- 作成日 : 2025年9月22日
売れる店頭ディスプレイ戦略とは?立て方からコストを抑えるコツまで
店頭ディスプレイの工夫によって、お客様の関心を引きやすくなり、購入のきっかけになることもあります。「なんとなく並べているだけ」「センスに自信がない」という方でも、魅せ方や伝え方にほんの少し意識を向け、基本的な考え方や配置のコツをおさえれば、売上アップを目指せるディスプレイは実現可能です。
この記事では、売れる売場づくりに欠かせないVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の基本から、すぐに試せる陳列テクニック、コストをかけずに実践できる工夫までわかりやすく紹介します。
目次
売上につながる店頭ディスプレイ戦略とは?
効果的な店頭ディスプレイ戦略を立てるには、まず基本となる考え方を理解することが大切です。ここでは、お客様の購買意欲を高めるためのフレームワークである「VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)」の3つの要素について解説します。
VMDの3要素で視覚的に訴求する
VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)とは、視覚的な要素をもとに、商品を見やすく、買いやすく演出し、お客様の購買意欲を高めるマーケティング手法のことです。
「ビジュアル」と名前がつくものの、おしゃれに見せることだけが目的ではありません。お店のコンセプトや商品の魅力を視覚的に伝え、お客様が商品を選び、購入するまでの一連の流れをスムーズにすることがVMDの役割です。このVMDは、主に「VP」「PP」「IP」という3つの要素で構成されています。これらを連動させることで、お客様にとって魅力的で買いやすい売り場が生まれるでしょう。
VP(お店の顔)で入店を促す
VP(ビジュアルプレゼンテーション)は、お店の前を通るお客様の足を止め、入店を促すためのディスプレイです。ショーウィンドウや入り口付近の場所がこれにあたります。いわば「お店の顔」であり、ブランドのコンセプトや季節感、キャンペーンのテーマなどを表現するスペースです。
VPでは、特定の商品を売り込むというよりは、お店全体の世界観を伝え、お客様に「このお店、なんだか面白そう」「ちょっと入ってみようかな」と思わせることが目的になります。そのため、インパクトのある演出や、道行く人の視線をひきつける工夫が求められるでしょう。
PP(見せ場)でおすすめ商品をアピールする
PP(ポイントオブパーチェスプレゼンテーション)は、入店したお客様を店内の奥へと誘導し、特定の商品に注目させるためのディスプレイです。通路に面した棚のエンド部分(ゴンドラ)や、壁面の上部、マネキンなどがこれにあたります。
VPで興味を持って入店したお客様に対して、「当店では今、こんな商品をおすすめしていますよ」とアピールする役割を担います。そのシーズンの主力商品や、とくにおすすめしたい商品をディスプレイし、お客様の回遊性を高め、購買意欲を刺激します。PPが点在することで、お客様は店内を巡る楽しみを見つけ、滞在時間も自然と長くなる傾向にあります。
IP(商品陳列)で選びやすく買いやすくする
IP(アイテムプレゼンテーション)は、お客様が商品を手に取り、比較検討しやすくするための具体的な陳列方法です。商品が並んでいる棚やハンガーラックなどがこれにあたります。お客様が最終的に購入を決める、いわば「接客」の役割を担う場所です。
IPの目的は、商品を「見やすく」「選びやすく」「買いやすく」整理することにあります。たとえば、Tシャツであれば色ごと、サイズごとにきれいに畳んで並べる、雑貨であれば種類や用途ごとに分類するといった工夫がIPです。商品が乱雑に置かれていると、お客様は欲しいものを見つけられず、購買意欲を失ってしまいます。美しく整理された陳列は、商品の価値を高め、お客様に快適な買い物体験を提供するでしょう。
センスに頼らないための店頭ディスプレイ戦略の立て方
