- 更新日 : 2024年12月24日
過労死とは?定義や症状および防止策を解説
繁忙期や納期の短縮などにより、どうしても長時間労働を行わざるを得ない状況となることもあるでしょう。しかし、長時間の労働は労働者の心身の健康を蝕み、最悪の場合は過労死という痛ましい結果にもつながってしまいます。
当記事では、過労死の定義や症状、防止策などについて解説を行っています。ぜひ参考としてください。
目次
過労死とは?
過労死とは、仕事を行ううえで心身に掛かった過剰な負荷により発症した脳疾患や心臓疾患、精神障害を原因とする労働者の死亡を指す言葉です。過労死等防止対策推進法第2条には、過労死の具体的な定義が示されています。過労死等防止対策推進法による過労死の定義は以下の通りです。
- 業務において、過剰な負荷を受けたことにより、発症した脳血管疾患および心臓疾患を原因とする死亡
- 業務において、強度の心理的な負荷を受けたことにより、発症した精神障害を原因した自殺による死亡
また、同法では死亡に至らない脳血管疾患や心臓疾患、精神障害を含めて過労死等と総称しています。
厚生労働省の「令和4年版過労死等防止対策白書」によれば、勤務を原因または動機のひとつとする自殺者数の割合は、自殺者総数のうち9.2%(令和3年)です。平成10年以降、自殺者数は14年間連続して3万人超を記録していましたが、平成22年以降は減少傾向が見られます。しかし、自殺者総数が減少傾向にある一方、勤務を原因等とする自殺者数の割合については、増加または横ばいの傾向が見られることには注意しなければなりません。
勤務が原因であるからといって、全てが過労死と認定されるわけではありません。しかし、企業における過労死対策の重要性を示すデータといえるでしょう。過労死は、死亡した労働者の家族へ多大な影響を与えます。また、企業にとっても訴訟問題に発展するリスクがあり、防止策を講ずることが重要となります。
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過労死の労災認定基準
仕事を行ううえで発症した疾患が原因の死亡であっても、全てが過労死と認定されるわけではありません。過労死として労災認定を受けるためには、厚生労働省が定める基準を満たすことが必要です。
脳・心臓疾患
脳疾患や心臓疾患は、通常長い期間を掛けて進行および悪化するといった自然の経過をたどって発症します。しかし、業務によって過剰な負荷が掛かることで、自然経過を超えて悪化する場合もあるでしょう。そのため、自然経過など通常の経緯ではなく、業務と関連して発症した脳疾患や心臓疾患が原因であると認められる死亡の場合に、過労死と認定しています。労災認定の対象となる疾病は、以下の通りです。
脳血管疾患
- 脳内出血
- くも膜下出血
- 脳梗塞
- 高血圧性脳症
虚血性心疾患等
- 心筋梗塞
- 狭心症
- 心停止
- 重篤な心不全
- 大動脈解離
また、業務との関連性の判断においては、対象となる疾病が以下のような過重な業務等によって引き起こされたかが重要な要素となります。
- 発症の直前から前日までの間に異常な出来事(人身事故の目撃や、著しい酷暑下での労働など)に遭遇した
- 発症から近接した時期(おおむね1週間)に、特に負荷の強い過重業務に就労した
- 発症する前の長期間(おおむね6か月)において、特に疲労が蓄積する過重な業務に就労した
上記のような過重な業務や異常な出来事により発症した場合には、業務との関連性が強いと判断される仕組みです。また、後述する過労死ラインのような長時間労働があった場合には、発症と業務の関連性が強いと判断されます。ただし、過労死ラインのような長時間労働がなくとも、労働時間以外の負荷要因(心理的負荷や身体的負荷を伴う業務への従事など)を考慮したうえで、労災認定される場合も存在します。
精神障害
本来自殺のような故意による事故は、労災保険の給付対象となりません。しかし、自殺であっても、仕事の失敗や過剰な重圧を受けたことにより発症した精神障害を原因とする場合には、労災認定される可能性があります。
対象となる精神障害は、「生命に関わる事故への遭遇」「心理的に極度の負担が伴う業務」により発症した精神障害や行動障害および、これらに付随する疾病とされています。業務に関連して発症する可能性のある精神障害の代表例としては、うつ病や急性ストレス反応などが挙げられるでしょう。
