• 作成日 : 2025年9月22日

飲食店クレーム対応マニュアルの作り方!事例と例文でわかりやすく

飲食店を運営していると、どれだけ気をつけていてもクレームをゼロにすることは難しいものです。しかし、クレーム対応の仕方によっては、お客様の不満を和らげ、印象を好転させることにつながる場合もあります。そのためには、しっかりとした「クレーム対応マニュアル」を準備し、スタッフ全員が同じレベルで対応できる体制を整えておきましょう。

この記事では、飲食店のクレーム対応マニュアルの必要性から、具体的な作成手順、事例別の対応例文まで、わかりやすく解説していきます。

なぜ飲食店にクレーム対応マニュアルが必要なのか?

クレーム対応マニュアルは、起きてしまったトラブルを処理するためだけのものではありません。スタッフの精神的な負担を軽くし、お店全体のサービス品質を守るためにも大切です。

お客様対応の質を均一にし、店の信頼を守る

クレーム対応は、対応するスタッフによって内容がバラバラになりがちです。経験豊富な社員と、入ったばかりのアルバイトでは、対応に差が出てしまうのも無理はありません。

マニュアルがあれば、誰が対応しても一定水準の丁寧な対応ができるようになり、お店としての信頼を保てます。お客様にとっても「この店は誰に話してもきちんと対応してくれる」という安心感につながるでしょう。

スタッフの精神的な負担を軽くする

お客様からの厳しい言葉は、スタッフにとって大きなストレスになります。とくに経験の浅いスタッフは「どうしたらいいかわからない」とパニックになってしまうかもしれません。

マニュアルという「対応の指針」があることで、スタッフは落ち着いて行動できます。「まずはこう動けばいい」という道筋が見えるだけで、精神的な負担は大きく軽減されるのではないでしょうか。

クレームを貴重な情報として次に活かす

発生したクレームは、お店が改善すべき点を教えてくれる貴重なご意見でもあります。マニュアルに沿ってクレームの内容を記録・共有するルールを作っておけば、問題点を組織全体で把握できます。

「同じクレームを繰り返さないためにどうするか」「サービス向上のために何ができるか」を考えるきっかけとなり、お店の成長につながります。

飲食店クレーム対応マニュアルに盛り込むべき基本手順

クレーム対応には、お客様の感情を落ち着かせ、問題を解決に導くための基本的な流れがあります。この手順をマニュアルの核として定めましょう。

1. 傾聴:まずはお客様の話をさえぎらずに聞く

お客様が話し始めたら、まずは真摯な姿勢で、最後まで話をさえぎらずに聞くことに徹します。相手は「不満な気持ちを分かってほしい」と思っています。

途中で言い訳や反論をしたくなる気持ちをぐっとこらえ、相づちを打ちながら、お客様が何に怒り、何を求めているのかを正確に把握しましょう。

2. 共感と謝罪:不快な思いをさせたことへのお詫び

話を聞き終えたら、まずはお客様が不快な思いをしたという事実に対して、心からお詫びをします。「〇〇な点で、ご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございませんでした」というように、何に対して謝っているのかを明確に伝えることが大切です。

ここで示すのは、あくまでお客様の気持ちに対する共感と謝罪であり、全面的に非を認めることとは少し違います。

3. 事実確認:状況を正確に把握する

次に、落ち着いた口調で、クレームの原因となった状況について事実確認を行います。「恐れ入ります、今後の改善のためにも、当時の状況をもう少し詳しくお伺いしてもよろしいでしょうか」と許可を得てから質問しましょう。

誰が、いつ、どこで、何をしたのかを客観的に聞き取ることで、適切な解決策を考えられます。

4. 解決策の提示:具体的な代替案や対応を示す

事実確認ができたら、お客様の不満を解消するための解決策を提示します。たとえば、料理に問題があった場合は「すぐに新しいものとお取替えいたします」や「本日のお代はいただきません」といった具体的な案です。

対応に迷う場合や、自分に決定権がない場合は「責任者に確認し、すぐにご報告いたしますので、少々お時間をいただけますでしょうか」と正直に伝え、上司の指示を仰ぎましょう。

5. 感謝:ご意見をいただいたことへのお礼

問題が解決したら、最後にもう一度お詫びするとともに、貴重な意見を伝えてくれたことに対して感謝の気持ちを伝えます。「この度は、貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございました。今後のサービス改善に活かしてまいります」という一言が、お客様の印象を和らげ、お店への信頼回復につながります。

