- 更新日 : 2026年1月29日
売り手市場での採用戦略とは?中途・新卒・業界別で見るヒントを解説
売り手市場の採用とは、求人が求職者数を上回り、企業よりも求職者が有利な環境で人材獲得を行う採用活動です。
- 有効求人倍率1.0超が目安
- 応募不足・辞退増が起こりやすい
- 企業は「選ばれる側」になる
売り手市場で採用を成功させるには、待ちの募集ではなく、条件改善やスカウト活用など攻めの採用戦略が不可欠です。
人材不足が深刻化する現代の採用市場では、企業よりも求職者に有利な「売り手市場」が定着しつつあります。中小企業や特定業界では、優秀な人材の確保が年々難しくなっており、従来型の採用手法では成果を上げにくい状況が続いています。
本記事では、売り手市場の意味や判断基準に加え、企業にとっての影響、採用活動を成功に導くための戦略などを解説します。
目次
売り手市場とは?採用市場での判断基準は?
採用を取り巻く環境は経済や人口構造の変化に大きく左右されます。その中で注目されるのが「売り手市場」と呼ばれる状況です。ここでは、その意味や判断基準について解説します。
求職者数より求人が多く、企業よりも求職者が有利な状態を指す
売り手市場では、労働力を提供する側(売り手)である求職者が、複数の企業から選ばれる立場となります。これは好景気や人手不足によって企業の採用意欲が高まり、求人数が求職者数を上回っている状況で発生します。企業にとっては採用の難易度が上がる一方、求職者にとっては内定の選択肢が広がりやすく、転職や就職活動に有利です。
ただしこの状態はすべての業界に当てはまるわけではなく、業種や職種によっても異なります。ITや介護などの業界では慢性的な人手不足により、継続的に売り手市場が形成されています。
売り手市場かどうかは、有効求人倍率が1.0を超えているかで判断される
採用市場の需給バランスを客観的に判断するには、「有効求人倍率」が広く用いられています。これは、ハローワークに登録された求人数を求職者数で割った数値で、1.0を超えていれば求職者1人に対して1件以上の求人がある=売り手市場とされます。たとえば求人が12万件、求職者が10万人であれば、倍率は1.2倍となり売り手市場です。厚生労働省のデータによれば、2025年11月分では全国平均の有効求人倍率は1.18倍を記録しており、この傾向が続いています。今後は景気や労働人口の変動により市場が変化する可能性があるため、企業の採用担当者は定期的にこの指標を確認しておく必要があります。
参考:一般職業紹介状況(令和6年12月分及び令和6年分)について|厚生労働省
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売り手市場が企業の採用にもたらすメリットとは?
売り手市場は「企業が人材を確保しにくい厳しい状況」と捉えられがちですが、見方を変えれば企業の採用力や組織の在り方を見直す好機でもあります。ここでは、売り手市場が企業にもたらすメリットを解説します。
採用競争によって待遇や制度の改善が進む
売り手市場では、企業は人材を確保するために自社の魅力を高めざるを得ず、結果として労働環境や待遇の改善が促されます。
応募者に選ばれるためには、給与や福利厚生、働き方などあらゆる面で他社と差別化する必要があります。この状況が、企業にとって自社制度の見直しやアップデートを進める強い動機となります。実際に多くの企業で、フレックスタイム制の導入、在宅勤務や副業の解禁、若手社員の意見を反映した制度設計など、従業員にとって魅力的な職場づくりが進められています。これらの取り組みは採用だけでなく、既存社員の満足度やエンゲージメントを高め、結果的に離職防止や生産性の向上にもつながります。
多様な人材との接点が生まれ、組織変革の契機となる
売り手市場では採用手法の多様化が進み、これまで接点のなかった人材との出会いが企業にもたらされます。
従来の募集広告や求人媒体だけでなく、ダイレクトリクルーティングやSNS採用、リファラル(社員紹介)など、企業が自ら候補者にアプローチするスタイルが主流になりつつあります。この変化は、経験豊富な中途人材や、専門性の高い人材、あるいは副業・兼業人材との接点を広げ、組織に新たな視点やノウハウをもたらします。変化の激しい時代には、こうした多様な人材の融合が、既存組織の革新を促し、企業の競争力向上にも直結します。
売り手市場が企業の採用にもたらすデメリットとは?
