- 更新日 : 2026年2月19日
就業規則を会社が守らないときはどこに相談すべき?相談先と対処法を解説
就業規則を会社が守らない場合、違反内容に応じて相談先を使い分けることが最短での解決につながります。
- 違法性が明確なら労基署へ
- 迷ったら総合労働相談コーナーへ
- 交渉重視なら労働組合へ
法令違反か不明な段階では、総合労働相談コーナーが最適です。「賃金・労働時間・懲戒」のどれかで判断すると、適切な窓口に振り分けやすいとされています。
会社が自ら定めた就業規則を守らないとき、労働者は「このまま黙っていていいのか」と不安を抱えがちです。未払い残業代や有休の不承認など、表には出づらい問題でも、対応を誤ると大きな不利益に繋がることがあります。
本記事では、「就業規則を会社が守らない場合、どこに相談すればよいか?」を軸に、相談先の特徴や注意点、会社側が背負うリスクを解説します。
目次
就業規則を会社が守らないケースとは?
「会社が就業規則を守らない」とは、企業が自ら定めた労働条件や職場ルールを実際の運用で無視または逸脱することです。これらの違反は労働契約法や労働基準法にも関係し、従業員の権利侵害や法的リスクを伴う行為といえます。以下に、よくある違反例を紹介します。
残業代の不払い・割増率の違反
就業規則で時間外労働の割増賃金について定めていても、会社が正しい率で支払わない、あるいは時間外労働自体を記録しないことがあります。サービス残業や、固定残業代の範囲に不当に押し込める対応も見られ、労働基準法第37条に抵触する恐れがあります。
参考:労働基準法|e-GOV
有給休暇を取得させない
有給休暇の申請ルールが就業規則で定められており、その通りに申請をしても、上司が「忙しいから無理」と取得を妨げたり、申請を却下し続けたりするケースがあります。これは、労働基準法で認められた労働者の権利を制限する行為であり、違法となる可能性があります。
所定労働時間・休日を無視した勤務命令
規則にある所定労働時間や休日制度を無視し、恒常的な長時間労働や休日出勤を強要するケースもあります。これにより健康被害が発生した場合、会社の責任が問われることもあります。実態が就業規則と大きく乖離していれば、違反として是正対象になります。
賃金や手当を規定なく一方的に減額・廃止
就業規則で定められている手当(通勤手当、皆勤手当など)を、理由の説明や同意もなく一方的にカットすることは、労働契約の不利益変更に該当する可能性があります。従業員に説明義務を果たさず運用を変更することは、無効とされるリスクがあります。
周知義務を怠る
規則を作成していても、従業員がその内容を閲覧できない・知らされていない状態では、「周知義務違反」となります。社内掲示、配布、イントラネット公開などの方法で従業員が内容を確認できる状態にしなければなりません。
規定にない懲戒処分を行う
就業規則に定められていない処分(例:出勤停止や懲戒解雇)を感情的・恣意的に科すことも違反です。適正な手続きを踏まずに処分を実施すると、後に処分無効や損害賠償請求につながる恐れがあります。
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会社が就業規則を守らないときの相談先は?
