- 作成日 : 2025年9月22日
キッチンカーで公園に出店するには?許可や費用相場、募集情報の探し方を徹底解説
キッチンカーにとって公園は魅力的な出店場所ですが、営業には保健所に加え、公園管理者からの許可が必要です。公募で選ばれることが多く、申請には事前の準備が欠かせません。
この記事では、公園出店に必要な許可の種類、申請の流れ、費用、募集情報の探し方までを詳しく解説します。計画的な準備で、公園出店を実現させましょう。
目次
キッチンカーの公園出店に必要な2種類の許可
キッチンカーが公園で営業するためには、大きく分けて2種類の許可が必要です。一つは食品を扱う事業者として必須の「保健所の営業許可」、もう一つがその公園で営業するための「公園管理者の許可」です。
① 保健所の営業許可(飲食店営業)
保健所の営業許可は、キッチンカーで食品を調理・販売するために、事業の前提として欠かせない許可です。車両の設備(給排水タンクの容量、シンクの数、冷蔵庫の性能など)が、営業したい地域を管轄する保健所の定める基準を満たしている必要があります。
公園の出店者募集はこの営業許可が必要です。自治体によっては応募時点では予定証明で良い場合もあります。まずは自身のキッチンカーが、営業したいエリアの保健所基準をクリアしているかを確認することがスタートラインとなります。
② 公園管理者の許可(都市公園法に基づく許可など)
公園は公共の施設であり、そこで営利活動を行うには、その公園を管理する主体(市区町村の役所、都道府県の公園緑地事務所、指定管理者の公園協会など)から個別の許可を得る必要があります。
これは都市公園法に基づき、各自治体の条例で定められる「占用許可」「行為許可」などの手続きに基づいています。近年、公園の賑わい創出や利用者サービス向上のためにキッチンカーを誘致する動きが活発化しており、公募によって出店者が選ばれるのが一般的です。
その他の資格や届出
上記の2つの許可に加えて、キッチンカー事業者として事前に取得しておくべき資格と、使用する設備によっては必要となる届出があります。これらも公園出店の応募条件に含まれることがほとんどです。
食品衛生責任者の資格
キッチンカー1台につき1名以上、「食品衛生責任者」の資格を持つ人を置くことが法律で義務付けられています。食中毒などを防ぎ、衛生管理を徹底するための資格で、各都道府県の食品衛生協会が実施する養成講習会(1日程度)を受講すれば取得できます。調理師や栄養士などの資格を持っている場合は、講習が免除されます。
火気使用に関する届出(消防署)
プロパンガス(LPガス)を熱源とするコンロやフライヤーなど、火を使用する設備をキッチンカーに設置する場合、管轄の消防署への届出が条例で義務付けられていることがほとんどです。「火を使用する設備等の設置届出書」といった書類の提出が必要になります。これは火災予防のための重要な手続きですので、車両製作の前に必ず出店をする地域の自治体に相談しましょう。
車検など車両に関する法的手続き
キッチンカーは公道を走行する車両であるため、当然ながら道路運送車両法に基づいた車検(自動車検査登録制度)に合格している必要があります。キッチンカーは厨房設備などを搭載した「特種用途自動車(8ナンバー)」として登録されることが多く、その構造が保安基準に適合している証明が「車検証」です。公園の出店許可申請時には、この車検証のコピーの提出が必須であり、有効期間内であることが大前提となります。
キッチンカーが公園の営業許可を得るまでの5ステップ
公園の出店許可は、管理者が設定した公募期間内に応募し、審査を経て選ばれるのが一般的です。ここでは、許可を得るまでの詳しい流れを5つのステップで解説します。
STEP1:出店したい公園の管理者を特定する
まず、出店したい公園がどこによって管理されているかを把握します。公園の入り口にある看板や、インターネットで「〇〇公園 管理者」と検索すれば、管理者が市区町村の公園課なのか、都道府県の土木事務所なのか、あるいは管理を委託された民間の公園協会(例:東京都公園協会)なのかがわかります。
管理者のウェブサイトには、公園利用に関する条例や規則が掲載されていることも多いので、一度目を通しておくとよいでしょう。
STEP2:募集要項(公募情報)を確認・入手する
管理者が特定できたら、その管理者のウェブサイトを定期的にチェックし、キッチンカーの出店者募集(公募)情報が出ていないかを確認します。「お知らせ」「事業者向け情報」「公募・入札情報」といった箇所に掲載されることが多いです。
募集期間、出店条件(出店可能日、時間、場所)、提出書類、選考方法などが記載された「募集要項」や「仕様書」をダウンロードまたは窓口で入手しましょう。
STEP3:申請書類を作成・提出する
