- 更新日 : 2025年6月24日
労災6号様式とは?書き方や病院や薬局への提出方法、5号との違いをわかりやすく解説
労災(労災保険)でケガをした社員が治療途中で病院を変えるとき、この6号様式が必要になります。この記事では労災6号様式とは何か、どんな場合に使うのかから、入手方法、誰が書くか、書き方(記入例)、提出先、そして他の様式(特に5号)との違いまで、わかりやすく解説します。労災の手続きをスムーズに進められるよう、ポイントを押さえていきましょう。
目次
労災の6号様式とは?
労災6号様式とは、正式名称を「療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届」と言い、業務上のケガや病気で労災保険による治療を受けている労働者が治療中に指定医療機関を変更する際に提出する書類です。
例えば、仕事中のケガで労災指定病院に通院している途中で転居する場合や、専門的な治療を求めて別の労災指定病院に移りたい場合に、この様式第6号を用いて手続きを行います。労災6号様式を新しい医療機関に提出すれば、転院後も自己負担なく引き続き労災保険で治療を受けられるようになります。
労災保険では、労災指定病院や労災指定医療機関(都道府県労働局長の指定を受けた病院・クリニック)で治療を受ける場合、労働者の治療費は全額労災保険から支払われ、窓口での自己負担はありません。
最初にケガの治療を受ける際は様式第5号(通勤災害は第16号の3)という書類を提出しますが、治療途中で別の指定医療機関へ転院する場合に必要になるのが様式第6号です。この書類を提出しないと、新しい病院では労災保険が適用されず、一旦自費で支払うことになる恐れがあります。そのため、転院や複数の医療機関で治療を受ける際には忘れずに様式6号を提出しましょう。
なお、通勤中の災害(通勤災害)で労災保険を使う場合は、同様の手続きをする書類として「様式第16号の4」があります。これは様式6号の通勤災害版と思ってください。
本記事では主に業務災害のケース(様式6号)について説明しますが、通勤災害でも基本的な考え方は同じです。
労災6号様式の入手方法(ダウンロード)
様式第6号の用紙は、厚生労働省のウェブサイト等で誰でも入手できます。以下の方法で準備しましょう。
- 公式サイトからダウンロード:厚生労働省の「労災保険給付関係主要様式ダウンロード」ページでPDF形式の様式第6号が公開されています。これをダウンロードして印刷すれば入手可能です。用紙サイズは通常A4判なので、家庭や会社のプリンターで印刷できます。
- 労働基準監督署で入手する:最寄りの労働基準監督署(労災保険を管轄する役所)でも用紙をもらえます。窓口で「労災の様式6号がほしい」と伝えれば、無料でもらうことができます。
- 会社で用意する:企業の人事労務担当部署であらかじめ様式を用意している場合もあります。労災が発生した際に社内で印刷・記入して従業員に渡す流れになっている会社も多いでしょう。
入手した様式6号は、必要事項を記入して提出することになります。次章から誰がどのように記入し、どこに提出すればよいかを詳しく見ていきましょう。
参考:主要様式ダウンロードコーナー (労災保険給付関係主要様式)|厚生労働省
労災6号様式は誰が記入するのか?