売り手市場は求職者にとっては好条件の転職・就職機会が広がる一方、企業側にとってはさまざまな負担やリスクを伴います。ここでは、企業が直面しやすいデメリットを解説します。
応募者が集まりにくく、採用活動が長期化する
売り手市場では求職者が複数の企業から選べるため、自社の求人に応募が集まりにくくなります。
有効求人倍率が高い状況では、求職者1人に対して複数の求人が存在しており、企業同士で人材の奪い合いが発生します。中小企業や知名度の低い企業にとっては、求人自体が求職者の目に留まらないという問題も生じます。結果として、応募数が想定より少なくなり、採用活動が長期化するリスクが高まります。また、採用できたとしても、当初想定していたターゲット人材からはずれるケースもあり、人材のミスマッチにつながる懸念もあります。
選考辞退・内定辞退が多く、採用確度が不安定になる
売り手市場では、求職者が複数企業の選考を並行して進めているため、選考途中や内定後の辞退が頻発します。
特に優秀層は複数のオファーを得ており、選考が遅い企業や魅力が伝わらない企業からは早期に離脱してしまう傾向があります。面接設定後のキャンセルや、最終選考後の内定辞退も珍しくありません。このような状況では採用担当者の労力が無駄になり、スケジュールの見直しや再募集が必要になるなど、業務への影響も大きくなります。さらに、辞退を避けるために内定を急ぎすぎると、企業側が見極めを十分に行えず、入社後の早期離職を招く原因ともなり得ます。
売り手市場で採用活動を成功させるポイントとは?
売り手市場では、企業が人材に選ばれる立場となるため、従来の採用方法だけでは通用しなくなっています。ここでは成功に導くための取り組みを紹介します。
自社が「選ばれる会社」としての条件を整える
売り手市場では、求職者が企業を選ぶ時代であるため、企業は給与水準や福利厚生、働き方を見直す必要があります。
初任給の引き上げ、住宅補助や交通費の充実、リモートワークの導入などが積極的に進められています。また、残業の削減や有給取得の促進、ハラスメント対策の徹底といった職場環境の改善も求められます。これらの取り組みは外部からの応募者にとって魅力となるだけでなく、既存社員の満足度を高めて離職防止にもつながる点が大きなメリットです。既存社員の流出を防ぐことは、採用活動と同等かそれ以上に重要な戦略といえるでしょう。
複数の採用チャネルを活用し、攻めの採用へ転換する
求人サイトだけに依存するのではなく、人材紹介やスカウト型サービスを活用して、企業側から人材に働きかける体制が求められます。
ダイレクトリクルーティングのように、自社が求めるスキルや経験を持つ人材に個別にアプローチできる手法は、売り手市場で効果的です。また、選考スピードを上げる、面接対応を柔軟にする、丁寧なコミュニケーションを行うといった「選ばれる企業」としての配慮も重要です。面接官の印象や対応が選考結果を左右する場面も多く、採用チームのトレーニングや仕組みづくりも見直しが必要になります。
認知度向上と早期接点で母集団形成を有利に進める
売り手市場では、採用活動の「早期化」と「認知度強化」が成果を左右します。
新卒採用では、自社ホームページやSNSなどのオンライン媒体を通じて、学生に向けた積極的な情報発信が有効です。加えて、インターンシップや企業説明会などを活用して、早期から接点を持ち、継続的な関係構築を行うことで、内定前の段階から自社への志望度を高めることができます。なお、2025年卒の採用選考解禁日は大学4年生の6月1日で、内定は10月1日以降です。
売り手市場と言われる業界は?
