- 作成日 : 2025年9月22日
キッチンカーの図面作成ガイド!レイアウト例や保健所チェックポイント
キッチンカーの開業準備で多くの人が悩むのが「図面」の作成ではないでしょうか。内装の設計図と考えがちですが、これは保健所の営業許可を得るための大切な書類の一つです。何を書けばいいのか、手書きでも良いのか、といった疑問も多いでしょう。
この記事では、図面が営業許可に必要な理由から、作成前の準備、詳しい書き方、保健所の審査に通るレイアウト例まで解説します。
目次
キッチンカーの営業許可に「図面」が欠かせない理由
保健所がキッチンカーの営業許可を出す際、とくに重視するのが「定められた設備基準を満たしているか」という点です。図面は、その基準をクリアしていることを車両完成前に書面で証明するための役割を果たします。
保健所の担当者は、提出された図面を見て、シンクの数や給排水タンクの容量、換気扇の位置などが条例に合っているかを判断します。もし図面の段階で基準を満たしていなければ、製作を始めても許可は下りません。
キッチンカーの図面を作成することは、手戻りによる無駄な費用や時間の浪費を防ぎ、スムーズに許可を取得するために欠かせない工程です。
キッチンカーの図面作成前に確認すべき3つのポイント
キッチンカーの図面を書き始める前に、必ず押さえておくべき準備があります。これを怠ると、せっかく書いた図面が役に立たなくなることもあるため、慎重に進めましょう。
① 自治体ごとのルールを確認する
キッチンカーの営業許可に関するルールは、全国一律ではありません。給排水タンクの容量やシンクの数、設置場所といった設備基準は、営業する都道府県や市区町村の条例によって異なります。 たとえば、A県では80Lのタンクで許可が下りても、B市では200Lないと許可されない、といったケースは頻繁にあります。
必ず、営業したい地域を管轄する保健所のウェブサイトを確認するか、直接窓口に相談して、最新の正しい情報を入手しましょう。
② メニューと調理の流れを決める
どのようなメニューを提供するかによって、必要な厨房設備は大きく変わります。ドリンク提供がメインのカフェカーと、揚げ物や焼き物など本格的な調理を行うフードトラックでは、必要なコンロの数も冷蔵庫の大きさも全く異なります。
メニューと、その調理工程を実際にシミュレーションすることで、初めて必要な設備とそのサイズ、そして最適な配置が決まります。
③ 車の正確な寸法を測る
図面の基本となるのが、ベース車両の正確な寸法です。とくに大切なのが、厨房として使用できる荷室部分の内寸(縦・横・高さ)です。外寸ではなく、実際に設備を置けるスペースの寸法を正確にメジャーで測定しましょう。
この寸法がずれていると、計画通りに設備が収まらないという問題につながります。
キッチンカーの図面の作成方法
保健所に提出する図面は、専門家が作成したものでなくても大丈夫です。ここでは、主な作成方法を3つ紹介します。
手書きで書いてみる
多くの自治体では手書き図面でも受理されますが、一部ではCAD出力が推奨される場合もあります。方眼紙やコピー用紙に、定規や分度器を使って丁寧に書きましょう。設備の形は簡単な四角で描き、中に名称と寸法を記入すれば十分です。誰が見てもわかるように、はっきりとした線と文字で書くことが大切です。
無料ツールやアプリを使ってみる
パソコンでの作業に慣れているなら、無料のツールを使うのも良い方法です。デザインツールの「Canva」や、間取り作成ソフトの「Sweet Home 3D」などは、直感的な操作で比較的簡単に平面図を作成できます。手書きに自信がない方にはおすすめですが、正式な図面作成ソフトではないため注意が必要です。
プロの製作会社に任せる
キッチンカーの製作を専門業者に依頼する場合、図面の作成も一括で請け負ってくれることがほとんどです。その地域の保健所が求める基準を熟知しているため、最も確実で安心な方法といえるでしょう。費用はかかりますが、許可申請のサポートまで含めて対応してくれる業者も多くいます。
保健所に提出するために図面に記載すべき必須項目
保健所の審査を通過するためには、図面に必要な情報が漏れなく記載されている必要があります。主に「平面図」と「側面図(立面図)」の2種類があります。管轄の保健所にどちらを提出すればよいのか確認してください。
| 図面の種類 | 記載すべき主な項目 |
|---|---|
| 平面図 |
|
| 側面図(立面図) |
|
これらに加えて、搭載する厨房設備の一覧表(名称、メーカー、型番、寸法)を添付すると、より丁寧でわかりやすい申請書類になります。
なお、提出する用紙のサイズは、自治体によって異なり、A4またはA3サイズを求められることがあります。
保健所は図面のどこをチェックする?
