- 更新日 : 2026年1月30日
雇用保険は週20時間未満なのに加入できるのか?例外ケースと誤加入の原因を徹底解説
雇用保険は原則週20時間以上だが、契約内容や例外制度で加入する。
- 判断基準は所定労働時間
- 契約変更・手続き漏れに注意
- 65歳以上は合算特例あり
Q. 常に20時間未満なら違法?
A. 原則不要だが、契約20時間以上や65歳以上のマルチジョブ制度では適法。
※実務上、マルチジョブ制度は本人がハローワーク申請する点が見落とされやすい。
雇用保険は週20時間以上の勤務が原則ですが、ご自身の労働時間がその基準に満たないにもかかわらず加入している状況に気づき、疑問を抱くケースは少なくありません。制度の誤解や手続き上のミス、あるいは特殊な例外制度の適用など、その背景には様々な要因が考えられます。本記事では、雇用保険の基本的な加入条件を整理した上で、週20時間未満でも加入となる例外的なケースや、契約内容と実労働時間のズレによって生じる現象について詳しく解説します。正しい知識を持ち、ご自身の加入状況が適切かどうかを確認する手助けとしてください。
目次
雇用保険の加入条件は週20時間以上が絶対ではないのか?
本来、雇用保険制度は労働者の生活や雇用の安定を図るための公的なセーフティネットであり、その適用には法律によって定められた明確な基準が存在します。ここではまず、原則的な加入要件となる労働時間や雇用期間の定義について触れつつ、条件を満たしていても例外的に加入対象外となる特定のケースについて、基本的なルールを紐解いていきます。
週20時間以上の所定労働時間と31日以上の雇用見込みが原則
雇用保険の適用を受けるための基本的な要件は、大きく分けて二つの柱から成り立っています。一つ目は、1週間の所定労働時間が20時間以上であることです。ここで最も注意すべき点は、実際の労働時間(実働時間)ではなく、雇用契約書や就業規則などであらかじめ定められた「所定労働時間」が判断基準となることです。二つ目は、31日以上の雇用見込みがあることです。これには、期間の定めがない無期雇用契約はもちろんのこと、当初の契約期間が31日未満であっても、契約更新の規定があり31日以上雇用される見込みがある場合も含まれます。これら二つの条件を同時に満たす場合、事業主や労働者の希望や意思に関わらず、法律上当然に被保険者となる仕組みになっています。
学生や家事手伝いなど一部の労働者は適用除外
前述した「週20時間以上」および「31日以上」という二つの条件を満たしている場合であっても、雇用保険の加入対象とならない例外的なケースが存在することはあまり知られていません。代表的な例として挙げられるのが、昼間学生です。高校生や大学生など、学業を本分とする学生は、原則として雇用保険の被保険者にはなりません。ただし、卒業見込み証明書を有している学生が卒業前に就職する場合や、休学中の学生、あるいは定時制課程の学生など、一定の条件を満たす場合は例外的に加入対象となることもあります。また、「事業主と同居の親族」は、被保険者とならない取り扱いが基本です。ただし、勤務実態や賃金支払い、指揮命令関係が客観的に確認できるなど、状況により個別判断となることがあります。
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週20時間未満なのに加入している原因は何が考えられるか?