飲食店クレーム対応マニュアルの具体的な会話例

ここでは、飲食店で起こりがちなクレームの事例別に、マニュアルに記載しておくと役立つ会話例を紹介します。状況に応じてアレンジし、ご活用ください。

1. 料理への異物混入

料理への異物混入は飲食店にとって最も避けたいクレームのひとつですが、万が一発生した場合は、速やかに交換・謝罪の手続きに入り、責任者が事情を説明するなど誠意ある対応が求められます。

お客様:「すみません、このサラダに髪の毛が入っているんですけど」

スタッフ(初期対応):「大変申し訳ございません! ご不快な思いをさせてしまい、心よりお詫び申し上げます。すぐに新しいものとお取替えいたしますが、よろしいでしょうか」

(商品を交換した後、責任者が改めて謝罪に伺う)

責任者:「〇〇様、先ほどは大変失礼いたしました。責任者の〇〇と申します。この度は私どもの不注意で、〇〇様に大変ご不快な思いをさせてしまいましたこと、重ねてお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした。今後、このようなことが二度とないよう、厨房の衛生管理を徹底いたします」

2. スタッフの接客態度が悪い

スタッフの態度に関するクレームは、お客様の主観による部分も大きいですが、真摯に受け止める姿勢が求められます。

お客様:「さっき注文をとった店員さん、すごく態度が悪かったわよ」

スタッフ:「左様でございましたか。〇〇様を不愉快な気持ちにさせてしまい、大変申し訳ございません。よろしければ、どのような点が気になったかお聞かせいただけますでしょうか。今後の指導の参考にさせていただきたく存じます」

(話を聞いた後)

スタッフ:「貴重なご指摘をありがとうございます。従業員教育が行き届いておらず、誠に申し訳ございませんでした。責任者にも報告し、店舗全体で改善に努めます」

3. 料理の提供が遅い

ピークタイムなど、お店が混雑していると発生しやすいクレームです。状況説明と誠意ある対応がカギとなります。

お客様:「注文してから30分も経つのに、まだ料理が来ないんだけど、どうなってるの?」

スタッフ:「大変お待たせしており、誠に申し訳ございません。ただいま、ご注文が立て込んでおりまして、お時間を頂戴しております。すぐに厨房に確認して、あとどれくらいでお持ちできるかご報告にあがりますので、もう少々お待ちいただけますでしょうか」

(状況を確認した後)

スタッフ:「お待たせいたしました。あと〇分ほどでお持ちできる見込みです。お急ぎのところ、大変申し訳ございません。よろしければ、お待ちの間にこちらのお飲み物はいかがでしょうか」

4. 予約に関するトラブル

「予約したのに席がない」といったトラブルは、お客様の期待を大きく裏切るものです。お店の信用を失いかねないため、全力で対応する姿勢を見せることが大切です。

お客様:「すみません、19時に予約した〇〇です」

スタッフ:「〇〇様、ご来店ありがとうございます。…大変申し訳ございません、お客様。ご予約のリストでお名前を確認できないのですが、失礼ですが、いつ頃、どちらからご予約いただけましたでしょうか」

(予約の事実が確認できた、またはその可能性が高い場合)

責任者:「〇〇様、この度は私どもの完全な手違いで、大変なご迷惑をおかけしております。誠に申し訳ございません。なんとかお席をご用意できないか、今すぐ調整いたしますので、恐れ入りますが5分ほどお時間をいただけないでしょうか」

(席が用意できない場合):「誠に申し訳ございません。本日満席でして、どうしてもお席のご用意ができませんでした。この度の不手際は、すべて私どもの責任です。もしよろしければ、近隣の系列店に空き状況を確認いたしますが、いかがでしょうか。重ねてになりますが、次回ご来店いただける際には、最大限のサービスをさせていただきますので、こちらのカードをお受け取りください」

5 食中毒が疑われるクレーム(電話など)

お客様の健康に関わる最も重大なクレームです。慎重かつ誠実な対応が絶対条件となり、必ず責任者が対応を引き継ぎます。

お客様(電話):「もしもし、昨日そちらで食事をした者ですが、夜から腹痛と吐き気が止まらないんです。食中毒じゃないでしょうか」

スタッフ(初期対応):「ご連絡ありがとうございます。お加減が悪いとのこと、大変ご心配でございます。すぐに責任者と代わりますので、少々お待ちいただけますでしょうか」

