• 更新日 : 2026年1月14日

グローカリゼーションとは?意味・メリットや日本の身近な事例も解説

グローバル展開が当たり前となった現在、海外で成果を出すには「世界に同じものを売る」だけでは不十分です。地域ごとに文化・価値観・生活習慣が異なるなか、現地に合わせて商品やサービスを調整する「グローカリゼーション」が重要です。

本記事では、グローカリゼーションが注目される背景やメリット・デメリットをまとめました。日本企業と海外企業の成功事例も紹介しているので、海外展開に取り組む担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

グローカリゼーションとは?

グローカリゼーションとは、グローバルに事業を展開しながら、各地域の文化・制度・生活習慣に合わせて商品やサービスを最適化する手法です。世界共通の基盤を保ちつつ、現地のニーズに応じて調整することで、地域に密着した商品・サービスを提供できます。

企業が海外進出で成果を出すには、コスト効率を重視した標準化だけでは不十分です。言語や宗教、購買行動が異なる市場では、画一的な商品・サービスが受け入れられないケースも珍しくありません。

このような状況で生まれた考え方が、グローカリゼーションです。品質やブランドの軸は共通化し、価格設定や表現を地域に合わせて柔軟に変えることで、効率性と現地適応を両立できます。

企業の海外進出については、関連記事もご覧ください。

グローカリゼーションと関連する2つの用語

グローカリゼーションは、「グローバリゼーション」と「ローカリゼーション」を掛け合わせた造語です。両方の意味を知ることで、グローカリゼーションの理解が深まります。

グローバリゼーションとは?

グローバリゼーションとは、国境を越えて経済活動が広がり、企業・物流・資本・情報が世界規模で連動していくことです。貿易の自由化や通信技術の発展により、企業は特定の国にとどまらず、世界市場を前提とした事業展開を進めてきました。

企業の海外展開によって、世界共通の製品やサービスが普及し、効率的な大量生産やコスト削減が可能になります。一方で、商品や価値観が均質化し、地域ごとの文化や生活習慣の違いが埋もれてしまう恐れもあります。

グローバリゼーションの課題を解決し、地域性を出すために生まれた考え方が「ローカリゼーション」です。

グローバリゼーションが進むと、日常業務にも影響が出ます。関連記事では、経理業務を例に、グローバリゼーションが業務にもたらす影響を解説しました。

ローカリゼーションとは?

ローカリゼーションとは、製品やサービスを特定の地域向けに調整し、文化・言語・商習慣に最適化する取り組みです。海外市場で受け入れられるよう、現地の価値観や生活様式に寄り添うことを重視します。

たとえば、表示言語の変更や通貨対応、法規制への準拠が代表的です。色遣いや表現、提供方法を地域に合わせることで、顧客との心理的な距離も縮めやすくなります。結果として、受容性や市場浸透率の向上が可能です。

一方、地域ごとの個別対応が増えることで、運用の複雑さが増す問題もあります。

グローカリゼーションが注目される背景

近年、グローカリゼーションが注目されているのは、地域ごとの文化や制度の違いが売上に直結するためです。SNSで評価が可視化される現代では、ズレた訴求が不信につながりやすくなりました。

海外・国内を問わず、顧客理解を深めて適切な情報を届ける仕組みについては、こちらの記事も参考になります。

新興国の経済成長

グローカリゼーションが重視される背景には、新興国の経済成長があります。BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)やVISTA(ベトナム・インドネシア・南アフリカ・トルコ・アルゼンチン)に代表される国々では、人口や中間所得層が拡大し、購買力の高い市場が生まれています。

しかしこれらの市場では、先進国向けに開発された高機能・高品質な製品が、必ずしも現地の所得水準に適しているとは限りません。消費者は、現地の食文化や宗教、生活習慣に合った商品やサービスを重視する傾向が強まっています。市場規模が拡大するほど価値観の幅も広がるため、地域特性に適応できる企業が競争優位に立ちやすくなります。