ご自身では週20時間未満のパートタイム勤務であると認識しているにもかかわらず、給与明細を確認すると雇用保険料が控除されているというケースが散見されます。このような状況が発生する背景には、契約上の定義と実態の乖離や、会社側の事務手続き上の誤り、さらには特殊な被保険者区分での加入など、いくつかの要因が潜んでいる可能性があります。
実労働時間ではなく契約上の所定労働時間が基準
最も頻繁に見られる原因の一つが、実際の勤務時間と契約上の時間の認識違いによるものです。先述の通り、雇用保険の加入判断基準となるのは、あくまで雇用契約等の書面で約束された「所定労働時間」です。例えば、契約上は週20時間の勤務となっていても、欠勤や早退、あるいは会社の業務量の減少により、実際の労働時間が週20時間を下回る月が発生することがあります。しかし、雇用契約そのものが変更されない限り、被保険者資格は継続します。したがって、実働時間が短い月であっても、契約上の時間が要件を満たしていれば、制度上は加入状態が維持されることになります。ご自身の働き方が契約と合致しているかを見直すことが第一歩です。
会社側の手続きミスや情報の更新漏れの可能性
次に考えられるのが、事業主側による事務的な過誤や情報の更新漏れです。入社当初は週20時間以上のフルタイムやパート契約で加入手続きを行ったものの、その後、ライフスタイルの変化などで契約変更を行い週20時間未満の短時間勤務に移行した場合などがこれに該当します。本来であれば、労働条件の変更に伴い資格喪失の手続きを行うべきところを、担当者が失念していたり、制度の理解不足により手続きを怠っていたりするケースです。この場合、労働実態は加入要件を満たしていないにもかかわらず、書類上は被保険者のままとなっているため、保険料が給与から徴収され続けてしまいます。
日雇労働被保険者として加入しているケース
一般的な雇用保険(一般被保険者)とは異なる区分で加入している可能性も否定できません。日々雇用される人や、30日以内の期間を定めて雇用される人は「日雇労働被保険者」として扱われます。この区分では、週20時間という労働時間の要件ではなく、日々の就労実態に基づいて適用される仕組みになっています。日雇労働被保険者の場合、印紙保険料という特殊な納付方法が採られることがありますが、ご自身が一般的なパートタイム労働者だと思っていても、雇用形態の実態や契約内容によってはこの区分に該当し、結果として雇用保険が適用されている状況も考えられます。ご自身の被保険者証の種類を確認することで判別が可能です。
参考: 日雇で働く方には特別の雇用保険があります|厚生労働省
週20時間未満でも加入できるマルチジョブホルダー制度とは?
近年、働き方の多様化や高齢者の就労促進に伴い、一つの事業所での労働時間だけでは加入要件を満たさない労働者を保護するための新しい仕組みが導入されました。ここでは、複数の勤務先を持つ労働者を対象とした特例的な制度である「マルチジョブホルダー制度」について、その対象者や仕組みを詳しく解説します。
65歳以上の労働者を対象とした特例的な制度
令和4年1月より開始された「雇用保険マルチジョブホルダー制度」は、複数の事業所で勤務する労働者が、一定の要件を満たす場合に特例的に雇用保険の被保険者となれる制度です。この制度の最大の特徴は、対象となる労働者が「65歳以上」である点にあります。高齢者の就労機会が増加し、多様な働き方が広がる中で、一つの企業だけで週20時間以上の勤務を確保することが体力的に難しい場合でも、セーフティネットを提供することを主眼としています。現時点では65歳未満の労働者には適用されない制度であるため、まずはご自身の年齢が要件に合致しているかどうかの確認が不可欠です。
2つの事業所での労働時間を合算して適用
この制度の核心となるのが、労働時間の合算という考え方です。通常の雇用保険では一つの事業所での所定労働時間が週20時間以上でなければなりませんが、マルチジョブホルダー制度では、2つの事業所での所定労働時間を合計して週20時間以上になれば要件を満たすことになります。ただし、無条件に合算できるわけではなく、合算対象となるそれぞれの事業所において、所定労働時間が週5時間以上で、それぞれに31日以上の雇用見込みがあることが前提条件とされています。また、3つ以上の事業所で働いている場合でも、合算できるのはそのうちの2つの事業所のみとなる点には留意しなければなりません。どの事業所を組み合わせるかは、労働者自身が選択することになります。
本人がハローワークへ申し出ることが手続きの条件
通常の雇用保険加入手続きは、事業主が義務として行いますが、マルチジョブホルダー制度は手続きの流れが大きく異なります。この制度の適用を受けるためには、労働者本人がハローワークに対して申し出を行うことが必須条件です。事業主側から自発的に手続きを行うものではないため、制度の利用を希望する労働者は、自ら合算対象となる2つの事業所の証明書類(雇用契約書や勤務実態がわかる書類など)を揃え、居住地を管轄するハローワークへ申請する必要があります。申請を行った日から被保険者資格を取得することになるため、遡っての加入はできない点も注意すべきポイントです。
労働時間が途中で週20時間を下回った場合はどうなるのか?
