• 更新日 : 2025年12月5日

106万の壁は学生には関係ない?企業が知るべき影響を解説

106万円の壁という言葉を耳にしたことがあっても、学生には関係ないと思っていませんか?

実は、学生アルバイトでも働き方によっては社会保険の対象となる場合があり、その場合、企業側にも負担や手続きが発生します。

本記事では、「106万の壁」が学生や企業にどのように影響するのか、そして企業側が知っておくべき給与計算や対策をわかりやすく解説します。

そもそも「106万の壁」とは?

106万の壁とは、厚生年金や健康保険などの社会保険に加入するかどうかを判断するための年収基準のことです。

年収が106万円を超えると、一定の条件を満たした働き方をしている人は社会保険への加入が必要になります。

具体的には、

  • 月額賃金8.8万円(年収換算で約106万円)
  • 週20時間以上
  • 雇用期間が2か月超(見込みも含む)
  • 従業員数51人以上の企業で勤務している

という4つの条件をすべて満たす場合です。

この基準に該当すると、扶養から外れ自分で保険料を負担する必要が生じます。そのため、働き方を調整する必要性が出てきます。

特にパートやアルバイトの働き方に対して、106万の壁は大きな影響を与える制度として理解しておくことが大切です。

給与から社会保険料が差し引かれる

月額賃金が88,000円、年収換算した際に約106万円を超えると、これまで配偶者などの扶養に入っていた場合でも扶養から外れ、自分で社会保険に加入する必要が生じます。

収入が増えたにもかかわらず、手取り額が減ってしまうため、収入が減ったと感じる状況が発生するのです。

この問題は、長年106万円の壁と言われ指摘されてきましたが、改善に向けた動きも進んでいます。

2025年6月に成立した年金制度改正法により、今後3年以内にこの基準が撤廃される見通しです。

制度の見直しにより、パートやアルバイトにとって、働き方の選択肢が広がることが期待されています。

働き方により学生アルバイトも106万の壁が影響する

学生は原則として社会保険の適用除外に該当するため、年収が106万円を超えても社会保険に加入する必要はないですが、働く学生全てが対象外というわけではありません。

夜間や定時制、通信制の学生、または卒業後もアルバイト先と同じ職場で働き続ける予定がある場合など、条件によっては加入対象となるケースがあります。

そのため、企業側は学生の在学状況や勤務実態を確認しておく必要があります。他にも、社会保険の適用が必要かどうかを慎重に判断することが重要です。

学生本人にとっても、自身の働き方が社会保険の加入対象になるかを理解しておくと、安心して働くことができます。

106万の壁が企業に与える影響

学生アルバイトの年収が106万円を超えると、雇用している企業側も社会保険料の半額を負担する必要があり、対象となる学生が増えるほど人件費が上昇し、企業の経営負担が大きくなる点が問題です。

さらに、学生は掛け持ちや急なシフト増加が多く、勤務時間の変動が激しいことから、企業と学生本人の双方が気づかないうちに基準を超えてしまうケースもあります。

その結果、手取りが減った、扶養から外れたといった学生本人や保護者とのトラブルにつながる可能性も高まります。

こうした問題を防ぐためにも、企業側が制度を正しく理解し、学生や保護者へ事前に丁寧な説明を行うことが重要です。

社会保険の負担が増える

従業員が社会保険の対象となると、企業は保険料を従業員と折半して支払う必要があります。企業が負担する保険料は給与総額の約15%に及びます。学生アルバイトが多い店舗や業種では年間の支出となるためです。

人件費の増加は、経営の利益率を圧迫し、労働時間の見直しをしなければならない場合もあります。

また、短時間勤務の学生が社会保険に加入すると、会社としても手続きや事務対応が増加するため、人件費も上昇します。

こうした背景から、企業は社会保険の理解を深めるがあり、労働時間の管理や採用基準を明確にする取り組みが必要です。社会保険の仕組みを事前に企業全体で把握し、対策を講じることが求められています。

給与計算や勤怠管理が複雑化する

学生アルバイトは、年収の見込みを正確に算出することが難しい傾向にあります。

なぜなら、週ごと、月ごとの勤務時間にもばらつきがあり、シフトが変動しやすいからです。106万円の壁がある状態では、企業は毎月の給与をもとに、このまま働くと基準を超えるかどうかを定期的に確認する必要があります。

しかし、従来の手作業による管理ではミスが発生しやすく、担当者の負担が大きくなります。担当者のミスや負担を軽減するためには、自動でアラートを出すことができる勤怠管理システムを導入するとよいでしょう。

従業員に対して勤務時間の目安を共有することもできるため、業務効率を大幅に向上させることができます。

学生や保護者とのトラブルが発生しやすくなる

学生の中には、106万円の壁を理解していない人も多く、いつの間にか扶養から外れていた、保険料が引かれて手取りが減ったというトラブルが発生しやすくなります。

多くの場合、採用時や勤務開始時に制度の説明が不足していることが原因です。学生は社会保険制度への理解が乏しいため、自分がどの条件に該当するのか判断できず、不安を感じることもあります。