「ディスプレイにはセンスが必要」と思われがちですが、しっかりとした手順で戦略を立てれば、誰でも効果的な売り場作りができます。ここでは、感覚に頼らず、論理的にディスプレイを構築していくための戦略の「立て方」を4つのステップで紹介します。
STEP1:目的とターゲットを明確にする
ディスプレイを通じて「誰に」「何を」伝えたいのか、その目的を明確にします。たとえば、「30代の働く女性に、新生活で使えるおしゃれな雑貨を提案したい」「ファミリー層に、週末の食卓が楽しくなる新商品を知ってほしい」といった具合です。
ターゲットとなるお客様の人物像(ペルソナ)を具体的に設定することで、どのようなディスプレイが響くのかが見えてきます。目的があいまいなままでは、誰の心にも響かない、ぼんやりとした印象のディスプレイになってしまうでしょう。
STEP2:コンセプトとテーマを設定する
次に、目的に合わせて、ディスプレイ全体のコンセプトとテーマを決定します。コンセプトとはお店が持つ基本的な考え方や世界観のことで、テーマは季節やイベントに合わせて設定する具体的な演出内容です。
たとえば、「ナチュラル&オーガニック」というコンセプトのお店が、夏に向けて「涼やかなハーブのある暮らし」というテーマを設定する、といった形です。テーマが決まれば、使用する色や小物、POPのデザインなども自然と方向性が定まります。
STEP3:お客様の動線を設計する
ディスプレイは、お客様が店内をどのように歩くか、つまり「動線」を意識して設計することが求められます。多くのお客様は、入り口から入って反時計回りに店内を回遊する傾向があるといわれています。そのため、メインの商品やおすすめ商品は、入り口から見て左側の壁面や、回遊ルート上の目立つ場所に配置すると効果的です。
また、お客様の目線の高さ(ゴールデンゾーン)である床上から約90cm~150cmの範囲は、もっとも商品が注目されやすい場所なので、売りたい商品を戦略的に配置しましょう。
STEP4:主役となる商品を選定する
設定したテーマに沿って、ディスプレイの「主役」となる商品を選びます。すべての商品を平等に見せようとすると、結局どれも目立たず、雑然とした印象を与えてしまいます。テーマを最もよく体現している商品、利益率の高い商品、あるいは在庫が多い商品など、戦略的に「見せたい商品」を選びましょう。
主役が決まれば、その商品を軸に、関連する商品を周りに配置していくことで、ストーリー性のある魅力的なディスプレイを作ることができます。
お客様の足を止める店頭ディスプレイの陳列テクニック
ディスプレイの基本戦略が固まったら、次はいよいよ商品を陳列していきます。ここでは、初心者でもすぐに取り入れられる、基本的かつ効果的な陳列テクニックを4つ紹介します。これらのテクニックを組み合わせることで、売り場はより魅力的になります。
「三角構成」で安定感を出す
三角構成は、商品を三角形のシルエットになるように配置するテクニックです。中央に最も背の高い商品を置き、両脇に向かって低い商品を並べることで、視覚的な安定感が生まれます。
人間の目は三角形の形に自然と注目しやすいため、お客様の視線を中心の商品に集める効果が期待できます。雑貨やアパレルの小物、食品など、さまざまな商品に応用できる最も基本的な陳列方法のひとつです。
「リピート」でリズム感を生む
リピートは、同じ商品や同じ形、同じ色の商品を繰り返し並べるテクニックです。この方法は、規則正しく並べることで売り場にリズム感が生まれ、お客様の視線をひきつけます。とくに、カラフルな商品やデザイン性の高い商品をリピートさせると、壁面などにインパクトのある模様が生まれ、売り場全体の装飾的な役割も果たします。
お客様に商品の豊富さや種類の多さをアピールしたい場合にも有効な手法ではないでしょうか。
「シンメトリー」で特別感を演出する
シンメトリーは、中心線を軸にして左右対称に商品を配置するテクニックです。この方法は、人間の心理に「整っている」「美しい」という印象を与え、ディスプレイに格調高さや高級感、フォーマルな雰囲気をもたらします。
ギフト商品や高価格帯の商品、ブランドの象徴となるような商品をディスプレイする際に用いると、その商品の価値をより一層高めて見せることができるでしょう。ただし、多用しすぎると堅苦しい印象になるため、ポイントを絞って使うことが大切です。
