- 更新日 : 2025年12月5日
辞めそうな部下の兆候6選!見つけ出すコツや引き止める際のポイントなども解説
社員の退職の兆候を察知し、早期にフォローできると、離職を止められる可能性があります。逆に対応が遅れると、貴重な戦力を失うだけでなく「新たな採用コストの発生」「残された社員への負担の増加」などの悪影響が及ぶ可能性があります。
しかし、人事担当者のなかには、退職の兆候や対処法がわからず、悩んでいる人もいるでしょう。
本記事では、辞めそうな部下の兆候6選や引き止める際のポイント、早期に見つけ出すコツなどを解説します。
辞めそうな部下を把握するべき理由
まずは、辞めそうな部下を把握するべき理由を2点紹介します。
新しい社員を採用するコストを削減できる
辞めそうな社員を早期に把握し、うまく引き止められると、新しく社員を採用するコストを削減できます。
社員を採用する際は、求人広告費や人材紹介会社への手数料など、外部コストが発生します。さらに、会社説明会や選考、入社後の研修などにおける、面接官や研修担当者の人件費も必要です。そのため、金銭的・時間的なコストが多く発生します。
社員の退職の兆候を早期に察知し、定着を促すことは、採用・育成のコスト削減につながります。
残った社員のモチベーションが低下するリスクを防げる
辞めそうな社員の退職を止められないと、残った社員の業務負担が大きくなり、仕事へのモチベーションが低下する可能性があります。退職者の業務を引き継いだ結果、既存の社員の残業時間が増加し、疲弊してしまうケースは少なくありません。
また、優秀な社員が退職すると、ほかの社員が「この会社は危ないかもしれない」と不安を募らせ、連鎖退職が発生する恐れもあります。
辞めそうな部下を早めに把握し、適切な対応で引き止められると、ほかの社員のモチベーション低下を避けられます。
辞めそうな部下の兆候6選
ここからは、辞めそうな部下の兆候6選を解説します。早めに離職を引き止められるよう、退職の兆候はぜひ頭に入れておきましょう。
社内での発言が減少している
業務中の報連相や、会議の発言が減っている社員は、退職を考えており、仕事へのモチベーションが落ちている可能性があります。たとえば、積極的に意見を出していた社員の発言が減っている場合「自分の意見を聞いてくれない」と感じており、会社に見切りをつけているかもしれません。
また「挨拶をしない」「雑談の輪に入らない」などの傾向も、社内の関係構築を諦めており、退職を検討していると考えられます。
日頃から、会議や飲み会での社員の発言数に注目し、極端に減っていないかをよく観察することが大切です。
愚痴や不満を言うことが多い
給与や業務内容、人間関係などについて、愚痴や不満が多い社員は近いうちに離職する可能性があります。言い始めたばかりの頃は改善を期待している可能性がありますが、放置すると「ここでは解決できない」と諦められ、退職の意思を固めてしまいます。
とくに、愚痴や不満に留まらず「辞めたい」「転職したい」などと発言している場合は、退職する日が近いと捉えて、早急な対応が必要です。
愚痴や不満が増えていると感じた段階で、早めに理由をヒアリングし、社内制度や業務内容の変更を検討しましょう。
新しい仕事に手を挙げる機会が減っている
新しい仕事に手を挙げる機会が減っている場合、業務へのモチベーションの低下が読み取れるため、退職の兆候のひとつです。
会社での将来を描けなくなると、社員は責任が重い仕事を避けるようになります。転職活動に力を入れたいという目的で、現職の負荷を増やさないようにする傾向もあります。
以前は積極的にプロジェクトに参加していた社員が、急に受け身の姿勢になった場合は、キャリアに関する悩みがないか尋ねてみましょう。
業務のミスが増加している
業務のミスが増加している場合も、現職へのモチベーションの低下を読み取れるため、退職の兆候のひとつです。
転職を考えている社員は、応募書類の作成や面接対策などに意識が向き、業務に集中しなくなる可能性があります。そのため、書類の誤字脱字やほかの社員への連絡漏れなど、ケアレスミスを起こしやすくなります。
ミスを指摘しても反省の色が見えず、投げやりな態度を取る場合は、業務への責任感を失っている状態です。単なる離職に留まらず、取引先に迷惑をかける可能性もあるため、迅速な対応が必要です。
