- 更新日 : 2025年4月17日
派遣社員の年次有給休暇のルールは?申請手続きやトラブル対策を解説
派遣社員にも年次有給休暇の権利があり、企業は適切な対応が必要です。
本記事では、派遣社員の年次有給休暇の取得条件や付与日数、申請手続きの流れをくわしく解説します。
また、契約満了時の有給消化や買取の可否、トラブルを防ぐポイントも紹介します。
派遣元・派遣先の企業担当者がおさえるべきルールやリスク回避策を理解し、適切な管理をおこないましょう。
目次
派遣社員の年次有給休暇の基本ルール
派遣社員にも、会社に直接雇われている社員と同様、年次有給休暇が付与されます。
以下では、派遣社員の年次有給休暇の基本ルールについて、解説します。
派遣元企業や派遣先企業の担当者は、基本ルールを正しく理解しておくと、トラブル防止と信頼向上につながるでしょう。
派遣社員は年次有給休暇をいつから取得できるのか
派遣社員であっても、会社に直接雇われている社員と同様に一定の条件を満たすと、年次有給休暇が付与されます。
一定の条件とは「雇入れ日から継続して6ヶ月以上勤務していること」「6ヶ月の間に全労働日の8割以上出勤していること」の2つです。2つの条件をクリアすれば、取得が可能です。
また、年10日以上付与されている場合は、年5日の取得義務があります。
派遣社員を受け入れる派遣元や派遣先の担当者は、条件や義務を明確に理解しておくのが重要です。
派遣社員の年次有給休暇の付与日数
派遣社員の年次有給休暇の付与日数は、労働者の継続勤務年数に応じて増加します。
たとえば6ヶ月継続、週30時間以上勤務の場合は10日、1年6ヶ月では11日のように年数とともに段階的に増えていく仕組みです。厚生労働省が示す基準によれば、最大で継続勤務6年6ヶ月以上になると、20日付与されます。
派遣社員は契約が継続していれば、直接雇用されている正社員やパート社員と同様に付与日数が増加します。
付与日数を正しく把握すると、派遣元は適切な管理が可能となり、派遣先もスケジュール調整をしやすくなるでしょう。
派遣社員は年次有給休暇は持ち越しできるのか
年次有給休暇は、付与された日から2年間にわたって使用可能です。
1年間で消化しきれなかった日数がある場合は、翌年に繰り越され、合算して使えます。しかし、労働基準法第115条により、付与日から2年が経過すると未消化分は自動的に消滅します。
また、2019年の法改正により、年5日の年次有給休暇の取得が義務づけられました。派遣元や派遣先の企業が正しい管理体制を整え、休暇取得を促進しましょう。
年5日の年次有給休暇を取得させる義務は誰が負うのか
年5日の年次有給休暇を取得させる義務は、派遣社員を雇用する「派遣元」が負います。労働基準法にもとづき、派遣先ではなく、直接の雇用主である派遣元が取得管理の責任をもつという仕組みです。
また、年次有給休暇中の賃金も派遣元が支払います。派遣先が給与の一部を負担したり、休暇取得日を拒否したりするのは認められていません。
派遣元は取得計画を立て、派遣先と連携しながら、確実に年5日の取得を促しましょう。
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派遣社員が年次有給休暇を申請する流れと企業の対応
派遣社員から年次有給休暇の申請があった場合、企業は正しい対応フローを把握しておくのが重要です。
申請を誰が受け取り、誰が承認し、どのように派遣先へ伝えるかによって、運用のスムーズさが大きく変わります。
以下では、派遣社員が年次有給休暇を申請する流れと企業の対応を解説します。
年次有給休暇の申請は派遣元が受け取る
派遣社員の年次有給休暇の申請は、雇用契約を結んでいる派遣元が受け取るのが原則です。
派遣社員は、派遣元の定めた方法に従い、書面または電子申請システムを使って申請します。派遣先の担当者に直接申請するのは誤りです。
勤怠管理については派遣元と派遣先の連携が求められ、休暇取得日には派遣先が業務調整をおこなう必要があります。派遣元は申請ルールを事前に周知し、派遣先は派遣元を通すよう案内しておくと、スムーズな対応ができるでしょう。
派遣元から派遣先に申請する
派遣元が申請を受理したら、次は派遣先への情報共有が必要です。