インターネットの普及

インターネットの普及も、グローカリゼーションが注目される要因です。SNSの浸透により、消費者は世界中のブランドや商品を、簡単に比較できるようになりました。企業の発信内容や商品評価は、瞬時に世界中へ届く環境です。

企業の広報は世界中に届き、新たな顧客を獲得するチャンスも増えました。しかし、文化や言語に合わない広告表現やメッセージは、短時間で拡散され、拒否反応を招きます。ローカルに配慮した対応力は、企業の競争力に直結するでしょう。

グローカリゼーションの3つのメリット

グローカリゼーションのメリットは、海外事業において現地市場に適応しつつ成長機会を拡大できる点です。市場を海外に広げる「効率」と、現地の文化や制度に合わせる「適応」を両立させることで、海外で受け入れられる可能性が高まります。

1. 人件費の削減につながる

グローカリゼーションを行うと、拠点や人材配置を地域の労働コストに合わせて設計できるため、人件費の削減につながります。

たとえば、人件費水準の異なる地域に業務や機能を分散すると、運営コストの抑制が可能です。現地雇用を活用すれば、駐在員を派遣する体制よりも、固定費を圧縮できます。

操業の拠点を選ぶ際は、人件費と生産性のバランスが重要です。一定の賃金でもスキルが高く、業務品質が安定する地域であれば、結果としてコスト効率が高まります。顧客接点や法規制対応などを現地で行い、残りは日本国内で行うのも、バランスを取るために有効です。

2. 海外市場を開拓できる

グローカリゼーションによって地域ニーズを反映した商品展開ができれば、現地で受け入れられる確率が高まります。国や地域で好みや購買行動が異なる以上、仕様や訴求を調整しないと「よい商品でも選ばれない」状況が起こりかねません。

さらに、制度や商習慣に合わせた対応を最初から織り込むことで、参入時の手戻りを減らしやすくなります。現地パートナーを活用すれば、販路や顧客接点づくりも効率化でき、立ち上げのスピードアップも可能です。結果として、新規市場に根づく可能性が高まります。

3. ブランドイメージが向上する

グローカリゼーションに注力すると、ブランドイメージ向上も期待できます。現地文化に寄り添った商品・広告・サービスが、現地住民に「自分たちを理解してくれている企業」という安心感を与えるためです。

海外市場では、言葉や表現のズレが不信につながるケースも少なくありません。文化や慣習に配慮した訴求を行うことで、好感度が高まりやすくなります。

また、ローカル理解にもとづく活動を積み重ねると、国際ブランドとしての信頼獲得も可能です。文化を尊重する姿勢はファン層を獲得し、選ばれ続ける土台になります。

グローカリゼーションがはらむ3つのデメリット

グローカリゼーションは、うまく回れば海外展開で成果を上げられる一方、注意すべきポイントもあります。事前に対策して、不測の事態に備えましょう。

1. カントリーリスクがある

海外展開をする以上、カントリーリスクは避けられません。カントリーリスクとは、進出先の政治・経済・社会情勢などの変化で、事業に打撃を受けるリスクです。

グローカリゼーションは現地に深く投資するため、規制強化や政策転換、治安悪化、為替の急変といった外部要因の影響を受けやすくなります。たとえば、外資規制が強まれば、販路や価格戦略の見直しが必要になるでしょう。為替が乱高下すれば、利益が目減りすることもあります。

進出前に政治・経済の変動要因を洗い出し、拠点や調達先を分散することで、損害を最小限に抑えられます。撤退基準を決めておき、想定外を前提に備えるのも有効です。

2. 意思決定が遅れる

グローカリゼーションでは本社と現地拠点の調整が増え、承認プロセスが複雑化します。オンライン会議や国際電話を使っても、意思決定の遅れは避けられません。

地域ごとに制度や商習慣が異なる以上、現地の事情を踏まえた判断は不可欠です。全地域で同じ基準を適用することは難しく、意思決定の負担が増加します。

さらに、指示系統が複雑化すると、最終決裁者が曖昧になります。市場の変化が速い場面では、承認待ちの時間が機会損失につながりかねません。現地と本社の決裁範囲を線引きし、決裁者を明確化することが重要です。

