- 更新日 : 2023年10月23日
経営リスクとは?種類やリスクマネジメントの方法も紹介
経営リスクとは、企業経営で発生しうるリスクのことで、その種類は多岐にわたります。経営を成功に導くためには、経営リスクを予測し、リスクを未然に防ぎ、発生時の被害を抑えるための取り組みが欠かせません。今回は、経営リスクとは何か、種類やリスクマネジメントの方法、リスクアセスメントやクライシスマネジメントとの違いを解説します。
目次
経営リスクとは?
経営リスクとは、会社の経営において発生しうるリスクのことです。たとえば資金繰りに失敗する、自然災害によってインフラが停止する、サイバー攻撃を受けて重要な情報が漏洩する、などが該当します。
会社経営において、さまざまなリスクが予期せず発生する可能性は否定できません。事業をストップしなければならない場合もあります。
すべての経営リスクを予測することは難しいものです。しかし、起こりうる経営リスクを分析してリスクを防止、あるいは軽減するための方法を検討し備えることが大切です。
経営リスクの種類
経営リスクを把握して対策を講じるためには、まずはどのようなリスクがあるかを理解しましょう。
経営リスクには、以下のようにさまざまな種類があります。
- 経営戦略リスク
- 財務リスク
- ハザードリスク
- コンプライアンス・法務リスク
- サイバーセキュリティリスク
- オペレーショナルリスク
- 人事・労務リスク
ここでは、それぞれのリスクの概要と具体例を解説します。
経営戦略リスク
経営戦略リスクとは、経営における戦略や事業環境の変化によって発生するリスクのことです。
具体的には、以下のようなリスクが挙げられます。
経営戦略は、会社経営の方向性を示す重要なものです。同様に、経営戦略におけるリスクも、経営を揺るがす大きな影響力を秘めています。
財務リスク
財務リスクは、景気の変化や売上の低迷などによって経営状態が悪化するリスクのことです。
具体的には、以下のようなリスクが挙げられます。
- 事業の失敗
- 負債の増加
- 大口取引先の倒産
- 貸倒の発生 など
経営戦略と同様に、事業の低迷や撤退につながる重大なリスクです。財務リスクを防ぐためには、好況であっても放漫経営に陥らないようにする、資金繰りを見直すなど、経営や財務の管理が求められます。
ハザードリスク
ハザードリスクとは、自然災害や事故、故障といった、外的要因によって発生するリスクです。
具体的には、以下のようなリスクが挙げられます。
- 地震
- 津波
- 台風
- 感染症 など
外的要因は、予測困難でコントロールできないのが特徴です。リスクの規模によっては、事業停止を余儀なくされる可能性も否定できません。
日本は、その地形ゆえに自然災害リスクが起こりやすい国です。さらに、近年の環境変化によって、自然災害リスクが頻発しています。
日頃から防災意識を高め、対策することが欠かせません。
コンプライアンス・法務リスク
コンプライアンス・法務リスクとは、経営陣や従業員による不祥事や法律違反、製品の不備などによって発生するリスクのことです。
具体的には、以下のようなリスクが挙げられます。
- 贈収賄
- 従業員による横領・不正
- 知的財産権の侵害
- 機密情報の漏洩
- 関連法規制の抵触
- 反社会的勢力への加担
コンプライアンス・法務リスクは、ブランドイメージの低下や社会的信用の失墜につながります。コーポレートガバナンスを強化して、未然に防ぐことが重要です。
サイバーセキュリティリスク
サイバーセキュリティリスクとは、重要な情報が外部に漏えいしたり、悪用されたりするリスクのことです。
具体的には、以下のようなリスクが挙げられます。
- マルウェアによる攻撃
- ID・パスワードの不正入手による被害
- メールの誤送信
- データ紛失 など
社外秘の重要な技術に関する情報が漏えいすると、事業の利益が損なわれてしまいます。また、顧客情報や取引先の機密情報などが流出してしまうと、世間から批判を受け、信用を失ってしまう可能性が高いです。
データ化が進んでいる昨今だからこそ、サイバーセキュリティリスクには細心の注意を払いましょう。
オペレーショナルリスク
オペレーションリスクとは、企業内部の瑕疵や怠慢など、オペレーションの欠陥によって発生するリスクのことです。
具体的には、以下のようなリスクが挙げられます。
- 業務運用ミス
- 製品やサービスの瑕疵
- 製造物責任、リコール
- 悪質なクレーム
- 人材流出 など
オペレーションリスクが発生すると、顧客からのクレームやブランドイメージの低下などにつながる可能性が高いです。内的要因によって発生するため、防止できるかは企業にかかっています。
人事・労務リスク
人事・労務リスクとは、従業員の労働に関するリスクのことです。
具体的には、以下のようなリスクが挙げられます。
- 残業代の未払い
- 過重労働
- 労災の発生
- 従業員のメンタル不調
- 不当な解雇 など
人事・労務リスクが発生すると、人材流出や損害賠償請求、社会的信用の失墜などにつながります。事業の存続にも影響するため、対策が欠かせません。
リスクマネジメントとは?
