- 更新日 : 2025年8月22日
ベンチャーキャピタルから資金調達をするには?仕組みやメリット、流れを解説
ベンチャーキャピタルとは、今後の成長が見込まれるベンチャー企業に出資して、将来的な利益を狙う投資会社です。ベンチャーキャピタルによる資金調達は、返済不要な資金が手に入るうえに、株式公開に向けた経営支援も受けられます。
この記事では、ベンチャーキャピタルからの資金調達の仕組みや流れ、成功させるポイントなどを解説します。
目次
ベンチャーキャピタル(VC)から資金調達を行う仕組み
ベンチャーキャピタル(Venture Capital、VC)とは、まだ株式市場に上場しておらず、今後成長が期待できる企業に投資して利益を狙う会社のことです。
ベンチャーキャピタルは、これから上場を狙う企業に投資するファンドへの出資者を集めて、有望なベンチャー企業に出資し株式を取得します。出資先企業の株式上場を目指して経営支援を続け、上場時に株式を売却して利益を得るビジネスモデルです。
ベンチャー企業におけるベンチャーキャピタルを使った資金調達は、自社の株式を譲渡した対価として資金を受け取る仕組みです。
ベンチャーキャピタルは、ほとんどの場合で10年以内を目安に利益の回収を図ります。そのため出資を受けたベンチャー企業は、短期間で株式上場や会社売却(M&A)といった成果を出せるよう、経営戦略を立てなければなりません。
ベンチャーキャピタルから資金調達をするメリット
ベンチャー企業がベンチャーキャピタルから資金調達するメリットは、以下のとおりです。
- 返済の義務がない
- 調達できる資金が大きい
- 経営のノウハウを学べる
それぞれ詳しく解説します。
返済の義務がない
ベンチャーキャピタルから調達した資金は、自社の株式を発行した対価であるため返済する必要がありません。
借入による資金調達の場合、借入時に設定されたとおりに毎月返済しなければならず、利息の支払いも発生します。資金繰りが厳しい創業時には、返済が負担になるケースもあるでしょう。
返済義務がない資金を調達できるのは、ベンチャーキャピタルを利用する大きなメリットといえます。
調達できる資金が大きい
ベンチャーキャピタルからの資金調達は、事業の将来性によっては大きな資金を手にできます。
実績のないベンチャー企業の場合、金融機関から借入したくても審査に通らない恐れがあります。ベンチャーキャピタルであれば、事業の成長性が見込めると判断されると、起業したばかりでもまとまった資金の調達が可能です。
ベンチャーキャピタルからの出資によって、会社の社会的な信用が高まり、金融機関などからの資金調達もしやすくなるメリットもあります。
経営のノウハウを学べる
ベンチャーキャピタルから資金調達すると、ベンチャーキャピタルによる成長支援をとおして経営ノウハウを学べます。
ベンチャー企業に出資し成長させることを事業とするベンチャーキャピタルは、上場に向けたノウハウや人材、ネットワークといった経営資源が豊富です。投資を受けたベンチャー企業は、ベンチャーキャピタルの経営資源を活用し取り入れながら、効率的に株式公開を目指せます。
ベンチャーキャピタルから資金調達をするデメリット
返済の必要がないまとまった資金を調達できるベンチャーキャピタルですが、以下のようなデメリットも存在します。
- 経営への干渉を受ける
- 持ち株を失うリスク
ベンチャーキャピタルを利用する前に、デメリットもしっかりと把握しておきましょう。
経営への干渉を受ける
ベンチャーキャピタルから資金調達を受けると、ベンチャーキャピタルの意向に沿った経営が求められます。
ベンチャーキャピタルは投資先企業のスピーディーな成長を望むため、経営戦略へのアドバイスや人材の出向などの経営支援を行います。株式の保有割合によっては、出資者として過度に経営介入される可能性もあるでしょう。
自社の意図とは異なる経営干渉をされる恐れがある点に、注意が必要です。
持ち株を失うリスク
ベンチャーキャピタルからの資金調達は、創業者や既存株主の持ち株比率が減少してしまう点がデメリットです。
ベンチャーキャピタルに株式を譲渡すると、その分創業者の持ち株比率が下がり、会社の意思決定において創業者の影響力が弱まってしまいます。ベンチャーキャピタルに多数の株式を発行し持ち株比率が高まると、ベンチャーキャピタルの発言権が大きくなりすぎるリスクがあります。
一度、発行した株式は容易に取り戻せないため、持ち株比率の変動は慎重に判断しましょう。
ベンチャーキャピタルから資金調達をする流れ
ベンチャーキャピタルから資金調達するには、おおまかに以下の流れで進めていきます。
- ベンチャーキャピタルとコンタクトを取る
- 事業のプレゼンを行い審査を受ける
- 条件に合意できたら投資契約を締結する
ベンチャーキャピタルとの接触から契約の締結まで、順に説明します。
1.ベンチャーキャピタルとコンタクトを取る
ベンチャーキャピタルから資金調達するには、まずベンチャーキャピタルと関わりをもたなければなりません。
ベンチャーキャピタルと接触するには以下のような方法があります。
- 公式サイトやSNSから直接コンタクトを取る
