- 更新日 : 2025年12月24日
格差社会とは?原因や対策・格差の種類について解説!
格差社会とは、国内または地域内で個人の力では解決が困難なくらいに格差が大きくなった社会のことです。格差が拡大すると、貧困や社会の分断などが想定されます。
この記事では、格差社会の意味や原因、対策などについて解説します。格差の解消には社会全体での取り組みが必要ですが、格差を国民全体の課題として捉え認識を深めるきっかけとして下さい。
格差社会とは
最初に、格差や格差社会の意味について解説します。格差が問題になる理由や貧困との違いについても確認しておきましょう。
そもそも格差とは?
格差とは「同類のものの間における、程度(水準や資格、格付け、レベルなど)の差や違い」のことです。たとえば、日本の経済格差とは、日本国内における各家庭の貧富の差を指します。
格差は、所得や学歴、地位、情報の収集力などさまざまな分野で発生します。
格差社会はどういった状態を指す?
格差社会とは、格差が大きくなり社会が分断されている状態を指します。日本では経済格差が拡大しているといわれますが、中間層が減少する一方、富裕層と貧困層が増加し貧困層の救済などが問題となっています。
また、格差社会は、格差が固定されたり、拡大したりするのが特徴です。たとえば、富裕層はより豊かになり、貧困層はますます生活が苦しくなる傾向にあります。
格差はなぜ問題になる?
社会生活や日常生活で格差が発生するのは当然ですが、格差が問題になる主な理由は次の2つです。
- 格差が固定し個人の力ではその解消が難しい
- 格差が社会に対する不満や不公平感を生む
富裕層では資産が子や孫に引き継がれる一方、貧困層の子どもは十分な教育が受けられず貧困から抜け出せないなど、本人の努力に関係なく世代を超えて格差が固定します。
貧困が世代を超えて固定すると、努力しても報われない人たちは国や社会に対し不満や不公平さを感じるようになり、社会が持てる者と持たざる者に分断される可能性もあります。
格差と貧困の違い:絶対的貧困と相対的貧困
「格差(格差社会における貧困)」と、発展途上国などで問題となる「貧困」とは意味が異なります。貧困は生きるための衣食住を十分に確保できない状況を指しますが、格差社会における貧困はその国や地域において相対的に困窮している状況です。
前者を「絶対的貧困」、後者を「相対的貧困」と呼び、次の通り貧困率を計算します。
- 絶対的貧困:1日2.15ドル未満で暮らす「極度の貧困」状態にある人の割合
- 相対的貧困:等価可処分所得の中央値の半分(2021年は127万円)以下の世帯の割合
厚生労働省の「2022(令和4)年国民生活基礎調査」によると、日本の相対的貧困率は15.4%、子どもの貧困率は11.5%です。また、一人親世帯の貧困率は44.5%であり、およそ2世帯に1世帯が相対的貧困の状況にあります。
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格差社会の種類
格差社会には、さまざまな種類があります。主な種類と格差の状況について確認しておきましょう。
所得格差
所得格差とは、世帯間の年間所得金額の格差です。厚生労働省の調査によると、所得金額の分布は次の通りです。約20%の世帯が200万円以下である一方、1,000万円を超える世帯が10%以上あります。

引用:2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況|厚生労働省
所得格差を表す指標として「ジニ係数」が使用されます。ジニ係数は0から1の数値で表示され、格差が大きいほど数値は大きくなります。ジニ係数を国際比較すると、日本のジニ係数はアメリカとイギリスについで高い状況です。

引用:図表1-3-1OECD主要国のジニ係数の推移|厚生労働省
教育格差
教育格差とは、家庭環境などによって子どもが受けられる教育に格差が生まれることです。文部科学省の調査によると、世帯年収462万円以下の世帯の子どもの大学進学率は約40%に対し、1062万円以上の世帯では約70%と大きな格差が見られます。
さらに、住民税非課税世帯(世帯年収250万円未満程度)の大学進学率は約20%に過ぎません。

また、学歴によって生涯賃金に大きな差が生まれるため、親の貧困が子どもにも受け継がれます。

情報格差
情報格差とは、インターネットなどの情報通信技術を活用できる人と、できない人との間に生じる格差のことです。情報格差のことを「デジタル・デバイド」、情報通信技術を活用できずに有用な情報を得られない人を「情報弱者」と呼ぶこともあります。
総務省の調査によると、インターネットの利用率が低いのは、高齢者や世帯年収の低い人です。インターネットを活用できないことによって、仕事で生産性を上げたり、日常生活を豊かにしたりする機会を逃すこともあるでしょう。