また、保護者から社会保険に関する問い合わせが入るケースもあり、企業にとっては説明対応の負担が増えることもあります。

このような問題を避けるためにも、企業側は面接や契約時に制度を丁寧に説明し、勤務時間の上限や注意点を明確に伝えることが重要です。

安心して働ける環境を整えることで、学生と企業の信頼関係が深まり、双方が納得して就業ができます。

企業が取るべき4つの対応策

学生が安心して働くためには、企業が106万の壁に対してとるべき対策があります。

社内で社会保険制度の理解や統一、給与計算や勤怠管理の仕組み、学生への説明とフォロー体制を整える、106万を超えた場合の対応を行うなどです。

以下にて詳しく解説していきます。

①制度理解と社内ルールの整備する

106万円の壁に伴う混乱を避けるためには、まず企業側が制度を正しく理解し、そのうえで社内全体でルールを統一することが不可欠です。

特に人事や経理担当者は、社会保険加入の条件や扶養の条件などを正確に把握し、質問に対応できる状態を整えておく必要があります。

そのうえで、採用時に扶養状況や他の仕事との掛け持ちが有るかどうかを確認する必要があります。

扶養確認書や、勤務時間申告書などを導入し、年収見込みを社内で共有できる仕組みを作ることが有効です。

このような体制を整えることにより、106万の基準超過を未然に防ぎ、学生とのトラブル防止にもつながります。

②給与計算や勤怠管理を仕組み化する

学生アルバイトはシフトの変動が大きく、勤務時間が一定ではないため、手作業による管理ではミスが発生しやすい傾向にあります。

特に、106万の壁がある場合、毎月の給与と今までの収入累計を照らし合わせながら、基準額を超えていないか確認が必要です。

また、変動が大きい給与計算は人事の負担も大きくなります。このため、勤怠管理システムや給与計算システムを導入し、勤務時間と給与を自動で連携させる仕組みを整えることが重要です。

106万円に近づいた際に自動アラートが出るシステムや自動計算ソフトを活用することで、シフト調整がスムーズに行えるため、企業側のリスクを大幅に軽減できます。

③学生への説明とフォロー体制を整える

学生アルバイトは、社会保険の制度や税金の仕組みについて知識が少ないため、採用時に制度の概要や扶養への影響を丁寧に説明することが非常に重要です。

また、必要に応じて、学生本人と保護者向けの案内文や説明資料を用意しておくことで、不安が解消され、より安心して働ける環境づくりにつながります。

契約更新時や年末など節目のタイミングには、改めて社会保険制度の説明を行うことで、学生が自分の働き方を理解しやすくなり、トラブルの予防にもつながります。

企業側が積極的にフォロー体制を整えることで信頼関係を築いていくことで、長期的な雇用や職業定着にも関係するため重要です。

④106万超えた場合の対応を行う

106万円を超えた場合には、企業は速やかに社会保険加入の手続きと給与控除の案内を行う必要があります。

特に、学生アルバイトの場合、社会保険制度への理解が十分でないことが多いため、加入後に起こる変化を丁寧に説明することが重要です。

その際には、本人が負担する保険料の金額だけでなく、企業側が負担する分や、社会保険に加入することで得られる年金、医療保険などをセットで伝え、不安を軽減し信頼関係を築けます。

説明が不十分なまま加入手続きを進めると、手取りが減った、聞いていなかったというようなトラブルが発生しやすいため、事前準備と丁寧な対応が不可欠です。

また、加入後の働き方やシフト調整、今後の収入見込みについて相談に乗ることも、学生が安心して働き続けられる環境づくりにつながり、企業の信頼性向上にも大きく貢献します。

学生が損をしないための「勤労学生控除」

学生が自分で働いて収入を得ている場合、条件次第で勤労学生控除が適用されます。

この制度を利用すれば、所得税の負担を軽減でき、結果的に手取り額を維持することも可能です。また、企業としても学生にこの制度を周知することで、働く意欲を高めるサポートが可能になります。

学生の働き方をサポートするために必要なこととは?

学生が自分で働いて収入を得ている場合、条件を満たせば勤労学生控除が適用され、税負担を軽減できます。

この制度は、働きながら学ぶ学生を支援するものです。

最大27万円の所得控除が受けられるため、所得税がかからないケースが多く、実質的な手取りが減りにくいというメリットがあります。

特に、106万円を超えて働く学生にとっては、扶養から外れると損をするという誤解を解消する必要があります。

企業としても、制度の概要を説明しておくことで、学生が安心して働ける環境を提供でき、トラブル防止にもつながります。

定期的な収入チェックとシフト調整

年度途中で収入が予定よりも増加し、106万円を超えそうな場合には、早めに学生本人と話し合い、働き方を調整することが大切です。

定期的に収入の累計額を確認し、本人に最新の見込みを共有することで、学生も自分の状況を把握しやすくなります。

また、企業側としても、シフトや業務量を適切にコントロールできるため、基準超過によるトラブルも防止可能です。

収入管理の仕組みを整え、学生とコミュニケーションを取りながら進めることで、双方が納得した働き方を維持できます。

学生とのコミュニケーション

学生にとって税金や社会保険の仕組みは難しく、疑問を抱えながら働いているケースも多いのが現状です。

そのため、気軽に相談できる雰囲気づくりや、社会保険制度を簡単にまとめた資料を用意しておくことで、学生が抱く不安も解消されます。

また、定期的なミーティングや日常的なコミュニケーションの中で、社会保険制度への理解を促すことで、学生の不安を取り除き、トラブルの予防にもつながります。

学生が安心して働ける環境を整えることは、職場の雰囲気の向上や定着率にも大きく影響するため、日頃からコミュニケーションをとることは重要です。

現場責任者・店長への教育

社会保険制度の理解不足は、現場での誤案内やシフト調整のミスにつながりやすく、結果として学生の不信感やトラブルにも発展します。

このため、店長やシフトリーダーといった現場の責任者にも制度を理解してもらうことが非常に重要です。

誰にでもわかりやすい簡易マニュアルの作成や、定期的な研修を実施することで、全員が同じ基準で対応できるようになります。

現場全体が制度を理解し適切に対応できる体制を構築することが、企業全体の信頼性向上にもつながります。


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