「グルーピング」でついで買いを促す
グルーピングとは、関連性の高い商品をまとめて陳列するテクニックです。たとえば、パスタの売り場にパスタソースやチーズ、オリーブオイルを一緒に並べることで、お客様は実際の食卓をイメージしやすくなります。これにより、「ついで買い」いわゆるクロスセルを促す効果が期待できます。
雑貨店であれば、マグカップの横にコーヒー豆やティースプーンを置く、アパレルであればコーディネートでまとめて見せる、といった形です。お客様に新しい使い方や組み合わせを提案することで、商品の魅力がより深く伝わります。
購買意欲を高める売り場ディスプレイとPOPの活用術
魅力的な商品陳列に加えて、照明や色、POPといった要素を戦略的に活用することで、売り場の訴求力はさらに高まります。ここでは、お客様の購買意欲をあと押しするための演出のコツを解説します。
照明の工夫で商品を魅力的に見せる
照明は、売り場の雰囲気を作り、商品の魅力を引き立てるうえで欠かせません。店舗全体を明るくする「ベース照明」だけでなく、特定の商品を照らす「スポットライト」を効果的に使うことで、お客様の視線を意図した場所へ誘導できます。
たとえば、宝飾品やガラス製品はスポットライトを当てることで輝きが増し、高級感を演出できます。また、食品であれば、暖色系の光を当てることで、より一層おいしそうに見せる効果があるでしょう。照明の色や明るさ、角度を調整するだけで、商品の見え方は大きく変わります。
配色ルールで売り場に統一感を出す
売り場で使う色は、お店のブランドイメージを表現するものです。たくさんの色を無秩序に使うと、雑然として安っぽい印象を与えてしまいがちです。そうならないためには、お店のテーマカラーとなる「ベースカラー」、それを補う「アソートカラー」、そしてお客様の注意をひきたい場所で使う「アクセントカラー」の3色を基本に配色を考えるとよいでしょう。この割合を、ベースカラー70%、アソートカラー25%、アクセントカラー5%程度にすると、バランスの取れた統一感のある空間になります。
色数を絞ることで、洗練されたおしゃれな雰囲気を作り出すことができるでしょう。
目的を絞ったPOPで情報を伝える
POP(ポップ広告)は、「物言わぬセールスマン」ともいわれるように、商品の価値や情報を伝え、お客様の購買をあと押しするツールです。効果的なPOPを作るには、伝えたい情報を絞り込むことが大切です。「誰に」「何を」伝えたいのかを明確にし、キャッチコピー、商品説明、価格といった要素をわかりやすく配置します。
たとえば、ただ「新商品!」と書くだけでなく、「朝の食卓が華やぐ、信州産リンゴ100%のジャム」のように、具体的なベネフィットや商品の背景にあるストーリーを伝えることで、お客様の共感を呼び、手に取ってもらいやすくなります。
手書きのPOPは温かみを、デザイン性の高いPOPはおしゃれな雰囲気を演出するなど、お店のコンセプトに合わせた作り方を工夫しましょう。
コストを抑えて実践!店頭ディスプレイ戦略のアイデア
魅力的なディスプレイを作りたいけれど、予算は限られている、というケースも少なくないでしょう。高価な什器や装飾品がなくても、工夫しだいで効果的なディスプレイは作れます。ここでは、コストを抑えながら実践できるアイデアを4つ紹介します。
身近な素材や自然物で装飾する
ディスプレイの装飾に、必ずしも高価なアイテムは必要ありません。100円ショップで手に入るカゴや布、おしゃれなデザインの箱、ガラス瓶なども立派な装飾品になります。また、季節感を演出したいなら、松ぼっくりや落ち葉、庭木の枝などを活用するのもよい方法です。自然の素材は温かみがあり、お金をかけずに季節の移ろいを表現できる優れたツールになります。
今ある照明の当て方を変えてみる
照明器具を新しく購入しなくても、今ある照明の「当て方」を変えるだけで、お店の雰囲気は大きく変わります。たとえば、壁に光を当てて間接照明のように使えば、空間に奥行きと落ち着きが生まれます。また、小さなスタンドライトを使って特定の商品を下から照らすだけでも、特別感を演出できます。