年次有給休暇の取得日が確定した段階で、派遣元は派遣先へ速やかに通知しましょう。派遣先には承認権限がないものの、業務調整や人員配置の関係で、事前に把握する必要があります。
申請が直前になるケースもあるため、派遣元は迅速かつ丁寧な対応が求められます。派遣先も情報を受け取ったら、必要に応じてシフト調整を進めておくと、現場の混乱を最小限におさえられるでしょう。
上長の承認により、年次有給休暇取得へ
派遣元の上長の承認をもって、年次有給休暇の取得が正式に決定されます。年次有給休暇は労働者の正当な権利であるため、派遣元や派遣先が正当な理由なく「休まないでほしい」と強制したり、無断で有給扱いにして消化したりするのは違法です。
承認後は派遣社員と派遣先にあらためて通知し、業務の引き継ぎ調整を進めましょう。
年次有給休暇の賃金計算
派遣社員が年次有給休暇を取得した場合、賃金は雇用主である派遣元が支払います。
支払い方法は、以下3種類です。
| 支払い方法 | 算出方法 |
|---|---|
| 所定労働時間分の賃金支払い | 有給取得日の勤務時間×時給 |
| 平均賃金方式 | 以下2つを比較して、算定額の高いほうを平均賃金とする。 1.過去3ヶ月の給与合計額を過去3ヶ月の総日数で割った額 2.過去3ヶ月の給与合計額を過去3ヶ月の労働日数で割った額×60% 時給・日給労働者は、1だと低く算定される場合があるので、最低保障額(2)がある |
| 標準報酬日額方式 | 毎年4月~6月の給与の平均から決定された標準報酬月額を30で割る |
派遣社員の年次有給休暇に関する特殊なケースと適切な対応
派遣社員の年次有給休暇には、契約形態や就業状況によって例外的なケースが発生します。
とくに、直接雇用への切り替えや派遣先の変更などは、企業が正確に理解しておくべきケースです。
派遣社員の年次有給休暇に関する特殊なケースと適切な対応について、見ていきましょう。
派遣先企業で直接雇用された場合
派遣社員が派遣先で直接雇用されると、年次有給休暇の扱いは変更されます。
一般的に、派遣社員のときに付与された年次有給休暇は、雇用契約が切り替わるとリセットされます。直接雇用後は新しい雇用契約にもとづいて、再び6ヶ月継続勤務と8割以上の出勤を満たさなければ付与されません。
派遣元は契約終了前に、残っている休暇を取得するよう働きかけるのが重要です。派遣先企業も、直接雇用後の休暇ルールを丁寧に説明し、派遣社員の不満や混乱を防ぎましょう。
派遣先企業を変更した場合はどうなるのか
派遣先が変わっても、派遣元が同じであれば、年次有給休暇は引き続き取得可能です。理由は、管理主体が派遣元にあるためです。
しかし派遣元が変わる場合は、新しい雇用契約のもとで、年次有給休暇の付与条件が再カウントされます。以前の勤務実績はリセットされるため、6ヶ月間の継続勤務と8割以上の出勤があらためて必要となります。
派遣元が変更になる際には、事前に年次有給休暇の取り扱いについて派遣社員に説明し、誤解や不利益が生じないよう取得を促しましょう。
契約満了時に年次有給休暇は消化はできるのか
派遣社員は、契約満了前に年次有給休暇の取得が可能です。
年次有給休暇は労働者の権利であり、契約期間の終了が近いからといえ、申請の拒否はできません。派遣元は、契約終了日が近づいたら、派遣社員の有給残日数を確認し、早めに取得を促しましょう。
派遣先も「繁忙期だから取得不可」といった理由で、契約満了間際の休暇取得を妨げてはなりません。派遣元と派遣先で連携し、契約満了前に休暇の取得を促しましょう。
派遣社員の年次有給休暇の買取は違法なのか
年次有給休暇の買取は、労働基準法第39条により原則認められていません。
理由は、年次有給休暇の目的が心身の疲労回復と生活の質の向上だからです。契約終了までに計画的に休暇取得させましょう。
しかし例外があり、法定日数を超えた年次有給休暇や退職時に未消化の年次有給休暇がある場合に限っては、買取が認められています。
派遣元と派遣先ともに「取得させずに買取る」という運用をおこなうのは、年次有給休暇の趣旨から外れ、法的リスクも伴います。基本的には、派遣社員が退職する前に計画的な取得を促し、正しい運用を徹底しましょう。
派遣社員とのトラブルを防ぐ適切な対応とリスク回避策
派遣社員の年次有給休暇の取得をめぐっては、トラブルになる可能性が少なくありません。「繁忙期だから取得できない」「取得すると契約更新に影響する」などの理由で拒否するのは法律違反です。
