- 更新日 : 2026年2月19日
育休がない会社は違法?拒否されるケースや正しい対応策を解説
育休はすべての会社に適用される法律上の制度です。
- 育休制度は全企業に適用
- 前例や社内規程は無関係
- 更新未定でも対象外にならない
会社に制度がないと言われても諦める必要はありません。育休は育児・介護休業法に基づき当然に適用され、就業規則未整備や前例の不存在を理由に排除する扱いは法的に誤りとされます。
育休がない、または「うちの会社では前例がない」と言われたとき、多くの人が本当に取得できるのか、不安や疑問を感じるのではないでしょうか。育児休業は特別な配慮ではなく、法律で定められた労働者の権利です。しかし現実には、制度への理解不足や職場の慣習によって、育休を申し出にくい状況が生まれているケースも少なくありません。
本記事では、育休がない会社は違法なのかという疑問から、前例がない職場での交渉の考え方、拒否された場合の対処法などを解説します。
目次
そもそも育児休業制度とは?
育児休業制度は、仕事と子育てを両立するために設けられた法律上の制度です。ここでは、育児休業制度の基本的な仕組みを整理し、制度の全体像を解説します。
育児休業は子を養育するために仕事を休める制度
育児休業(育休)とは、原則として1歳未満の子を養育するために、一定期間仕事を休むことが法律で認められている制度です。出産した本人だけでなく、その配偶者も対象となり、育児に専念する時間を確保することを目的としています。
男女問わず取得でき、雇用形態も限定されない
育休は女性だけの制度ではなく、男性社員も取得できます。いわゆる男性育休も法律上明確に認められています。また、正社員に限らず、パートや契約社員であっても、一定の条件を満たせば取得可能です。ただし、日雇い労働者など一部の雇用形態は対象外となります。
取得期間と延長の仕組み
育休の期間は、原則として子が1歳の誕生日を迎える前日までです。ただし、保育所に入所できないなどの事情がある場合には、1歳6か月まで、さらに条件を満たせば最長で2歳まで延長することができます。
育休中の収入と社会保険の扱い
育休中は会社から給与は支給されませんが、雇用保険から育児休業給付金が支給されます。支給額は、休業開始から180日間は賃金日額の67%、181日目以降は50%が目安です。また、健康保険料と厚生年金保険料は、申請により本人分・会社分ともに免除されます。
育休取得を理由とする不利益な扱いは禁止
育休を取得したこと、または取得しようとしたことを理由に、解雇や減給、降格などの不利益な取り扱いを行うことは法律で禁止されています。育児休業制度は、安心して利用できるよう法的な保護が設けられている制度です。
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育休がない(取得できない)会社は違法?
育児休業制度について調べると、「自分の会社には育休制度がないが問題ないのか」と不安に感じる方は少なくありません。結論から言えば、会社の規模や就業規則の記載有無にかかわらず、育休は法律に基づく制度です。この見出しでは、育休がない会社が法的にどのように扱われるのかを整理します。
育休は法律で保障された労働者の権利
育児休業(育休)は、育児・介護休業法によって定められた労働者の権利です。一定の要件を満たした労働者が育休を申し出た場合、会社は原則としてこれを認めなければなりません。これは正社員に限らず、条件を満たす契約社員やパートタイム労働者にも適用されます。
就業規則に育休の記載がなくても取得できる
会社の就業規則に育休制度の記載がない場合でも、育休の取得自体が否定されることはありません。育休は法律に基づいて当然に認められる制度であるため、社内ルールの未整備を理由に取得を拒むことはできません。企業規模の大小も関係なく、すべての会社に対応義務があります。
「育休がない」を理由とする拒否は違法となり得る
労働者が正当な条件を満たしているにもかかわらず、会社が「うちには育休制度がない」として申請を受け付けない場合、その対応は育児・介護休業法に反する可能性があります。このようなケースでは、会社の対応が違法行為と判断される余地があるため、注意が必要です。
育休をとりづらい職場の特徴は?