地域格差
地域格差とは、居住地によって所得などに格差が生じることです。主要産業や大企業が集中する都市部の所得が高く、大きな産業の少ない地方の所得は低い傾向にあります。
内閣府の「県民経済計算」によると、2020年の1人あたりの県民所得は東京都が約521万円に対し沖縄県が約217万円と2倍以上の格差が生じています。
人口についても地方から都市部への移動が進み、地方では過疎化の問題が顕著です。
男女格差・ジェンダー格差
ジェンダー格差とは、経済や政治への参画状況などにおいて男女間で生じる格差のことです。世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数(GGI)2023年」によると、世界146ヶ国の中で日本の総合順位は125位と低めです。
ジェンダー・ギャップ指数は、経済や教育、保健、政治の各分野における男女格差を基に計算します。日本は教育や保健の分野では世界トップクラスである反面、政治と経済については最低レベルです。

医療格差
医療格差とは、居住地や経済状況などによって受けられる医療水準などに格差が生じることです。
厚生労働省の「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、人口10万人あたりの医師数は次の通り都道府県によって大きく異なり、居住地によって医療を受けやすさに格差が生じています。
- 上位の都道府県:徳島県(335.7人)、高知県(335.2人)、京都府(334.3人)
- 下位の都道府県:埼玉県(180.2人)、茨城県(202.0人)、千葉県(209.0人)
また、生活が苦しいため医療機関の受診を控える人もいるでしょう。経済格差が医療格差につながる可能性もあります。
世代間格差
世代間格差とは、世代によって社会保障の負担と受益に格差が生じることです。社会保険の負担とは、年金保険料や健康保険料、税金の支払いのことです。受益とは、公的年金の受給や医療費の負担軽減、義務教育の無償化などを指します。
内閣府の調査によると、1994年から2015年にかけて各世代の社会保険料などの負担は増加する一方、若年層の受益は他の年代ほど増えていません。その結果、若い世代ほど負担増に見合った利益を得られず、社会保険制度に対する不満や不信感が生じやすい状況です。

格差が生まれてしまう原因
社会生活や日常生活である程度の格差が生じるのは当然ですが、どうして格差社会といわれるほど、大きな格差が生じるようになったのでしょう。格差が生まれる主な原因は次の通りです。
- 少子高齢化
- 失業率が増加することによる所得者の減少
- 税・社会保険・賃金といった各種制度の変更や体制
- ひとり親世帯の増加
- 都市部への人口流出による地域格差
それぞれの原因について解説します。
少子高齢化
格差が生まれる原因の1つが、少子高齢化の進展です。社会保険制度を支える現役世代が減少し年金などを受給する高齢者が増えることによって、現役世代の負担が高まるためです。
内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、2022年10月時点の高齢化率(総人口に占める65歳以上の人の割合)は29%で2037年には33.3%まで高まると予想されています。3人に1人が高齢者となり、現役世代の負担はさらに大きくなり、世代間格差の拡大が予想されます。
失業率が増加することによる所得の減少
バブル崩壊後の失業率の高まりが、所得格差拡大の一因といえます。経済の長期低迷により非正社員として働く人が増え、十分な収入が得られなくなったためです。

引用:図1 完全失業率、有効求人倍率|独立行政法人労働政策研究・研修機構
特に、就職氷河期と呼ばれる1993年から2005年頃に就職活動をした人は、希望通りの就職ができず現在でも経済的な不安を感じる人が多い状況です。その結果、経済的理由で結婚したいと考えない人や、老後に不安を感じる人の割合が他の世代より高くなっています。
産業構造や賃金制度の変化
産業構造や賃金制度といった社会のさまざまな変化も、所得格差が生じる要因となりえます。産業構造の変化によって業種間の所得格差が拡大することや、成果主義の賃金体系によって、勤務年数が同じでも給与に差が出るようになったためです。
日本産業の中心は、工業化により第一次産業から第二次産業に、経済の成熟により第二次産業から第三次産業に移行しました。近年ではデジタル化の進展でIT産業が成長しています。変化に対応するスキルやノウハウのある人の所得は高まり、そうでない人の賃金は低下傾向です。
また、賃金制度においても、年功序列から成果主義・能力主義に変更する企業が増え、年功による横並びの賃金が、成果や能力に応じて大きく異なるケースも出てきています。
ひとり親世帯の増加
離婚の増加に伴いひとり親世帯も増えており、これが所得格差の一因となっています。内閣府の調査によると、ひとり親世帯数は増加傾向にあり、母子世帯が全体の80%以上を占めます。