以前と身だしなみや持ち物が異なる
自由な服装で働ける会社において、急にスーツを着る日が多くなった社員は、業務終了後に面接に向かっていると考えられます。そのため、近日中に離職する可能性が高いといえます。営業職でない社員が突然スーツで出社した場合は、とくに注意深く観察しましょう。
また、あわせてチェックしたいのが身だしなみや持ち物の変化です。 髪型やメイクが急に控えめになったり、スーツに合うビジネスバッグを持ち歩いていたりする場合も、水面下で転職活動を進めているサインと考えられます。
休暇の取得や遅刻・早退が増えている
休暇の取得や遅刻・早退が増えている場合、並行して転職活動を進めている可能性があるため、退職の兆候のひとつです。
一般的な企業の面接は平日の昼間に行われるため、転職活動中の社員は、面接の時間を確保するために休暇や時間休を頻繁に取得するようになります。
また、退職を考え始めたことで出勤する意欲が低下し、休暇を取ったり遅刻したりするケースもあります。
「ほとんど有給休暇を使わなかった社員が、直近1ヶ月で3~4日休んでいる」のように、突然休暇の頻度が増えた場合は、一度理由を尋ねてみましょう。
辞めそうな部下を引き止める際のポイント5選
部下の辞めそうな兆候を察知したら、手遅れになる前にアクションを起こす必要があります。ここからは、辞めそうな部下を引き止める際のポイントを解説します。
悩みや不満などをヒアリングする
辞めそうな社員の悩みや不満などをヒアリングすることで、退職を考えている理由がわかり、業務内容の見直しや部署異動など、適切な対策を取れるようになります。
社員の悩みや不満をしっかり聞き出すには、1対1で落ち着いて話せる場を設けることが有効です。辞めそうな兆候がある社員に声をかけ、日程を調整し、面談の時間を作ってもらいましょう。
面談では、落ち着いた声のトーンを意識し、最近の悩みや困りごとなどを質問します。社員の話は途中で遮らず、最後までしっかり聞くことを意識しましょう。傾聴の姿勢を見せることで、相手も本音で話しやすくなり、退職を考えている理由も聞き出しやすくなります。
社員が退職を考えていることがわかったら、その理由をもとに、下記で紹介するほかのポイントも意識して対応してください。
業務内容の見直しを検討する
辞めそうな社員が業務に不満を抱えている場合、業務内容を見直すことでモチベーションを回復させられる可能性があります。
スキルに見合わない難しい仕事を任せていると、業務がうまく回らず、社員のやる気が上がりません。一方で、簡単すぎる仕事しか与えられない場合も、やりがいを感じられず意欲が低下してしまいます。
社員が今まで取り組んだ仕事を確認し、スキルレベルを見直したうえで、適切な難易度の業務を任せるように意識しましょう。
部署異動を提案する
社員の業務内容を見直しても状況が好転しない場合、部署異動で大きく仕事を変えるのも有効な手段です。「企画開発の部署だけれど、本当は外回りをしたい」「営業で人と話すことに苦痛を感じている」などの本音が見えたら、思い切って配置転換を行いましょう。
また、業務内容ではなく人間関係で悩んでいる場合も、部署を変えることで解決でき、退職を考え直してもらえる可能性があります。
ただし、実施にあたっては受け入れ先や現在の部署との調整が不可欠です。双方の責任者とよく相談し、業務に支障が出ないか慎重に検討してください。
評価内容を見直す
辞めそうな社員に対しては、評価内容が適切かを見直し、過小評価されていないか確認することも大切です。
「正当に評価されておらず給料が上がらない」「昇進できない」などの不満は、離職の大きな原因になり得ます。まずは評価担当の上司にヒアリングを行い、不当に低い評価になっていないか確認しましょう。とくに、日々のプロセスやチームへの貢献度を重視する企業では、売上や契約件数などの成果だけでなく、そこに至るまでの過程も評価できているかチェックしましょう。
評価自体は適正であるものの、本人への伝達不足により「過小評価だ」と誤解されているケースもあります。その場合は改めてフィードバックの場を設け、社員に評価の根拠を丁寧に説明しましょう。
健康上の問題がある場合は休職を提案する