精神障害による労災認定には、対象となる精神障害等の疾病を発症していることに加え、以下のような認定基準が設けられています。
- 対象となる疾病を発症する前のおおむね6か月間において、業務による強い心理的負荷があったと認められること
- 業務によることのない心理的負荷や、労働者本人の個体側要因(精神病の既往歴の存在や、アルコール依存症など)によって発症したものでないこと
業務とは関係のない親族との金銭トラブルや、アルコール依存症などにより発症した精神障害等を原因とする自殺では、労災認定されません。また、業務によって与えられる心理的負荷は、「業務による心理的負荷評価表」において具体的に定められています。
評価表には、「事故や災害の体験」や「仕事の失敗」、「役割の変化」など出来事の類型と具体的出来事が定められており、類型ごとの心理的負荷強度と具体例が記載されています。
一例を挙げると、業務に関連して重大な人身事故を引き起こした場合で、相手に原職への復帰ができなくなるような後遺症を負わせたのであれば、心理的負荷は「強」と判断されます。また、業務による心理的負荷評価表は、令和5年9月に昨今の社会情勢の変化を鑑みた見直しが行われ、カスタマーハラスメントなどが具体的出来事に追加されていることに留意してください。
上記以外の疾患
労災の対象となる疾病は脳疾患や心臓疾患、精神障害だけではありません。労働基準法施行規則別表には、業務上の負傷を原因とする疾病や、化学物質等を原因とする疾病などが具体的に列挙されています。
具体的に列挙されていない疾病は、その他の業務に起因した疾病に該当すれば労災認定されることになります。そのため、脳疾患や心臓疾患、精神障害などを原因とする死亡ではなくとも、過労死と判断される可能性はあるでしょう。
また、近時は、副業や兼業が盛んに行われており、ひとつの事業場だけで働く労働者ばかりではありません。そのような複数の事業場で働く労働者を対象として、「複数業務要因災害」と呼ばれる制度が設けられています。
複数業務要因災害は、複数の事業場で働く労働者が、負傷や死亡した場合において、複数の就業先における業務上の負荷を総合評価することで業務との関連性を判断します。そのため、ひとつの事業場での負荷のみでは労災認定されない場合であっても、2つ以上の事業場における負荷の総合判断で、労災認定される場合もあり得ます。
過労死に関わる「過労死ライン」とは?
労災認定において重要となる要素に「過労死ライン」が存在します。過労死ラインは、健康障害を引き起こす可能性が高い時間外労働時間を指した言葉です。
長時間の過重な労働は、疲労を蓄積させる最も大きな要因となり、脳疾患や心臓疾患の発症と関連性が強いとの医学的知見も得られています。過重な負荷の有無の判断における労働時間の評価基準は以下の通りです。
- 発症の前1か月ないし6か月の間に、1か月あたり45時間を超えた労働が認められない場合は評価を「弱」とする
- 発症の前1か月間に100時間、または発症の前2か月ないし6か月にわたり、1か月あたり80時間を超える労働が認められる場合は評価を「強」とする
※時間外労働時間が45時間を超えて、長くなればなるほど業務と発症の関連性が強くなると判断され、労災認定される可能性も高まる
この評価基準を過労死ラインと呼んでいます。特に単月で100時間、複数月平均80時間超の時間外労働がある場合には、業務と発症に強い因果関係があると認められ、「過労死ラインを超えた」と評価されるでしょう。
法定労働時間は、1日8時間、週40時間となります。また、法の許容する時間外労働の上限が原則として月45時間、年360時間であることを考えても、過労死ラインを超えた労働がいかに労働者の負担になるか分かるのではないでしょうか。
過労死が生まれてしまう原因
過労死が引き起こされる原因を知ることは、適切な予防策の立案にも役立ちます。本項では原因を項目ごとに解説しますので、しっかりと把握してください。
責任感が強い・人に頼めない
過労死に至る方は、責任感が強い傾向があります。このような方は、自分で引き受けた仕事は、自分でやり遂げなければならないと考え、自発的に長時間労働や休日出勤などを行ってしまいます。自分のこなせる分量を超えた仕事であっても、その責任感の強さから上司や同僚、部下などに頼むことができず、結果として過労死に至るまで働いてしまうのです。
