- 更新日 : 2026年1月28日
傷病手当はいつ振り込まれる?遅れる理由や申請から受給までの流れなど解説
病手当金は、業務外の病気やケガで療養するために仕事を休み、給与が支払われない期間の生活を保障する公的な制度です。申請から実際の支給までには審査等の手続きを要するため、「いつ振り込まれるのか」という正確な見通しを持つことは、療養中の生活安定や、企業の円滑な労務管理において非常に重要です。
この記事では、傷病手当金の支給時期の目安と確認方法を中心に、給与との調整や計算式、支給が遅れる主な理由、そしてトラブルを防ぎスムーズな受給を実現するための申請実務のポイントまでわかりやすく解説します。
目次
傷病手当金はいつ振り込まれる?
申請書が保険者に到着してから「約2週間〜1ヶ月後」が振込の目安です。
基本的には、申請書類が健康保険組合や協会けんぽ(全国健康保険協会)に届いてから審査が行われ、支給決定通知書が発送されるまでの期間を指します。
ただし、以下の条件や確認方法によって入金のタイミングは異なります。
初回申請と2回目以降のスピードの違い
初回は1ヶ月以上かかることが多く、2回目以降は早ければ2週間程度で振り込まれます。
初回の審査では、病歴や就労状況、待期期間(連続した3日間の休み)の確認など、調査すべき項目が多岐にわたるため時間がかかります。一方、同じ病気やケガで継続して申請する場合(2回目以降)は、前回のデータがあるため審査プロセスが簡略化され、支給までの期間が短縮されます。
正確な振込日の確認方法(支給決定通知書)
正確な振込日は、電話ではなく保険者から届く「支給決定通知書」で確認するのが確実です。
この通知書が手元に届く頃には、すでに振り込まれているか、数日以内に入金される状態になっています。もし申請から1ヶ月以上音沙汰がない場合は、加入している保険者へ電話し、審査状況(審査中か、不備で止まっているか)を確認しましょう。
支給日は給料日と同じではない(給与とは別入金)
傷病手当金は、原則として保険者から直接個人の口座へ振り込まれます。 よくある誤解ですが、「会社の給料日に給与明細と一緒に振り込まれる」ことはありません。給料日とは全く別のタイミングで入金されるため、通帳記入やWeb明細などで確認する必要があります。
土日祝日や連休を挟む場合の支給日の違い
ゴールデンウィークや年末年始などを挟むと、通常よりも1〜2週間支給が遅れます。 審査を行う保険者や、振込処理を行う金融機関の営業日が限られるためです。生活費の確保が必要な場合は、連休前に申請が完了するよう、早めに医師の証明や事業主の証明を取り付けるスケジュール管理が重要になります。
| 申請の状況 | 振込までの目安(申請書到着後) |
|---|---|
| 初回申請 | 2週間~1ヶ月程度 |
| 2回目以降 | 2週間程度 |
| 繁忙期・連休 | 通常+1週間程度 |
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傷病手当金の支給が遅れる理由とは?
主な原因は「書類不備」「証明作成の遅れ」「併給調整などの調査」です。予定時期になっても振り込まれない場合、以下のいずれかに該当している可能性が高いです。
申請書類の記入ミスや添付書類の不足
記入漏れや印鑑漏れがあると、書類が返送され大幅に遅れます。
「医師の証明日より前に申請書を書いている」「口座番号の間違い」などの不備は非常に多いです。再提出となると、さらに数週間のロスが発生します。
事業主や医師の証明作成
病院や会社の事務処理だけで2週間以上かかることも珍しくありません。
大きな病院では文書作成に時間がかかります。また、会社側も給与計算が確定しないと証明が書けないため、申請のスタート自体が遅れる構造的な要因もあります。
審査における調査
うつ病などの長期療養や、他の給付金との調整がある場合は審査が長引きます。
うつ病(精神疾患)での申請や、頻繁に入退院を繰り返すケースでは、保険者が医療機関へ詳細な照会を行うことがあります。また、障害年金や出産手当金との調整が必要な場合も、金額確認のために通常より時間がかかります。
そもそも傷病手当金とはどのような制度?
