- 更新日 : 2025年12月5日
入社してすぐ辞める社員を防ぐには?企業が取るべき採用・育成・適性検査の活用法
新卒・中途問わず、「入社してすぐ辞める社員が出てしまう…」と悩む人事担当者は少なくありません。
「面接でしっかり見極めたはずなのにすぐに退職してしまう」
「入社後にギャップを感じて辞められてしまう」
「採用・育成コストが無駄になるのを防ぎたい」
早期離職は、採用時のミスマッチ・教育体制の不足・社風との相性など、複数の要因が重なって起こる現象です。近年は、働き方や価値観の多様化により、従来型の面接評価だけでは「働き続けられる人」を見抜きにくくなっています。
本記事では、「入社してすぐ辞める社員が生まれる原因」から、「採用・育成・フォロー体制」「適性検査を活用したミスマッチ防止策」まで、具体的に解説します。
早期離職を防ぎ、社員が長く活躍できる組織づくりを進めたい企業の方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
【採用担当者必見】入社してすぐ辞める社員の7つの原因
入社してすぐに辞めてしまう社員が生まれる背景には、「人間関係が合わない」「求人時のイメージと実際の仕事が違う」といった表面的な理由だけでなく、教育体制や労働条件、モチベーションやメンタル面の課題まで、複数の要因が複雑に関係しています。
これらのポイントを一つひとつ整理しておくことで、自社のどこにギャップやボトルネックがあるのかを具体的に把握し、早期離職の予防策につなげることができます。
ここでは、早期離職につながりやすい7つの代表的な理由を取り上げて解説します。
人間関係の不和・社風ギャップ
職場での人間関係がうまく構築できない場合、孤立感やストレスが強まり早期離職につながりやすくなります。事前に抱いていた「風通しが良い」「アットホーム」といったイメージと実際の雰囲気が異なることも退職理由になりやすいです。
また、ハラスメントや閉鎖的な空気が心理的安全性を損なううえ、トラブル発生後のフォローが不十分だと不信感が大きくなります。さらに、適性や性格を考慮しない配属によって文化面でのミスマッチが生じると、職場に馴染めず退職を選びやすくなります。
求人内容と実際の仕事内容の不一致
求人票に記載された業務内容と実際の担当業務が異なると、入社直後から企業への信頼が損なわれます。採用後に急な配置転換や業務変更が命じられるケースもあり、希望職種に就けないこともモチベーションが下がる原因です。
情報の齟齬が「企業に騙された」という印象につながると離職意向が高まります。仕事内容の透明性が低い組織ほど早期離職率が上がりやすい点も見逃せません。
教育・研修体制の不足
研修制度やOJTが十分に整備されていない環境では、業務に適応する前に負担が大きくなり離職につながります。入社初期に相談や質問がしにくい状況が続くと、孤立感が強まってしまうためです。
企業独自の業務フローを理解できないまま成果を求められるケースもあり、教育不足から「放置されている」という印象を抱かれやすくなります。さらに、メンター制度やフォロー体制がない企業では定着率が下がる傾向があります。
労働条件(残業・休日・給与)への不満
求人で提示された労働条件と実際の勤務実態に差があると、入社直後から不満が蓄積しやすくなります。長時間労働や休日出勤の常態化によるワークライフバランスの崩れが、退職の決断を早める原因です。
また、給与水準や昇給制度への不満が高まると離職意向が強まります。福利厚生や待遇が不十分な場合も、企業に対する不信感が生まれやすいです。さらに、労働条件の悪化が口コミやSNSで拡散されると採用活動にも悪影響が及びます。
企業の将来性やビジョンに対する不安
業績の悪化や成長戦略の不透明さがある企業では、将来に対する不安から早期離職が発生しやすくなります。経営陣からビジョン共有が不足していると、方向性が見えず不安が大きくなります。
市場変化への対応力が低い企業は安定性に対する不信感を持たれやすく、キャリアの展望が描けません。明確なキャリアプランや組織の将来像が示されない環境では離職率が上昇しやすいです。
キャリアアップが見込めない環境
昇進・昇格の基準が曖昧な場合、成果が正しく評価されていないと感じやすくなります。