仕事量が多い・業務が1人に偏っている
仕事量が多ければ、単純に処理する時間も多く必要となります。処理に多くの時間を必要とする量の仕事であれば、必然的に長時間労働と結びついてしまいます。また、会社や部署全体でみれば問題のない仕事量であっても、特定の個人にだけ多く割り振られているような場合もあるでしょう。このような仕事量の不均衡もまた、特定個人に長時間労働を強いる結果となり、過労死と結びついてしまいます。
裁量労働制など制度の問題
新商品や新技術の開発などの業務では、裁量労働制を採用している場合もあります。裁量労働制は、労働者自身が業務遂行手段や、時間の配分を決定できるため、上手く利用すればワークライフバランスの向上や、業務効率化も図れます。
しかし、裁量権がなく時間配分の決定もできない名ばかりの裁量労働制ともいえる制度の悪用がみられることも事実です。このような悪用は、時間外労働手当の削減を目的としており、長時間労働を強いられている場合も多くなっています。
また、裁量権や決定権があっても成果を出すために自発的な長時間労働を行う場合もあるでしょう。制度上の問題から長時間労働が発生し、過労死につながる場合もあるため、安易に裁量労働制を採用するべきではありません。
過労死を防ぐための方法
過労死は、労働者の家族にとって悲劇であると同時に、会社にとっては労働力の喪失や訴訟リスクの発生にもつながります。では、どのようにすれば過労死の発生を防ぐことができるのでしょうか。
体調が悪い場合は早めに病院で診察を受ける
病気は早期発見・早期治療が鉄則です。これは、過労死を引き起こす脳疾患や心臓疾患などでも変わることはありません。精神障害であっても、早期に医師による適切な治療を受けられれば、自殺という最悪の事態を避けられるでしょう。
会社には、原則として年1回の健康診断を実施する義務があります。しかし、次回までの1年間に急激に病状が悪化する可能性もあり、過労死を防ぐためには会社によるより密なケアが必要となるでしょう。定期の健康診断だけでなく、より頻度を高めた健康診断の実施や、病院での診察を受けやすくするための特別休暇の創設なども検討してください。
労働時間を削減する・適切に管理を行う
過労死ラインが示すように長時間労働は、過労死と密接な関係を持つ要素です。そのため、労働時間を削減し長時間労働の発生を抑制することは、過労死の防止に有効な施策となります。
労働時間を削減するためには、正確な労働時間の把握をはじめとした適切な労務管理が不可欠です。労働時間を把握することで、仕事量の不均衡や業務遂行における無駄の発見につながります。また、適切に有給休暇を消化させることで、心身をリフレッシュさせることが可能です。
働き方改革関連法案の施行により、労働時間の客観的把握や年5日の有給休暇消化が義務付けられました。これらの義務を果たすことは、労働者の心身の健康を保つことにもつながります。誠実に義務を履行し、働きやすい環境整備を行うことで過労死を防止しましょう。
相談窓口を設置する
仕事における悩みを相談できず、精神障害を発症してしまうケースもみられます。また、体調不良を感じていても、なかなか言い出せない場合もあるのではないでしょうか。
過労死のような重篤な結果につながる病気であっても、早期に発見できれば治療可能な場合も多々あります。そのため、早期発見につながる相談窓口を設置することは、過労死対策として有効な手法といえるでしょう。もちろん、気軽に利用できなければ意味がないため、窓口担当者の人選に気を配り、相談者を保護する制度を設けるなどの配慮が必要となります。社内の窓口設置が難しければ、外部窓口として病院やクリニックを利用することも検討してください。
適切な管理で過労死の防止を
現在の日本は、少子高齢化の進展により労働力人口の減少傾向が続いており、人材獲得競争は激化の一途をたどっています。そのような状況にあって、過労死の原因となった会社での勤務を希望する求職者はまずいないでしょう。過労死は訴訟に発展する場合も多く、会社のイメージ低下は避けられません。当記事で解説した過労死を引き起こす原因と対策を知ることで、適切な管理につなげ、過労死発生を予防しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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