- 更新日 : 2024年4月9日
実質的支配者となるべき者の申告書とは?手続き方法や書き方、記入例を解説
会社を設立する際には「実質的支配者となるべき者の申告書」を作成して提出しなければなりません。この記事では実質的支配者となるべき者の申請書の意味や書き方、手続きの流れや注意点について解説します。
目次
実質的支配者となるべき者の申告書とは?
まずは実質的支配者となるべき者の申告書の意味や手続きの概要について見ていきましょう。
実質的支配者とはどのような人?
実質的支配者とはその名の通り、法人を実質的に支配できる、つまり経営を左右するほどの影響力をもった個人もしくは法人のことを指します。具体的には以下のいずれかに当てはまる人が実質的支配者となります。
③.①、②がいない場合、事業活動に関して支配的な影響力をもっている個人
④.①~③がいない場合は代表取締役
具体的には代表取締役社長や役員、投資家、大口の債権者などが挙げられます。
実質的支配者となるべき者の申告書が必要となるケース
そもそも「実質的支配者となるべき者の申告」という制度は反社会的勢力やテロリストが法人を設立して違法行為(マネーロンダリングやテロリストへの資金提供など)を行うのを防ぐために、2018年11月30日より開始されました。実質的支配者となるべき者の申告書は法人設立時に必要となります。
申告の対象となる法人
「実質的支配者となるべき者の申告」の対象は株式会社、一般社団法人、一般財団法人の3つです。これらの法人において実質的支配者(経営者など)にあたる人が実質的支配者となるべき者の申告書を提出しなければなりません。
手続きを行うタイミング
実質的支配者となるべき者の申告の手続きを行うタイミングは会社設立時、具体的には定款の案文を法人の本店所在地を管轄する公証役場に提出する際に、実質的支配者となるべき者の申告書を同時に提出するのが望ましいです。提出後は公証役場によって認証手続きが行われます。
提出方法
実質的支配者となるべき者の申告書は持参のほか郵送、メール、FAXのいずれかの方法で公証役場に提出することが可能です。
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実質的支配者となるべき者の申告書の書き方、記入例
それではここからは実質的支配者となるべき者の申告書の書き方を見ていきましょう。申告書の用紙は日本公証人連合会のホームページからダウンロード可能です。今回は『実質的支配者となるべき者の申告書(株式会社用)』を用いて解説を進めていきます。

出典:日本公証人連合会『実質的支配者となるべき者の申告書(株式会社用)』
申請先と申請人に関する情報

出典:日本公証人連合会『実質的支配者となるべき者の申告書(株式会社用)』
「公証人役場名」の項目には本店所在地を管轄する公証役場名、「認証担当公証人」には担当公証人の氏名を記載します。日付の欄には申請書を作成した日付を書きましょう。「商号」には設立する法人名を正確に記載します。
「嘱託人住所」には発起人もしくは申請書を作成した行政書士の住所、「嘱託人氏名」は同様に発起人や司法書士の氏名を記載します。
実質的支配者となるべき者の該当事由

出典:日本公証人連合会『実質的支配者となるべき者の申告書(株式会社用)』
申請者が法人の実質的支配者であると判断した理由を記載します。申請書のフォーマットを見てみるとかなり難解な文章になっていますが、要約すると以下のような意味合いになります。
①.その会社の株式の50%超を保有している個人
②.①がいない場合は株式の25%超を保有している個人
③.①、②がいない場合、事業活動に関して支配的な影響力をもっている個人
④.①~③がいない場合は代表取締役
例えば上記の①に該当するのであれば、申請書には①にチェックを入れて問題ありません。
実質的支配者となるべき者の本人特定事項等

出典:日本公証人連合会『実質的支配者となるべき者の申告書(株式会社用)』
実質的支配者となる人に関し、以下のような情報を記載します。なお、実質的支配者が複数人いる場合は全員分の情報を記載しなければなりません。
申請者の住所
実質的支配者が住んでいる場所の住所を記載します。なお、上場企業とその子会社は権利義務の主体となる個人である「自然人」とみなされるので、経営者個人ではなく会社の住所を記載します。
氏名(フリガナ)
実質的支配者の氏名とフリガナを記載します。やはり上場企業とその子会社は会社名を記載します。
国籍
実質的支配者の国籍が日本であれば「日本」に、外国に籍がある場合は「その他」に丸をつけます。
生年月日
実質的支配者の生年月日を記載します。
性別
実質的支配者の性別について、男女いずれかに丸をつけます。
決議権割合
実質的支配者が①、②に該当する場合、保有している議決権、つまり株式の割合を数字で記載します。
実質的支配者の該当性の根拠資料
実質的支配者が法人を実質的に支配しているといえる根拠がわかる資料について、定款、定款以外の資料、なしのいずれかに丸をつけます。定款以外の資料がある場合はその原本もしくは写しを添付しましょう。また、実質的支配者の本人特定事項等が明らかにできる資料についても添付します。
暴力団員等該当性
該当・非該当のどちらかに丸をつけます。暴力団員等の反社会的勢力に所属していなければ非該当を選択して問題ありません。また、実質的支配者本人が記入した「表明証明書」をもって暴力団員等に該当しないことを表明することも可能です。
実質的支配者となるべき者の申告書の手続きの流れ
実質的支配者となるべき者の申請手続きは公証人役場で定款認証の手続きを行う際に行います。定款3通、発起人の実印、印鑑登録証明書、収入印紙、手数料(資本金100万円未満は3万円、100万円以上300万円未満は4万円、300万円以上は5万円)、実質的支配者となるべき者の申請書を用意します。手続きの際には事前に電話予約をしましょう。
手続きは発起人全員で公証人役場に赴くのが原則ですが、実際は発起人の代表者1名もしくは司法書士が手続きをするケースが多いです。その場合、委任状を用意して代理人が手続きを代理してもらいます。
また、定款認証および実質的支配者となるべき者の申請手続きは電子的に行うことも可能です。この場合は定款認証に関しては公証人がオンラインで本人確認をして定款認証を行います。実質的支配者となるべき者の申請書は前述の通り郵送、メール、FAXのいずれかの方法で提出可能です。
実質的支配者となるべき者の申告書の作成の注意点
実質的支配者となるべき者の申請書には、定款やその他の手続き書類と相違がないよう正確な情報を記載しましょう。
また、暴力団員等の構成員であるのにもかかわらず、それを偽って実質的支配者となるべき者の申請書の「暴力団員等該当性」の「非該当」に丸をつけて提出した場合、公正証書原本不実記載等罪が成立して5年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金に処されるおそれもあります。会社設立に違法性があれば当然公証人が定款を認証することはありません。また、認証がとおったとしても他の理由で公正証書原本不実記載等罪が発覚するケースも多いです。絶対に虚偽の申請をしないよう注意しましょう。
会社設立時には実質的支配者となるべき者の申請書の書き方もマスターしよう
会社設立時には実質的支配者となるべき者の申請手続きも必須となります。用紙を見てみると難しく感じられるかもしれませんが、実際に記載すべき内容はシンプルです。ぜひ今回の記事を参考にして書き方を押さえておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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