- 作成日 : 2025年6月20日
登録免許税が半額に?創業支援制度を活用した会社設立ガイド【2025年最新版】
「会社を設立したいけれど、初期費用はできるだけ抑えたい…」創業を目指す多くの方が抱える悩みではないでしょうか。特に、会社設立時に必ず発生する「登録免許税」は、決して小さな負担ではありません。しかし、自治体が提供する「特定創業支援等事業による支援(創業支援制度)」を上手に活用することで、この登録免許税が軽減される可能性があります。
この記事では、会社設立を検討している方に向けて、登録免許税の基礎知識から、創業支援制度を活用した軽減措置、その申請方法や注意点まで分かりやすく解説します。
目次
そもそも登録免許税とは
登録免許税とは、不動産の所有権移転登記や会社の設立登記など、特定の登記、登録、免許、許可、認可、認定、指定及び技能証明といった行政サービスを受ける際に課される国税の一つです。
会社設立においては、法務局に会社設立の登記を申請する際に納付する必要があります。この登記手続きによって、会社は法人格を取得し、社会的な信用を得て事業活動を行うことができるようになります。つまり、登録免許税は、法人として公的に認められるための手数料のような位置づけと考えることができます。
登録免許税の計算方法
会社設立時の登録免許税の額は、設立する会社形態や資本金の額によって異なります。
株式会社の場合
原則として、資本金の額の0.7%です。ただし、この計算額が15万円に満たない場合は、一律15万円となります。
例えば、資本金1,000万円で株式会社を設立する場合の登録免許税は、1,000万円 ×0.7%=7万円となりますが、最低額の15万円が適用されるため、納付額は15万円です。資本金が3,000万円であれば、3,000万円 ×0.7%=21万円となります。
合同会社の場合
原則として、資本金の額の0.7%です。ただし、この計算額が6万円に満たない場合は、一律6万円となります。
例えば、資本金500万円で合同会社を設立する場合の登録免許税は、500万円 ×0.7%=3万5千円となりますが、最低額の6万円が適用されるため、納付額は6万円です。
合名会社・合資会社の場合
1件につき6万円となります。
登録免許税の納付方法
登録免許税は、原則として現金で納付します。金融機関の窓口で納付し、その領収証書を登記申請書に貼付して法務局に提出するのが一般的です。また、オンライン申請(電子申請)の場合は、電子納付することも可能です。
登録免許税はいつ払うのか
納付のタイミングは、登記申請を行う時点です。登記申請書が法務局に受理される前に納付を済ませておく必要があります。なお、会社設立時の登録免許税は、設立のために準備した資本金から直接支払われるわけではなく、別途用意する必要があります。一般的には、発起人が立て替えて支払うか、会社設立後に会社の経費として精算する形となります。
創業支援制度で登録免許税が軽減される
創業支援制度とは、文字通り、新たに事業を始めようとする方々を自治体等がサポートする様々な取り組みのことです。資金調達の支援、経営相談、セミナーや研修の実施、オフィススペースの提供など、その内容は多岐にわたります。
これらの支援は、新規開業率の向上や地域経済の活性化を目的としており、意欲ある創業者にとって大きな助けとなります。
特定創業支援等事業とは
登録免許税の軽減措置を受けるために特に重要なのが、特定創業支援等事業です。これは、産業競争力強化法に基づき、市区町村が地域の創業支援事業者(商工会議所、金融機関、NPO法人など)と連携して行う、継続的な支援を指します。
具体的には、経営、財務、人材育成、販路開拓などの知識習得を目的としたセミナーや個別相談などが該当します。この特定創業支援等事業による支援を原則1ヶ月以上かつ4回以上受け、市区町村からその証明を受けることで、様々な優遇措置の対象となります。
特定創業支援等事業による登録免許税の軽減措置
特定創業支援等事業による支援を受けた創業者は、会社設立時の登録免許税について以下の軽減措置を受けることができます。
- 株式会社設立の場合
資本金の0.7%で計算される登録免許税が0.35%に軽減されます。最低税額も15万円から7.5万円に半額となります。 - 合同会社設立の場合
資本金の0.7%で計算される登録免許税が0.35%に軽減されます。最低税額も6万円から3万円に半額となります。
このように、登録免許税が半額になるというのは、創業時の資金繰りを考える上で非常に大きなメリットと言えるでしょう。
登録免許税の軽減措置を受ける方法
魅力的な登録免許税の軽減措置ですが、利用するためにはいくつかのステップを踏む必要があり、注意点も存在します。
1. お住まいの市区町村の特定創業支援等事業を確認
まず、ご自身が会社を設立しようとしている(または既にお住まいの)市区町村が特定創業支援等事業を実施しているかを確認しましょう。多くの自治体のウェブサイトで情報が公開されていますし、産業振興課や商工課といった担当部署に問い合わせることも可能です。
支援内容(セミナーの日程や内容、個別相談の予約方法など)も併せて確認し、ご自身のスケジュールやニーズに合うものを選びましょう。
2. 特定創業支援等事業による支援を受ける
次に、実際に特定創業支援等事業による支援を受けます。前述の通り、原則として1ヶ月以上かつ4回以上の継続的な支援が必要です。
