- 更新日 : 2025年6月19日
マイナ保険証とマイナンバーカードの違いとは?登録の確認方法・切り替えの注意点も解説
2024年12月、現行の健康保険証が新規発行を終了し、マイナ保険証への移行が本格化しています。この移行によって、人事・労務業務にもさまざまな影響が生じるでしょう。
本記事では、マイナ保険証とマイナンバーカードの違いや、登録状況の確認方法・切り替え時の注意点について解説します。従業員対応に備えるために、参考にしてください。
目次
マイナ保険証とマイナンバーカードの違い
マイナ保険証とマイナンバーカードは見た目は同じですが、機能や役割が異なります。以下では、それぞれの特徴や役割を解説します。
マイナンバーカードとは
マイナンバーカードは、下記の情報が記載された公的な本人確認書類です。
- 氏名
- 住所
- 生年月日
- 性別
- 顔写真
裏面には12桁の個人番号(マイナンバー)が記載されており、ICチップ内には電子証明書が搭載されています。電子証明書によって、e-Taxの申告やマイナポータルの利用、コンビニでの各種証明書取得など、さまざまなオンライン行政手続きが可能になります。
2024年時点で、国民の約8割がマイナンバーカードを申請済みとされており、社会生活に欠かせないカードです。
企業においては、入社時の本人確認や、社会保険・税関連手続きなどに活用されるため、重要な労務管理書類のひとつとして位置づけておくとよいでしょう。
参考:
マイナンバーカード総合サイト|マイナンバーカードについて
デジタル庁|マイナンバーカードとは
マイナンバーカード交付状況について
以下の記事では、マイナンバーについて詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
マイナ保険証とは
マイナ保険証とは、マイナンバーカードに健康保険証の機能を追加したものです。見た目は通常のマイナンバーカードと同じですが、あらかじめ「健康保険証利用登録」を行っておくことで、医療機関や薬局での保険証として使用できます。
登録は任意です。しかし、マイナ保険証を利用することで、薬剤情報や特定健診の結果などを医療機関と正確に共有でき、医療の質の向上にもつながります。
従業員がマイナ保険証に登録済かどうかによって、保険資格の確認方法や医療機関での受診トラブルの有無が左右されます。そのため企業は、入社時のヒアリングや案内を通じて、事前に状況を把握し、適切に対応することが重要です。
参考:
厚生労働省|マイナンバーカードの健康保険証利用について
デジタル庁|マイナンバーカードの健康保険証利用
以下の記事では、マイナ保険証について詳しく解説していますので、気になる方はご参考ください。
マイナ保険証とマイナンバーカードの見た目に違いはある?
マイナ保険証とマイナンバーカードは、見た目には違いがありません。どちらも同じカードを使用しており、外観からは「健康保険証としての機能が有効か」は判別するのは不可能です。
両者の違いは、ICチップ内の登録情報によって管理されています。企業側が登録の有無は確認できませんが、入社時に従業員へマイナ保険証の利用登録が済んでいるかを確認し、トラブル防止に備えることが望ましいです。
従来の健康保険証はいつまで使える?
2024年12月から健康保険証の制度が大きく変わり、マイナ保険証の利用が推進されています。ここでは、従来の保険証がいつまで使えるのか、切り替えの義務や対応策について解説します。
2024年12月から健康保険証の新規発行は停止
厚生労働省の発表により、2024年12月2日をもって現行の健康保険証の新規発行は原則として停止されました。マイナンバーカードと、保険証機能を一体化した「マイナ保険証」への普及促進を目的とした政策です。
ただし、すでに所持している健康保険証は、記載された有効期限まで使用可能です。有効期限の記載がない場合でも、制度上の上限として2025年12月1日まで使用できる猶予が設けられています。
企業としては、従業員が保有する保険証の有効期限を把握し、必要に応じて切り替えの案内を行う対応が求められます。
参考:厚生労働省|マイナンバーカードの健康保険証利用について
マイナ保険証への切り替えは義務?