3. 文化や宗教への配慮が必要になる

文化や宗教上の事情に配慮することは、グローカリゼーションの大前提です。地域の「当たり前」を無視すると、大きな反発につながります。

たとえば、2000年にインドネシアで起きた「味の素事件」では、ハラルで禁忌とされる豚由来の酵素を触媒に使用したため、大騒動に発展しました。

また、キャラクタービジネスでも、外観や名前を変更した事例がみられます。人種差別への配慮から配色を変更したり、宗教上タブーとなる「ゴッド」のような名前を差し替えたりする配慮も必要です。

原材料や表現を選定する際は、現地の専門家レビューやガイドラインを確認し、タブーとなる内容を排除しましょう。

【日本】グローカリゼーションの成功事例5選

海外で知られる日本企業やコンテンツには、現地に合わせた商品・サービス展開で成功した事例が数多くあります。

1. ユニクロ

ユニクロの強みは、「ヒートテック」や「エアリズム」のような中核商品を、地域の気候や暮らしに合わせて提供している点です。商品自体はグローバルで共通化しつつ、地域ごとの需要に応じて商品構成や在庫量を調整しています。

たとえば、暑い地域では涼感・軽量を重視し、寒冷地では防寒に関する商品層を厚くするなど、気候に適した商品展開が豊富です。また、店舗運営や広告表現も現地文化に合わせて最適化し、受け入れられやすいように配慮しています。

2. ポケットモンスター(ポケモン)

ゲーム「ポケットモンスター」は、今なお世界中で愛される大人気コンテンツです。世界観を保ちながら、地域に即した表現の調整を行うことで、全世界での人気を獲得しています。

言語圏ごとにキャラクターの名前やセリフ、設定表現を各国で理解しやすい表現に調整しているのが特徴です。とくに、日本語特有の言葉遊びは、直訳では伝わりません。現地の言語で理解できる形に落とし込み、親しみやすく覚えやすい表現にしています。

ローカライズにより、「ポケモン」は海外の子どもや保護者にも理解しやすく、親しみやすい作品として受け入れられてきました。

3. トヨタ

トヨタの「トヨタ生産方式(TPS)」は、グローカリゼーションを支える要素のひとつです。

トヨタは共通の製品規格を世界で展開しつつ、各地域の市場環境や消費者ニーズに応じて車種や仕様を調整しています。たとえば、暑い地域ではエンジンの冷却性能を高め、道路状況に合わせてサスペンション設計を調整するなどです。

また、現地生産・現地販売体制を整えることで、需要変動や物流条件の違いにも柔軟に対応しています。1980年代以降、米国や欧州、中国、東南アジアなどに生産拠点を設けており、現地生産が国内を上回ることもあります。

トヨタの海外戦略では「すべての工場で高品質を確保しつつ、現地のニーズに応えること」が重視されており、こうした「共通化」と「現地適応」のバランスが海外でも人気な理由のひとつです。

4. アニメ産業

アニメ産業では、作品を多言語で世界展開しつつ、字幕・吹き替え・表現を各国文化に合わせて調整してきました。言語を置き換えるだけでなく、受け手の価値観や規制に配慮して表現を整えることで、海外でも受け入れられやすくなります。著名な作品には、主題歌の歌詞を置き換えるケースもみられました。

近年は、動画配信プラットフォームの普及により、海外の視聴者も日本とほぼ同時期に作品を視聴できるようになりました。そのため、各国の言語に合わせた字幕や吹き替えといったローカライズの需要も拡大しています。