保健所の担当者は、提出された図面から「食中毒などを防ぎ、安全な食品を提供できる構造か」を判断します。とくに厳しくチェックされるポイントを理解しておきましょう。
衛生設備は基準を満たしているか
キッチンカー内のシンクや給排水タンクなどの衛生設備について確認します。
- シンクの数とサイズ:
手洗い用と器具洗浄用が分かれているか、規定のサイズを満たしているか。 - 給排水タンクの容量:
自治体の条例で定められた容量(例:80L、200Lなど)を確保できているか。 - 温水供給設備:
洗浄用の温水が供給できる構造になっているか。
これらの設備は、食中毒予防の根幹をなすため、図面上で明確に確認できるよう記載する必要があります。
作業動線と衛生管理は考慮されているか
限られたスペースで効率よく、かつ衛生的に作業できるかもチェックされます。
- 作業動線:
「注文→調理→提供」の流れがスムーズか、スタッフが無理なく動けるスペースが確保されているか。 - 衛生区画:
食材を扱う清潔な場所と、洗い物などを行う汚染されやすい場所が適切に離れているか。 - 換気:
熱や煙、匂いを十分に排出できる換気扇が、コンロなどの熱源の上に適切に配置されているか。
必要な情報がすべて記載されているか
キッチンカーの図面は、言葉で説明しなくても車両の構造がすべてわかるように作成する必要があります。
- 寸法:
荷室の内寸から、各設備の大きさ、設備間の距離まで、必要な寸法が漏れなく記載されているか。 - 設備の名称と仕様:
冷蔵庫や冷凍庫の有無、給排水タンクの容量(L)など、設備の仕様が明確に記されているか。
キッチンカーの図面レイアウト例の考え方
ここでは、車両のサイズや提供メニューに合わせたレイアウトの考え方を2つの例で紹介します。
軽トラックベースのレイアウト
軽トラックは積載スペースが限られているため、作業動線をいかにシンプルにするかがポイントです。カフェやクレープ、ワッフルなど、使用する機材が比較的少ない業態に向いています。
レイアウトは、お客様から見て奥側(運転席側)に背の高い冷蔵庫や棚を設置し、手前のカウンターに沿ってコーヒーマシンやクレープ焼き器などの主な調理器具を配置するのが一般的です。
「注文を受ける→調理する→提供する」という一連の流れがスムーズに行えるよう、設備の配置を考えましょう。
1.5tトラックベースのレイアウト
1.5tトラックはスペースに余裕があるため、シンクを2槽~3槽設置したり、大型のフライヤーやコンロ台を置いたりと、本格的な調理に対応できます。複数のメニューを提供したり、複数人での作業もできるようになります。
たとえば、食材を保管する冷蔵庫や清潔な食器棚と、手洗いや洗い物をするシンク周りを離して配置するなど、衛生管理の観点を取り入れた設計が大切になります。
キッチンカーの図面作成に関するよくある質問
Q1:中古のキッチンカーを購入した場合も図面は必要ですか?
A1:はい、必要です。前の所有者が取得した営業許可は引き継げません。新しいオーナーとして、提供するメニューに合わせて営業許可を取り直す必要があります。そのため、中古車両の現在の設備配置を正確に記した図面を提出し、改めて保健所の検査を受けなければなりません。
Q2:図面を提出した後にレイアウトを変更できますか?
A2:原則として、できません。 営業許可は、提出された図面通りの設備配置であることを前提に交付されます。もし許可取得後にシンクの位置を変えたり、主な設備を増設したりした場合は、変更申請を行い、再度検査を受ける必要があります。 軽微な変更であれば問題ないこともありますが、自己判断せず、必ず事前に保健所に相談しましょう。
Q3:図面の縮尺は決まっていますか?
A3:厳密な縮尺の指定はありません。 ただし、誰が見ても全体のバランスや各設備の大きさがわかるように、ある程度正確な比率で描くことが望ましいです。図面の中に「この図は縮尺1/20です」といった注記を入れると、より丁寧な図面になります。
キッチンカー開業の許可には正確に図面を作成しよう
キッチンカーの図面は、内装の計画を立てるだけでなく、保健所の営業許可を取得し、安全なキッチンカーを製作するための設計図にあたります。手書きでも問題ありませんが、大切なことは、営業したい地域のルールを正確に理解し、必要な項目を漏れなく記載することです。
これから図面を作成する方は、まず管轄の保健所に相談することから始めましょう。そこで得た情報に基づいて正確な図面を作成することが、スムーズなキッチンカー開業につながるでしょう。
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