年功序列の風土が強い企業では、努力が報われないと判断されやすくモチベーションの低下につながります。成長機会が不足している企業では、上昇志向のある社員ほど転職意欲が高まり早期退職につながりやすいです。
モチベーション低下やメンタル不調
仕事にやりがいや達成感を得られない状態が続くと、入社直後でも意欲が低下しやすくなります。業務量の多さや人間関係ストレスが蓄積すると心身のバランスを崩し、退職の選択につながります。
さらに、管理職によるフォロー不足や1on1面談の仕組みがない、もしくはうまく機能していない企業では、早期離職が発生しやすいです。モチベーションを定期的に把握して改善する仕組みがないことで、離職のリスクが高まります。
入社してすぐ辞める社員がもたらす企業への悪影響
入社直後の早期退職は、「残念だ」で済む単発の出来事ではなく、採用・教育コストの増大、離職率の上昇による採用難化、口コミや評判を通じた企業ブランドの毀損など、企業にとって多方面に長期的なダメージをもたらします。
目に見えるコストだけでなく、「人が定着しない会社」という印象が市場に広がると、優秀な人材ほど応募を避けるようになり、悪循環に陥るリスクも高まります。
ここでは、早期退職が企業にもたらす具体的な悪影響を整理して解説します。
採用・教育コストの増大
早期退職者が発生するたびに、企業は再採用や再教育にかかるコストを負担する必要があります。採用1人あたり約100万円前後のコストが無駄になるケースもあり、経営にとって大きな損失につながります。
また、採用担当者や教育担当者の時間的負担も増えることが、業務効率が下がる要因です。こうした状況が続くと人材の定着率も低下し、企業全体の経営効率を押し下げてしまいます。
離職率上昇による採用難化
離職率の高さは口コミを通じて求職者に広がりやすく、応募意欲を大きく低下させます。結果として「ブラック企業」との印象が固定され、企業の採用力が落ちる可能性があります。
とくに、優秀な人材ほど他社を選ぶ傾向が強まり、採用競争で不利になりやすいです。また、離職率が高い企業ほど採用単価も上がりがちで、悪循環に陥るリスクが高まります。
既存社員の負担増と職場士気の低下
早期退職が続くと、既存社員が辞めた人の業務をカバーする必要があり、残業の増加やストレスの蓄積につながります。引き継ぎや教育業務が追加されることで、生産性も落ちやすくなるためです。
負担が増えることで不満が高まり、連鎖的な離職を引き起こす可能性もあります。このような状況が続くと、職場全体のモチベーションが低下し、長期的な悪影響を避けられなくなります。
企業ブランド・口コミへの悪影響
離職率の高さは、SNSや転職サイトを通じてネガティブな口コミとして拡散されやすく、採用市場での企業イメージを大きく損ないます。その結果、応募率が下がるだけでなく、顧客や取引先からの信頼にも影響を与えかねません。
離職率が高い企業は「社員を大切にしない」という印象を持たれやすく、企業ブランドの低下につながります。
早期退職を防ぐために企業が取るべき6つの対策
早期退職を本気で減らすためには、「採用でうまく見抜く」だけでは不十分で、採用前の情報発信から選考プロセス、入社後のオンボーディングなど、社員のライフサイクル全体を通じた立体的な対策が必要です。
どこか一箇所だけを強化するのではなく、ミスマッチの発生源と離職の兆候を早期にキャッチし、継続的に改善していく仕組みづくりがポイントになります。
ここでは、早期退職の予防に効果が期待できる6つの対策を紹介します。
採用ターゲットにあったリアルな情報発信
求職者が実際の業務内容や職場環境を正確に理解できるよう、リアルな情報を発信することが重要です。求める人物像や仕事内容、社風などを明確に提示することで、ミスマッチによる早期退職を防止できます。
また、仕事の厳しさや向かない人の特徴といったネガティブ情報もあえて公開することで、価値観が合う求職者を募集しましょう。給与や休日、福利厚生などの待遇についても正確に開示することで、誤認を防ぎ、入社後の不満を抑えることにつながります。
面接段階での相互理解(カジュアル面談の活用)
面接では、現場社員や上司との対話機会を設けることで、実際の職場の雰囲気を把握できると求職者は安心できます。カジュアル面談を導入することで、スキルだけでなく志向性の相性を自然な会話の中で確認しましょう。
