• 作成日 : 2025年9月22日

飲食店の滞在時間をコントロールする方法は?店舗の売上アップの戦略

飲食店の売上を伸ばす上で、お客様の「滞在時間」をどう考えますか?滞在時間をただ長くしたり短くしたりすれば良いという簡単な話ではありません。滞在時間は客単価と回転率の両方に影響し、そのバランスを見極めることが、お店の利益を大きくするポイントになります。この記事では、店舗の滞在時間が売上に与える影響から、業態や時間帯に合わせた適切なコントロール方法、データ活用まで、わかりやすく解説します。

店舗の滞在時間が売上に与える影響

お客様の滞在時間は、売上を構成する「客単価」と「回転率」の両方に関係しています。この2つの関係性を理解し、お店に合わせて適切にコントロールすることで、売上をより高めることを目指します。

滞在時間と客単価の関係

お客様の滞在時間が長くなると、追加のドリンクやデザートなどを注文する機会が増えるため、お客様一人あたりの支払額である「客単価」は上がる傾向にあります。カフェでコーヒーを飲んだ後にケーキを追加したり、居酒屋で会話を楽しみながらお酒のおかわりをしたりする場面を想像するとわかりやすいでしょう。

しかし、ある程度の時間を超えると追加注文が止まり、席だけが使われている状態になることもあります。とくにランチタイムのような混雑時には、一組の長い滞在が、次のお客様をご案内できない機会損失につながることも考えられます。

回転率とのバランスを考える

「回転率」は、1日に同じ席を何組のお客様が利用したかを示す数字です。滞在時間が短いほど回転率は上がり、より多くのお客様を迎え入れることができます。

お店の売上を伸ばすには、客単価と回転率のバランスがとても大切です。たとえば、ランチタイムは回転率を重視した方が売上につながりやすく、ディナータイムはゆったり過ごしてもらうことで客単価を高める戦略が有効な場合があります。

お店の業態や立地、お客様の層によって最適なバランスは異なるため、自分のお店の特徴をふまえた判断が求められます。

【業態・時間帯別】飲食店の平均滞在時間の目安

自分のお店の滞在時間が適切かどうかを判断するために、一般的な平均時間を知っておくと参考になります。もちろん、これらはあくまで目安であり、お店の個性に合わせて考えることが大切です。

ランチタイムの平均滞在時間

ランチタイムの平均的な滞在時間は30分から60分です。ビジネス街では30分前後と短く、住宅街や観光地では45分から60分と少し長くなる傾向があります。

平日のランチは時間が限られているお客様が多いため、注文から提供までのスピードもお客様の満足度に関わってきます。

ディナータイムの平均滞在時間

ディナータイムの平均的な滞在時間は90分から120分ほどです。アルコールを提供するお店ではさらに長くなる傾向があります。コース料理を楽しむレストランでは120分から150分、記念日などの特別な日には180分を超えることも珍しくありません。

カフェ・居酒屋・レストランによる違い

お店のタイプによっても、お客様の過ごし方は変わってきます。

  • カフェ:30分から120分と幅広く、駅前の店舗では短く、郊外の店舗では長くなる傾向が見られます。
  • 居酒屋:グループでの利用が多く、平均して120分から180分ほどです。週末はさらに長くなることもあります。
  • レストラン:ランチで40分から60分、ディナーで60分から120分が目安です。高級店になるほど、より長い時間をかけて食事と雰囲気を楽しむお客様が多くなります。

飲食店の滞在時間を戦略的にコントロールする方法

お客様の満足度を保ちながら、お店の利益をより大きくするには、さりげない工夫をして滞在時間を調整しましょう。店内環境からメニュー、接客まで、さまざまな角度からアプローチできます。

席の配置や動線で人の流れをデザインする

お店の席の作りや配置は、お客様の滞在時間に影響をあたえます。たとえば、カウンター席や小さめのテーブル席は、一人客や少人数のお客様が利用しやすく、比較的短い滞在時間になる傾向があります。

壁際の席や半個室は落ち着けるため、滞在時間が長くなりやすいです。

ランチタイムは回転を意識して通路側の席へ、ディナータイムはくつろげる壁際の席へ、といった案内分けもひとつの方法です。

BGMや照明で店内の時間感覚を演出する

音楽や光は、人の気持ちや時間の感じ方に無意識のうちに影響をあたえます。回転率を上げたい時間帯には、少しテンポの速いBGMを流したり、店内を明るくしたりすることで活気ある雰囲気になり、お客様の行動も自然とスピーディーになります。

逆に、お客様にゆっくり過ごしてほしい場合は、落ち着いたジャズやクラシックを小さな音量で流し、照明を暖色系の柔らかい光にすると、リラックスできる空間を演出できます。

メニュー構成や提供スピードで時間を調整する

メニューの作り方でも、滞在時間の調整ができます。ランチタイムに、注文に迷わないセットメニューやワンプレートメニューを用意すれば、注文から食事完了までの時間を短縮できます。

逆にディナーでは、コース料理の提供間隔を調整したり、食後のお茶やデザートドリンクを充実させたりすることで、お客様にゆっくりとした時間を提供し、客単価アップにつなげられます。

