- 作成日 : 2025年9月22日
なぜ飲食店のリピーターが少ないのか?10のチェックと増やす方法を解説
「新規のお客様は来てくれるけれど、なかなか次につながらない」「常連さんが定着せず、売上が安定しない」こうした悩みは、多くの飲食店経営者や店長が抱える共通の課題ではないでしょうか。安定した経営のためには、お店を気に入って何度も足を運んでくれる「リピーター」の存在が欠かせません。
しかし、リピーターを増やすのは簡単なことではありません。この記事では、まずなぜリピーターが少ないのか、その原因を探るための具体的なチェック項目や、「また来たい」と思っていただけるお店になるための詳しい方法を、わかりやすく解説していきます。
目次
なぜ飲食店の経営にリピーターが大切なのか?
飲食店のリピーターを増やす方法を考える前に、まず「なぜリピーターがそれほどまでに大切なのか」という理由を改めて確認しておきましょう。その理由は、売上やコストの観点から明確に説明できます。
新規顧客の獲得には5倍のコストがかかる
マーケティングの世界でよく知られている法則に、「1:5の法則」があります。これは、新規のお客様にお店を利用してもらうためには、既存のお客様(リピーター)に再度利用してもらう場合の5倍のコストがかかる、というものです。
新規集客には、広告宣伝費や販促物の費用など、多くのコストがかかります。一方で、リピーターはすでにお店のことを知ってくれているため、比較的少ないコストで再来店を促すことができます。つまり、リピーターを増やすことは、お店の利益率を改善することに直接つながるのです。
売上の安定とLTV(顧客生涯価値)の向上
飲食店にリピーターや常連客が一定数いれば、天候や景気の変動に左右されにくく、安定した売上を見込めます。
また、リピーターは「LTV(Life Time Value/顧客生涯価値)」が高いという特徴があります。LTVとは、一人のお客様がお店を利用し始めてから終わるまでの間に、お店にどれだけの利益をもたらしてくれるかを示す指標です。
リピーターは来店頻度が高いだけでなく、お店への信頼から友人や知人を連れてきてくれたり、SNSで好意的な口コミを広めてくれたりすることもあります。リピーター一人ひとりが、お店にとってかけがえのない応援団となってくれるのです。
リピーターが増えない飲食店の10のチェック項目
「うちの店は、なぜリピーターが少ないんだろう?」その原因を客観的に探るため、以下の10の項目で、自分のお店を見つめ直してみましょう。
1. 料理の味は安定していますか?
「前回は美味しかったのに、今回は味が違う」料理の味が安定していないのは、お客様の信頼を損なう大きな原因です。調理担当者が変わっても味がブレないよう、レシピや調理工程を標準化できているか、改めて確認してみましょう。
2. 価格と価値のバランスは取れていますか?
お客様は、支払った金額に対して、料理の味や量、お店の雰囲気、接客サービスなどを総合的に判断し、「満足できたか(価値があったか)」を評価します。ただ安いだけ、高いだけではなく、お客様が「この価格なら納得だ」と感じる価値を提供できているかが試されます。
3. 店内は清潔で居心地が良いですか?
テーブルのベタつきや、床の汚れ、トイレの清潔感などは、お客様が敏感に感じ取るポイントです。料理がどんなに美味しくても、不潔な印象を与えてしまっては、また来たいとは思ってもらえません。居心地の良い空間を保つための清掃は、基本的ながら欠かせない業務のひとつです。
4. 接客はマニュアル通りで冷たくないですか?
丁寧であっても、笑顔がなく、機械的な接客は、お客様に冷たい印象を与えてしまいます。「ただ食事を済ませる場所」と認識され、記憶に残りません。お客様の心に残るような、温かみのあるコミュニケーションが取れているでしょうか。
5. お店のコンセプトやこだわりは伝わっていますか?
「何がウリなのかよくわからない」「他のお店と何が違うのか印象に残らない」という状態では、お客様の記憶に残りません。食材へのこだわりや、お店独自のサービスなど、「この店ならでは」の魅力が、お客様にきちんと伝わっているか見直してみましょう。
6. お客様はあなたの店のことを覚えていますか?
特に不満はなくても、日々の忙しさの中で、お店の存在は簡単に忘れられてしまいます。これが、お客様がリピートしない最大の理由かもしれません。忘れられないための工夫、思い出してもらうための仕掛けを用意しているでしょうか。
7. 再来店する「きっかけ」を提供していますか?
