- 作成日 : 2024年12月9日
子会社化や買収で何が変わる?経営権や給料、会計処理の違いを解説
企業の子会社化や買収が行われることがありますが、どのような目的で行われるのでしょうか。そして、何が変わるのかも知っておきたい部分です。
今回は、子会社化や買収で変化することについて解説します。経営権や給与、会計処理がどう変わるのかにも注目してご覧ください。
目次
子会社化と買収の違いは?
まずは、子会社化と買収の違いについて確認しておきましょう。
子会社化:
他企業の株式の半数以上を取得すること
買収:
他の会社の発行済み株式の半数以上を買うこと
買収と子会社化は全く違うものではありません。買収は子会社化の一つの手段と考えてください。
買収が株式を買って取得し、子会社化することを意味しますが、子会社化は「買収」以外に「株式分割」「増資」などの手段を使って子会社化することを意味します。
吸収合併との違い
吸収合併とは、すでに保有する子会社を吸収し1つの会社を存続会社とすることです。子会社化や買収はこれから子会社にすることですので、根本的に異なっています。
子会社化や買収の具体例
子会社化や買収の具体例を見ていきましょう。ここでは「マツモトキヨシグループ」「SBIホールディングス」の例をご紹介します。
マツモトキヨシグループ
2021年10月、ドラッグストア・調剤薬局チェーンのマツモトキヨシホールディングスは、同じくドラッグストア・調剤薬局チェーンのココカラファインを買収し、経営統合を行いました。この買収によりココカラファインはマツモトキヨシホールディングスの子会社となっています。
近年、ドラッグストア業界は新規参入も多く競争が激化しています。買収は新商品開発や販売戦略に力を入れることが目的です。なお、この経営統合により、2社を合わせた業界シェアは1位となっています。
SBIホールディングス
2021年12月、SBIホールディングスはTOB(株式公開買付)で新生銀行を買収しました。この買収により、新生銀行はSBIホールディングスの連結子会社となっています。この買収でSBIホールディングスは新生銀行が持つ地銀とのネットワークを手に入れました。今後の動きも注目されます。
また、新生銀行は、国から支給されている公的資金の返済中です。買収時、SBIホールディングスは新生銀行経営陣の一新と公的資金を完済する旨を発表しています。
子会社化や買収するメリット
子会社化や買収を行うメリットは次の通りです。
- 販路や売上、資産の拡大
- 後継者不足解消
- 企業・グループ内の活性化
販路や売上、資産の拡大
他の企業の買収で販路や売上、そして資産の拡大が期待できます。その他、買収先の企業が持つ人材や取引先、ノウハウも手に入ります。
自社のみで事業規模を拡大する場合、人材だけでなく時間も必要です。子会社化や買収を利用すれば、費用はかかりますが、時間をかけずに拡大できます。
後継者不足解消
買収される側のメリットになりますが、他の企業の子会社になることで後継者不足問題が解消できます。事業が継続できれば、従業員の雇用も維持できるでしょう。
企業・グループ内の活性化
子会社化や買収で他の企業文化が入ってくるため、グループや従業員の活性化も期待できます。
子会社化や買収するデメリット
以下の子会社化や買収のデメリットも確認しておきましょう。
- 企業・グループ内の意思統一が難しくなる可能性もある
- 債務を負う可能性がある
- 想定した売上があげられない場合もある
企業・グループ内の意思統一が難しくなる可能性もある
子会社化や買収を行なって、同じグループになっても意思統一ができない可能性もあります。会社の向いている方向がバラバラだと、グループの規模が拡大しても業績や従業員のやる気が向上しないこともありますので気をつけてください。また、人材の流出も考えられますので、細心の注意を払う必要があります。
債務を負う可能性がある
買収先の企業に債務がある場合、買収した企業が債務まで承継することになります。子会社化や買収の前にしっかり調査することが重要です。
想定した売上があげられない場合もある
子会社化や買収が成功しても、外部環境の変化等で想定した売上があがらない可能性もあります。売上があがらず業績が伸び悩んでも、グループ企業を維持する責任があります。
子会社化や買収で何が変わるか
子会社化や買収で以下の点が変化する可能性があります。
- 経営権
- 働き方
- 給料・賃金
- 会計処理
経営権
経営権が買収先企業に変更されます。それに伴い、社風が大きく変わる可能性もあります。
働き方
企業が他の企業に買収され子会社となっても、ほとんどの場合、従業員の処遇には変化はありません。しかし、人事査定の方法や基準が変更される可能性はあります。新たな基準で査定された結果、処遇が変更されることも考えられます。
給料・賃金
働き方同様、給与や賃金も変化はありません。ただし、人事査定の基準等が変更されると、その結果として給与額が変わる可能性はあります。