また、内閣府の「男女共同参画白書令和5年版」によると、母子世帯の就業者のうち非正社員が46.5%を占め、その年収(236万円)は一般世帯の女性平均(302万円)より低い状況です。その結果、ひとり親世帯の貧困率は48.3%で、OECD加盟36ヶ国中最下位です。
都市部への人口流出
地方から都市部への人口流出は、地域格差を拡大させています。若年層を中心とする労働力が地方から流出し、地域産業の担い手が減ってしまうためです。
地域産業が衰退すると、働く場所がなくなったり若者が魅力を感じる職場が減ったりして、人口流出が加速することになります。町興しやUターン・Iターン転職を推進する自治体も増えてきていますが、地方から都市部への人口流出が続いているのが現状です。
格差を生まないための対処法
格差の拡大は、社会に不満や不公平感を感じる人を増やし社会の分断を引き起こす可能性もあるため、国や社会の対応が必要です。格差を生まないための主な対処法は次の通りです。
- 税の累進課税制度を導入・高める
- ベーシックインカムを導入する
- 退職率・解雇率を下げる
- 同一賃金同一労働の原則を守る
- 非正社員の雇用安定・給料の増額
- 転職や就職の支援制度を整える:ハロートレーニングなど
- 児童扶養手当といった給付金制度の活用
それぞれの対処法について解説します。
税の累進課税制度を導入・高める
対処法の1つは、所得税などの累進課税制度の累進性を高めることです。累進課税制度とは、課税所得が高くなるほど税率を高くする課税方法のことです。課税所得の多い人の税金を高くし少ない人の税金を下げることにより、実質的な所得格差を抑える効果があります。
所得税の税率は5%から45%までですが、最高税率を45%超にするなどして累進性を高めれば、現在より実質的な所得格差を抑えられます。贈与税率の累進性を高めて、資産格差の是正を図るという方法もあるでしょう。
ベーシックインカムを導入する
ベーシックインカムとは、生活に必要な最低限の金額を国が支給する制度のことです。制度を導入すれば、収入が少なくても経済的に困らなくてすみます。また、累進課税で資産家や高所得者から税金を集め国民全員に支給することで資産や所得の格差を減らせるでしょう。
海外では実験的にベーシックインカムを導入している国もありますが、ベーシックインカムの実現には財源の確保など大きな課題があります。
退職率・解雇率を下げる
企業ができる格差対策としては、退職率や解雇率を下げて従業員の雇用や収入を守る方法があります。本人希望の転職は仕方ありませんが、退職や解雇によって生活に困る従業員を減らすことができます。
少子高齢化の影響で人手不足が深刻化する中、退職率や解雇率を下げることは企業の人材確保対策としても有効です。
同一賃金同一労働の原則を守る
同一賃金同一労働の原則とは、企業内で同じ仕事をしている正社員と非正社員の賃金を同一にするという労働契約上のルールのことです。正社員と非正社員の不合理な待遇差の解消を目的としています。
企業が同一賃金同一労働の原則を守ることによって、所得格差や貧困の原因の1つである非正社員の低賃金が改善されます。
非正社員の雇用安定・給料の増額
契約社員や派遣社員などの非正社員は雇用期間が限定されているため、経済的に不安定です。正社員で採用したり無期契約にしたりすることで、失業のリスクを減らし所得が安定します。
また、正社員と比較して低賃金であるため、給与を増額するなどして非正社員の収入をアップさせることが格差の是正につながります。
転職や就職の支援制度を整える:ハロートレーニングなど
国や企業が転職・就職の支援制度を整えることも、所得格差の解消に効果的です。支援制度を活用して転職や就職がうまく行けば、転職による給与アップや失業リスクの低減が期待できるからです。
国では生活費として給付金を受給しながらハローワークなどで無料の職業訓練を受けられる求職者支援制度を設けています。在職中でも、条件を満たせば無料の訓練が受けられます。
また、転職や就職を支援する企業に対する助成金もあるため、企業の人事労務担当者は活用を検討してみましょう。
児童扶養手当といった給付金制度の活用
子育て世帯は、支出が増えたりフルタイムで仕事ができなかったりして経済的に厳しくなることもあるでしょう。国や地方自治体では子育て世帯の支援や少子化対策を目的として、さまざまな支援制度を設けているため、制度を有効に活用しましょう。
たとえば、貧困率の高いひとり親世帯を対象とした児童扶養手当は、1人目の子どもについて毎月最大4万4,140円と支給額が高額です。
格差の現状や原因を理解し社会全体で取り組みが必要
格差社会では、貧困や社会の分断などさまざまな問題が発生します。少子高齢化の進展や非正社員・ひとり親世帯の増加などにより、今後も格差の拡大が予想されます。
格差をなくすために個人や一企業ができることは限られますが、格差の現状や原因を理解することが重要です。多くの人が格差について認識を深めたうえで、国や社会全体が格差を抑えるために取り組まなければなりません。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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