育休制度が法律で整備されていても、実際には取得しにくい職場が存在します。ここでは、育休が取りづらい職場に共通して見られる特徴を整理し、なぜ取得が難しくなってしまうのかを解説します。
人員に余裕がなく業務を補えない体制
育休を取りづらい職場の典型例として、人員に余裕がなく、誰かが抜けると業務が回らなくなる体制が挙げられます。慢性的な人手不足の職場では、一人あたりの業務量が多く、長期間の休業に対する不安が大きくなりがちです。大企業であれば部署間の異動やチーム内での分担によって対応できる場合もありますが、規模の小さい企業では代替要員を確保する余裕がなく、結果として育休取得が敬遠されやすくなります。欠員補充を行わないことで、残された社員の負担が増え、さらに育休を取りにくい雰囲気が強まる悪循環に陥ることもあります。
前例がなく退職が前提になっている職場風土
育休の前例がない職場では、制度があっても「実際には使えないもの」と認識されてしまう傾向があります。妊娠や出産をきっかけに退職するのが当然とされてきた企業では、社員自身も育休取得を選択肢として考えにくくなります。特に男性社員の育休取得者がいない職場では、男性が育休を申し出ることに心理的な抵抗を感じやすく、「言い出せない空気」が生まれがちです。このような企業風土では、制度が形だけ存在しても利用されず、結果として育休取得の前例が生まれない状態が続いてしまいます。
会社が育休を拒否できるケースはある?
育児休業は原則として労働者の申出により取得できる制度ですが、すべてのケースで無条件に認められるわけではありません。法律では、企業が例外的に育休申請を認めなくてもよい場合が限定的に定められています。
原則として会社は育休申請を拒否できない
育児・介護休業法では、要件を満たした労働者から育休の申出があった場合、会社は原則としてこれを受け入れる義務があります。法律に基づく例外に該当しない限り、会社の判断のみで育休を拒否することはできません。
会社が育休を拒否できるケース【法定の例外】
- 労使協定で育休の対象外と定められている労働者
会社が労使協定(事業主と労働者代表による書面協定)を締結している場合に限り、一定の労働者を育休の対象外とすることが認められています。入社から1年未満の従業員、育休申出日から1年以内に契約期間が満了し更新されないことが明らかな有期契約労働者、週2日以下の勤務日数の従業員が該当します。なお、労使協定が存在しない場合、これらの条件に当てはまっていても会社は育休を拒否できません。 - 契約期間の要件を満たさない有期雇用労働者
有期雇用労働者については、育休申出時点で「子が1歳6か月に達するまでに契約が終了し、かつ更新されないことが明らかである」場合、法律上、育児休業の対象外となります。この場合、会社が育休申請を認めなくても違法にはなりません。 - 日雇い労働者である場合
日々雇用される日雇い労働者は、育児・介護休業法の適用対象から除外されています。そのため、日雇いという雇用形態そのものが、育休制度の対象外とされています。
育休の前例がないと言われた場合、どう交渉する?
職場で「育休の前例がない」と言われると、取得を諦めるべきか迷う方も多いでしょう。しかし、前例の有無と育休の可否は別の問題です。育休は法律で定められた制度であり、適切な伝え方と準備を行えば、会社の理解を得られる可能性は十分にあります。
法律に基づく正当な権利であることを伝える
前例がない場合にまず行うべきなのは、育休が個人の希望ではなく、法律で保障された権利であることを伝えることです。育児・介護休業法では、一定の条件を満たした労働者が育休を申し出た場合、会社は原則としてこれを拒否できないと定められています。
そのため、「これまで誰も取っていない」という理由だけでは、育休を認めない根拠にはなりません。感情的に主張するのではなく、法律の趣旨や条文の概要を示しながら、冷静に説明する姿勢が重要です。
育休中の業務体制を具体的に示す
会社が不安を感じやすい点は、育休中の業務がどうなるのかという点です。そのため、取得期間中の引き継ぎ方法や業務分担について、自分なりの案を示すことが有効です。代替要員の確保や業務の一時的な見直しなど、現実的な対応策を提案することで、会社側の心理的なハードルは下がります。
人手不足を理由に育休取得を渋られることもありますが、業務の忙しさは本来、育休を拒否できる理由にはなりません。国の助成制度を活用すれば、会社の負担を抑えられる点も併せて伝えるとよいでしょう。
会社にとってのメリットを説明する
育休は従業員のためだけの制度ではなく、会社にとってもメリットがあります。育休後に復帰し、長く働いてもらえれば、経験やスキルを持つ人材を維持でき、採用や育成にかかるコストの削減につながります。また、育休を取得しやすい企業であることは、社外からの評価向上にも寄与します。反対に、妊娠や出産を機に退職者が続く職場は、人材確保の面で不利になりがちです。こうした中長期的な視点を共有することで、会社側の理解を得やすくなります。
育休を拒否された場合の対処法は?
