- 作成日 : 2026年1月14日
ビジネスモデルとは?作り方や構成要素、フレームワーク、面白い企業事例まで解説
ビジネスモデルとは、企業が顧客に価値を提供し、継続的に利益を生み出すための事業の仕組みや収益構造のことです。単なる販売手法ではなく、誰に・何を・どのように提供し、どう稼ぐかという全体設計図を指します。
本記事では、ビジネスモデルの正しい定義から、代表的な型(パターン)と収益構造、そして作り方までを体系的に解説します。
目次
ビジネスモデルとは?
ビジネスモデルとは、企業が持続的に利益を創出するためのシステム全体の設計図です。具体的には、「顧客への価値提供」と「自社の利益獲得」を両立させるための仕組みを指します。
単に製品を売ることではなく、物流、資金調達、提携パートナー、課金ポイントなど、事業を取り巻くすべての要素を有機的に結びつけたビジネススキーム全体を意味します。優れたビジネスモデルは、競争優位性を保ちながら収益が継続しやすい構造を持っています。
ビジネスモデルと経営戦略の違いは?
ビジネスモデルは「利益を生み出す仕組み」であるのに対し、経営戦略は「その仕組みで競争に勝つための指針」です。どれほど優れた戦略があっても、土台となるビジネスモデル(マネタイズの仕組み)が脆弱な場合、長期的な成長は望めません。
ビジネスモデルを明確にするメリットは?
ビジネスモデルを明確に定義し可視化することには、経営上大きなメリットがあります。
1. 事業の全体像と収益性の可視化
複雑な事業活動を仕組みとして俯瞰すると、利益が出るポイントと、コスト構造が明確になります。これにより、ボトルネックの発見や改善すべき領域が明確になります。
事業の全体像を可視化することは、感覚的な経営からの脱却を意味し、数値に基づいた論理的な経営判断を下すための第一歩となります。収益構造の透明性が高まれば、無駄なコストの削減や、より利益率の高い分野へのリソース集中が可能になります。
2. 社内外との共通認識の形成
どのように価値を提供するかが言語化され、従業員の行動指針が揃いやすくなります。また、投資家や提携パートナーに対して事業の将来性や拡張性を説得力を持って伝えられるようになります。
組織の拡大にしたがって、全員が同じ方向を向いて動くことが難しくなりますが、明確なビジネスモデルがあれば、それが共通言語として機能します。ステークホルダーからの信頼獲得や資金調達においても、強固なビジネスモデルの説明は不可欠です。
3. 競合他社との差別化要因の発見
自社の強みと弱みの構造的な理解により、他社が真似できない独自の価値(競争優位性)をどこに築くべきか、戦略的な判断が可能になります。競合と同じ土俵で戦うのではなく、自社のビジネスモデルの特性を活かした「戦わずして勝つ」ポジションを見つけられる可能性が高くなります。
構造レベルでの差別化は、単なる価格競争や機能競争に巻き込まれるリスクを低減し、長期的なブランド価値の向上に寄与します。
ビジネスモデルを構成する4つの要素とは?
成功するビジネスモデルには、必ず共通する4つの要素が含まれています。
1. Who(誰に:顧客層)
ターゲット顧客(セグメント)を明確に定義することです。全ての顧客を対象にするのではなく、「誰の課題を解決するのか」を絞り込むことが出発点となります。BtoB(法人向け)かBtoC(一般消費者向け)かによってもアプローチは大きく異なります。顧客像が具体的であればあるほど、提供すべき価値や適切なアプローチ方法が見えてきます。
2. What(何を:提供価値)
顧客が対価を支払ってでも解決したい課題に対する提供価値(バリュープロポジション)です。単なる商品スペックではなく、「その商品を使うことで顧客が得られる体験やベネフィット」を指します。競合他社にはない独自の強みを明確にすることが求められます。顧客は商品そのものではなく、その商品がもたらす結果にお金を払うという本質を忘れてはいけません。
3. How(どのように:経営資源とプロセス)
価値を顧客に届けるための経営資源とプロセスです。製造、マーケティング、流通チャネル、パートナーシップなどが含まれます。近年ではDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用し、提供プロセスを効率化することも重要な要素です。いかに効率的に、かつ高品質に価値を届けるかという仕組みの部分にあたります。
4. Why(なぜ儲かるのか:利益方程式)
コストを上回る収益をどのように回収するかという収益モデルです。たとえば「売上=単価×販売数、利益=売上−(変動費+固定費)」といった形で、儲かる条件を言語化します。
売り切り型なのか、継続課金なのか、手数料モデルなのか、利益の方程式を設計します。どれほど良いサービスでも、この回収スキームが弱ければ事業は継続できません。顧客満足と企業の存続を両立させるための、経済的な合理性が求められます。
ビジネスモデルの具体例は?