また、給与やキャリア、働き方に関する求職者の要望を丁寧にヒアリングすることで、相互理解が深まります。複数の社員と接点を持てる仕組みを用意することで、ミスマッチ防止につながり、結果として離職率の低下が期待できます。
入社後のフォロー・メンター制度の整備
入社直後は不安を抱えやすいため、先輩社員によるメンター制度を整えることが効果的です。メンターが日常的にフォローすることで悩みを相談しやすくなり、早期離職の抑制につながります。
また、定期的な1on1面談を行うことで、不安や不満を早期に把握し、問題解決につなげられます。研修期間中に社内ルールや文化への適応をサポートすることも重要です。
職場コミュニケーションを促す仕組みづくり
カフェスペースや懇親会など、部署を超えて交流できる機会をつくることで、自然なコミュニケーションが生まれます。コミュニケーションが活性化すると、孤立感や人間関係のトラブルが減り、新入社員も「相談できる雰囲気」を感じやすくなります。
社内文化に溶け込むまでの心理的ハードルを下げる取り組みは、早期退職を防ぐうえで有効です。
給与・福利厚生・キャリア制度の透明化
採用段階で給与、昇給制度、福利厚生といった条件を正確に伝えることは、入社後の不満防止につながります。求人内容と実際の待遇が異なると強い不満が生まれやすいため、制度の現状を明示することが大切です。
また、キャリアアップの仕組みを見せることで、求職者が入社後の将来像を描けるようになります。不安要素が減ることでモチベーションの維持と定着促進が期待できます。
モチベーションサーベイなどによる定期的な状態把握
適性検査やモチベーションサーベイを活用し、社員のストレス度や満足度を数値で可視化することで、早期離職の兆候をつかめます。定期的なアンケートや1on1面談を行い、変化を継続的に把握することが重要です。
得られたデータをもとに課題を抽出し、改善施策のPDCAを回すことで離職防止につなげましょう。モチベーションの変動を管理することで、生産性向上にも効果的です。
採用段階で「入社してすぐ辞める人材」を見抜く3つのポイント
早期離職を減らすには、入社後のフォローだけでなく、採用段階で「入ってからギャップが大きくなりそうな人」を見抜き、そもそものミスマッチを減らしておくことが重要です。
そのためには、応募者の志向や希望条件を丁寧にすり合わせること、職歴・スキルと実際の業務内容との適合度を現場も交えて確認することに加え、適性検査などを活用してストレス耐性や職務適合度を客観的に把握することが有効です。
ここでは、採用時点で早期離職リスクを見極めるための3つのポイントを解説します。
応募者の志向・入社条件を丁寧にヒアリングする
まずは求職者がどのような働き方を望んでいるのかを深く理解する姿勢が欠かせません。希望職種や給与、勤務条件など譲れない項目を明確に把握し、志向と実際の業務環境に大きな乖離がないかを確認しましょう。
また「入社目的」「キャリアの展望」「理想の働き方」を丁寧に掘り下げることで、応募者が企業文化や業務内容と長期的に合致するかを判断できます。企業側が対応できない条件は正直に伝えることで、入社後の不信感を防ぎ、ミスマッチの発生を抑えましょう。
職歴・スキルと業務内容のマッチ度を確認する
求職者の職務経歴書や面談内容から、実務能力が配属予定の業務内容とどれほど一致しているかを精査することが欠かせません。
「スキル・経験」と「会社が求める業務領域」の一致度が低い場合、希望と異なる業務を任されることがストレスとなり、早期退職につながりやすくなります。そのため、現場部門も採用プロセスに参加させ、実際に求められる業務に適しているかを複眼的に確認することが効果的です。
適性検査の導入で「ストレス耐性」「職務適合度」を数値化する
応募者の特性をさらに正確に把握するためには、適性検査の活用が有効です。ストレス耐性や社風への適応力、職務適合度を数値化することで、採用判断の精度を高められます。
定量データにより、組織との相性や離職リスクを事前に把握できるため、面接だけでは見抜けない特性を補完し、ミスマッチを減らせます。また、適性検査の結果は採用後の配置や育成にも活用でき、長期的な定着にも効果的です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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