高低差をつけて影を作るなど、光と影を意識することで、ディスプレイに立体感と表情が加わるでしょう。
手書きPOPで親しみやすさを出す
パソコンで作ったきれいなPOPもよいですが、コストをかけずにすぐにできるのが手書きPOPです。手書きの文字やイラストには、印刷されたものにはない温かみや親しみやすさがあります。
スタッフ一人ひとりがおすすめ商品を自分の言葉で紹介するPOPは、お客様とのコミュニケーションのきっかけにもなります。画用紙とペンさえあれば始められる、最も手軽で効果的な販促ツールのひとつではないでしょうか。
商品の配置換えで新鮮さを保つ
新しい商品を仕入れなくても、今ある商品の配置を変える「売り場の模様替え」をするだけで、お客様には新鮮な印象を与えられます。商品のグループを変えて新しい組み合わせを提案したり、おすすめの商品を変えたりするだけでも、お店の雰囲気はリフレッシュされます。これはコストゼロでもできるため、ぜひ取り組んでみましょう。
店頭ディスプレイ戦略の効果を最大化するデジタル活用
従来のディスプレイ手法に加えて、デジタルツールをうまく活用することで、お客様に対してより多くの情報を、より魅力的に伝えることが可能になります。ここでは、店頭ディスプレイ戦略をアップデートするためのデジタル活用法を紹介します。
デジタルサイネージで動きのある情報を発信する
デジタルサイネージとは、液晶ディスプレイなどに映像や情報を表示する電子看板のことです。静的なポスターやPOPと違い、動画やスライドショーを流せるため、お客様の注意をひきつけやすいのが大きな特長です。
商品の使い方を動画で紹介したり、時間帯によって表示するコンテンツを変えたり(たとえば、ランチタイムにはランチメニュー、夕方にはディナーメニューを表示する)、セール情報などをリアルタイムで発信したりと、柔軟な情報提供ができます。初期投資はかかりますが、ポスターの印刷や貼り替えといった手間とコストを削減でき、業務効率化にもつながるでしょう。
SNSキャンペーンと連動させる
お店のSNSアカウント(InstagramやXなど)と店頭ディスプレイを連動させることで、オンラインとオフラインを横断した相乗効果が期待できます。
たとえば、「このディスプレイの前で写真を撮って、『#お店の名前』のハッシュタグをつけて投稿してくれたら会計から5%オフ」といったキャンペーンを実施します。お客様は楽しみながら参加でき、お店側はお客様による自然な形での宣伝効果を得られます。
また、お客様の投稿を見ることで、ディスプレイがどのように受け止められているかを知る貴重なフィードバックにもなるでしょう。
AIカメラなどでデータを分析する
これまでのディスプレイの効果測定は、POSデータの売上などから推測することがほとんどでした。しかし、近年ではAIカメラなどの技術を活用して、より客観的なデータに基づいた分析が可能になってきています。
たとえば、店舗に設置したカメラの映像から、お客様の年齢層や性別、店内のどの場所で足を止めたか、どの商品を手に取ったかといったデータを分析します。これにより、「このディスプレイは30代女性によく見られている」「あちらの陳列はあまり注目されていない」といったことが数値でわかり、ディスプレイ改善のための具体的な示唆を得られます。感覚に頼っていた部分をデータで裏付けることで、より戦略的な売り場作りが実現するでしょう。
店頭ディスプレイ戦略の見直しがお客様との新しい関係を築く
店頭ディスプレイは、商品をきれいに並べるだけの作業ではなく、お客様に「お店の想い」を伝え、買い物の楽しさを体験してもらうための、コミュニケーション手段です。
センスに頼るのではなく、VMDの基本原則や陳列のテクニックといった「型」をふまえて戦略を立てることが、成功につながります。
今回紹介した内容を参考に、定期的にお客様の反応を見ながらディスプレイを見直し、改善を続けていくことで、売上向上はもちろん、お客様とのより良い関係を築いていくことにつながるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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