現代のビジネスで主流となっているモデルやパターンを8つに分類し、それぞれの特徴と収益構造を解説します。
1. 物販モデル
自社で商品を製造、または仕入れて販売し、その代金を受け取る最も基本的かつ古典的なモデルです。原価に利益を上乗せして販売するというシンプルな構造ですが、在庫リスクを抱える可能性があるため、適切な在庫管理が重要です。
- 家電メーカー
- 自動車メーカー
- 街の雑貨店
- スーパーマーケット
2. D2Cモデル
企画・製造から販売までを自社で一貫して行い、卸売業者などの中間業者を介さずに直接顧客へ販売するモデルです。中間マージンを抑えつつ、顧客の声を製品開発に即座に反映しやすしやすい強みがあります。近年、日用品などで急成長しているモデルです。
- Warby Parker(メガネ)
- Allbirds(靴)
3. サブスクリプションモデル(定額課金)
商品やサービスを売り切るのではなく、一定期間の「利用権」を提供し、定額料金を継続的に受け取るモデルです。毎月安定したキャッシュフローが得られる点が最大のメリットですが、解約率(チャーンレート)を低く抑えるため、常にサービスの質を向上させ続ける必要があります。
- Netflix
- Salesforce
- Adobe Creative Cloud
4. プラットフォームモデル
自社では製品や在庫を持たず、売り手と買い手をつなぐ「場(プラットフォーム)」を提供し、取引成立時の手数料や利用料を得るモデルです。利用者が増えれば増えるほど利便性が高まる「ネットワーク効果」が働き、市場独占力が強まります。在庫リスクはありませんが、初期の集客が最大の課題となります。
- Amazon(マーケットプレイス)
- 楽天市場
- Uber
- YouTube
5. フリーミアムモデル
基本的なサービスや機能を無料で提供してユーザーを増やしつつ、一部の高度な機能や付加価値を有料で提供するモデルです。無料であるため利用のハードルが極めて低く、爆発的なユーザー獲得が期待できます。無料ユーザーの母数を確保しつつ、有料転換率(コンバージョン)を高める設計が重要になります。
- Zoom
- Dropbox
- スマホゲームアプリ
- クックパッド
6. 広告モデル
ユーザーにはサービスを無料で提供し、多くのユーザーが集まるメディアとしての価値を企業に提供して広告掲載費を得るモデルです。ユーザーから直接お金を取らないため、利用者を拡大しやすいのが特徴です。近年はユーザーの行動データを活用したターゲティング広告が主流です。
- Google検索
- 民放テレビ局
7. シェアリングエコノミー
個人や企業が保有する遊休資産(場所、モノ、スキル、時間など)を貸し出し、共有することで収益を得るモデルです。新たに資産を購入する必要がないため、低コストで参入可能です。プラットフォーム型の一種でもあり、口コミや貸し手と借り手の信頼担保(レビュー機能など)が重要になります。
- Airbnb
- Uber Eats
- ココナラ
8. 消耗品モデル
本体製品を低価格(あるいは原価割れ)で販売して普及させ、専用の消耗品や付属品を継続的に購入してもらうことで利益を回収するモデルです。一度本体を購入させれば、他社製品への乗り換えコスト(スイッチングコスト)が高くなり、長期的な顧客の囲い込みが可能です。
- プリンター(インク)
- カミソリ(替刃)
- コーヒーマシン
- ウォーターサーバー
ビジネスモデルの作り方は?
新しいビジネススキームを構築する際は、一般的に以下の手順で論理的に組み立てることがよいとされます。
1. 環境分析と機会の発見
市場環境、競合、自社の強みを分析し、参入すべき市場機会を見つけます。PEST分析(政治・経済・社会・技術)や3C分析を活用し、まだ満たされていない顧客のニーズを探り当てることが第一歩です。既存の市場で何が不足しているのか、どこにチャンスがあるのかを客観的なデータに基づいて分析します。
2. コンセプトの策定
発見したニーズに対し、「誰の課題を、どのような方法で解決するか」という事業コンセプトを言語化します。既存の業界常識にとらわれず、ターゲットを変えたり、提供方法をデジタル化したりと、柔軟な発想でアイデアを出します。ここで重要なのは、顧客にとっての価値を中心において考えることです。
3. ビジネスモデルの可視化
ビジネスモデル・キャンバスなどのフレームワークを使い、アイデアを図式化します。顧客、価値提案、チャネル、収益の流れなど、構成要素を1枚の図に落とし込むことで、プランの抜け漏れや矛盾点を客観的に検証できます。頭の中のアイデアを構造化することで、実現可能性が高まります。
4. 検証と修正(PoC/MVP)
いきなり大規模に展開せず、最小限の試作品(MVP)でテスト販売を行います。実際の顧客の反応を見て、「本当にお金を払う価値があるか」を検証します。フィードバックをもとに修正を繰り返し、実現可能な収益構造へと磨き上げていきます。小さく始めて大きく育てるのが、現代のビジネス開発の鉄則です。
ビジネスモデル作成に役立つフレームワークは?
