• 更新日 : 2025年12月5日

セルフモチベーションとは?メリットやコントロールする方法を解説

働き方が多様化し、評価や報酬だけで人を動機づけることが難しいといわれる現代では、「セルフモチベーション」が注目されています。

セルフモチベーションは、社員一人ひとりが自律的に成長し、組織全体の活力を高めるために欠かせないスキルです。

本記事では、セルフモチベーションが重要視される背景や、企業への活用方法を解説します。セルフモチベーションを上げる方法も紹介しているので、自社社員の士気低下にお悩みの方は、参考にしてみてください。

セルフモチベーションとは?

セルフモチベーションとは、自分の内側に目標をもち、やる気をコントロールする技術です。仕事の目的を理解し、主体的に行動を選択できるため、安定したパフォーマンスを維持しやすくなります。

仕事を任されたり、企画が通ったりして上がったモチベーションは、時間とともに減退していきます。しかし、セルフモチベーションによって自分をコントロールすることで、パフォーマンスを安定させることが可能です。

迷いが少なくなり、安定した成果も生み出しやすくなります。

変化するモチベーションの仕組み

社会人が仕事をするモチベーションは、時代とともに変化してきました。報酬や昇進に頼った外的な動機付けに魅力を感じる人が減り、自分の目的や成長を第一とする考え方が広まっています。

モチベーションの仕組みを通じて、モチベーションに対する考え方の変化を見ていきましょう。

内発的動機と外発的動機

モチベーションには、次の2種類があります。

  • 内発的動機
  • 外発的動機

内発的動機は、内側からの動機付けによって、行動が続く状態です。好奇心や成長実感、自分で決めて動いている感覚などは、内発的動機に該当します。行動そのものがモチベーションの源泉になるため、常に行動を続けられる仕組みです。

一方、外発的動機は、外から与えられる刺激が原動力になります。たとえば、給与や昇進、上司からの評価などがよい例です。

モチベーションの概念については、関連記事で詳しく解説しています。

外発的なモチベーション理論の限界

外発的動機付けは、短い期間で数字を伸ばす場面で役立ちます。

しかし、報酬が下がったり慣れたりすると、やる気も一緒に下がりやすくなります。本来は好きだった仕事でも「報酬のため」と感じ始めると、楽しさが薄れかねません。

近年の研究や、現場の実感からも、外発的動機付けの限界が指摘されています。外発的動機付けだけに頼らず、「働く目的」や「成長実感」のような内発的動機と組み合わせることで、モチベーションが安定しやすくなるでしょう。

セルフモチベーションはなぜ重要か?

セルフモチベーションは、変化の多い時代でも、安定して成果を出すための土台になります。これは、セルフモチベーションが環境や評価に左右されにくいためです。

自分で目的をもって行動できる人ほど、成長のスピードも落ちません。

また、小さな成功を積み重ねることで自信が育ち、挑戦のハードルが下がります。挑戦と成功の積み重ねが自己効力感につながり、学び続ける力を支える仕組みです。

セルフモチベーションとセルフマネジメントの違い

セルフモチベーションとセルフマネジメントは、役割が異なります。

セルフモチベーションは「やる気の源」であり、行動を続けるために必要なエネルギーです。

一方、セルフマネジメントは、行動を進めるための管理スキルです。時間の使い方や感情の整え方、優先順位の付け方が含まれます。セルフマネジメントは、モチベーションの維持・調整まで含めて、自分を総合的にコントロールすることを指します。

セルフモチベーションを高めるには、セルフマネジメントによる自己管理が欠かせません。

企業でセルフモチベーションを導入する3つのメリット

企業がセルフモチベーションに取り組むことで、組織全体の成果向上が期待できます。セルフモチベーションによる効果を、3つの切り口で具体的に見ていきましょう。

1.社員のやる気・貢献意欲が高まる

社員がセルフモチベーションを意識すると、自分の判断で動けるようになります。業務の意味を理解することで、社員は自分の役割として業務に取り組めるため、自然とモチベーションが高まるでしょう。

さらに、社員に感謝や賞賛を伝える仕組みがあれば、社員に「自分は役に立っている」という実感が生まれます。上司・同僚関係なく認め合う環境ではやる気の連鎖が起こるため、継続的な取り組みの実現が可能です。

2.生産性向上につながる

セルフモチベーションが高い社員は、小さな成功体験を積み重ねることで「やれば進む」感覚を得られます。現在の行動に集中しやすくなり、業務効率アップが期待できます。

自信がついた社員は、新しい提案や改善にも手を挙げやすくなるでしょう。失敗しても学びがあると理解しているため、試行錯誤をためらいません。結果として、チーム全体が失敗を許容し、挑戦していく文化が生まれます。