スタッフの接客タイミングを工夫する

スタッフの声かけひとつで、お客様の気持ちや行動は変わるものです。食事が終わったタイミングで「デザートはいかがですか」と声をかければ滞在時間が延びるきっかけになり、「お済みのお皿をお下げしてもよろしいですか」と声をかければ、区切りがついて退店を意識するきっかけになります。

お店の状況に合わせて、接客のタイミングを使い分けることが大切です。

滞在時間を「延ばして」客単価を上げる工夫

お客様に快適な時間を提供しながら、追加注文を促す仕組みづくりが、客単価アップにつながります。居心地の良い空間づくりが、その土台となります。

居心地の良い空間づくり

暖色系の柔らかい照明は落ち着いた雰囲気を作り、滞在時間を延ばす効果が期待できます。BGMの選曲や音量も、お店の雰囲気作りに影響します。また、クッション性の高い椅子や適度な高さのテーブルは、長時間座っていても疲れにくく、自然と滞在時間が延びるでしょう。

Wi-Fiや充電設備を整えることも、とくにカフェなどではお客様の満足度を高め、滞在時間の延長と追加注文のきっかけになります。

追加注文を自然に促す仕組み

タブレット端末を使った注文システムは、スタッフを呼ぶ手間なく気軽に注文できるため、追加注文のハードルを下げる効果があります。また、「カフェタイムメニュー」や「ハッピーアワー」といった時間帯限定のメニューは、通常なら退店するタイミングでの滞在延長を促します。

見た目にも楽しいSNS映えするデザートなども、写真撮影の時間を含めて自然と滞在時間が延び、話題作りにも貢献するでしょう。

追加メニューで「もう一品」を誘う

滞在時間を売上につなげるには、魅力的な追加メニューが欠かせません。「食後のデザートセット」や、バータイム限定の「おつまみセット」、SNS映えする華やかなカクテルなど、「もう少しだけ楽しんでいこうかな」と思わせるメニューを用意しましょう。

滞在時間を「短くして」回転率を上げる工夫

回転率を重視するお店では、お客様の満足度を損なわずに、スムーズな退店を促す工夫が求められます。効率の良さをお店の価値として提供する考え方です。

スムーズな注文・会計システムの導入

入口の券売機やテーブルでのセルフオーダーシステムは、注文にかかる時間を短縮し、お店全体の流れをスムーズにします。また、セルフレジや多様なキャッシュレス決済への対応は、会計時の混雑を緩和し、お客様のストレスを減らすことにもつながります。

注文に迷わないメニューと迅速な提供体制

ランチタイムの「日替わり定食」や、券売機で先に注文を決めるシステムは、お客様が注文に迷う時間を減らし、着席から食事開始までの時間を短縮します。

厨房内での調理手順を工夫し、迅速な料理提供ができる体制を整えることも、滞在時間の短縮に直結します。

食事のリズムを作る店内環境

少しテンポの速いBGMや、明るめの店内照明は、お店に活気ある雰囲気をもたらし、お客様の食事のペースを自然に早める効果があるといわれています。また、カウンター席や2人掛けのテーブルを中心としたレイアウトは、大人数のグループが長時間利用するのを自然に避け、席の利用効率を高めます。

「長時間滞在するお客様」への上手な対応とマナー

飲食店では、あまりにも長く滞在されるお客様への対応に悩むことがあります。他のお客様への影響を考えながら、トラブルを避ける対応が求められます。

トラブルを防ぐ事前の対策

事前の対策として、メニューや店内の掲示で滞在時間の目安を示すことが有効です。「混雑時は90分程度でのご利用をお願いしております」といった案内を、入口やテーブルに設置することで、お客様の理解を得やすくなります。予約を受け付ける際に「お席は2時間制です」と明確に伝えておくことも、後のトラブルを防ぎます。

混雑時の丁寧な声かけの方法

満席で待ち時間が発生している場合は、まず追加の注文を伺い、その上で「恐れ入ります、ただいまお待ちのお客様がいらっしゃいますので…」と丁寧にお願いする形で状況を伝えましょう。「申し訳ございません」と謝るよりも、状況を共有してもらう姿勢で話すことが、お客様の理解を得るポイントです。

滞在時間データを経営改善に活かす

店舗の滞在時間を正確に把握し、データとして活用することで、経営の改善点が見えてきます。POSシステムや店内に設置したAIカメラなどを活用すれば、時間帯・曜日・席ごとの滞在時間を「見える化」できます。

このデータをもとに、スタッフの配置を見直したり、メニューを改善したり、席のレイアウトを最適化したりすることで、より効果的に売上向上を目指せるでしょう。

滞在時間は、お客様の満足度やお店の魅力を映し出す鏡でもあります。データを通じてお店の強みと課題を把握し、改善を続けることが、競争力のあるお店作りにつながります。

戦略的な滞在時間の見直しが売り上げや利益につながる

お客様の滞在時間は、お店の売上や利益に深く関わる、お店づくりのヒントです。しかし、その最適な時間は、お店が提供したい価値やお客様に過ごしてほしい時間、つまり「お店のテーマ」によって全く異なります。

他のお店の真似をするのではなく、自分のお店が目指す方向性に合わせ、滞在時間を延ばすのか、短くするのかを戦略的に選択し、それに合った環境を整えていくこと。この主体的なお店づくりこそが、お客様の満足と売上を両立させ、お店の未来を作っていくでしょう。


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