- ベンチャー系のビジネスイベントやセミナーへ参加する
- マッチングサービスを利用する
- 知人や金融機関に紹介してもらう
ベンチャーキャピタルは将来性があると判断した企業にしか出資はしません。前向きに話を聞いてもらうためには、自社をアピールできる事業計画書を提示するなどの工夫をしてコンタクトを取りましょう。
2.事業のプレゼンを行い審査を受ける
ベンチャーキャピタルからの出資を受けるには、投資可能かどうかを判断するための審査に通過しなければなりません。
ベンチャーキャピタルは、今後大きな成長が見込まれる企業に投資しなければ利益が得られないため、投資先企業の選定には綿密な審査を行います。
重要な審査項目の1つとなるのが、出資を希望する企業に与えられる事業のプレゼンテーションです。事業の将来性や成功するための明確な事業計画書を作り、魅力的なビジネスプランをアピールしましょう。
3.条件に合意できたら投資契約を締結する
審査に通過したら、投資額や株価などの条件交渉に入ります。
投資で儲けを出すことが目的であるベンチャーキャピタルは、自分たちに有利になるように企業価値を低く見積もるケースも多いです。株価が低いと、希望の金額を調達するために多くの株式を発行しなければならないため、持ち株比率が下がるリスクがあります。
契約条件は弁護士へ相談する、株式価値算定は公認会計士へ相談するなど、専門家にチェックしてもらいながら、適切な条件で出資が受けられるよう慎重に交渉しましょう。
ベンチャーキャピタルからの資金調達に向いている企業
メリットも多いベンチャーキャピタルからの資金調達ですが、すべてのベンチャー企業に向いている方法とは限りません。
ベンチャーキャピタルからの資金調達に向いている企業の特徴を、次の3点にまとめました。
- 株式公開を目指している
- 展開する事業の市場が成長を見込める
- 経営陣に明確なビジョンがあり実現できる資質がある
ベンチャーキャピタルを利用するには、ベンチャーキャピタルが求める「企業価値のスピーディーな向上」に、自社の目標や事業がマッチしている必要があります。詳しく見ていきましょう。
株式公開を目指している
将来的に株式公開を目指している会社であれば、ベンチャーキャピタルは利用しやすい資金調達手段といえます。
ベンチャーキャピタルの目的は、未上場の企業に投資し、投資先企業が上場した際に株式を売却して大きな利益を得ることです。そのため、成長が見込まれる企業であっても、株式公開を予定していなければ、ベンチャーキャピタルの投資先としては選ばれない可能性もあるでしょう。
投資の出口戦略として、株式公開や会社売却に向けた経営戦略をもつ企業であれば、ベンチャーキャピタルからの出資が受けやすくなります。
展開する事業の市場が成長を見込める
ベンチャーキャピタルからの資金調達が向いているのは、高い成長性を見込める市場で事業を行っている企業です。
一定の市場規模があり、今後の拡大が期待できる成長市場であれば、事業が成長する可能性が高まります。そのうえで、競合企業との競争に勝ち抜けるだけの優位性や独自の価値があるかどうかが大切です。
丁寧な市場調査からの具体的な数値やデータを用いて、市場の成長性や自社商品の優位性に説得力をもたせ、ベンチャーキャピタルへ効果的なアピールを行いましょう。
経営陣に明確なビジョンがあり実現できる資質がある
ベンチャーキャピタルからの資金調達が向いているかどうかは、経営陣がもつビジョンや資質によっても左右されます。
将来性がある魅力的な事業を手がける企業であっても、それを実現できる人材がいなければ成果を出せません。
明確なビジョンや実現に向けて周囲を巻き込む熱量がある経営者であれば、事業計画を実現する力があると判断されやすいでしょう。専門的な技術やその分野での経験が豊富な人材が揃っていることも、出資へとプラスに働きます。
ベンチャーキャピタルからの資金調達を成功させるポイント
ベンチャーキャピタルからの資金調達を成功させるには、以下の2つのポイントを押さえましょう。
- ベンチャーキャピタルと接触する機会を増やす
- 魅力的な事業計画書を作成する
ベンチャーキャピタルから出資を受けるには、ベンチャーキャピタルに自社の将来性や事業の魅力を効果的にアピールしなければなりません。そのために有効な2つのポイントを説明します。
ベンチャーキャピタルと接触する機会を増やす
ベンチャーキャピタルからの出資を受けるには、まずは自社への興味をもってもらうための積極的なアプローチが必要です。
ベンチャーキャピタルは常に有望な投資先を探していますが、綿密な審査で投資先を選定するため、実際の出資までつながるケースは限られます。一度のコンタクトでうまくいかなかったからといって諦めるのではなく、できるだけ多くのベンチャーキャピタルにアプローチして接触機会を増やしましょう。
すでにベンチャーキャピタルから出資を受けている知人に紹介してもらうと、信頼が高まり前向きに話を聞いてもらいやすくなるでしょう。
魅力的な事業計画書を作成する
魅力的でわかりやすい事業計画書は、ベンチャーキャピタルからの資金調達を成功させるためには欠かせません。
