- 更新日 : 2026年1月20日
扶養控除の廃止はいつから?高校生の子どもを持つ親の扶養控除の縮小案とは?
2024年10月からの児童手当拡充に伴い、議論が続いていた「高校生(16歳〜18歳)の扶養控除の縮小・廃止」。
これまでは、2026年(令和8年)からの実施が既定路線と見られていましたが、2025年12月に入り、高市首相が「縮減に関する指示は出していない」と発言したことで、先送りや見直しの可能性が出てきました。
企業の経営者やバックオフィス担当者にとっては、年末調整や給与計算システムの設定に関わる重大なトピックです。
本記事では、これまでの議論の背景や扶養控除の縮小の背景、当初スケジュール、最新の政治動向をふまえ、今後の見通しと企業が備えるべきポイントをわかりやすく解説します。
目次
扶養控除の廃止・縮小はいつから?
政府・与党内では、児童手当の拡充に伴い、高校生年代の扶養控除を縮小する方向で調整が進められていました。当初は、2026年(令和8年)からを予定していましたが、直近のニュースによると、その実施時期や内容自体が延期または白紙に戻る可能性が出てきています。
「縮減の指示していない」との見方
2025年12月6日、高市早苗首相は、政府・与党が2026年度税制改正で高校生の扶養控除を縮小する方向で検討に入ったとの一部報道を明確に否定しました。
「私が縮減に関する指示を出したことはない。与党税制調査会で本件について決定した事実もない」
この発言に加え、日本維新の会や国民民主党などの野党側も「明確に反対」「高校無償化の財源として控除を縮小したら意味がない」と強く反発しており、当初想定されていたスケジュール通りに縮小が進むかは不透明な状況となっています。
参照:高校生の扶養控除、高市首相「縮減、指示していない」|日本経済新聞
当初検討されていた「2026年開始」のスケジュール
高市首相の発言以前に、財務省や税制調査会で議論されていた当初のスケジュール案は以下のようなものでした。
これは、2024年10月に開始された「高校生年代への児童手当支給」が1年を通して行われるようになるタイミングを見計らい、税制面での調整を行おうとするものです。
- 2024年〜2025年: 与党税制改正大綱にて縮小の方針を決定
- 2026年(令和8年)1月〜: 所得税の扶養控除縮小を開始
- 2027年(令和9年)6月〜: 住民税の扶養控除縮小を開始
このスケジュールは、児童手当という「給付」の拡大と、扶養控除という「減税」の縮小をセットで行うことで、国の財政負担をコントロールしようとする意図に基づいたものでした。
税制改正は通常、政府の方針と与党(自民党・公明党)の税制調査会の議論を経て決定されます。内閣のトップである首相が「指示していない」と公言したことは、官僚主導で進められてきた既定路線に対し、ブレーキをかけたことを意味します。
また、日本維新の会や国民民主党といった野党勢力も「高校無償化の財源として扶養控除を縮小しては本末転倒である」として強く反対しています。現在の国会状況に鑑みると、野党の合意なしに法案を通すことは難しく、当初のスケジュール通りに2026年から縮小が実施される可能性は低くなったと言えるでしょう。
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なぜ高校生の扶養控除の縮小が検討されているのか?
なぜ長年にわたり「高校生の扶養控除の廃止や縮小」が議論されているのでしょうか。その背景には、子育て支援策を拡充する際に必ず直面する「政策を実行するための安定した財源をどのように確保するか」ということにあります。
「控除から給付へ」という政策転換の考え方
政府が扶養控除の見直しを進めようとする最大の理由は、2024年10月から児童手当の支給対象が「18歳到達後の最初の年度末まで(高校生年代)」に延長されたことにあります。
これまで、日本の税制と社会保障制度では、以下のような役割分担がなされていました。
- 中学生まで: 児童手当(現金給付)を支給する代わりに、年少扶養控除(税金の優遇)は廃止する。
- 高校生年代: 児童手当は支給しない代わりに、特定扶養控除(税金の優遇)を手厚く設ける。
今回、高校生にも児童手当を支給することになったため、政府内には「中学生までと同じ扱いにするべきだ」という考え方が生じました。つまり、「手当という現金を給付するのだから、その代わりとして税金の優遇措置である控除は縮小してもよいのではないか」という理屈です。
これは、「控除から給付へ」という、民主党政権時代から続く子育て支援政策の大きな流れの中に位置づけられます。
「支援の重複」と財源確保の論理
また、財務省などが懸念しているのが、いわゆる「支援の重複」の問題です。
現状のまま児童手当だけを拡充すると、高校生年代の子を持つ家庭は「月額1万円以上の現金給付」と「38万円の所得控除による減税メリット」の両方を満額受け取ることになります。
これを政府側は「二重の支援を受けている状態」と捉え、他の年齢層や子を持たない世帯との公平性の観点から調整が必要だと主張しています。
また、高校実質無償化に伴い廃止された特定扶養親族控除の上乗せ部分(国税25万円・地方税12万円)の復元により、高校生の児童手当と合わせて子育て世帯への実質的な支援を拡充し、所得階層間の支援の平準化を図る狙いもあります。
さらに、 少子化対策のために児童手当を拡充するには、毎年巨額の予算が必要です。その財源を赤字国債(借金)のみに頼ることは財政規律上難しいため、「扶養控除を縮小することで増える税収」を、児童手当の財源の一部に充てたいという狙いがあります。
扶養が縮小された場合の影響やシミュレーション