様式第6号は基本的に被災労働者(ケガや病気をした本人)が記入して提出する書類です。ただし、実際には書類内に会社の証明欄(事業主の記名)があることもあり、会社の労務担当者が内容を作成し、労働者本人が提出するケースがよく見られます。会社側で労災の手続きに慣れている人が記入を手伝ったほうが、漏れなく正確に書けるためです。
労災6号様式の記載事項には、労災保険の事業所番号や事故の発生日・原因など、会社側で把握している情報も含まれます。そのため、人事担当者が被災労働者からヒアリングを行いながら、必要事項を一緒に埋めていくとスムーズです。
記入後、労働者本人が署名(または記名)し、新しい医療機関へ提出します。なお2020年12月25日以降、労災関係の請求書類については押印(会社・労働者双方のハンコ)不要となりました。署名欄に自署するか所定欄に記名するだけで構いません。
労災の手続きは会社と従業員が協力して進めるものです。不明点があれば労働基準監督署や労災保険の担当部署にも相談しながら、双方で正確に記入しましょう。
労災6号様式の書き方と記入例
様式6号の書き方について、主な記載項目とそのポイントを押さえておきましょう。様式6号は両面にわたって細かな項目がありますが、一つひとつ丁寧に記入すれば難しくありません。
以下に主な項目を挙げます(必要に応じて会社の労務担当者と確認しながら記入します)。
- 被災労働者の氏名・住所(届出人欄):ケガや病気をした本人である労働者の氏名と現住所を記入します。労働者本人が届け出を行う形式のため、まずは届出人情報としてこれらを書きます。
- 労働保険番号:会社の労災保険加入番号(労働保険番号)を14桁の数字で記入します。労災保険に加入した際に付与される番号で、会社の労災保険番号とも言えます。わからない場合は、労働基準監督署から交付された「労働保険関係成立票」や毎年の労働保険料の申告書などで確認できます。
- 労働者の生年月日・職種:被災労働者の生年月日を西暦(または和暦)で正確に記入します。職種はできるだけ具体的に書きましょう。単に「作業員」ではなく「倉庫内作業(商品仕分け)」など、どんな仕事をしていたかがわかるように具体的に記入します。
- 負傷又は発病年月日:労災事故が起きた日時を記入します。可能であれば何時何分ごろまで正確に書きます。また、長期的な疾病の場合は発病日を記載します。例:「2025年4月1日 午前9時ごろ」。
- 災害の原因及び発生状況:どのような原因でどんな状況下でケガを負ったのかを書きます。「できる限り具体的に」がポイントです。例えば「倉庫で20kg程度の荷物を運搬中に足を滑らせて転倒し、腰を強打した」など、物の重さや状況も詳しく記します。
- 事業主の証明欄(事業の名称・所在地・事業主氏名等):被災労働者が働いている会社名(事業場名)、会社の所在地、電話番号、代表者(事業主)の氏名を記入します。ここは会社側で記入する部分です。代表者の代理で支店長などが証明する場合は、その代理人名を記入します。
- 治療先(指定病院等)の変更内容:今回変更する医療機関の情報を記載します。具体的には、これまで通院していた病院名・住所と、新たに通院する病院名・住所をそれぞれ書きます。加えて変更の理由も欄がありますので、「引越しのため通院が困難になったため」や「専門科での治療希望のため」などわかりやすく記入します。
- 傷病名(診断名):現在治療中のケガや病気の名称を正確に書きます。医師から診断書や診療情報提供書(紹介状)を受け取っている場合は、その傷病名を転記するとよいでしょう(例:「左足関節骨折」「腰部挫傷」など)。
- 複数事業労働者に関する項目:裏面には、他に勤務先があるか(副業・兼業の有無)を問う項目があります。他の会社でも働いている場合は「有」に○を付け、就業先の数を記入します。また、自営業者などで労災保険の特別加入をしている場合は、その団体名や加入日も記載します。該当しない場合は空欄または「無」に○を付けるだけです。
- 年金受給状況に関する項目:もし被災労働者が傷病補償年金(労災の長期療養者向けの年金)を受給中の場合、新たに療養を受けようとする医療機関名を記入する欄があります。また、その年金の年金証書番号も書く必要があります。通常、療養開始から1年6ヶ月経過して症状固定と判断された後、障害等級に該当するとこの年金が支給されるケースがあります。該当しない場合、この欄は記入不要です。
