- 更新日 : 2025年11月5日
離職票の書き方・記入例|ハローワークへ提出する前に確認すべきポイントも解説
退職後、会社から離職票が届いたものの、どこに何を書けばいいのか分からず、手続きが進められないと悩んでいませんか?
離職票は、失業手当の受給手続きに欠かせない重要書類です。もし記入内容に不備があったり、会社が記載した内容をよく確認せずに提出してしまったりすると、手続きが遅れるだけでなく、本来もらえるはずの失業手当が減額されたり、給付開始が大幅に遅れたりする可能性があります。
この記事では、離職票の基本的な知識から、退職者本人が記入すべき箇所の具体的な書き方、失業手当の金額や期間にかかわるチェックポイントまで、記入例を交えて分かりやすく解説します。
目次
離職票とは
離職票は、退職したことを証明し、ハローワークで失業手当の受給手続きを行うために必要不可欠な公的書類です。正式には、雇用保険被保険者離職票といいます。退職後、会社がハローワークで手続きを行い、その後、退職者本人に交付されます。通常、退職日から10日〜2週間程度で手元に届くのが一般的です。
もし退職日から2週間以上経っても届かない場合は、ハローワークから会社へ発行を促してもらえることがあります。ただし、会社の状況や対応次第で遅れる場合もあるため、まずはハローワークへ直接相談しましょう。
離職票-1と離職票-2の違い
離職票は、以下の2種類がセットになっています。
- 離職票-1(雇用保険被保険者離職票-1)
事業所の名称や、退職者の氏名などが記載された書類で、失業手当を振り込んでもらう金融機関の情報を記入する箇所が設けられています。 - 離職票-2(雇用保険被保険者離職票-2)
退職理由や、退職前6ヶ月間の給与の支払状況などが詳しく記載された書類です。失業手当の受給資格や給付額、給付日数を決定するための非常に重要な情報が含まれており、退職者本人が記入する箇所もこの離職票-2にあります。
離職証明書は会社が作成する書類
離職票と名前が似ている書類に離職証明書(雇用保険被保険者離職証明書)があります。これは、離職票を発行してもらうために、会社がハローワークへ提出する書類です。
この離職証明書の内容に基づいてハローワークが離職票-1と離職票-2を発行し、会社経由で退職者に交付される、という流れになります。退職者は、会社からこの離職証明書の控えに、記載内容を確認したうえで署名・捺印を求められることが一般的です。
離職票の書き方・記入例
離職票が手元に届いたら、退職者自身で必要事項を記入します。記入箇所は離職票-1と離職票-2にそれぞれあります。ハローワークの窓口で職員に聞きながら書くこともできますが、事前に準備しておくと手続きが格段にスムーズです。
離職票-1|失業手当の振込先口座を記入
離職票-1には、失業手当を振り込んでほしい金融機関の情報を記入します。通帳やキャッシュカードを見ながら、金融機関名、支店名、口座種別、口座番号を正確に記入してください。
一部金融機関では、金融機関の窓口での届出印の確認が不要な場合もあります。ただし、銀行ごとに対応が異なるため、必ず指定する金融機関の公式情報を事前に確認してください。
離職票-2|離職理由の意思表示と具体的な事情を記入
離職票-2の右側に、退職者本人が記入する欄があります。ここが最も重要なポイントです。
- 事業主(会社)が〇を付けた離職理由を確認
まず、左側の会社が記載した離職理由を確認します。 - 離職者本人の判断
会社記載の離職理由に異議が「無」か「有」か、どちらかに〇を付けます。 - 具体的事情記載欄(離職者用)
会社が書いた離職理由に対するあなたの意見を具体的に記入します。異議がない場合でも、補足事項があれば書いておきましょう。
離職理由の具体的な記入例は、以下の通りです。
- 自己都合退職で、会社記載の理由に同意する場合
事業主が主張するとおり、一身上の都合により離職しました。 - 自己都合退職だが、やむを得ない理由があった場合(特定理由離職者)
事業主が主張する理由は「一身上の都合」とされていますが、実際には家族の介護に専念する必要が生じたため、就業の継続が困難となり、やむを得ず離職いたしました。※このように健康問題や家庭事情などの特定の条件を満たす自己都合退職の場合、特定理由離職者と認められる可能性があり、給付制限が免除されたり給付日数が増えたりするなど、手厚い給付が受けられる場合があります。 - 会社都合(解雇)なのに、自己都合と書かれている場合
事業主は「一身上の都合」としていますが、事実とは異なります。実際には、〇月〇日に事業主より一方的に解雇通告を受けたことによる離職です。
離職票-2|署名