リスクマネジメントとは、リスクを組織的に管理し、損失の回避や軽減を図ることです。
経営戦略に関する会議を行ったり、危機管理部門を設置したりすることも、リスクマネジメントに該当します。
リスクを未然に防ぐために欠かせません。特に、業務が複雑化し管理システムのあり方も変化している昨今、リスクマネジメントの重要性は非常に高まっています。
以下では、リスクマネジメントと混同しやすい、リスクアセスメントやクライシスマネジメントの概要と、リスクマネジメントとの違いについて解説します。
リスクアセスメントとは
リスクアセスメントとは、危険性や有害性などのリスクを特定・分析し、リスクの度合いを評価することです。
労働安全衛生法第28条の2では、製造業や建設業の事業者については、作業における危険性や有害性を調査し、その結果に基づいて措置の実施に取り組むことが努力義務とされています。
リスクアセスメントは、リスクを特定し、その度合いを評価するまでのプロセスのことを指します。一方、リスクマネジメントは、経営リスクの特定や評価に加え、リスクを回避・軽減するための方法を検討することです。このように、両者は指し示す範囲が異なります。
参考:e-Gov法令検索 昭和四十七年法律第五十七号 労働安全衛生法
クライシスマネジメントとは
クライシスマネジメントとは、事業や企業の存続を揺るがす、深刻な危機的状況への対処方法のことです。
リスクマネジメントにおけるリスクへの対処とは、危機の発生を未然に防ぐ、あるいは被害を軽減するための方法を検討することを指します。一方、クライシスマネジメントでは、危機が発生したあと、どのように対処するかを検討するという点が違いです。
経営リスクへの対応法
経営リスクに対応するためには、以下の3つの手順を踏みましょう。
- リスクの洗い出し
- リスク対応の優先順位決め
- 各リスクの対応方法の決定
経営リスクにはさまざまな種類があります。抜け漏れなく分析することが大切です。
また、すべてのリスクに一度で対応することは難しいため、優先順位を決め、リスクの度合いに応じて対応方法を決める必要があります。
ここでは、経営リスクへの対応法について解説します。
リスクの洗い出し
まずは、経営リスクを洗い出し、特定しましょう。
リスクには非常に多くの種類があるため、以下のような観点で分類し、リスクを洗い出すのがおすすめです。
- リスクの範囲
- 期間
- 発生する原因
- 発生する状況
- 発生する頻度
- 発生した際に被る損害
社内でアンケート調査やインタビューを実施すると、幅広い視点からリスクを特定できます。
また、組織に不利益をもたらすリスクだけでなく、利益をもたらす事象についても書き出すことが大切です。
リスク対応の優先順位決め
次に、以下のような観点から、どのリスクから対応すべきか、優先順位を決めましょう。
- リスクの発生確率
- 想定される被害の大きさ
- リスクの複雑さ
- 結合性
各リスクごとに点数を与えて数値化すると、優先順位がわかりやすくなります。従業員にとっても、どのリスクを重視すべきなのかがわかるため、意識して行動できるようになるのがメリットです。
各リスクの対応方法の決定
最後に、それぞれのリスクに対して対応方法を決めましょう。
リスクの対応方法には、大きく以下の4つがあります。
- リスク低減:リスクが発生する確率を下げたり、発生した際の影響を小さくすること
- リスク保有:リスクを認識しつつも、対応はせず、受け入れること
- リスク回避:リスクが生じる原因を取り除き、発生を未然に防ぐこと
- リスク移転:リスクが自社外で発生するように移転させること。発生する確率は低いが、万が一発生した際に甚大な被害が及ぶリスクに対して行われる
すべてのリスクを未然に防ぐことは困難です。リスクの種類や度合いに応じて、適切な対応方法を決める必要があります。
経営リスクを予測して適切に対処しよう
経営リスクとは、経営において発生しうるリスクのことです。経営戦略リスクや財務リスク、ハザードリスク、サイバーセキュリティリスクなど、多くの種類があります。安定した経営や事業継続を実現するためには、自社の経営リスクを予測し、特定することが大切です。そして、リスクの種類や被害の大きさ、発生確率の高さなどをもとに、適切な対応方法を検討しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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