会社が就業規則を守らない場合、労働者には複数の相談窓口があります。状況に応じて、公的機関、労働組合、士業などを使い分けることで、適切な対処が可能になります。ここでは代表的な相談先と、それぞれの役割・特徴・注意点をまとめます。
【労働基準監督署】違法行為の是正を目指す公的機関
労働基準監督署(労基署)は、労働基準法などの法令に違反している会社に対し、是正指導を行う行政機関です。残業代の未払い、長時間労働、休憩・休日の不提供、賃金カットなど、明確な法違反が疑われる場合に有効な窓口です。
労働者が申告すれば、監督官が企業に調査を実施し、違反が確認されれば「是正勧告」が出されます。悪質な場合は書類送検され、刑事罰が科されることもあります。相談や申告は無料で、匿名での情報提供も可能です。ただし、曖昧な情報では対応が限定的になるため、できるだけ証拠を揃えて面談するのが望ましいです。
労基署には守秘義務があり、申告した労働者の氏名が会社に知られることはありません。また、通報を理由に労働者に不利益処分を行うことは違法であり、違反した会社には罰則があります。
注意点として、労基署は「法令違反の是正」が目的であり、個人の損害(未払い賃金の回収など)を代理してくれるわけではありません。会社が指導に従わない場合、最終的には裁判等が必要となります。
【総合労働相談コーナー】:幅広い相談に対応する入口窓口
総合労働相談コーナーは、厚生労働省が設置する公的窓口で、「法令違反か判断がつかない」「会社との関係が悪化している」「トラブルの解決策を知りたい」といった幅広い相談に対応します。全国の都道府県労働局や労働基準監督署に設置されており、相談は無料・匿名で可能です。
必要に応じて、労基署や関係機関に案内されるほか、「助言・指導」や「あっせん」といった制度を通じて、労働者と企業の間で問題を解決する支援も行います。あっせんでは第三者が中立の立場で両者の間に入り、合意による解決を目指します。
裁判と比べて迅速かつ無料で対応してくれる点が大きなメリットですが、あっせんには法的強制力がないため、会社が話し合いを拒否する場合には別途対応が必要です。
「誰に相談すべきかわからない」という段階であれば、まずこのコーナーに相談するのが安全です。
【労働組合・ユニオン】会社との直接交渉を代行してくれる味方
労働組合は、労働者の権利を守るために企業と交渉する団体です。企業内組合がない場合でも、個人で加入できる「合同労組」や「地域ユニオン」に相談・加入することが可能です。
大きな特徴は、組合に加入すると団体交渉の申入れが可能となり、会社は原則これを拒否できないことです。未払い残業代の請求、有給休暇の取得、不当な処分の撤回などを、組合が代理で交渉してくれます。交渉は法的拘束力こそないものの、企業にとって無視できない圧力となります。
また、組合に相談した事実は会社に知られません。正式に交渉が始まる段階で会社に通知されますが、それ以前にばれることは基本的にありません。報復があれば「不当労働行為」として法的救済が可能です。
費用面でも、社外ユニオンは月数千円程度の組合費が一般的で、弁護士よりも低コストで支援が受けられる利点があります。
【社会保険労務士】制度や就業規則の内容チェックに適任
社会保険労務士(社労士)は、労働関係法令や社会保険制度に詳しい国家資格者です。就業規則や労働契約の内容が法的に問題ないかを見極めたい場合に、専門的なアドバイスを得ることができます。
社労士は法律上、企業との交渉や訴訟代理はできませんが、労基署への申告書の作成アドバイスや、証拠の整理、行政対応の実務的な支援などで頼りになります。
全国社会保険労務士会や都道府県社労士会では、無料の相談ダイヤルや労働相談所を設置しており、初期段階での相談に適しています。
【弁護士・法テラス】法的強制力をもつ解決策を望む場合におすすめ
未払い賃金の請求や、不当解雇・懲戒処分など、法的解決を目指す場合は弁護士の力が必要です。交渉、労働審判、訴訟など強制力のある手段が取れます。完全に労働者の代理人として動いてくれる点が特徴です。
費用が心配な場合は、国の法的支援機関「法テラス」が利用できます。資力要件を満たせば無料相談や弁護士費用の立替制度を受けられます。法テラスでは3回までの無料相談が可能で、収入に応じた分割払いなどの制度も整っています。
弁護士は法的な交渉権限を持つ唯一の職種であり、「裁判も視野に入れている」「金銭的損失が大きい」といった場合には最も適した相談先です。
相談時のポイントや必要な準備は?