記入が終わったら、全ての欄に漏れがないかもう一度確認しましょう。特に労災保険番号や日付など数字のミスに注意が必要です。現在は労働者本人・事業主とも押印は不要なので、署名欄があれば署名し、なければ記入だけで大丈夫です。書類が完成したら、いよいよ新しい医療機関への提出となります。
労災6号様式を変更後の医療機関に提出する際の注意点
労災6号様式が記入できたら、新しい治療先へ提出します。ここでは提出先や手続きの流れ、注意点をまとめます。
労災6号様式の提出先は新しい医療機関
様式6号は変更後の労災指定医療機関(転院先の病院や薬局)に提出します。これまで通っていた元の病院に対しては、労災保険上の特別な手続きは不要です。転院先の窓口に書類を提出すれば、病院側で労災扱いの手続きを進めてくれます。提出のタイミングは、転院先で最初に受診するときに持参するのが一般的です。
新しい医療機関が労災指定か確認する
転院先を選ぶ際に、その病院やクリニックが労災保険指定医療機関かどうか事前に確認しましょう。労災指定の医療機関であれば様式6号を提出することで引き続き治療費の自己負担なく診療が受けられます。一方、労災指定でない病院に移る場合、様式6号では手続きできません。その場合は治療費を一時立て替えて支払い、後日様式第7号(療養費支給請求書)を使って労働基準監督署に費用を請求する形になります。緊急ややむを得ない事情で非指定医療機関へ転院する際は、必ず領収書を保管し、早めに労働基準監督署へ相談しましょう。
労災指定外から指定への転院時は様式5号を提出
少し複雑ですが、もし最初にかかった病院が労災指定外で、その後改めて労災指定病院に移るというケースでは、様式6号ではなく様式第5号を提出します。様式5号は本来「初めて労災指定医で治療を受けるとき」の書類なので、非指定→指定への転院は「指定医療機関での初診」とみなされるためです。ケースによって必要書類が変わるので、迷った場合は事前に監督署に確認してください。
転院時の医療情報を引継ぐ
労災6号様式はあくまで労災保険上の手続きですが、実際の治療面では前の病院から診療情報提供書(紹介状)を書いてもらうことが望ましいです。紹介状があれば新しい病院でスムーズに治療を引き継げます(これは保険ではなく医療上の配慮です)。労災指定病院同士であれば、紹介状の発行も依頼すれば対応してもらえるでしょう。
労災書類の提出期限に気を付ける
労災の各種請求書類には基本的に時効(請求期限)があります。療養の給付関係では、費用を支出した日の翌日から2年間と規定されています。労災指定病院での治療の場合は窓口負担がないため期限を意識する場面は少ないですが、書類の提出を怠って長期間経過すると手続き漏れになる恐れがあります。転院する場合も、なるべく早めに様式6号を提出するようにしましょう(万一提出が遅れても指定病院での治療であれば自己負担は発生しませんが、迅速な届け出が原則です)。
労災6号様式と他の労災様式(第5号など)との違い
労災6号様式は、他の様式と使うタイミングや目的が異なります。混同しやすい様式について違いを整理しておきましょう。
- 様式第5号:労災が起きて最初に指定医療機関で診療を受けるときに提出する書類です。業務上の災害の場合は「様式第5号」、通勤災害の場合は「様式第16号の3」を使用します。この書類を病院に提出することで、労災保険による治療が開始され、窓口負担が0円になります。いわば労災治療のスタート時に必要な様式です。
- 様式第6号:治療途中で別の指定医療機関に移るときに使います。業務災害では様式6号、通勤災害では様式16号の4となります。タイミングの違いとして、初回受診時なら5号、転院時なら6号と覚えましょう。また、一度様式5号を提出している労災患者が別の指定医療機関を追加で受診する場合(例えば専門科の病院に併せて通う場合)も、追加先に様式6号を提出することで労災扱いが受けられます。
- 様式第7号:労災指定外の医療機関で治療を受けた際に、あとから費用の払い戻しを請求するための書類です。業務災害では様式7号(通勤災害では様式16号の5)を使用します。労災指定病院であれば患者負担0ですが、非指定病院では一旦患者が全額支払い、その領収書を添付して様式7号で請求すると、後日労災保険から払い戻しを受けられます。緊急搬送先が労災指定でなかった場合などに該当するケースです。
