• 作成日 : 2025年12月11日

弁護士は儲からない・稼げない・食えないは嘘?年収の実態や業界の将来性も解説

「弁護士は儲からない」「稼げない」「食えない」——。かつて高収入の代名詞であった弁護士について、このような言葉を耳にする機会が増えました。司法制度改革による弁護士人口の急増や競争激化を背景に、「弁護士になって後悔した」という声すら聞かれるのが現実です。

しかし、弁護士全員の収入が低いわけではありません。この記事では、「弁護士 儲からない」説の真偽、この厳しい業界の年収の実態、そして弁護士の将来性と収入を上げていくための具体的な戦略について徹底的に解説します。

弁護士は儲からないって本当?

「弁護士=儲からない」は、必ずしも真実ではありません。より正確な実態は、高収入を得る弁護士と収入が伸び悩む弁護士との二極化が進行しているというものです。

弁護士の収入に関する統計データは、この二極化の傾向を裏付けています。一部の弁護士が平均値を大きく引き上げている一方で、多くの弁護士が世間のイメージほどの高収入を得ているわけではない、というのが現実です。

大手法律事務所のパートナーや特定分野の専門家が億単位の収入を得る一方で、独立直後や特定の働き方を選ぶ弁護士の中には、年収が会社員の平均を下回るケースも存在します。

したがって、「弁護士は儲からない」のではなく、「収入格差が非常に大きい」と表現するのが正確です。

弁護士の年収の実態は?

弁護士の年収は、各種統計において平均1,000万円を超えることが多く、一般に高い水準にあることも多いです。

しかし、注目すべきは平均年収と中央値の乖離です。

  • 平均年収:一部の極端に高い高所得層によって、数値が大きく引き上げられやすい傾向があります。
  • 中央値:データを順に並べたときの中央の値で、こちらの方が一般的な弁護士の実感に近い年収を示すとされます。

日本弁護士連合会の調査などでも、所得の分布には大きなばらつきが見られます。この平均値と中央値の大きな差こそが、儲かる弁護士と稼げない弁護士の格差が拡大している証拠と言えます。

参考:日本弁護士連合会

弁護士が儲からない・稼げないと言われる理由は?

弁護士資格という難関を突破しても稼げない状況に陥る弁護士がいる背景には、業界特有の理由が存在します。

1. 弁護士の増加による競争激化

最大の理由は、2000年代の司法制度改革による弁護士人口の急増です。司法試験の合格者数が大幅に増え、弁護士の総数も急増しました。しかし、国内の法務需要が弁護士の増加率ほどには伸びなかったため、弁護士一人当たりの仕事量(案件数)が減少し、顧客獲得競争が激化しました。

2. 裁判件数の減少・横ばい

弁護士の伝統的な仕事である裁判の案件数が、減少傾向あるいは横ばいであることも一因です。最高裁判所の司法統計によれば、特に民事訴訟の新受件数は長期的に見て横ばいか微減傾向にあります。主要な市場が拡大しない中で弁護士だけが増えれば、案件獲得が難しくなるのは必然です。

3. 就職難と即独のリスク

弁護士が増えた結果、司法修習を終えても法律事務所に就職できない就職難も問題となりました。その結果、十分な実務経験を積まないまま、修習終了後すぐに独立開業する「即独」を選ぶ弁護士が増加しました。即独は、実務スキルや案件獲得ノウハウが不足しているため、経営が軌道に乗らず、食えない弁護士を生み出す温床となりやすい側面があります。

4. AI(リーガルテック)の台頭

リーガルテック(LegalTech)の進展により、AI(人工知能)が弁護士の業務の一部を代替する可能性が指摘されています。契約書のレビュー、判例リサーチ、法律相談の初期対応といった定型的な業務です。これらの業務に依存している弁護士は、将来的に仕事量が減少する可能性があります。

5. 営業力・マーケティング能力の不足

弁護士は「待っていれば仕事が来る」という時代は終わりました。現代の弁護士には、法務スキルだけでなく、自らのサービスを顧客に届け、選んでもらうための営業力やマーケティング能力が不可欠です。どれだけ優秀でも、認知されなければ依頼にはつながりません。

弁護士になって後悔したと感じる人の特徴は?

「弁護士が儲からない」という年収面の問題は、しばしば「弁護士になって後悔した」という感情に直結します。難関試験を突破したにもかかわらず後悔する人には、いくつかの共通点があります。

収入が不安定

食えない状態に直結するのが、収入の不安定さです。

特に、固定給のないノキ弁(軒先弁護士)や、十分な準備なく即独した弁護士は、自分で案件を獲得できなければ収入が急激に不安定になりがちです。このような状況下で経費だけが出ていく状況が続けば、こんなはずではなかったと後悔する原因となります。

厳しい労働環境

法律事務所に雇用されるイソ弁(アソシエイト弁護士)も安泰ではありません。

特に若手のうちは、ボス弁護士(経営者)のもとで長時間労働を強いられる修行期間が待っています。収入(年収)が労働時間に見合わないと感じた場合、理想と現実のギャップから後悔につながることがあります。

希望する案件に関われない

弁護士を目指した動機が社会正義の実現や困った人を助けたいというものであっても、現実には希望する分野の案件に関われなかったり、競争の激化で一般的な案件ばかりになったりすることがあります。専門性を高められず、やりがいを見失うことも後悔の一因です。

儲かる弁護士の特徴は?