就業規則違反について相談する際には、準備の有無が対応の質を左右します。証拠の整理や要望の明確化に加え、秘密保持の仕組みを理解することで、安心して相談ができるようになります。
証拠や記録を整理しておく
相談時には、会社の違反を示す客観的な資料が役立ちます。就業規則や労働契約書、タイムカード、給与明細、出勤簿、会社からの指示メールなどが挙げられます。すべて揃っていなくても、「いつ・どこで・何があったか」を記したメモや日記形式の記録でも構いません。労基署などの公的機関に申告する際も、証拠があると調査が進みやすくなります。
質問内容と要望を明確にしておく
「就業規則を守っていない」という漠然とした訴えだけでは、相談先も対応が難しくなります。「残業代を請求したい」「会社に改善を促したい」「解雇が妥当か判断してほしい」といった目的をあらかじめ整理しておきましょう。時間が限られた相談窓口では、的確に要点を伝えることが解決への近道です。
守秘義務の仕組みを理解しておく
労基署、総合労働相談コーナー、社労士、弁護士といった相談先には、法律や職業倫理による守秘義務があり、相談内容が第三者や会社に漏れることは基本的にありません。初回相談では匿名で対応してくれるケースも多いため、「会社に知られたくない」という人も安心して利用できます。
匿名・実名の使い分けを知っておく
電話相談や情報提供では匿名で問題ありませんが、実際に行政が動く申告や、組合・弁護士が会社と交渉する際には、当事者としての名前が必要になります。ただし、通報を理由とした不利益な扱い(解雇・減給など)は、労働基準法104条や公益通報者保護法により違法とされています。仮に会社に知られても、法的に守られる立場であることを理解しておきましょう。
同僚との連携も検討する
同じ問題で悩む同僚がいる場合は、相談前に情報を共有し、連名で相談・申告することで説得力が増します。ただし、社内チャットやSNSなどの公開性が高い手段は避け、信頼できる相手とだけ情報を共有するようにしてください。複数人での申告やユニオン加入は、会社に対する交渉力の強化にもつながります。
就業規則を守らないことで会社が負うリスクは?
会社が就業規則を守らないままでいると、法的制裁を受けるだけでなく、従業員や社会からの信頼も失いかねません。以下では、企業が被りうるリスクを解説します。
【法的リスク】罰則や刑事処分の可能性
労働基準法では、就業規則の作成・届出・周知が義務づけられています(第89条)。従業員が10人以上いるのに就業規則を作成していない、届け出ていない、法定の内容が記載されていない場合には、30万円以下の罰金(第120条)の対象となります。
さらに、就業規則に反した実態が労基法に違反していれば、たとえば残業代不払い、休日の不提供、有給休暇の未付与などにより、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(第119条)が科される可能性もあります。法令違反を伴う就業規則違反は、企業責任として極めて重大です。
【行政的リスク】是正勧告・社名公表の対象に
違反が発覚すれば、労働基準監督署からの是正勧告が出され、速やかな改善を求められます。これを無視すると、再調査や送検に発展し、厚生労働省の「ブラック企業リスト」に社名が掲載されるおそれがあります。
企業名が公表されれば、採用活動や取引先との関係に深刻な影響が出る可能性が高く、企業イメージの損失は長期的な営業損害につながりかねません。
【労務リスク】従業員との信頼崩壊と退職者増加
就業規則違反が常態化すれば、従業員の士気が下がり、信頼関係が崩れます。不満を持った社員が労働組合を結成したり、団体交渉やストライキに発展したりする可能性もあります。
また、退職者が増えれば、人材流出による業務停滞や採用・教育コストの増加といった、労務管理上の大きな課題を抱えることになります。
【民事リスク】債務不履行や損害賠償の対象に
就業規則に規定された労働条件は労働契約の一部として扱われるため、企業がこれを守らないことは債務不履行に該当します。たとえば、支給規定にある手当を払わなかった場合、従業員から損害賠償請求を受ける可能性があります。
また、職場でパワハラや長時間労働が常態化していれば、社会問題として報道され、企業イメージのさらなる悪化や訴訟リスクを招くおそれもあります。
一人で悩まず早めに相談を!適切な対応で就業規則違反の解決へ
会社が就業規則を守らない状況に直面したら、一人で抱え込まず、今回紹介したような労働相談窓口や専門家を積極的に活用しましょう。 公的機関への相談は無料で安全に行えますし、労働組合や社労士・弁護士などプロの力を借りれば解決への道筋が見えてきます。就業規則違反による労働問題は放置すると深刻化するばかりですが、適切な相談先に助けを求めれば、職場環境の改善や未払い賃金の回収、不当な扱いの是正など実現できる可能性があります。
適切な対応をとることで、会社にも問題を認識させ、就業規則違反の是正と健全な労働環境の確保につなげていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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