募集要項に従い、申請に必要な書類を準備します。不備があると審査の対象外になることもあるため、慎重に作成しましょう。必要な書類は募集場所によって異なりますが、主に以下のようなものが求められることがあります。
- 申請書(指定様式):誤字脱字なく、正確に記入する。
- 保健所の営業許可証のコピー:有効期限内のものを提出。
- 事業計画書、または企画提案書:熱意や安全への取り組みなど詳しい内容で作成する。
- メニュー表:提供する全メニューの写真、価格、主な原材料、アレルギー表示を明記。公園の利用者に合ったメニュー構成になっているかが評価される。
- キッチンカーの仕様がわかる書類:車検証のコピー、車両の四方がわかる写真、厨房設備の配置がわかる図面などを求められることがある。
- 食品衛生責任者の資格証のコピー:資格者の氏名がわかるようにする。
- 納税証明書:税金の滞納がないことを証明するために求められる場合がある。
STEP4:審査・選定(面接がある場合も)
提出された書類を基に、公園管理者が審査を行います。審査基準は、公園のコンセプトとの合致度、メニューの魅力、価格の妥当性、衛生管理体制、過去の営業実績など多岐にわたります。
応募者が多い人気の公園では、書類審査を通過した事業者を対象に、プレゼンテーションや面接が課されることもあります。面接では、事業への熱意や人柄、トラブル発生時の対応力なども見られます。
STEP5:許可証の交付と出店料の支払い
審査に合格すると、出店許可の内定通知が届きます。その後、管理者との間で契約手続きを行い、許可証が交付されます。指定された期日までに出店料を支払うことで、正式に公園での営業を始められます。許可期間や更新手続きについても、この時点で必ず確認しておきましょう。
キッチンカーの公園出店にかかる費用・場所代の相場
公園の出店料(場所代)は、公園の規模や場所、管理者の方針によって異なります。「無料」で出店できるケースは無いと考えてよいでしょう。料金体系は主に2種類あり、これらを組み合わせた形もあります。
- 固定料金制
売上に関わらず、「1日あたり〇〇円」「1ヶ月あたり〇〇円」といった形で料金が決められている方式です。1日あたり2,000円~10,000円程度が相場ですが、都心の一等地にある大規模公園では1日2万円以上になることもあります。売上が少なくても一定の費用がかかりますが、大きく売り上げれば利益率が高くなるメリットがあります。 - 売上歩合制
売上の10%~20%など、売上に応じた割合の金額を支払う方式です。売上が少ない日の負担は軽くなるため、出店リスクを抑えられます。一方で、大きく売り上げた日は支払いも多くなります。最低出店料が設定されている(例:売上の15% or 3,000円のどちらか高い方)場合もあります。
このほか、出店料とは別に、公園の電源設備を使用する場合は別途電気代(1日1,000円~2,000円程度)がかかることもあります。募集要項で料金体系をしっかり確認し、収支計画を立てることが大切です。
キッチンカーの公園出店・許可に関する注意点
公園は誰もが利用する公共の場であるため、出店には特有の注意点があります。ルールを守れない事業者は、許可を取り消されることもあるため、細心の注意を払いましょう。
発電機の騒音と排気ガスへの配慮
公園は静かに過ごしたい利用者も多いため、発電機の騒音は大きなトラブルの原因になることがあります。できるだけ静音タイプの発電機(インバーター式など)を使用し、排気ガスがお客様や公園の利用者の迷惑にならないよう、設置場所や向きを工夫しましょう。
公園によっては、発電機の使用自体が禁止され、電源のレンタルが必須の場合や、使用できる発電機の騒音レベル(db)に上限が設けられている場合もあります。
火気の取り扱いと安全管理
プロパンガスなど火気を使用する場合は、業務用消火器の設置はもちろん、火災予防に関する条例を遵守しなければなりません。また、公園の植栽や施設に損害を与えないよう、十分な注意が必要です。
出店場所の地面が芝生の場合は、コンパネや養生シートを敷くなどの対策が求められることもあります。万が一の事故に備え、PL保険(生産物賠償責任保険)への加入を義務付けている公園がほとんどです。
提供メニューとゴミ処理のルール
公園によっては、利用者の安全や環境への配慮からアルコール類の販売が禁止されていたり、カラスが集まりやすいなどの理由で提供できるメニューに制限があったりします。
また、営業で出たゴミの処理は、事業者の責任においてきちんと行うのがルールです。お客様が利用した容器などを回収するためのゴミ箱を複数設置し、持ち帰って処分するルールを徹底しましょう。ゴミの分別や周辺の清掃も、公園管理者からの評価につながる大切なポイントです。
キッチンカーの公園出店の審査に通るには?