業務外の病気やケガで働けず、給与が出ない期間の生活を保障する制度です。
あくまで「業務外(プライベートなど)」の事由が対象であり、業務中や通勤中のケガは「労災保険」の対象となるため、傷病手当金は支給されません。
支給される条件(4つの要件)
以下の4つの条件をすべて満たしている場合に支給されます。
- 業務外の事由による病気やケガの療養であること(医師の指示が必要)
- 仕事に就くことができない状態であること(労務不能の証明が必要)
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと(最初の3日間は待期期間)
- 休業した期間について給与の支払いがないこと(給与が少ない場合は差額支給)
支給される期間(通算で1年6ヶ月)
支給期間は、支給開始日から「通算して」1年6ヶ月です。
以前は「開始から1年6ヶ月経つと打ち切り」でしたが、法改正により、途中で復職して手当を受け取っていない期間はカウントされず、実際に受け取った期間だけを合計して1年6ヶ月分もらえる「通算方式」になりました。これにより、がんや精神疾患など、治療と仕事を繰り返すような病気でも長くサポートを受けられます。
傷病手当金については、以下の記事でも詳しく紹介しています。
傷病手当金はいくらもらえる?
給与の額面ではなく「標準報酬月額」を基準に、日給の約3分の2が支給されます。
正確な金額を知っておくことで、療養中の家計管理がしやすくなります。
1. 基本の計算式
支給額(日額)は以下の計算式で算出されます。
※「標準報酬月額」とは、基本給に役職手当や通勤手当、残業代などを含めた総支給額を、区切りの良い等級(ランク)に当てはめたものです。
2. 【シミュレーション】月給30万円の人の場合
直近1年間の標準報酬月額がずっと「30万円」だった人の計算例です。
- 標準報酬月額: 300,000円
- 日額の計算: 300,000円 ÷ 30日 = 10,000円
- 支給日額(2/3): 10,000円 × 2/3 = 6,667円(※1円未満四捨五入)
この人が「30日間」休んだ場合の総支給額は、6,667円 × 30日 = 200,010円 となります。
3. 入社1年未満の場合(計算方法の違い)
勤務期間が12ヶ月未満の場合、全加入者の平均額まで引き下げられる可能性があります。
入社して日が浅い場合は、以下のどちらか低い方の額を使って計算します。
- その人の、支給開始月までの各月の標準報酬月額の平均
- その健康保険(協会けんぽ等)の全被保険者の標準報酬月額の平均
- ※協会けんぽの場合、現在は「32万円」が平均基準です(年度により改定あり)。
つまり、入社直後で給与が高くても、32万円の基準で計算される可能性がある点に注意が必要です。
4. 土日祝日も支給対象(給付金)に含まれる
会社が休みの土日祝日も、傷病手当金の支給対象(日数)に含まれます。
傷病手当金は「働けなかった期間(カレンダーの日数)」に対して支払われます。そのため、ゴールデンウィークや年末年始などで会社の出勤日が少ない月であっても、受け取れる手当金の総額が減ってしまうことはありません。
傷病手当金の申請から受け取りまでの流れ
申請は「本人・医師・事業主」の3者の連携が必要で、タイミングが重要です。
手順を間違えると、書類の書き直しが発生し、振込がさらに遅れる原因となります。
ステップ1:申請書の入手と本人記入
保険者のWebサイトからダウンロードし、振込先などを記入します。
まずは加入している健康保険(協会けんぽ等)の「傷病手当金支給申請書」を入手します。4ページ構成で、本人記入欄には発病時の状況などを正確に書きます。
ステップ2:医師による証明の取得(療養担当者記入欄)
申請したい期間が「過ぎてから」医師に証明を依頼します。
未来の日付(予見)での証明は無効です。例えば「3月分」を申請する場合、4月1日以降に医師に証明作成を依頼するのが原則です。
ステップ3:事業主による証明の取得(事業主記入欄)
出勤状況について、賃金台帳に基づき証明をもらいます。
休んでいた期間に出勤していないか、給与が支払われていないかを会社が証明します。これも対象期間が経過した後でなければ記入できません。
ステップ4:保険者への提出と審査
完成した書類を保険者へ郵送し、審査完了後に振り込まれます。