「また行きたいな」と漠然と思っていても、きっかけがないとなかなか再来店にはつながりません。ポイントカードやクーポン、限定イベントの案内など、お客様の背中をそっと押すような「きっかけ」を定期的に提供できていますか。
8. お店の場所はわかりやすく、入りやすいですか?
お店の場所がわかりにくかったり、外から中の様子が見えずに入りづらい雰囲気だったりすると、初回来店のハードルが高いだけでなく、2回目以降の来店もためらわせてしまいます。ファサード(外観)は、お客様を歓迎する姿勢を示せているでしょうか。
9. お客様の「小さな不満」を見過ごしていませんか?
「注文してから料理が出てくるまでが少し遅い」「BGMが少しうるさい」といった、お客様が口には出さない「小さな不満」が、実はリピートを妨げていることがあります。お客様の表情や様子を注意深く観察し、改善点を探す姿勢が大切です。
10. SNSやWebサイトで情報発信をしていますか?
現代において、お店の公式な情報発信は必須です。お店の最新情報を知ろうとした時に、SNSやウェブサイトが更新されていなかったり、情報が古かったりすると、お客様は来店意欲を失ってしまいます。オンライン上でお客様との接点を持ち続けているでしょうか。
飲食店がリピーターを増やすための10の方法
チェック項目で見つかった課題を解決し、飲食店でリピーターを増やすためには、どのような戦略が有効なのでしょうか。ここでは、お客様との関係を築くための10の方法を紹介します。
1. お客様の顔と名前を覚える努力をする
何よりもまず、お客様一人ひとりに興味を持つことから始めましょう。一度来店されたお客様の顔や名前、前回注文したメニューなどを覚え、次に来店された時に「〇〇様、いつもありがとうございます」と声をかける。この「覚えていてくれた」という事実は、お客様にとって何よりの喜びとなり、お店への強い親近感を生み出します。
2. お客様との会話から好みを把握する
「今日の魚は何ですか?」といったお客様からの質問は、コミュニケーションのチャンスです。料理の説明に加えて、「お魚がお好きなんですね」と一言添えるだけで、会話が広がるきっかけになります。お客様の好みや苦手なもの、利用シーンなどをさりげなく把握し、顧客ノートなどに記録しておけば、次回の提案に活かせます。
3. 心に残る「おもてなし」を演出する
誕生日や記念日で利用されているお客様には、デザートプレートにメッセージを添えたり、ささやかなプレゼントを用意したりする。雨の日に来店されたお客様には、タオルを差し出す。こうしたマニュアルにはない、その場その場での心遣いが、お客様の記憶に深く刻まれ、「またあのお店に行きたい」という気持ちを育てます。
4. LINE公式アカウントで定期的に思いだしてもらう
お客様にお店のことを忘れてもらわないために、LINE公式アカウントは非常に有効なツールです。友だち登録してくれたお客様に、新メニューの情報や季節の挨拶、ちょっとした豆知識などを定期的に配信することで、お店との接点を保ち続けられます。
5. ポイントカードや会員アプリで再来店の動機を作る
来店回数や利用金額に応じて特典がもらえるポイントカードや会員アプリは、お客様にとってゲーム感覚で楽しめる、わかりやすい再来店の動機付けになります。「あとスタンプ1つでドリンク無料」といった目標があれば、お客様の足は自然とお店に向かうでしょう。
6. 次回使えるクーポン券を渡す
お会計の際に、「次回ご来店時にお使いいただける10%OFFクーポンです」と手渡すのも、古典的ですが効果的な方法です。有効期限を少し先に設定しておくことで、しばらく足が遠のいていたお客様の再来店を促すきっかけにもなります。
7. 手書きのサンキューカードで感謝を伝える
印刷されたものではなく、心のこもった手書きのメッセージは、人の心を動かします。お会計の際に、「本日はご来店ありがとうございました。〇〇様とお話しできて楽しかったです」といった一言を添えた小さなカードを渡す。そのひと手間が、お店の温かみとして伝わります。
8. SNSでお店の日常や裏側を見せる
インスタグラムやブログなどで、お店の日常風景やスタッフの紹介、メニュー開発の裏側などを発信しましょう。完成された料理だけでなく、その背景にある物語や人柄に触れることで、お客様は親近感を抱き、お店を応援したいという気持ちになります。
9. お客様を巻き込むイベントを企画する
「常連様限定の試食会」「ワインの飲み比べ会」など、お客様が参加できる小規模なイベントを企画するのも良い方法です。イベントを通じてお客様同士の交流が生まれれば、お店がコミュニティの場となり、さらに愛着を深めてもらえます。