- その他の様式:この他、休業補償を受けるための様式第8号(休業補償給付支給請求書)や、障害が残った場合の様式第10号(障害補償給付)など、労災保険給付には複数の様式があります。番号が増えるほど後の段階の給付に関する書類になります。まずは労災で治療を受ける局面では、様式5号・6号・7号の使い分けを押さえておくと良いでしょう。
要するに、様式5号は労災治療の「開始時」、様式6号は治療継続中の「転院時」、様式7号は指定外治療の「費用請求時」と覚えるとわかりやすくなります。
労災手続きで必要となる関連書類
労災6号様式の提出にあたり、他に用意すべき書類があるか気になるところです。基本的に転院手続き自体は様式6号だけ提出すれば完了しますが、状況に応じて以下の書類や情報も関連してきます。
- 労災の初回届出書類(様式5号):既に最初の病院に提出済みのはずですが、転院先でも労災であることを確認するために、様式5号の控えなどが求められる場合もあります。
- 診療情報提供書(紹介状):前述の通り、前の病院から新しい病院への紹介状を発行してもらうとスムーズです。これは労災保険の書類ではなく医療文書ですが、転院時には重要な書類と言えます。
- 領収書等(様式7号提出時):非指定医療機関での治療費や薬代を請求する場合、領収書の原本を添付して様式7号を提出する必要があります。指定医療機関への転院では通常出番はありませんが、万一指定外で受診した際は忘れずに保管しましょう。
- 会社の労災担当者への連絡:書類ではありませんが、転院する場合は会社にも報告しておきます。会社は労災の経過を把握しておく必要がありますし、他の給付(休業補償など)の手続きにも関わるためです。
- 労働者死傷病報告:労災事故が発生した場合には、労働者死傷病報告を労基署へ提出しなければなりません。これは会社が行う別途の届け出ですが、労災手続き全般で必要になる書類として覚えておきましょう。
以上のように、様式6号単体で完結する部分と、他に準備しておくと良い情報があります。基本的には様式6号用紙一枚で転院手続きはできますが、不安な場合は監督署や医療機関に問い合わせ、必要書類を確認すると確実です。
薬局を変更するときは労災様式6号の提出が必要
労災による通院治療では、薬の処方に関しても手続きが関わってきます。病院内で薬を受け取る院内処方であれば、あらためて書類を提出する必要はありませんが、院外処方で薬局を利用する場合には注意が必要です。
治療の途中で薬を受け取る薬局を変更する場合は、病院を変えるときと同様に、様式第6号の提出が必要になります。労災保険の制度では、薬局も医療機関として扱われるため、薬局を変えることも「転院」の一種とされているためです。
新しく利用する薬局が労災指定を受けている場合は、様式6号を提出するだけで、これまで通り薬代を自己負担することなく受け取ることができます。多くの薬局では、窓口やホームページに「労災指定薬局」の表示があるため、事前に確認しておくと安心です。
一方で、労災指定を受けていない薬局を利用した場合には、薬代を一時的に支払い、後日、様式第7号(療養費請求書)を使って労働基準監督署に費用を請求することになります。その際には、薬局の領収書を必ず保管しておく必要があります。
利用ケース | 必要な書類 | 提出先 |
---|---|---|
病院内で薬を受け取る(院内処方) | 不要 | – |
指定薬局で薬をもらう(初回) | 様式第5号(薬局用) | 薬局 |
指定薬局を別の薬局に変える場合 | 様式第6号(薬局用) | 新しい薬局 |
指定外の薬局を利用した場合 | 様式第7号 + 領収書 | 労働基準監督署 |
労災6号様式を理解して、スムーズな転院手続きをしよう
労災6号様式は、「労災保険で治療中に別の病院や薬局へ移るとき」に必要な重要書類です。労災による療養中に医療機関を変更するという状況は、労働者にとって心身ともに負担のかかるものですが、ポイントを押さえればスムーズに対応できます。万が一職場で労災事故が起きても、慌てずに適切な様式を準備して手続きを進めましょう。人事担当者の方も従業員の方も、本記事の内容を参考に、いざというときに備えて労災6号様式を正しく活用できるようにしておきましょう。安心して治療を継続するためにも、必要な書類を揃えてしかるべき手続きを行うことが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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