どのような支援が対象となるか、回数のカウント方法などは自治体によって細かく定められている場合があるため、事前にしっかりと確認することが重要です。支援を受けた際には、記録を残しておくことも忘れないようにしましょう。
3.「特定創業支援等事業による支援を受けたことの証明書」を発行
規定の支援を受け終えたら、市区町村に申請し、「特定創業支援等事業により支援を受けたことの証明書」を発行してもらいます。この証明書が、登録免許税軽減措置を受けるために必要不可欠な書類となります。
証明書の発行手続きや必要書類についても、事前に市区町村に確認しておきましょう。発行までにある程度の日数がかかる場合もあるため、会社設立のスケジュールを考慮して早めに申請することが大切です。
4. 証明書を添付して会社設立登記を申請
証明書を受け取ったら、会社設立登記の申請書類と共に、この証明書を法務局に提出します。これにより、登録免許税の軽減措置が適用されます。
登録免許税の軽減シミュレーション
実際にどれくらい登録免許税が安くなるのか、具体的なケースで見ていきましょう。
株式会社を資本金300万円で設立する場合
- 通常の場合:登録免許税は15万円(最低税額)
- 特定創業支援等事業による軽減措置適用の場合:登録免許税は7.5万円(最低税額の半額)
差額:7.5万円
株式会社を資本金2,500万円で設立する場合
- 通常の場合:登録免許税は、2,500万円 ×0.7%=17.5万円
- 特定創業支援等事業による軽減措置適用の場合:登録免許税は、2,500万円 ×0.35%=8.75万円
差額:8.75万円
合同会社を資本金100万円で設立する場合
- 通常の場合:登録免許税は6万円(最低税額)
- 特定創業支援等事業による軽減措置適用の場合:登録免許税は3万円(最低税額の半額)
差額:3万円
このように、特に資本金の額が少ない場合でも、最低税額が半額になるため、大きな節約効果が期待できます。
登録免許税の軽減措置を受ける場合の注意点
登録免許税の軽減措置を利用する際の注意点は、以下の通りです。
軽減措置の対象者
軽減措置の対象となるのは、これから創業を行おうとする個人、または創業後5年未満の個人(既に設立した会社が組織変更を行う場合は対象外となる場合があります)など、一定の条件があります。詳細は市区町村にご確認ください。
創業する地域
原則として、支援を受けた市区町村内で会社を設立する必要があります。ただし、広域連携により、他の市区町村での創業も認められるケースもありますので、確認が必要です。
証明書の有効期限
発行された証明書には有効期限があります。証明書の有効期限は、次の1・2に掲げる日のうち最も早く到来する日です。
- 令和9年3月31日
- 開業届に記載されている開業日、または履歴事項全部証明書に記載されている成立年月日から5年を経過する日
制度変更等により有効期限が変わることも想定されますので、受取り時に自治体に確認しましょう。会社設立登記の申請が有効期限内に行われるように注意しましょう。
登録免許税の軽減以外の優遇措置
創業関連保証の特例や、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」の貸付利率の引き下げなど、登録免許税の軽減以外にもメリットがある場合があります。併用できる制度についても情報収集しておくと良いでしょう。
創業支援制度を活用する際のポイント
創業支援制度をフル活用するためには、いくつかのポイントがあります。
創業支援制度に関する情報収集は積極的に行う
創業支援制度に関する情報は、自治体、商工会議所・商工会、金融機関、地域の創業支援施設などのウェブサイト等で発信されています。まずは、ご自身の事業内容や状況に合った情報を積極的に収集しましょう。
特に、市区町村の創業相談窓口や、特定創業支援等事業を実施している支援機関の担当者は、最新の情報や具体的な手続きについて詳しいため、直接相談してみるのがおすすめです。疑問点や不安な点を解消し、適切なアドバイスを受けることができます。
専門家への相談も検討する
会社設立の手続きや税務、法務に関する事項は専門的な知識が必要です。登録免許税の軽減措置の申請手続きだけでなく、会社設立全体のプロセスについて、税理士や司法書士といった専門家に相談することも有効です。
専門家は、個別の状況に合わせた最適なアドバイスを提供してくれるだけでなく、書類作成の代行や申請手続きのサポートも行ってくれます。費用はかかりますが、時間と手間を大幅に削減でき、安心して事業の準備に集中できるというメリットがあります。
登録免許税の軽減に創業支援制度を賢く活用しましょう
会社設立時の登録免許税は、創業者にとって大きな負担の一つですが、自治体等が提供している「特定創業支援等事業による支援」を活用することで、その負担を大幅に軽減できる可能性があります。
この制度を利用するためには、一定期間の支援を受け、市区町村から証明書を発行してもらうといったステップが必要ですが、そのメリットは登録免許税の軽減だけに留まりません。創業に関する知識やノウハウを習得し、専門家からのアドバイスを受けることで、事業の成功確率を高めることにも繋がります。
情報収集を積極的に行い、必要に応じて専門家の力も借りながら、利用できる制度は賢く活用しましょう。この記事が、あなたの会社設立、そして事業の成功への第一歩を後押しできれば幸いです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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