最後に、離職票-2の最下部にある離職者氏名欄に、自筆で署名します。2020年12月以降の国の押印見直し措置により、現在は署名のみでよく、原則として押印は不要(書き損じの訂正には二重線と訂正印が必要)です。
この署名は、「離職票に書かれたすべての内容に同意しました」という意思表示になります。そのため、必ずすべての記載内容に間違いがないかを確認してから署名してください。
失業手当に直結!離職票-2の会社記入欄で確認すべきこと
離職票で自分で書く部分は少ないですが、失業手当の金額や期間は、会社が記入した内容によって決まります。自分の認識と違う点がないか、以下の4つのポイントは必ず厳重にチェックしましょう。
1. 被保険者番号・事業所番号・離職年月日
基本的な情報ですが、自分の被保険者番号や会社の事業所番号、そして最も重要な離職年月日が正確に記載されているかを確認します。離職年月日は、失業手当の受給資格期間の起算日となるため、1日のズレもないか確かめましょう。
2. 賃金支払対象期間と基礎日数
賃金支払状況等の欄には、退職前6ヶ月間の給与計算の対象となった期間と、その期間内の賃金支払基礎日数が記載されています。この基礎日数が11日以上ある月が、原則として失業手当の算定対象となります。特に月給制以外の方や、欠勤が多かった月は、日数が正しくカウントされているか注意深く確認しましょう。
3. 賃金額
上記2.の期間に対応する賃金額が記載されています。ここには基本給だけでなく、通勤手当や残業代などの各種手当も含まれます(賞与など臨時の賃金は除く)。この賃金額をもとに1日あたりの手当額(基本手当日額)が計算されるため、給与明細と照らし合わせるなどして、金額が正しいか必ず確認してください。
4. 離職理由(自己都合か会社都合か)
最も重要な確認ポイントが離職理由です。倒産・解雇などによる会社都合か、転職や個人的な事情による自己都合かによって、失業手当の給付日数や受給開始時期が大きく異なります。
| 比較項目 | 会社都合(倒産・解雇など) | 自己都合(転職・個人的理由など) |
|---|---|---|
| 給付制限 | なし | 原則1ヶ月※ |
| 給付日数 | 90日〜330日(手厚い) | 90日〜150日 |
| 国民健康保険料 | 軽減措置あり | 通常通り |
※2025年4月1日の法改正により、給付制限期間は原則1ヶ月に短縮されました。ただし、過去5年間に3回以上自己都合離職をしている場合は3ヶ月となります。法改正に関する詳細は、厚生労働省の公式ホームページや最新の関連資料を参照してください。
会社が選択した理由と具体的な内容が事実に反していないか、厳密にチェックしてください。もし自分の認識と違う場合は、安易に署名せず、まずはハローワークの窓口で相談しましょう。
離職票を書き終えた後のハローワークでの手続き
離職票の記入と確認が完了したら、いよいよハローワークでの手続きです。失業手当の受給には期限があるため、書類が揃い次第、速やかに行動に移しましょう。大まかな流れを把握しておくと、当日の手続きも落ち着いて進められます。
必要書類を揃えてハローワークへ
まずは必要書類をすべて揃えましょう。一般的には、以下の書類が必要です。
- 離職票-1
- 離職票-2
- 個人番号確認書類(マイナンバーカードなど)
- 身元確認書類(運転免許証など)
- 証明写真2枚(マイナンバーカードを持参した場合は不要)
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
事前に自分の住所地を管轄するハローワークのウェブサイトで確認しておくと万全です。
ハローワークで求職の申込みと受給資格の決定
窓口で求職の申込みを行い、持参した書類を提出します。ここで離職票の内容が確認され、問題がなければ失業手当の受給資格が決定します。
雇用保険受給者初回説明会への参加
受給資格決定日にお知らせされる日時に、説明会に参加します。ここで雇用保険受給資格者証と失業認定申告書が渡され、第1回目の失業認定日が知らされます。
失業の認定
原則として4週間に1度、指定された日(失業認定日)にハローワークへ行き、失業認定申告書を提出して、失業状態にあることの認定を受けます。
失業手当の受給
失業認定が行われると、通常5営業日ほどで、指定した金融機関の口座に失業手当が振り込まれます。以降、再就職が決まるまで4と5を繰り返します。
離職票の書き方でよくある質問
ここでは、離職票の書き方に関して、多くの方が疑問に思う点や、いざという時の対処法についてQ&A形式で解説します。手続きをスムーズに進めるための知識として、ぜひ参考にしてください。
離職票を書き間違えた場合はどうすればいい?