会社経由で提出する場合と、本人が直接郵送する場合があります。提出後、支給決定通知書が届けば、まもなく入金されます。
傷病手当金を毎月スムーズに受け取るためのポイント
傷病手当金は、制度上「数ヶ月分まとめて」申請することも可能です。しかし、実務においてトラブルなく安定して受給するためには、以下のポイントを押さえた運用が推奨されます。
申請は1ヶ月ごとに区切ると入金サイクルが安定する
給与の締め日に合わせて毎月申請することで、給与に近いサイクルで入金が見込めます。 例えば「毎月末締め」の会社であれば、翌月初めに医師の証明を取得し、すぐに会社へ提出するというルーティンを確立しましょう。
- 従業員のメリット: 数ヶ月無収入になるのを防ぎ、生活費の見通しが立ちやすくなる。
- 人事・会社のメリット: 1ヶ月単位であれば賃金台帳との照合が容易になり、証明書の記入ミスや返戻リスクを減らせる。
退職後も継続してもらうための条件(退職日の過ごし方)
退職後も継続して給付を受けるためには、「退職日までに被保険者期間が1年以上あること」に加え、「退職日(資格喪失日の前日)に労務不能であること」が絶対条件です。ここで双方の認識合わせが重要になります。
- 従業員の注意点: 退職日に挨拶回りや引継ぎで出勤(半日でも不可)してしまうと、「働ける状態」とみなされ、翌日以降の給付がすべて打ち切りになります。退職日は必ず「欠勤」または「有給消化」で休んでください。
- 人事・会社の注意点: 退職予定者が誤って出勤しないよう、事前にリスクを説明してください。また、最後のタイムカードや出勤簿等の記録が、実態通り「欠勤(または有給)」となっているか、証明書作成時に厳重な確認が必要です。
傷病手当の支給が遅れるトラブルや申請期限に関するQ&A
Q. 会社が証明を書いてくれない場合、支給はいつになりますか?
A. 会社に進捗を確認し、動かない場合は保険者に相談しましょう。
会社には証明義務がありますが、放置されているといつまで経っても申請できません。まずは人事部門へ強く依頼し、それでも解決しない場合は保険者(協会けんぽ等)に相談して督促を依頼するか、労働基準監督署へ相談してください。
Q. 退職日(最後の日)に出勤すると、翌日から手当が出ないって本当?
A. 本当です。退職日は絶対に出勤(挨拶回り含む)してはいけません。
退職日に引継ぎや挨拶で出勤してしまうと、「労務可能」とみなされ、その翌日以降の継続給付がすべて不支給(打ち切り)になります。退職日は必ず欠勤扱い、または有給消化で休むようにしてください。
Q. 申請期限はいつまでですか?(時効について)
A. 時効は「2年」です。労務不能であった日ごとに、その翌日から2年を経過すると時効により請求権が消滅します。退職後にまとめて申請しようとして期限切れにならないよう注意してください。
Q. 振り込みが遅くて生活費が足りない場合は?
A. つなぎ資金として公的貸付制度などを検討してください。審査が長引き、当面の生活費に困る場合は、会社の貸付制度や、社会福祉協議会の「緊急小口資金」などが利用できる可能性があります。一度、自治体の窓口へ相談してみましょう。
傷病手当金の支給時期や注意点を共有し、安心して療養できる環境を整えよう
傷病手当金がいつ振り込まれるかという疑問に対しては、申請書が保険者に到着してから約2週間から1ヶ月後が一般的な支給日の目安となります。
ただし、初回の申請や書類に不備がある場合、さらにはうつ病などの詳細な調査が必要なケースでは、予定よりも入金が遅れる可能性があるため、双方がこのリスクをあらかじめ理解しておくことが大切です。
支給額は給与(標準報酬月額)の約3分の2となり、土日祝日も支給対象に含まれます。従業員は生活費を安定させるために1ヶ月ごとのサイクルで申請を行い、人事担当者は退職日の出勤が継続給付の打ち切りに繋がるといった重大なリスクを事前に周知するよう心がけてください。
病気やケガで不安な時期だからこそ、いつ入金されるかという正しい見通しを共有し、不明点は早めに相談し合うことで、安心して療養に専念できる環境を整えましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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