要としない壁の塗装や簡単な棚の取り付けなどを自分たちで行う(DIY)ことで、その分の人件費を削減できます。お店づくりに参加することで愛着も湧くでしょう。ただし、仕上がりの質が店舗の印象を左右するため、全体のデザインとの調和を考え、どの範囲をDIYで行うかは内装業者と相談のうえで慎重に検討しましょう。
7. 工事の時期を調整する
一般的に、建設業界は年度末の2月~3月や、公共工事が増える9月~11月が繁忙期とされています。地域や業者によっても異なりますが、こうした時期を避けて工事を発注することで、業者のスケジュールに余裕が生まれ、費用交渉がしやすくなる場合があります。
工期に余裕がある場合は、業者に閑散期をたずねてみるのもひとつの方法です。
店舗の内装工事業者の選び方と見積もりの見方
店舗工事の費用を抑えることばかりに目を向けると、品質の低い工事につながりかねません。適正な費用で質の高い店舗を実現するためには、信頼できる業者を選び、見積もりを正しく読み解く力が必要です。
信頼できる内装工事業者の選び方
良い業者を見つけるためには、以下の点をチェックしましょう。
- 実績が豊富か
希望する業態(飲食店、物販店など)の施工実績が豊富かどうかを確認します。過去の施工事例を見せてもらい、デザインのテイストや品質を確認しましょう。 - 提案力があるか
こちらの要望をふまえたうえで、プロの視点からより良い提案をしてくれるかどうかも重要なポイントです。予算内で理想を実現するための代替案などを積極的に出してくれる業者は信頼できるでしょう。 - コミュニケーションが円滑か
担当者との相性も大切です。質問に丁寧に答えてくれるか、レスポンスは早いかなど、工事完了までスムーズにやりとりできる相手かどうかを見極めます。 - 建設業許可の有無
500万円以上の工事を請け負うには建設業許可が必要です。許可の有無は、会社の信頼性を測るひとつの指標になります。
見積書でチェックすべきポイント
複数の業者から見積もりをとったら、金額の安さだけで判断せず、内容をしっかり比較検討します。
- 項目が具体的か
「内装工事一式」のように大雑把な記載ではなく、「〇〇工事 〇㎡ 単価〇円」といったように、数量や単価が具体的に記載されているかを確認します。「一式」が多い見積もりは、工事内容の把握が難しく、後に追加費用が発生する恐れもあるため注意が必要です。 - 前提条件がそろっているか
各社の見積もりが、同じ図面、同じ仕様、同じ工事範囲に基づいているかを確認します。条件が異なれば、金額に差が出るのは当然です。 - 極端に安すぎないか
他社と比べて極端に安い見積もりには注意が必要です。必要な工事が含まれていなかったり、質の低い材料が使われたりする可能性があります。安い理由を明確に説明できる業者を選びましょう。
店舗の内装工事費用を把握し計画的な開業準備を進める
店舗の内装工事にかかる費用は、開業資金の中でも大きな割合を占めます。この記事で解説した坪単価の相場や費用の内訳、コストを抑えるコツをふまえることで、ご自身の計画におけるおおよその費用感を把握できたのではないでしょうか。
まずは、店舗のコンセプトを明確にし、信頼できる内装工事業者を探すことから始めましょう。複数の業者から提案や見積もりを受け、内容をじっくり比較検討することが、予算内で理想の店舗を実現するための第一歩となります。
しっかりとした資金計画を立て、計画的な開業準備を進めていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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