もし仮に、当初の財務省案通りに改正が行われた場合、制度や手取りはどう変わるのでしょうか。今後の備えとして、議論されていた「変更案」の内容を把握しておきましょう。
検討されていた縮小案の内容
現状の有力な縮小案は、所得税の控除額を現在の38万円から「25万円」程度まで引き下げるというものです。
| 税金の種類 | 現行の控除額 (2025年まで) | 検討されている変更案 (2026年以降) | 変更による影響 |
|---|---|---|---|
| 所得税の控除 | 38万円 | 25万円(または12万円等の案も) | 課税所得が13万円増え、その分所得税が増加 |
| 住民税の控除 | 33万円 | 12万円 程度への縮小を検討 | 課税所得が21万円増え、その分住民税が増加 |
これまで高校生がいる家庭は、親の所得から38万円を差し引いて税金を計算できましたが、この幅が小さくなることで、課税対象となる所得が増え、結果として税額が上がることになります。
なぜ所得税控除は38万円→25万円なのか
所得税の控除25万円や住民税の控除12万円は、過去に「15歳以下の年少扶養控除(38万円)」が廃止された際、実は住民税の非課税限度額の算定などに必要な「基礎的な控除」として、名目上の計算枠組みが残されました。
今回の改正案でも、児童手当とのバランスを計算し、「手当の支給額(年12万円)に見合う分だけ控除を減らす」という計算式に基づいて算出された数字と考えられます。
手取り額はどう変化するのか
「児童手当でもらえる現金」と「控除縮小で増える税金」を差し引きすると、世帯の手取りはどうなるのでしょうか。
年収600万円〜800万円世帯の場合:手取り増
児童手当の支給額(月1万円×12カ月=12万円)の方が、増える税金よりも多いため、トータルでは「プラス(手取り増)」になる計算です。
- 増える収入: 児童手当 12万円
- 増える税金: 数万円程度(所得税率10%〜23% + 住民税10%)
- 結果: 差し引きで6.8万円~8.6万円程度のプラス
年収1000万円超の世帯の場合:手取り減のリスク
年収が1000万円を超える世帯ではメリットが少なくなります。日本の所得税は「累進課税」であり、所得が高いほど税率が高くなる仕組みだからです。
- 増える収入: 児童手当 12万円(所得制限撤廃により支給)
- 増える税金: 6万円〜8万円程度(所得税率33%〜 + 住民税10%)
- 結果: 所得が増えるにしたがって、メリットが減少(3.9万円~5.5万円程度)
特に年収1200万円を超えるような層では、税率が高いため、その結果、児童手当をもらっても相殺され、メリットが少なくなります。
企業の給与計算・年末調整担当者が押さえるべきポイント
扶養控除の行方が不透明な中で、企業の給与計算や年末調整を担当する方は、具体的にどのような準備をしておくべきでしょうか。
1. 決定事項と検討事項を区別して情報収集する
もっとも重要なのは、「決定事項」と「検討事項」を混同しないことです。
- 決定事項: 児童手当の高校生への拡大、社会保険適用範囲の拡大(51人以上)など。
- 未定事項: 扶養控除がいつから縮小されるか、いくら縮小されるか。
「2026年から廃止されるらしい」といった不確定な情報で従業員にアナウンスを行うと、混乱を招きます。「現時点では政府内で議論中であり、決定ではない」というスタンスを保ちましょう。
2. 「扶養控除等(異動)申告書」のチェック体制
もし改正が実施されることになれば、実務でもっとも影響を受けるのは「年末調整」です。
年末調整で従業員から提出される「扶養控除等(異動)申告書」の「控除対象扶養親族」の区分や記載ルールが変わる可能性があります。
特に、生年月日による「16歳〜18歳」の判定区分が変更される可能性があるため、申告書の様式自体が変わるでしょう。国税庁から新しい様式が発表された際には、速やかに社内のマニュアルを更新し、従業員向けの記入例を作成するなどの準備が必要になります。
3. 給与計算システムのアップデート確認
多くの企業が導入している給与計算ソフトは、税制改正に合わせて自動でアップデートされるケースが一般的です。 しかし、自社独自のExcelで計算している場合や、オンプレミス型(インストール型)の古いソフトを使っている場合は、手動での計算式変更や更新プログラムの適用が必要になります。改正が決定した段階で、自社のシステムがいつ、どのように対応するのかをベンダーに確認しておきましょう。
4. 従業員からの問い合わせ対応
年末調整の時期になると、ニュースを見た従業員から「うちの手取りは減るのか?」「申告書の書き方は変わるのか?」といった質問が寄せられる可能性があります。
最新ニュースをチェックしておきましょう。
扶養控除の廃止は未定。税制改正大綱をチェックしましょう
高校生の扶養控除の廃止や縮小がいつから始まるかについては、さまざまな議論がされてきましたが、現在のところ未定です。児童手当との重複解消や財源確保という政府の論理はあるものの、家計への影響を懸念する声も根強く、議論の行方は定まっていません。
もし縮小された場合、高所得者層では児童手当のプラス分が相殺される可能性があります。
企業担当者は、決定事項が発表され次第、速やかにシステム改修と従業員への説明準備に入ってください。個人の方は、手取り額の変化をシミュレーションし、教育資金や老後資金の計画を柔軟に修正していくことをおすすめします。
まずは、間もなく決定される「令和8年度税制改正大綱」の内容に注目しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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