精神的な不調を抱えていると思われる社員には休職を提案し、療養の期間を作りましょう。心身の健康を取り戻すことで、一度は退職を考えた社員が、再び前向きに業務へ取り組める可能性があります。症状が重いと見られる社員には、精神科の受診も勧めてください。
休職期間は、原則として社員の精神状態や病状の程度などに応じて決めます。症状が軽ければ1ヶ月程度でも問題ありませんが、重い場合は1年以上の長期療養も視野に入れましょう。
求職に伴って現場の人員が減るため、早めにチーム内で調整を行い、業務の引き継ぎを入念に進めることも大切です。
辞めそうな部下を引き止める際の注意点
辞めそうな社員への対応においては、無理やり引き止めないように注意しましょう。本人と話した結果、明確に退職の意思を固めている場合は、潔くその旨を受け入れます。「君がいなくなると困る」と情に訴えたり、引き止めるために長時間拘束したりすることは避けるべきです。
社員の退職を強引な手段で引き止めると、法令に違反する可能性があります。労働基準法第5条では、不当に労働を強制してはならない旨も定めています。
使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
とくに「新しい人が入るまで退職を認めない」「辞めたら懲戒解雇にする」などと脅すのは、同法に抵触する可能性が高い行為です。懲役刑や罰金刑が科せられるケースもあるため、強制的な引き止めは必ず避けましょう。
辞めそうな部下を早期に見つけ出すポイント
最後に、辞めそうな部下を早期に見つけ出すポイントを3点解説します。それぞれのポイントを押さえることで、早めに社員をフォローでき、より退職を引き止めやすくなります。
勤怠管理を見える化する
勤怠管理を見える化することで、休みが多い社員を早期に見つけ出せるため、モチベーションの低下をすぐに察知できます。
勤怠管理の見える化とは、社員の出勤状況や労働時間などを、一目で把握できる状態にすることです。エクセルやスプレッドシートで管理表を作成したり、勤怠管理システムを導入したりすることで実現できます。タイムカードや手書きの管理では見落としがちな、遅刻や早退の微増傾向を把握しやすい点がメリットです。
休暇が増えている社員を発見した際は、積極的にコミュニケーションを取り、退職を考えている様子がないか確認しましょう。
また、退職を考えていない社員についても、業務量を調整して残業時間を減らすことで、モチベーションを高められる可能性があります。職場環境を改善するという面でも、勤怠管理の見える化は効果的です。
定期的にコミュニケーションを取る機会を設ける
定期的にコミュニケーションを取る機会を設けると、悩みや不満を抱えている社員を見つけやすくなり、相談に乗ることで離職リスクを抑えられます。
コミュニケーションの機会としては、1on1ミーティングやランチ会、飲み会などが有効です。堅苦しくない雰囲気を作り、業務の進捗や将来のキャリア、人間関係などで困っていないか聞いてみましょう。
社員の悩みを特定できると、内容に応じた的確なアドバイスや、場合によっては部署異動の検討など、適切な解決策を講じられます。
ただし、社員によっては、悩みを打ち明けるようになるまで時間がかかる可能性があります。面談やランチ会を定期的に実施し、徐々に話しやすい関係を築くように意識しましょう。
サーベイツールを導入する
サーベイツールとは、社員の労働環境に関する不安や課題を調査・分析できるツールです。社員向けにアンケートを実施することで、会社への不満を調べられるほか、満足度の数値化も可能です。不満が多かったり、満足度が低かったりする社員は離職を考えている可能性があるため、個別にヒアリングすることで離職防止につなげられます。
サーベイツールは「性格診断テストができる」「組織課題を分析できる」など、種類によってさまざまな特徴があります。導入する際は各ツールの強みや料金プランなどをよく比較し、自社のニーズに合うものを選びましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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