会計処理
買収や子会社化で同じグループ企業となった場合、会計処理は統一する必要があります。また、決算期も統一することが原則です。
子会社化や買収の方法
子会社化や買収する方法について確認しておきましょう。
株式取得
相手企業の株式を買い取り、経営権を取得するという方法です。株式取得の具体的な方法は以下の通りです。
売手企業の発行済み株式を全て受け取ります。反対に買手企業は株式の一部を売手企業に取得させます。
- 株式譲渡
「相続」「贈与」「売買」といった手段で売手企業の株式を買手企業に譲渡します。
今存在する企業が全ての発行済み株式を新たに設立する企業に取得させるという方法です。株式を取得された企業は新設企業の子会社となります。
事業譲渡
売手企業に金銭を支払い、事業を買い取ることです。株式を使っての買収とは異なり、部門ごとの買収ができます。企業全体ではなく、必要な部分だけ買うことも可能です。
子会社化や買収の会計処理、仕訳例
子会社化、買収時の買手企業の仕訳例を確認しましょう。
株式譲渡の仕訳
まずは、株式を譲渡する企業(売手企業)の仕訳です。帳簿価格550万円の株式を譲渡し、現金を600万円受け取った場合を例にご紹介します。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 現金 | 600万円 | 投資有価証券 | 550万円 |
| 投資有価証券売却益 | 50万円 | ||
以下は、売手企業の発行済み株式を20%以上、50%未満の範囲で取得している買手企業側の仕訳になります。600万円で発行済み株式の3分の1を取得したと想定します。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 関係会社株式 | 600万円 | 現金預金 | 3,000万円 |
売手企業の発行済み株式の50%以上を取得する場合、売手企業は子会社となります。その際の仕訳も確認しましょう。600万円で株式を取得したと想定します。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 関係会社株式 | 600万円 | 現金預金 | 3,000万円 |
どちらの場合も、「関係会社株式」の勘定科目を使います。
事業譲渡の仕訳
事業譲渡の際の仕訳もご紹介します。以下は、売手企業側の仕訳例です。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 5,000万円 | 土地 | 2,000万円 |
| 建物 | 1,000万円 | ||
| 商標権 | 500万円 | ||
| 機械装置 | 50万円 | ||
| 棚卸資産 | 500万円 | ||
| 事業譲渡益 | 950万円 | ||
買手企業側の仕訳例も確認しましょう。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 土地 | 2,055万円 | 現金預金 | 5,000万円 |
| 建物 | 900万円 | ||
| 商標権 | 1,500万円 | ||
| 機械装置 | 45万円 | ||
| 棚卸資産 | 500万円 | ||
事業譲渡の際は時価で売却価格が決まりますが、仕訳の際は「売手企業は簿価」「買手企業は時価」で計上します。そして「時価総額-簿価総額」で算出された金額が売手企業の事業譲渡益になります。
子会社化や買収の会計処理のポイント
子会社化や買収の際の会計のポイントをご紹介します。なお、企業会計は非常に煩雑になるため、適切な会計システムの利用が重要となります。以下を利用して確実に会計処理を行いましょう。
のれんの取り扱いに注意
「のれん」とは、企業のブランド価値のことです。具体的には「ブランド」や「ノウハウ」「立地」等がのれんにあたります。
企業の子会社化や買収の場合、のれんは、純資産より高い金額で売買された場合に会計処理しますが、仕訳の際は売手側が「事業譲渡益」という勘定科目で計上しなければなりません。
子会社化・買収の会計処理は、譲渡の方法によって異なる
子会社化や買収のメリットは、事業規模の拡大ができる点です。通常、販路や売上を拡大するためには、多くの時間や人員が必要ですが、子会社化では、時間をかけることなく、相手企業の販路等を手に入れることができます。
ただし、買収がうまくいっても外部要因等で売上が予想通りあがらない可能性もあります。その点は注意が必要です。
また、子会社化や買収時の会計処理は譲渡の方法によって変わってきます。譲渡方法を検討する際は、会計についても確認しておいてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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