もし記入を間違えてしまった場合は、修正液や修正テープは使用せず、間違えた箇所に二重線を引き、訂正印を押してください。そして、余白部分に正しい内容を記入します。不安な場合は、何も書かずにハローワークの窓口で職員に相談するのが最も確実です。
月の途中で退職した場合の離職票の書き方は?
退職者本人が記入する欄については、月途中退職でも書き方は変わりません。ただし、記入フォーマット自体は同じでも、基礎日数や賃金支払対象期間は、実際の給与支払い状況をもとに日割り計算されるなど、退職月ならではの注意点があります。会社が記載した内容が正確かどうか、特に注意して確認しましょう。
署名欄へは押印が必要?
離職票の署名欄への押印は原則不要です。これまでは押印が必要とされていましたが、2020年12月より見直しが行われ現在は不要とされています。ただし、記載内容を訂正する際の訂正印は引き続き必要ですので注意しましょう。
離職票が会社から届かない場合はどうする?
退職日から2週間以上経っても離職票が届かない場合は、まず会社の人事や総務担当者に状況を確認しましょう。それでも対応してもらえない、あるいは会社と連絡が取れないといった場合は、管轄のハローワークに相談してください。ハローワークから会社へ発行を促してもらえる場合があります。
離職票のポイントを押さえて、スムーズな手続きを
離職票は、退職後の生活を支える失業手当を受け取るための、非常に大切な書類です。手続きは少し複雑に感じるかもしれませんが、一つひとつの項目を落ち着いて確認・記入すれば、決して難しいものではありません。
特に、会社が記入した賃金額と離職理由は、ご自身の認識と相違がないか、署名・捺印前に必ず確認してください。もし不安な点や疑問があれば、一人で抱え込まずにハローワークの職員に相談しましょう。
この記事が、あなたのスムーズな手続きの一助となり、新たな門出を迎えるためのサポートとなれば幸いです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
社宅家賃の消費税は課税?非課税?税務上のルールや仕訳処理を解説
社宅家賃の消費税は居住用であれば非課税です。ただし、社宅を維持するために必要なその他の費用は、内容により課税対象のものもあります。 正しい経理処理を行うには、社宅に関する費用の消費税の扱いについて理解しておくことが大切です。 本記事では、非…
詳しくみる育休は何ヶ月取れる?制度ごとに何日取得できるかを解説
育児休業は、子育てと仕事の両立を支援し、労働者が安心して育児に取り組めるようにするための重要な制度です。 この記事では、「育休は何ヶ月取れるのか」という基本的な疑問から、育児休業の期間、延長条件、関連する給付金、社会保険料の扱い、そして20…
詳しくみるサテライトオフィスとは?メリット・デメリットや利点を解説
テレワークやリモートワークなど、出社を要しない新しい働き方もすっかり定着しています。そのような中で注目されているのが、「サテライトオフィス」です。 当記事では、サテライトオフィスについて、導入事例やメリット・デメリットなどを解説します。働き…
詳しくみる有給休暇は繰越できる?上限や規程などをわかりやすく解説!
従業員が有給休暇を付与されてから1年間で消化しきれなかった場合には、残日数の繰り越しが可能です。しかし、繰り越されるからといっても、有給休暇には時効があり、最大保有日数にも限度があります。 有給休暇はいつまでに取得しなければ消滅してしまうの…
詳しくみるなぜ働き方改革にペーパーレス化が必要か?現状や進め方、成功事例を解説
政府は、多様な働き方の実現や不合理な格差の是正等を目指し、働き方改革を推進しています。国や地方公共団体だけでなく民間においても、その流れは波及しており、各社様々な施策を講じています。 当記事では、働き方改革の実現に不可欠なペーパーレス化につ…
詳しくみる叱責とパワハラの違いは?適切な指導のポイントも解説
叱責とパワーハラスメントの線引きは非常に判断が難しいです。指導したつもりでも相手からパワハラと捉えられてしまうということもあり得ます。 この記事では指導の一環として行われる叱責とパワハラの違い、パワハラに該当する・しないケースについて解説し…
詳しくみる