- 作成日 : 2025年3月21日
幼稚園の事業計画書の書き方は?テンプレートをもとに記入例やポイントを解説
幼稚園の設立時は、複数の理由から事業計画書を作成する必要があります。
今回は、幼稚園の設立時に必要な事業計画書の概要や書き方・記入例、無料のテンプレート、作成するポイントなどを解説します。適切な書き方を確認して、事業運営に役立てましょう。
目次
幼稚園の設立時に作る事業計画書とは
事業計画書は、補助金や助成金を申請したり、金融機関から融資を受けたりする際に必要な書類です。また、幼稚園を含めた幼保施設を設立する際は、小規模保育事業の認可申請のためにも事業計画書を提出します。
事業計画書は、幼保施設の運営にも活用されます。さらに、認可外保育施設から認可保育園へ移行する際の申請にも必要です。
幼稚園は公共的な性格が強い事業のため、事業計画書では以下のようにさまざまなポイントが確認されます。
- 学校教育法の幼稚園設置基準を準拠しているか
- 設立やその後の運営で、法律・行政面のさまざまな制約にのっとっているか
- 資金面は十分か
- 地域の保護者の所得水準と提供サービス価値とのバランスが取れているか
- 保護者のニーズや地域性を踏まえた教育内容が完備されているか
- 家庭や小学校などの地域社会との連携は適切か
なお、幼保施設と呼ばれる施設には、幼稚園のほかに保育園(保育所)や保育所型認定こども園などがあります。
幼稚園の事業計画書の書き方・記入例
ここからは、幼稚園設立で金融機関などから融資を受けるために作成する、事業計画書の書き方・記入例とそれぞれのポイントを解説します。
創業動機・目的
幼稚園を開設する目的や動機を記載する欄です。創業動機・目的の欄には、「なぜ開設したいのか」「この場所を選んだ理由」などの具体的な理由を明記します。
今後の事業に活かせる経験を創業動機と絡めて伝えると、申請時にプラス材料として判断をしてもらいやすくなるでしょう。たとえば、幼稚園の運営経験や保育事業に携わっていた経験などです。
職歴・事業実績
この欄には、幼稚園の事業に関連する経歴や実績を記載するとよいでしょう。保育に関連する学歴があれば、その学歴も記載するとプラスの判断材料になります。
マネジメント経験があれば、幼稚園の経営者としての素質があると評価されるかもしれません。チームリーダーの経験などがあれば記載しましょう。
取扱商品・サービス
どのような特色がある幼稚園なのか、提供するサービスや強みはどのようなものかなどを書く欄です。開園予定の幼稚園の魅力をわかりやすい言葉で簡潔に伝えられるように、書く内容を考えましょう。
取引先・取引関係
外部の業者との取引に関する情報を書きます。たとえば、幼稚園の設備の清掃や点検などでの取引先があれば、固有名詞で記載します。
幼稚園の経営を始める前のこの段階で信頼できる取引先が見つかっていると、業務をスムーズに進めやすくなるでしょう。
従業員
創設時の従業員数を記載する欄です。
幼稚園では、最低限配置すべき教員の数が決まっています。幼稚園のビジネス全体においてベテラン教員の不足という課題がありますが、子どもたちをしっかりと見られるように教員を集めることが大事です。
ただし、事業の開始時は人件費が負担になりやすいものです。最低限配置すべき教員の数はクリアしたうえで、まずは事業を安定させるために少なめの人数で始めるとよいでしょう。
借入の状況
借入残高や返済額など、現在の状況を記載します。借入があるならば、経営プランを立てる際にその分の返済額も稼げるようにしましょう。
注意点は、「正直に残高や返済額を記入すること」と「金利の高い借入がある場合は早めに返済すること」です。金利の高い借入は、融資の審査をする際にマイナス材料になってしまいます。カードローンや消費者金融からの借入があれば、先に返済しておくとよいでしょう。
必要な資金と調達方法
この欄は融資を受ける際にとくに重要視される項目のため、しっかりと資金計画を立ててください。
幼稚園の設立で必要な資金には、設備資金と運転資金があります。設備資金は、たとえば幼稚園の建設費や改装費などです。運転資金は月々でかかるランニングコストを指します。開業時には、3〜4ヶ月分程度を準備しておくことが望ましいといわれています。
必要な資金を把握するには、短期的な資金計画と、施設設備等にあてる中長期の資金計画の2軸で検討することが大切です。また、事業を始めるうえで必要不可欠な資金であるか、資金使途を明確にし、「事業の見通し」の項目に記載する経費と整合性が取れているかをチェックしましょう。
なお、資金は融資などだけではなく、自己資金を2割ほど上乗せするとよいでしょう。
事業の見通し