10. お客様の「声」を形にする
お客様アンケートや、日々の会話の中からいただいた「こんなメニューが食べたい」「もっとこうだったら嬉しい」といった要望を、できる範囲で実現しましょう。「お客様の声にお応えして、〇〇始めました!」と伝えることで、お客様は「自分の意見を大切にしてくれるお店だ」と感じ、より一層ファンになってくれるはずです。
飲食店のリピーターを増やすための「心に残る接客」
どんなに優れた料理やお得なクーポンがあっても、最終的にお客様の心を掴むのは「人」です。リピーターが多いお店には、必ずと言っていいほど、心に残る接客があります。
マニュアル通りの接客から一歩踏み出す
「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」といったマニュアル通りの丁寧な接客はもちろん基本中の基本です。しかし、それだけではお客様の記憶には残りません。リピーターを増やす接客とは、お客様一人ひとりに合わせた、パーソナルな対応のことを指します。
たとえば、以前来店されたお客様の顔や名前、注文したメニュー、話した内容などを覚えておき、「〇〇様、先日はありがとうございました。前回お好きだとおっしゃっていた△△、本日もご用意しておりますよ」と声をかける。この「覚えていてくれた」という驚きと喜びが、お客様にとって何よりの特別なおもてなしとなり、「またこの人に会いに来たい」という強い動機になるのです。そのために、スタッフ間で顧客情報を共有する「顧客ノート」を作成するのも良い取組みでしょう。
お客様との「ちょうど良い距離感」
馴れ馴れしい接客を嫌うお客様もいれば、スタッフとの会話を楽しみたいお客様もいます。大切なのは、お客様の様子をよく観察し、それぞれのお客様が求める「ちょうど良い距離感」を見極めることです。静かに食事を楽しみたいお客様には、過度な声かけは控える。一方で、メニューについて尋ねてくれたお客様には、料理のこだわりを少しだけ話してみる。そうした細やかな気配りが、居心地の良さにつながります。
飲食店のリピート率の調べ方
リピーターを増やす施策を始める前に、まずは「今、自分のお店にどれくらいのリピーターがいるのか」という現状を把握することが大切です。ここでは、リピート率の簡単な調べ方について解説します。
リピート率の基本的な計算方法
リピート率は、以下の計算式で求められます。
たとえば、ある月に来店したお客様が全部で500人、そのうち2回以上来店したお客様が100人だった場合、リピート率は「100 ÷ 500 × 100 = 20%」となります。
どうやってリピート客数を調べるか
リピート客数を正確に把握するには、何らかの顧客管理の仕組みが必要です。顧客情報と連携できるPOSレジや、独自の決済アプリを導入していれば、比較的簡単にリピート客数を集計できます。
また、会員アプリやポイントカードのデータは、リピート率を計測するための最も正確な情報源のひとつです。予約台帳に記録された電話番号や名前を過去の履歴と照合することでも、おおよそのリピート客数を把握できます。
飲食店の平均リピート率は?
業態や立地によって大きく異なりますが、飲食店の新規顧客のリピート率は、一般的に30%〜40%程度が目安と言われています。カフェや居酒屋など、日常的に利用されやすい業態は高くなる傾向があり、高級レストランなど特別な日に利用される業態は低くなる傾向があります。
まずはこの数値をひとつの目安として、自店の数値を把握することから始めてみましょう。
飲食店のリピーター作りは原因分析から
飲食店経営において、リピーターを増やすことは、売上アップのテクニックだけでなく、お店の料理や雰囲気を愛し、スタッフを応援してくれる「ファン」との温かい関係を、一人ひとり時間をかけて育てていく活動そのものです。
「なぜリピーターが少ないのだろう」と悩んだ時は、まずこの記事のチェック項目を使って、お客様が離れてしまう原因を一つひとつ探ってみましょう。原因がわかれば、打つべき手も見えてきます。「美味しかった」という満足を超え、「楽しかった」「またあの人に会いたい」という感動や共感が、お客様の心を動かし、再来店へとつながります。
その積み重ねが、お店を地域で長く愛される、かけがえのない存在へと成長させてくれるはずです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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