育休は法律で認められた権利であるため、会社に拒否された場合でも諦める必要はありません。まずは社内での解決を試み、それでも改善しない場合には、公的機関や専門家の力を借りることで、状況が前進する可能性があります。
社内の相談窓口や上司に報告する
育休を拒否された場合、最初に検討したいのが社内での相談です。企業は、ハラスメント相談窓口を設けることが義務とされているため、まず相談窓口の利用を検討してください。「育休申請をしたが受け付けてもらえなかった」という事実を伝え、社内で状況を確認してもらいましょう。そのうえで、直属の上司や人事担当者に改めて育休取得の意思を伝え、会社として法令に沿った対応を求めることが大切です。
労働局などの公的機関に相談する
社内で話し合っても改善が見られない場合は、外部の公的機関への相談を検討します。各都道府県の労働局にある雇用環境・均等部(室)では、育児・介護休業法に基づく相談を受け付けており、会社との間に入って助言や指導を行う制度があります。場合によっては、第三者によるあっせんを通じて話し合いを進めることも可能です。会社が明らかに法令違反をしている場合には、行政から是正を求める対応が行われることもあります。
弁護士に相談し法的対応を検討する
公的機関への相談でも解決しない場合や、育休を理由に解雇や降格などの不利益な扱いを受けた場合には、弁護士への相談も視野に入ります。弁護士は法律の専門家として、会社に対し育休取得の法的根拠を説明し、交渉を代行することができます。話し合いで解決しない場合でも、労働審判や訴訟といった手段を通じて、育休取得の権利を主張することが可能です。段階的に対応を進めることで、自身の権利を守る選択肢が広がります。
育休を取得しやすい職場をつくるには?
育休が特別なものではなく、自然に選択できる制度として定着している職場では、従業員は安心して仕事と子育てを両立できます。そのような環境を整えることは、従業員の定着や企業価値の向上にもつながります。
経営層が明確に支援の姿勢を示す
育休を取りやすい職場づくりの出発点は、経営層や管理職の姿勢です。トップや上司が「育休を取って当然」「安心して戻ってきてほしい」といったメッセージを発信することで、従業員は心理的な不安を感じにくくなります。育休取得者がいない職場であっても、上司から復帰を前提とした声かけがあるだけで、育休取得を前向きに考えられるようになります。経営層自らが支援を明確に示すことが、職場全体の意識を変えるきっかけになります。
制度整備と助成金を活用した環境づくり
制度面の整備と周知も欠かせません。就業規則に育児休業制度を明記し、妊娠や出産の報告があった際には、個別に制度内容を説明する体制を整えることが望まれます。法改正により、育休を取得しやすい雇用環境の整備や制度の個別周知が企業に求められるようになっています。
また、中小企業では、国の助成金制度を活用することで、代替要員の確保や業務調整にかかる負担を軽減できます。こうした制度を活用しながら、現実的に運用できる仕組みを構築することが重要です。
復帰後を見据えたサポートと職場の理解
育休を取りやすくするためには、取得後の復帰まで見据えた支援が必要です。復帰前後に面談を行い、働き方や不安を共有することで、従業員は安心して職場に戻ることができます。特に保育園入園直後は子どもの体調不良が続くことも多く、周囲の理解と協力が欠かせません。あらかじめ職場全体に共有しておくことで、無用な摩擦を防ぐことができます。復帰後のサポート体制を整えることが、育休制度を定着させます。
育休がない会社と向き合うために知っておきたいこと
育休がない、あるいは取りづらいと感じる会社であっても、育児休業は法律で保障された労働者の権利です。前例がないことや人手不足といった理由だけで取得を諦める必要はありません。会社が育休を拒否できるのは法律で定められた限られたケースに限られており、多くの場合は正しい知識をもって冷静に伝えることで状況が変わる余地があります。
万が一、育休を拒否された場合でも、社内相談や労働局、専門家への相談といった選択肢があります。また、育休を取得しやすい職場づくりは、従業員の安心だけでなく企業の持続的な成長にもつながります。制度と現実のギャップを理解し、自身の権利を守る行動を取ることが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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