事業の魅力や将来性、実現するための計画などをまとめた事業計画書は、ベンチャーキャピタルが投資先を選ぶ重要な判断材料となります。自社の成長性に興味をもってもらうには、事業の展望や戦略、セールスポイント、財務計画などを、市場動向などをふまえた根拠のある数値で説明しなければなりません。
事業計画書を作成するには、テンプレートを使うと必要な情報を漏れなくまとめられます。マネーフォワードクラウド 会社設立「起業関連テンプレート集」では、細かな業界別に事業計画書のテンプレートと作成例を用意しているため、ぜひ活用してください。
ベンチャーキャピタル以外の資金調達方法
ベンチャー企業に適した資金調達は、ベンチャーキャピタル以外にも以下のような手段があります。
資金調達方法 | 金利・手数料 | 調達までにかかる期間 | 返済 | 審査 | 限度額 |
---|---|---|---|---|---|
1.日本政策金融公庫の融資 | 約1~3% | 2~4週間程度 | 必要 | 厳しめ | 7,200万円 |
2.助成金・補助金 | なし | 制度により一定の期間がかかる | 不要 | 補助金のみ審査あり | 制度により異なる |
3.ファクタリング | 売掛債権の1%~20% | 最短即日~1週間程度 | 不要 | 売掛先企業の信用度で審査 | 売掛債権額 |
4.ビジネスローン | 約2~18% | 最短即日~5日程度 | 必要 | 緩め | 500万円程度 |
5.クラウドファンディング | 集めた金額の10~25% | 1~2か月ほど | 不要(返礼品などを贈るタイプもある) | なし | なし |
参考:日本政策金融公庫 国民生活事業(主要利率一覧表)、日本政策金融公庫 中小企業事業(主要利率一覧表)、日本政策金融公庫 新規開業・スタートアップ支援資金
ベンチャー企業の資金調達方法を、おすすめ順に5つご紹介します。
1.日本政策金融公庫の融資
ベンチャー企業の資金調達として代表的なのが、金融機関から融資を受ける方法です。
特に創業期のベンチャー企業の場合、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」が借入しやすいでしょう。最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)まで融資を受けられ、要件を満たせば利率の引き下げも適用されます。
融資での資金調達は、持ち株比率に影響を与えないため経営の自由は守られますが、返済によって資金繰りが苦しくなる恐れがあります。
2.助成金・補助金
政府や地方自治体による事業者支援である助成金・補助金は、資金調達を考える際にまずチェックしたい方法です。
返済の必要がない資金を取得できるのが魅力ですが、受給までに数ヶ月かかるケースもあります。各制度によって受給できる期間や対象が決まっているため、希望する金額を必要なタイミングで資金調達するのは難しいでしょう。
3.ファクタリング
リスクの少ない方法でちょっとした資金を調達したい場合は、ファクタリングが有効です。
ファクタリングは、所有する売掛債権を売却して資金を得る方法です。取引先の信用があれば審査に通るため、社会的信用が低い起業直後であっても資金調達できます。
調達できる資金は所有している売掛金が上限であり、一般的には売却する売掛債権の1%〜20%の範囲で手数料が定められています。
4.ビジネスローン
すぐに資金が必要であれば、最短即日で借入できるビジネスローンを検討しましょう。
民間の金融機関や信販会社が提供するビジネスローンは、比較的審査に通りやすいのが特徴です。ただし、銀行融資とくらべると借入可能な上限額は低くなります。
銀行系で2〜14%、ノンバンク系で3〜18%と高めの金利が設定されるため、長期の借入や繰り返しの利用には不向きといえます。
5.クラウドファンディング
クラウドファンディングは、とくにtoC(一般消費者向け)の商品やサービスを展開するスタートアップ企業が有効活用できる手段です。
インターネット上で不特定多数の人から支援を募るクラウドファンディングは、魅力的な事業であれば高額な資金を集められる可能性があります。クラウドファンディングによって市場の反応も見られるため、テストマーケティングとしても活用できます。
一方、支援を得られず資金が集まらない、事業に失敗してリターンを返せないといったケースもあるため注意が必要です。
明確な事業計画でベンチャーキャピタルから資金調達しよう
ベンチャーキャピタルとは、将来の成長が期待できるベンチャー企業に出資して、株式上場したときに売却益を狙う投資会社です。
ベンチャーキャピタルから調達した資金は、返済する必要がありません。しかし、出資を受けることでベンチャーキャピタルの発言力が増し、自由な経営が妨げられる恐れがあります。
ベンチャーキャピタルからの出資を受けるには、事業の将来性が伝わる明確な事業計画書を作成し、自社の魅力をアピールしていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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