マイナ保険証への切り替えは、現在のところ義務ではなく、任意登録とされています。マイナンバーカードを保有し、所定の手続きで「健康保険証利用登録」を行えば、マイナ保険証として利用可能です。
とはいえ、医療機関の多くが今後マイナ保険証を前提とした受付対応に移行する見込みであり、実質的には切り替えを推奨されている状況です。
マイナンバーカードを持っていないとどうなる?
マイナンバーカードを持っていない、またはマイナ保険証の登録をしていない従業員には、加入している医療保険者から「資格確認書」が交付されます。書類を医療機関に提示することで、保険診療を受けられます。
申請手続きは不要で、保険者が自動的に交付する仕組みです。企業は、マイナ保険証未登録の従業員にも、資格確認書で医療が受けられることを伝え、不安を取り除く対応をするとよいでしょう。
参考:厚生労働省|資格確認書について(マイナ保険証を使わない場合の受診方法)
マイナ保険証の登録状況を確認する方法
マイナンバーカードを保有していても、健康保険証として利用するには別途「利用登録」が必要です。そのため、人事・労務担当者としては、従業員がマイナ保険証の登録を済ませているかを把握しておくことが重要です。
ここでは、従業員自身による確認方法や、企業側での対応方針について詳しく解説します。
【参考】デジタル庁|2024年12月のマイナンバーカードの健康保険証(以下、マイナ保険証)利用への移行について
従業員本人がマイナ保険証の登録状況を確認する方法
マイナ保険証の登録状況は、マイナポータルで本人が確認可能です。
まず、マイナポータルにログインし、トップ画面の「健康保険証」メニューを開きます。「登録済」と表示されていれば、マイナ保険証の利用登録がされています。何も表示されていない場合は、利用登録はされていません。
また、医療機関や薬局に設置された顔認証付きカードリーダーにマイナンバーカードをかざす方法でも、登録状況を確認できます。未登録の場合は、自動的に登録画面に切り替わるので、確かめてみましょう。
スマートフォンを使用する場合は、「マイナポータルアプリ」をインストールの上、ICチップの読み取りと暗証番号の入力によってログインする必要があります。
参考:デジタル庁|2024年12月のマイナンバーカードの健康保険証(以下、マイナ保険証)利用への移行について
企業側が確認できる範囲と実務上の注意点
企業は、従業員のマイナ保険証登録状況を直接確認する手段を持っていません。個人情報保護の観点からも、企業側が登録の有無を一方的に把握することはできないため、対応には注意が必要です。
人事・労務部門としては、「保険証の提示方法に関するヒアリング」や「登録方法の案内書面の配布」などの間接的な確認が可能です。たとえば、入社時に「マイナ保険証の利用予定有無」を確認します。必要であれば、登録方法を同封して案内することで、実務上のトラブルや確認漏れを未然に防げます。
入社時に登録状況を確認するための対応
今後は、保険証のコピーを提出してもらうだけでなく、マイナンバーカードの所持有無やマイナ保険証の登録状況を確認する体制が求められます。確認手順をあらかじめ文書化し、マニュアルとして整備しておくと、安心して対応できます。
また、マイナ保険証を利用していない従業員には「資格確認書」が交付されるため、取り扱いに関する社内ルールの整備も必要です。従業員には、マイナ保険証の登録メリットや手順をまとめた周知文書を作成・配布することで、登録促進につなげられるでしょう。
マイナ保険証の登録方法
マイナ保険証として利用するには、マイナンバーカードを取得するだけでは不十分です。別途「健康保険証利用の登録」手続きが必要となります。
登録方法は、下記の3パターンあります。
登録方法 | 手続きの流れ |
---|---|
顔認証付きカードリーダー (医療機関・薬局) | 受付端末にマイナンバーカードを置き、画面の案内にしたがう |
マイナポータル (PC・アプリ) | マイナポータルにログインし、健康保険証メニューから登録する |
セブン銀行ATM | 対応ATMにカードを挿入し、画面の指示にしたがって操作する |