人気の公園では、出店枠に対して多くの応募があります。その中で選ばれるためには、他の事業者との差別化を図り、公園管理者にとって「ぜひ出店してほしい」と思われるような魅力をアピールすることが欠かせません。
公園の雰囲気や客層に合わせる
その公園が「ファミリー層が多い憩いの場」なのか、「スポーツを楽しむ若者が集まる場所」なのかをリサーチし、ターゲットに合ったメニューを提案することが大切です。たとえば、ファミリー層が多い公園であれば、子ども向けのメニューやアレルギー対応をアピールすると評価が高まります。
メニューの独自性で魅力を伝える
ありきたりのメニューではなく、その公園でしか食べられないような独自性や、地元の食材を使っているといったストーリー性があると、審査員の目に留まりやすくなります。写真映えする「SNS映え」メニューも、公園のPRにつながるとして歓迎される傾向にあります。
安心・安全への取り組みを具体的に示す
「衛生管理を徹底します」という抽象的な言葉だけでなく、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理計画に基づき、〇〇と〇〇を実施します」「万が一の食中毒に備え、〇〇円を補償するPL保険に加入済みです」といったように、実際の取り組みを記述するよう心がけましょう。
公園を一緒に盛り上げる姿勢を見せる
場所を借りて商売をする、という姿勢だけでなく、「キッチンカーの出店を通じて公園の賑わいを創出し、利用者の満足度向上に貢献したい」という意欲を示すことが大切です。公園が主催するイベントへの協力姿勢を見せるなど、良好なパートナーシップを築ける事業者であることが伝わると、好印象を与えます。
公園出店におすすめのメニューと注意点
公園という特別なロケーションで成功するためには、メニュー選びも戦略的に行いましょう。
公園で売れやすいメニューの傾向
- ワンハンドで手軽に食べられるもの:
フランクフルト、唐揚げ、フライドポテト、クレープ、チュロスなど、ベンチに座ったり、歩きながらでも気軽に食べられるメニューは定番の人気です。 - 季節感のあるメニュー:
夏はかき氷や冷たいドリンク、冬は温かいスープやホットチョコレートなど、季節や気候に合わせたメニューは売上が伸びやすいです。 - 子ども向け・ファミリー向けメニュー:
子どもが喜ぶポテトや、親子でシェアできるようなセットメニューは、ファミリー層が多い公園ではとくに効果的です。 - ピクニック気分を盛り上げるメニュー:
おしゃれなサンドイッチや、本格的なコーヒー、こだわりのレモネードなど、公園での時間をより豊かにする少し特別なメニューも、公園の雰囲気とマッチします。
メニューに関する注意点
提供するメニューを決める際には、公園のルールや環境をふまえる必要があります。たとえば、風で飛び散りやすい粉物(きな粉など)や、匂いが強すぎるメニューは敬遠されることがあります。また、多くの人が集まる場所だからこそ、メニュー表にはアレルギー表示をわかりやすく記載するといった配慮が、お店の信頼につながります。
キッチンカーの公園許可(募集)情報の探し方
公園での出店は、公募情報を見つけられるかどうかが最初の関門です。以下の方法で、アンテナを高く張っておきましょう。
- 自治体や公園協会のウェブサイトを定期的に確認する
確実な方法です。「〇〇市 キッチンカー 募集」「都立公園 キッチンカー 公募」などのキーワードで検索し、該当する自治体や公園協会のウェブサイトをブックマークして、定期的にチェックする習慣をつけましょう。 - キッチンカーのポータルサイトやSNSをフォローする
キッチンカー専門の出店場所マッチングサイトや、同業者が集まるSNSグループでは、全国の公募情報が共有されることがあります。 - 直接問い合わせてみる
募集が出ていないなくても、「今後、キッチンカーの公募予定はありますか?」と管理者に直接問い合わせてみるのも一つの手です。熱意が伝わり、募集が出た際に声をかけてもらえるかもしれません。
公園のルールを守り、キッチンカーの許可を得て出店を成功させよう
キッチンカーにとって公園は、多くの集客が見込める魅力的な出店場所ですが、営業するには「保健所の営業許可」に加えて、「公園管理者の許可」が欠かせません。この許可は、自治体や公園協会などが行う公募に応募し、審査を経て選ばれるのが一般的です。
公園という公共の場にふさわしい事業者であると認めてもらうためには、事業計画の段階から、騒音、安全、ゴミ処理といった問題にどう向き合うかをはっきりさせておきましょう。募集情報をこまめにチェックし、公園のコンセプトに寄り添い、ルールとマナーを遵守する姿勢をアピールすることが、数あるライバルの中から選ばれるための第一歩になるでしょう。
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