この欄には、できるだけ早期の黒字化が可能で、実現可能な根拠のあるビジネスプランを記載してください。
多くの場合、幼稚園の開設直後には黒字経営が困難です。半年以内、もしくは1年以内での黒字化を目指すとよいでしょう。
事業の見通しを適切に立てるためには、さまざまな目線で検討する必要があります。たとえば、「売上に対する経費のバランス」「地域の保護者の所得水準に対する保育料のバランス」などです。
そのほか、開設を予定しているエリアの子どもの数、競合となりうる施設の数や特色、現状などを把握し、見込まれる売上をなるべく明確にしておくとよいでしょう。
幼稚園の事業計画書に使える無料テンプレート
マネーフォワード クラウドでは、幼稚園向けの事業計画書のひな形・テンプレートをご用意しております。事業計画書作成の参考として、ぜひダウンロードしてご活用ください。
幼稚園の事業計画書を作成するポイント
最後に、幼稚園の事業計画書を作成するポイントを解説します。
幼稚園の設置基準を満たしておく
幼稚園を設立するには、学校教育法で定められている設置基準を満たしておく必要があります。行政面でもさまざまな制約があるため、あわせて確認が必要です。
先述のとおり、幼稚園の設置にはさまざまな基準があるため、設立のハードルが高いです。幼稚園を開園する際に学校法人化を目指そうとした場合には、さらに難易度が上がります。
同時に学校法人化を目指すならば、「学校法人として設立するための要件」と、「幼稚園を設置するための基準」をどちらも満たす必要があるためです。しかし、それでも学校法人として幼稚園を設立できれば、以下のように多くのメリットが期待できるでしょう。
- 補助金の大幅な増額
- 税制上の優遇措置があること
- 公益性のある法人格の取得によって、信用力が上がり運営基盤の安定化にもつながること
可能であれば、幼稚園の設置基準と学校法人設立のための要件を満たせるような計画を立てて、これら多くのメリットを享受できるように目指せるとよいでしょう。
父母のニーズや地域性を踏まえた教育方針を策定する
幼稚園の設立を検討したり事業計画書を作成したりする際は、父母のニーズや地域性を理解することが大切です。たとえば、父母のニーズや地域性にまったく合わない教育方針にしてしまっては、順調な事業運営が難しくなりかねないでしょう。
父母のニーズには、給食の提供やそれによる食育、防災や防犯・事故防止の措置など、さまざまなものがあります。幼稚園の方針と照らし合わせつつ、どのようなニーズに応えるのか、どのように地域との連携を図るかなどを検討しましょう。
幼稚園の基本方針や指導方針が明確になっていることでのメリットは、事業計画書を作成する際だけではありません。実際に幼稚園を始めてからも、どの保育士でも同じ水準の保育サービスを提供できるなどのメリットがあります。
少子化による園児数減少の対策を検討する
幼稚園の事業運営を安定させるためには、園児数の確保が大切なポイントです。しかし、業界全体で少子化による園児数減少が課題になっています。
少子化による園児数減少の対策は、以下のようなものがあります。
- 入園料や保育料の金額以上に価値があると感じてもらえる保育サービスを提供する
- 入園案内、園児募集要項の掲載・内容を充実させる
- 地域における幼児や母親の交友関係を考慮した募集活動をおこなう
- 地区によって募集時期を統一する
園児数を確保することは経営面で大切なポイントです。しかし安易に入園を許可すると、一時的には園児数を増やせても、サービスの低下などでその後の園児減につながる恐れがあるでしょう。
入園料や保育料の低さで無理に園児数を増やすよりも、幼児教育機関としての使命をしっかりと果たすことを意識し、質の高い教育を目指すとよいでしょう。
幼稚園の設立に必要な事業計画書を作成しよう
幼稚園は設立に関する条件が多いです。あわせて学校法人化も目指す場合には、さらに設立するためのハードルが高いといわれています。
しかし、幼稚園の設置基準と学校法人の設立要件をどちらも満たせた場合には補助金の大幅な増額があり、税制上の優遇措置もあります。さらに公益性のある法人格の取得によって、信用力が上がり運営基盤の安定化にもつながるなど、享受できるメリットも大きいです。
今回ご紹介した事業計画書の作成に関する情報は、幼稚園の設立に必要な資金を調達する際などに役に立ちます。必要な事業計画書を作成し、幼稚園を設立できるようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
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