登録が完了すると、医療機関での受付や薬局での処方時に、保険資格の確認がスムーズに行えます。
マイナ保険証のメリット
マイナ保険証は、マイナンバーカードに健康保険証の機能を付加することで、医療現場での利便性や制度上の優遇措置を受けられる仕組みです。ここでは、利用者にとって実感しやすいメリットを3つ解説します。
診療情報の共有で医療の質が向上する
マイナ保険証を使って医療情報の提供に同意すると、医師や薬剤師が下記の情報をリアルタイムで確認できます。
- 診療歴
- 薬剤情報
- 特定健診の結果
そのため、初診の医療機関でも、患者の過去の診療内容を把握した上で治療が可能です。結果、重複処方の回避や適切な治療につながり、医療の質が向上します。
転職や引越しなどでかかりつけ医が変わることの多い方は、医療情報の持ち運びが不要になる点も魅力です。
手続きが簡略化され、事務負担が軽減される
従来、高額療養費制度を利用するには「限度額適用認定証」の事前申請が必要でした。しかし、マイナ保険証を使えば、限度額の自動判定が行われるため、窓口での一時的な高額支払いを避けられます。
重篤な病気や長期の治療などで医療費がかさむケースでも、手間をかけずに経済的負担を軽減できる制度です。企業は、従業員に「立替不要」の仕組みを説明することで、医療費の不安を和らげるサポートが可能になります。
参考:厚生労働省|マイナンバーカードの健康保険証利用のメリット
転職や転居後もすぐ使える利便性がある
通常、転職や引越しなどで保険証を切り替える場合、新しい保険証の発行までに数日から数週間かかります。
しかし、マイナ保険証は新たな保険資格と自動で連携されるため、切り替えを待たずにそのまま使用可能です。
そのため、入社直後の「保険証が届かず医療機関にかかれない」といったトラブルも回避できます。人事担当者にとっても、安心して従業員の医療対応を支援できるメリットの多い仕組みです。
マイナ保険証のデメリット・注意点
マイナ保険証には多くのメリットがありますが、利用にあたって注意すべき点も存在します。とくに個人情報の保護や電子証明書の有効期限管理は、企業も従業員も意識しておくべき重要なポイントです。
以下では、マイナ保険証を活用する上で知っておくべきデメリットと注意点を解説します。
情報漏洩や紛失のリスクに注意する
マイナ保険証として利用されるマイナンバーカードには、氏名や住所など、多くの個人情報が記録されています。そのため、カードを紛失した場合のリスクは、従来の健康保険証よりも大きいでしょう。
ICチップには、不正読み取り防止機能が搭載されていますが、完全に安全とは言い切れません。万が一の紛失・盗難に備えて、カードの一時利用停止や再発行の手順を案内できる体制を社内で整えておくと安心です。
以下の記事では、マイナンバー制度で必要な個人情報漏洩対策について詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
電子証明書の有効期限管理が必要になる
マイナンバーカードの本体の有効期限は10年です。ただし、内部に搭載されている電子証明書は、5年の有効期限が設定されています。
この電子証明書のうち、「利用者証明用電子証明書(4桁の暗証番号)」は、マイナポータルへのログインやマイナ保険証の利用時に必要です。また、「署名用電子証明書(英数字6~16桁)」は、e-Taxでの本人確認に使われます。
電子証明書が有効期限切れになると、マイナ保険証としての機能も利用できなくなるため注意が必要です。従業員が有効期限切れに気づかず、医療機関でトラブルとなるケースも考えられます。
そのため、人事・労務部門では定期的に更新時期の確認を促す通知を行い、注意喚起の体制を整備しておくことが推奨されます。
参考:厚生労働省|マイナ保険証利用時には電子証明書の有効期限をご確認ください!
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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