日本の文化要素を残しつつ、伝わる形に整える工夫が、日本アニメの人気を支えています。

5. 無印良品

無印良品のグローカリゼーションは、普遍的なデザインや品質の考え方を軸に、現地の生活スタイルに合わせて商品を最適化するものです。海外では住環境や体格、暮らし方が異なるため、素材・サイズ・用途を調整して使いやすさを高めています。

また、複数の国や地域に展開するなかで、文化や購買行動に応じた売れ筋分析を行い、地域ごとに品揃えを調整しているのも特徴です。シンプルで一貫した世界観を保ちつつ、暮らしに寄り添う工夫を重ねることが、海外での支持に直結しています。

【海外】グローカリゼーションの成功事例4選

日本国内でも、海外企業がローカライズを成功させた事例があります。ブランドの考え方はそのままに、日本の文化や暮らしに合わせて商品・体験を調整し、受け入れられた事例は少なくありません。

1. 日本マクドナルド

日本マクドナルドは、世界共通の品質管理やオペレーションを保ちながら、日本の食文化に合うメニューを開発してきた企業です。「てりやきマックバーガー」のような独自商品をはじめとして、日本人の味覚になじむ味付けを採り入れています。

さらに、季節行事に合わせた限定キャンペーンを継続的に実施し、シーズン需要に合わせた来店動機を生み出すのも特徴です。グローバルの強みを土台にしつつ、日本人の嗜好に合わせた最適化が、高い認知度と支持につながっています。

2. スターバックスコーヒー

スターバックスコーヒーの強みは、地域文化に溶け込む工夫を重ねている点です。「地域限定フラペチーノ」などのローカルメニューにより、土地の味覚や話題性を採り入れることで、「ご当地でしか味わえない体験」を提供しています。

さらに、店舗の外観も地域の職人技や素材を活かしたデザインにしました。単なる飲食店ではなく、地域の一部として受け入れられる空間づくりを進めています。地域社会との共生を重視する姿勢が、ブランドへの共感と定着につながった事例です。

3. ディズニー

ディズニーのグローカリゼーションでは、地域の文化に合わせて体験を設計しています。日本・中国・欧州など各地で、文化や祝祭に合わせたイベントを開催し、現地の来園者に受け入れられるような工夫が豊富です。

また、映像作品でも、翻訳・吹き替えに加え、表現調整を行っています。さらに、現地パートナーと協力し、地域の事情に合う運営モデルを採用しました。運営スタッフと利用者の両方に寄り添う姿勢が、継続的な支持を得ています。

4. IKEA

IKEAは、北欧デザインや低価格帯といった共通の強みを保ちながら、地域の住環境に合わせて商品と売り場を調整しています。現地住宅の広さや生活様式に合わせて、家具のサイズや収納を最適化するといった、ローカルの需要を反映した商品展開が特徴です。

また、現地の生活動線や住宅事情を考慮して、ショールーム構成を設計しています。自宅での使い方をイメージできるような配置を行い、店舗へ行くこと自体に価値をもたせました。サステナビリティに配慮した商品展開も、地域の価値観に寄り添う取り組みの一部です。

グローカリゼーションを成功させるコツ

グローカリゼーションを成功させるには、次のポイントを押さえる必要があります。

  • 現地理解
  • 現地での体制整備
  • 共通基盤と適応の線引き

まず、現地の文化・宗教・生活習慣を理解し、商品やサービスの設計に反映します。購買の決め手は地域で変わるため、思い込みで進めるのは悪手です。

次に、ローカルのパートナー企業や現地人材を活用し、意思決定と運営体制を確保します。本社判断を待つ体制では、情報が遅れ、調整に時間がかかるでしょう。

最後に、品質基準やブランド理念などの「グローバル共通基盤」の設定が必要です。地域に合わせる範囲を明確にし、変える部分と変えない部分を決めると、ブランドの軸がブレにくくなります。


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