ビジネスモデルを検討・可視化する際に必須となるフレームワークを紹介します。
1. ビジネスモデル・キャンバス
ビジネスの構造を9つの要素に分類し、1枚のシートにまとめるフレームワークです。 「顧客セグメント」「価値提案」「チャネル」「顧客との関係」「収益の流れ」「リソース」「活動」「パートナー」「コスト構造」を埋めることで、事業全体の整合性を直感的に把握できます。新規事業のアイデア出しや、既存事業の分析に最適です。
2. リーンキャンバス
スタートアップや新規事業開発に特化した、BMCの派生フレームワークです。 BMCよりも「顧客の課題」と「ソリューション(解決策)」に焦点を当てています。「圧倒的な優位性」や「主要指標(KPI)」の項目があり、不確実性の高い市場で素早く検証・改善(リーンスタートアップ)を行うのに向いています。
3. バリュー・プロポジション・キャンバス(VPC)
ビジネスモデル・キャンバスの「顧客」と「価値」をさらに深掘りし、製品と市場のフィット(PMF)を高めるためのフレームワークです。顧客が抱える悩みや利益に対し、自社の製品・サービスがどのように応えるかを詳細に分析します。「誰に・何を」のズレをなくし、顧客が真にお金を払いたくなる価値を定義するために不可欠なツールです。BMCとセットで活用することで、ビジネスの解像度が格段に高まります。
4. 3C分析
ビジネスモデルを構築する前段階の環境分析に役立つ、マーケティングの基本フレームワークです。「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの視点から、事業の成功要因(KFS)を導き出します。特に新規ビジネスを検討する際、満たされていない顧客ニーズはどこにあるか、競合他社が手をつけていない空白地帯はどこかを客観的に見極めるために有効です。
5. PEST分析
自社ではコントロールできない外部環境を、マクロな視点で分析するためのフレームワークです。「Politics(政治)」「Economy(経済)」「Society(社会)」「Technology(技術)」の4要素から、世の中の潮流を読み解きます。ビジネスモデルは時代の変化に大きく影響されるため、参入しようとしている市場に法改正などの逆風がないか、技術革新による追い風が吹いているか等を事前に把握し、長期的なリスクを低減するために活用します。
面白いビジネスモデルの企業事例は?
単なるIT企業だけでなく、既存業界の常識を覆して成功した面白いビジネスモデルの事例を紹介します。
QBハウス
QBハウスは、通常の理容室から「洗髪」「顔剃り」「マッサージ」のプロセスを排除し、「ヘアカット」のみに特化しました。これにより「10分1000円(現在は価格改定)」という低価格・短時間を実現しました。忙しい現代人の「髪を切る時間を短縮したい」というニーズ(What)を、駅ナカなどの狭いスペース(How)で提供し、高回転率で収益を上げる(Why)という独自の構造を確立しています。
参考:QBハウス
コマツ
建設機械メーカーのコマツは、モノ売りからコト売りへの転換(IoT活用)を実現しました。機械にGPSやセンサーを搭載した「KOMTRAX」を開発し、機械を売るだけでなく、「稼働状況の管理」「盗難防止」「燃料節約のアドバイス」というサービスを提供価値に加えました。これにより、競合との圧倒的な差別化と、メンテナンス需要の確実な取り込みに成功しており、製造業におけるビジネスモデル変革の好例となっています。
参考:コマツ
ビジネスモデルについて学べるおすすめの本は?
ビジネスモデルの基礎から応用までを深く理解するために役立つ、定番の書籍を紹介します。
- 『ビジネスモデル・ジェネレーション』(アレックス・オスターワルダー他 著):世界標準のフレームワーク「ビジネスモデル・キャンバス」を体系的に学べる基本書です。
- 『ビジネスモデル全史』(三谷宏治 著):歴史的な変遷をたどりながら、多様なビジネスモデルのパターンを網羅的に理解できる良書です。
- 『サブスクリプション』(ティエン・ツォ他 著):現代の主流であるサブスクリプションモデルへの移行戦略を解説した実践的な一冊です。
ビジネスモデルが事業の成功を左右する
ビジネスモデルは一度作って終わりではなく、市場の変化に合わせて常にアップデートし続ける必要があります。
優れた収益構造を持っていても、時代の変化(技術革新や顧客心理の変化)に対応できなければ陳腐化します。定期的に「Who・What・How・Why」の4要素を見直し、持続可能な利益を生み出すサイクルを回し続けることが、事業を長期的に成功させるカギとなります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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