高い年収を得ている儲かる弁護士には共通する特徴があります。

高度な専門分野の確立

最も典型的なのは、企業法務の分野で高度な専門性を確立している弁護士です。企業の経済活動に直結し、動く金額が大きく、かつ対応できる弁護士が限られる分野は、報酬が高額になる傾向があります。

  • M&A・企業再編:企業の買収・合併に関わる法務
  • 金融法務:金融商品取引法、デリバティブ取引など
  • 知的財産・特許:特許侵害訴訟、ライセンス契約など
  • IT・データプライバシー:AI関連法務、個人情報保護法対応など
  • 国際取引・国際紛争:英語力と外国法の知識が必須

特定分野への特化

企業法務以外でも、一般市民向けの分野(一般民事・家事事件)に特化することで高収益を上げることは可能です。

離婚・男女問題相続・事業承継労働問題(特に企業側)交通事故など、特定の分野に専門特化し、その分野のプロフェッショナルとして認知されることで、他の弁護士との差別化を図ります。

大手法律事務所への所属

四大法律事務所(アンダーソン・毛利、森・濱田松本、長島大野、TMI)等」)と呼ばれる国内最大手の法律事務所に所属する弁護士は、総じて高年収です。

大規模な企業法務案件を数多く扱っており、特に経営陣であるパートナー弁護士になれば、億単位の収入を得ることも可能とされます。

企業内弁護士

法律事務所に所属せず、企業の法務部員として働く弁護士も増えています。

独立開業のような不安定さはなく、企業の安定した給与体系の中で高い年収を得ることができます。コンプライアンス意識の高まりを受け、企業側の需要は非常に旺盛です。

優れたマーケティングと集客力

分野を問わず、現代の弁護士にとって不可欠なのが集客力です。

Webサイトの構築(SEO対策)、Web広告の運用、SNSでの情報発信などを駆使し、自らの専門性を潜在的な顧客に届け、効率的に案件を獲得できる仕組みを持つ弁護士が儲かる弁護士となっています。

弁護士業界は将来性がない?

AIによる代替リスクなどから、「弁護士は将来性がない」という声も聞かれますが、それは一方的な見方です。

確かに、旧来型の定型的な業務だけを行っている弁護士にとっては、厳しい業界であり、将来性は暗いかもしれません。弁護士の将来性は、AIに代替されにくい業務にシフトできるかにかかっています。AIは過去のデータ分析や定型作業は得意ですが、人間の感情を汲み取る交渉、先例のない案件への戦略立案、法廷活動といった、創造性や共感性、高度なコミュニケーションを要する業務は苦手です。弁護士の仕事は、これらの人間にしかできない価値を提供するコンサルティング的な側面にシフトしていきます。

また、社会が複雑化・グローバル化するにつれ、弁護士が対応すべき新たな問題は増え続けています。

  • AIの開発・利用に関する法的問題
  • 個人情報保護・データプライバシー規制の強化
  • スタートアップ企業の資金調達や上場支援(IPO)
  • SDGs/ESG(環境・社会・ガバナンス)関連法務
  • 高齢化社会に伴う相続、事業承継、財産管理

これらの新分野は専門性が高く、競合もまだ少ないため、高い収益性が期待できます。

弁護士が年収を上げるためのポイントは?

「弁護士は儲からない」「弁護士になって後悔した」という状況を回避し、稼げる弁護士になるためには、明確な戦略と行動が求められます。

1. 需要の高い専門分野を見極め、確立する

まずは、他者と差別化できる専門性を確立することが不可欠です。

自身の適性や興味を考慮しつつ、今後も需要が見込まれる分野(IT、国際法務、労働法(企業側)、スタートアップ支援、相続・事業承継など)を選定し、集中的に知識と経験を蓄積します。専門性を打ち出すことで、単価交渉を有利に進め、指名で案件が来るようになります。
近年の傾向として企業内弁護士から役員・経営層にステップアップするケースが増加しています。

2. WebマーケティングやSNS活用を学ぶ

自身の専門性や人柄を、潜在的な顧客に知ってもらうための努力が必要です。

専門分野に関する解説記事をブログで発信する、X(旧Twitter)やYouTubeなどで有益な情報を発信しブランディングを行う、必要に応じてWeb広告を出稿するなど、インターネットを活用したマーケティングスキルを習得することが、現代の弁護士には必須です。

3. 営業力+αのスキルを磨く

弁護士の仕事は、最終的には人対人です。

依頼者の話を深く傾聴し、分かりやすい言葉で説明する能力、そして依頼者に安心感を与える能力が、リピートや紹介につながります。また、英語などの語学力やITスキルといった+αのスキルを身につけ、対応できる案件の幅を広げることも重要です。

4. ITツールを活用して業務を効率化する

定型的な事務作業やリサーチに時間を取られていると、実質的な時間単価は下がり、儲からない状態になります。

クラウド型の事件管理システム、AIによる契約書レビューツール、Web会議システムなどを積極的に導入し、業務を徹底的に効率化すべきです。それによって生み出された時間を、コンサルティングや戦略立案といった、AIにはできない高付加価値な業務に充てることが重要です。

弁護士が儲からない時代は戦略で乗り越えられる

「弁護士は儲からない・稼げない・食えない」という言葉は、全くの嘘ではありません。それは、弁護士人口の増加による競争激化と、それに伴う年収の二極化という厳しい業界の現実を反映したものです。

資格さえ取れば安泰という時代は終わり、食えない弁護士や「弁護士になって後悔した」と感じる人がいるのは事実です。しかし、それは同時に「儲かる弁護士」がより際立つ時代になったことも意味します。

稼げない状況に陥るか、選ばれる弁護士になるかは、本人の戦略次第です。「将来性がない」と悲観するのではなく、需要の高い専門分野を確立し、集客力を磨き、時代に対応する柔軟性を持つこと。これこそが、「弁護士は儲からない」という現実を乗り越え、将来性を切り開く鍵となります。


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