責任者:「お電話代わりました。責任者の〇〇です。この度は、大変つらい思いをさせてしまい、誠に申し訳ございません。お体の具合はいかがでしょうか。何よりもまず、お体を第一に考えていただきたく存じます。恐れ入りますが、すぐに医療機関を受診していただけますでしょうか」

責任者(続けて):「もしよろしければ、受診の結果が分かり次第、再度ご連絡をいただけませんでしょうか。私どもの方でも、昨日の食材や調理工程について、ただちに調査いたします。この度はご心配とご迷惑をおかけし、本当に申し訳ございません」

飲食店のクレーム対応で避けたいNG行動

良かれと思ってとった行動が、かえってお客様の怒りを増幅させてしまうことがあります。マニュアルには、避けるべきNG行動も明記しておきましょう。

感情的な対応や反論

お客様が興奮していても、こちらも感情的になってはいけません。冷静さを保ち、まずは相手の話を聞く姿勢を崩さないようにしましょう。「でも」「しかし」といった否定的な言葉から入るのも、お客様の感情を逆なでしてしまいます。

言い訳や責任転嫁

「忙しかったので」「〇〇さんがやったことなので」といった言い訳は、お客様をさらに苛立たせるだけです。お客様にとっては、店の内部事情は関係ありません。まずは組織としての非を認め、謝罪することが先決です。

その場しのぎの約束や嘘

できないことを「できます」と言ったり、不確かな情報を伝えたりするのは絶対にやめましょう。たとえば、安易に「全額返金します」と約束してしまうと、後で覆すことは難しくなります。その場しのぎの嘘が発覚すれば、信頼は完全に失われてしまいます。

お客様を放置したり、待たせすぎたりする

対応を後回しにしたり、たらい回しにしたりすると、お客様は「軽視されている」と感じ、怒りが増してしまいます。責任者に確認するなど、すぐに対応できない場合は、その理由と「〇分ほどお待ちいただけますか」といった見込み時間をきちんと伝えましょう。

アルバイトと社員の役割分担をマニュアルで明確にする

クレーム対応のすべてをアルバイトスタッフに任せるのは酷ですし、リスクも高まります。マニュアルでは、誰がどこまで対応するのか、役割分担をはっきりさせておくことが大切です。

アルバイトスタッフの役割は「初期対応」と「報告」

アルバイトスタッフの役割は、お客様からの最初の申し出を受け止め、丁寧にお話を聞き、一次的な謝罪をすることです。そして、その内容を正確に責任者へ報告することまでが仕事とします。

返金や難しい判断が求められる場合は、無理に自分で解決しようとせず、「責任者に対応を引き継ぎます」と伝えるように徹底させましょう。

社員・責任者の役割は「最終判断」と「解決」

報告を受けた社員や責任者は、状況を的確に判断し、返金、商品の交換、割引など、最終的な対応を決定します。とくにお客様の怒りが大きい場合や、金銭が絡む場合、悪質と疑われるクレームの場合は、必ず経験豊富な社員や責任者が前に出て対応することが、トラブルの拡大を防ぎます。

クレームを未然に防ぎ、店舗改善につなげる仕組み作り

クレーム対応マニュアルの最終的な目標は、クレームを減らし、サービス品質を向上させることです。そのための仕組みもマニュアルに組み込んでおきましょう。

クレームが発生したら、必ず日時、お客様の特徴、クレーム内容、対応結果などを記録用紙に記入するルールを設けます。そして、その記録を定期的にミーティングで共有し、「なぜこのクレームが起きたのか」「どうすれば防げたのか」を全員で考えます。

たとえば、「提供が遅い」というクレームが多発しているなら、厨房のオペレーションや人員配置を見直すきっかけになります。

このように、クレームをその場限りの問題で終わらせず、次への改善点を見つけるためのデータとして活用する姿勢が、お店をより良くしていくでしょう。

質の高いクレーム対応マニュアルは店の信頼を育てる

飲食店におけるクレーム対応マニュアルは、トラブル発生時のためだけでなく、スタッフを守り、お客様からの信頼を築くための土台となります。しっかりとした基本手順を定め、事例別の対応例を準備することで、スタッフは自信を持ってお客様と向き合えるようになるでしょう。

クレームの中には、お店の改善につながる有益な意見も含まれていることがあります。クレーム対応を個人のスキルに頼るのではなく、組織全体で情報を共有し、改善につなげる仕組みを構築すること。そのサイクルを回し続けることが、結果としてお客様に愛され、長く続くお店作りにつながるのではないでしょうか。


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