長く働き続ける中で、業務の繁閑や私生活の変化、あるいは体調の変化により、労働時間が当初の契約よりも減少することは珍しくありません。ここでは、労働時間が週20時間を下回った場合に、雇用保険の資格がどのように扱われるのか、一時的な変動と恒常的な変更の違いに着目して解説します。
一時的な労働時間の減少であれば資格は継続
業務量の季節的な変動や、本人の怪我・体調不良、育児や介護などの家庭の事情により、一時的に実際の労働時間が週20時間を下回ることがあります。このようなケースにおいて、雇用契約上の所定労働時間に変更がないのであれば、雇用保険の資格はそのまま継続されます。雇用保険制度は、月ごとの労働時間の細かな変動によって資格の取得と喪失を繰り返す事務的な煩雑さを避けるため、あくまで契約内容を重視する運用を行っています。したがって、数ヶ月程度の実働時間の減少であれば、直ちに資格を失うことはなく、安心して働き続けることができます。
契約変更により恒常的に下回る場合は資格喪失
一方で、会社との話し合いにより雇用契約そのものを見直し、所定労働時間を週20時間未満に変更した場合は状況が異なります。この変更により、以降恒常的に加入要件を満たさなくなることが確定するため、資格喪失の手続きを行わなければなりません。例えば、週30時間の契約から週15時間の契約に切り替わった場合、その労働条件が変更された日が資格喪失日となります。この手続きを行わないと、要件を満たしていないにもかかわらず保険料を支払い続けることになり、将来的に失業給付を受ける際にも加入期間の算定などで不利益が生じる可能性があるため、速やかな処理が不可欠です。
自身の加入状況や条件を確認するにはどうすればよいか?
ここまで解説してきた通り、雇用保険の加入状況には様々な要因が複雑に絡み合っています。ご自身が現在正しく加入できているのか、あるいは誤って加入しているのかを確認するためには、正確な情報に基づいた確認作業が必要です。ここでは具体的なアクションプランについて解説します。
雇用契約書または労働条件通知書の記載内容を確認
最も基本的かつ確実な確認方法は、入社時や契約更新時に会社と交わした「雇用契約書」や、会社から交付された「労働条件通知書」を見直すことです。これらの書類には、勤務時間、休日、契約期間、賃金などの労働条件が詳細に明記されています。なかでも「所定労働時間」の項目を確認し、それが週20時間以上になっているかをチェックしてください。もし手元に書類がない場合や、現在の実際の働き方と記載内容が大きく異なっている場合は、会社の人事担当者に問い合わせ、最新の契約内容を確認することをお勧めします。口頭での約束ではなく、書面での確認がトラブル防止の鍵となります。
シフト制などで週の所定労働時間が週ごとに変動し、週単位で定めにくい場合は、月・年などの所定労働時間から平均して週換算し、週20時間相当かを判断します(例:年の所定労働時間 ÷ 52 など)。
ハローワークでの被保険者資格取得届出確認照会
会社を通さずに、公的な記録としてご自身の加入状況を確認したい場合は、ハローワークの窓口を利用する方法が有効です。「雇用保険被保険者資格取得届出確認照会」という手続きを行うことで、ご自身が現在、雇用保険に加入しているかどうか、また過去にどのような加入履歴があるかを正確に把握できます。この手続きは、最寄りのハローワークの窓口へ出向くか、郵送でも行うことが可能です。照会結果により、加入漏れや、逆に意図しない加入が判明した場合は、ハローワークの職員に是正措置について相談することもできますので、不安な場合は一度確認してみると良いでしょう。
雇用保険の加入ルールと現状を正しく理解する
雇用保険は、原則として週20時間以上の所定労働時間と31日以上の雇用見込みがある場合に加入義務が発生する制度です。ご自身の勤務時間がこれに満たない場合でも加入している原因としては、実労働時間と契約時間の乖離や、会社側の手続き漏れ、あるいは65歳以上を対象としたマルチジョブホルダー制度の適用など、様々な要因が考えられます。まずはご自身の雇用契約書を確認し、契約上の労働時間を正しく把握することが大切です。その上で不明点がある場合は、会社への問い合わせやハローワークへの照会を積極的に活用し、適切な加入状態にあるかを確認することをお勧めいたします。正しい知識を持つことが、ご自身の権利を守ることにつながります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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