売り手市場は全産業に均一に起こるわけではなく、業種や職種によって大きな差があります。深刻な人手不足が続く分野では、常に売り手市場の傾向が強く、採用競争が激化しています。ここでは、どのような業界が売り手市場に該当するのかを紹介します。
介護・医療・建設・IT業界は、恒常的な人材不足により売り手市場が続いている
人手不足が慢性化している業界は、景気にかかわらず常に売り手市場とされています。
介護や看護といった医療・福祉分野では、高齢化の進行に伴い需要が急増している一方、肉体的・精神的負担の大きさや待遇面の課題から人材が集まりにくい状況が続いています。また、建設業界でも技能者の高齢化と若手の不足により深刻な人材難に直面しており、地方では新卒の確保すら困難という声も聞かれます。
さらにIT業界では、DXやクラウド化、AI活用の急速な拡大により、エンジニアやセキュリティ人材の需要が急増していますが、供給が追いついていません。これらの分野では、有効求人倍率が数倍〜10倍以上となることもあり、売り手市場の象徴的な業界といえます。
人気が集中する事務職や大企業は、むしろ買い手市場になる傾向
求人が限られていて応募が殺到しやすい職種や業界では、買い手市場の構造になりやすい傾向があります。
代表例としては、一般事務職や大企業の新卒総合職などが挙げられます。これらのポジションは、働きやすさや安定性から人気が高く、1つの求人に対して多くの応募が集まるため、企業が採用側で優位に立ちやすい状態になります。また、地方より都市部の方が応募数が多く、企業側が人材を選ぶ余裕を持ちやすいという点でも、業界や地域によって売り手・買い手の差が生まれます。したがって、採用戦略を立てる際には、自社が属する業界の需給状況を冷静に分析することが重要です。
売り手市場における中途採用と新卒採用の違いは?
売り手市場では、どの採用形態においても人材確保が難しくなりますが、中途採用と新卒採用とでは抱える課題や求められる対応策に違いがあります。ここでは、それぞれの採用活動における特性と企業が取るべき戦略の違いを整理します。
【中途採用】スピードと条件が採用成否を左右する
中途市場では、経験やスキルを持つ即戦力層に企業のニーズが集中し、売り手市場ではその獲得競争が一層激化します。
求職者側は複数企業からオファーを受けやすく、応募から内定・入社までのスピードが遅い企業は辞退されやすい傾向にあります。そのため、中途採用では選考プロセスの迅速化、条件提示の柔軟性、さらには入社後のキャリアビジョンの提示が欠かせません。また、採用手法も多様化しており、人材紹介やスカウトサービス、SNSを活用したダイレクトリクルーティングなど、企業側から積極的にアプローチする姿勢が求められます。売り手市場下では、待ちの採用ではなく「攻めの採用」が前提となります。
【新卒採用】早期接点と長期フォロー・ブランド力が成否を分ける
新卒採用においては、売り手市場では学生が複数の内定を得やすく、就職先を慎重に選ぶ傾向が強まります。
企業にとっては、大学3年生の夏〜秋にかけてのインターンシップやイベントを通じて、いかに早期から接点を持ち、継続的に関係を築けるかが勝負となります。また、学生は待遇だけでなく、企業理念や社風、育成環境への共感も重視するため、採用ブランディングや情報発信の強化も重要です。知名度の低い企業ほど、SNSや社員の声を活用し、「働くイメージの伝達」に力を入れることが差別化につながります。さらに、売り手市場では内定出しのタイミングやフォロー体制が結果に大きく影響し、単なる内定提示では入社意欲に結びつかない点も特徴です。
売り手市場時代には柔軟な採用戦略が求められる
求職者優位の売り手市場が続く中で企業が人材確保に成功するためには、市場環境に応じた柔軟な採用戦略が不可欠です。 売り手市場では一人当たりの求人が多く人材獲得競争が激しいため、企業側は従来以上に工夫を凝らしたアプローチを取る必要があります。景気や社会要因で採用市場は変動し得るものの、人材不足が常態化する売り手市場では優秀な人材に選ばれる企業だけが生き残るとも言えます。企業規模や業界の特性も踏まえ、自社に合った戦略で採用力を高めていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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