派遣元と派遣先ともに、年次有給休暇は当然の権利であると認識する必要があります。
以下では、派遣社員とのトラブルを防ぐ適切な対応とリスク回避策を解説します。
派遣元と派遣先の役割を正しく理解する
派遣元と派遣先はそれぞれの役割を正しく理解しましょう。
派遣社員の年次有給休暇は、雇用主である派遣元が付与・管理する責任をもちます。
派遣先は業務運営の観点から、休暇の時季調整に関与する場面があります。派遣元は申請を受けた段階で、速やかに派遣先と連絡を取り、業務調整がスムーズに行えるよう連携しましょう。
両者がそれぞれの役割を理解し、協力体制を築くと、円滑な運用とトラブル防止につながります。
繁忙期の時季変更権は慎重に扱う
繁忙期の時季変更権は慎重に扱いましょう。取得の時季変更権を行使できるのは派遣元のみであり、派遣先には権限がありません。
労働基準法第39条第5項では、使用者は労働者の請求する時季に年次有給休暇を与える義務があると定められています。繁忙期であっても、変更が必要な場合は派遣元が派遣社員と話し合い、双方の合意を得たうえで別日に調整する必要があります。
原則は「労働者が希望する時季に取得する」という認識をもち、慎重に扱いましょう。
契約満了時や退職時の年次有給休暇消化を認める
契約満了や退職の直前であっても、派遣社員には年次有給休暇を取得する権利があります。
申請を拒否するのは、労働基準法に違反するため、企業としては認められません。派遣元は契約終了が近づいた段階で有給残日数を把握し、計画的な消化を促しましょう。
派遣先も「終了間際だから困る」といった理由で取得を妨げてはいけません。契約満了や退職の直前の適切な対応が、法令順守と社員満足度の両立につながります。
年次有給休暇の取得管理を適切におこない、記録を残す
2019年の法改正により、年10日以上の年次有給休暇が付与された労働者には、年5日の取得が義務づけられています。派遣社員も対象となるため、派遣元は付与や取得状況を正しく管理しましょう。
また、「年次有給休暇管理簿」の作成と3年間の保存が義務化されており、違反すると30万円以下の罰則が科される可能性もあります。
派遣元は取得状況をチェックし、必要に応じて取得を促しましょう。派遣先も業務面で協力し、取得を妨げない環境を整えるのが大切です。
派遣社員の年次有給休暇を適切に管理すると得られる効果
派遣社員の年次有給休暇を適切に管理するのは、単なる制度対応にとどまらず、企業に大きなメリットとなるものです。
派遣社員の年次有給休暇を適切に管理すると、得られる効果を見ていきましょう。
企業の対応次第で職場の生産性・定着率が向上
派遣社員が安心して休暇を取れる職場は、意欲や集中力が高まりやすく、生産性の向上にもつながります。
休暇が取りづらい職場では不満がたまり、早期離職の原因になりかねません。
派遣元は取得状況を定期的に確認し、取得を促しましょう。派遣先も取得しやすい環境づくりに協力するのが重要です。
休暇取得は「当たり前のこと」として扱う意識が企業全体の働きやすさにもつながるため、適切に対応しましょう。
派遣社員の年次有給休暇のルールを理解し、適切に対応しましょう
年次有給休暇を適切に管理するのは、企業の法令遵守に直結する重要な取り組みです。派遣社員が安心して働ける環境づくりは、企業の信頼性や採用力にも好影響を与えます。
ルールの理解が曖昧なまま誤った対応をすれば、罰則のリスクが生じ、企業のブランドイメージ低下につながります。派遣元は取得状況の把握と記録の整備を徹底し、派遣先も休暇が取りやすい職場づくりを徹底しましょう。
派遣社員の年次有給休暇について理解し、適切に対応しましょう
派遣社員の年次有給休暇の基本ルールを説明し、申請手続きやトラブル対策について解説しました。
派遣社員の年次有給休暇は、派遣元が管理や申請の承認をおこないます。
派遣先には承認権限がないものの、シフト調整や業務の引き継ぎなど迅速かつ丁寧な対応が求められます。
派遣元と派遣先は互いに連携し、派遣社員の休暇取得に対して、適切な対応をしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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