3.離職率が低下する

セルフモチベーションが高い社員は、自分の成長や、仕事の意義を実感しやすくなります。仕事に価値を感じられると、会社への満足度が自然と高まるでしょう。

また、安心して意見を言える職場では、悩みをひとりで抱え込むリスクも抑えられます。困ったときに相談できる環境を整えることで、離職率の低下が期待できます。

離職率や離職を防ぐ方法については、関連記事もご参照ください。

セルフモチベーションを高める方法5選

セルフモチベーションを高めるには、気合いよりも具体的な行動が大切です。以下で紹介する方法を実践することで、セルフモチベーションが少しずつ育ちます。

1.成功体験を積み重ねる

セルフモチベーションを育てるには、小さな成功体験を積み重ねるのが効果的です。「できた」と実感した瞬間にやる気が高まり、積み重ねが自信につながります。

たとえば、次のような「小さな成功」をメモに残し、自分の成長を実感してみましょう。

  • 業務が少しだけ早く終わった
  • 初めて自分から意見を言えた
  • 昨日より丁寧にできた

また、同僚と成果を共有すると、お互いの刺激になります。「次も頑張ろう」という気持ちが続くため、チーム全体の雰囲気が前向きになるでしょう。

2.意義のある目標設定を行う

セルフモチベーションを高めるには、目標設定が重要です。業務に取り組む理由を言語化し、人に説明できる状態を目指しましょう。

目標設定は、具体的であるほど効果的です。たとえば、「マニュアルを作る」よりも「今月中に問い合わせ対応マニュアルを1本仕上げる」と考えるほうが、モチベーションを維持しやすくなります。

目標を決める際は、具体的な期限・数値・行動内容を入れて、達成のイメージをもてるようにしましょう。

3.習慣化の力を活用する

習慣化は、セルフモチベーションを安定させるための方法です。次のポイントを意識することで、行動のハードルが下がり、続けやすくなります。

  • やる時間を決める
  • 短く始める
  • 記録する

たとえば、「朝10分だけ学習する」「退勤前に翌日のタスクを1つだけ書き出す」など、小さく始めることが大切です。

大きな行動よりも、無理なく繰り返せる行動のほうが、やる気を長く保てます。続けた日数を記録することで、達成感が積み重なり、継続への意欲を維持できるでしょう。

4.自分自身と対話して肯定する

できなかったことがあっても、セルフモチベーションは保てます。

できない点ばかりに注目せず、できたことにも注目し、自分の行動を冷静に振り返りましょう。完璧を目指すよりも、毎日の前進を実感するほうが効果的です。

落ち込んだときは、「なぜダメだったのか」を責めるよりも「次にどうするか」を考えましょう。改善の糸口が見えると、気持ちを切り替えやすくなります。

5.モチベーションを支える環境に身を置く

セルフモチベーションは、環境にも左右されます。

一緒に業務へ取り組む同僚や、話を聞いてくれる上司がいると、不安や迷いを抱え込みにくくなるでしょう。意見を否定せず、成果を認め合う職場は、心理的な安全性が高い環境です。

心理的安全性が確保された職場であれば、苦しいときでも「もう少しやってみよう」と考えられます。セルフモチベーションを高めたいなら、組織として環境づくりに投資することも重要です。

業務へのモチベーションを上げる「ワークエンゲージメント」についての記事もチェックすることで、より理解が深まります。

セルフモチベーションを維持する4つのコツ

セルフモチベーションを高めても、忙しさやトラブルにより、気持ちが不安定になることもあるでしょう。日々のやる気を無理なく保つ「コツ」を、仕組み化して続けることが大切です。

1.失敗を「学び」ととらえる

パフォーマンスの波を乗り切るうえでは、失敗のとらえ方が大切です。失敗を悔やむよりも、「学び」「経験」ととらえて、次にどう活かすかを考えましょう。

たとえば、失敗の内容を反省する際、失敗を責めて終わるのは逆効果です。「次はどのように行動するか」「どのように注意するか」を考えることで、失敗を前向きに考えられます。

結果にこだわりすぎると、モチベーションに波ができがちです。しかし、プロセスに目を向けることで、モチベーションの波が安定しやすくなります。

2.第三者からのフィードバックを活かす

セルフモチベーションを保つには、自分の感覚だけに頼らないことが大切です。第三者からフィードバックをもらうと、自分では気づきにくい強みや課題が見えます。

自分では当たり前だと思っている行動・態度を、自分で評価することは困難です。第三者の目を借りることで初めて見える強みもあります。「当たり前」を評価されることで、自信をもつこともできるでしょう。

改善点を伝えてもらう際は、よい面と改善点を分けて聞くのが効果的です。人格を否定されたと感じにくく、気分を前向きに保てます。

3.メンタルリセットを行う

セルフモチベーションを維持するには、メンタルケアが欠かせません。集中力が落ちたと感じたときは、体を動かしたり、席を離れて休憩しましょう。気持ちが整って、再度集中できるようになります。

睡眠・食事・休息といった基本的な生活リズムの乱れも、セルフモチベーションが下がる原因です。眠る時間を一定にしたり、軽く散歩をしたりすると、気持ちが休まってモチベーションを維持しやすくなります。

4.環境・目標を定期的に見直す

一度決めた目標を守り続けることは、必ずしも正しいとはいえません。仕事の内容や役割、チーム体制が変われば、目標も少しずつ変わっていきます。

セルフモチベーションを保つには、数ヶ月に一度、目標を修正するのが有効です。必要に応じて、上司や同僚と相談しながら、目標のレベルや環境を調整しましょう。

企業でセルフモチベーションを高める施策5選

社員がセルフモチベーションを保つには、組織の環境も重要です。個々人がやる気を保てるようにすることで、全体の成長にもつながります。次の方法を実践して、社員のやる気を保ちましょう。

1.目標設定の機会を設ける

目標設定の時間は、モチベーション維持に有効です。上司と部下が定期的に対話すると、日々の業務では見えにくい悩みや、やる気の変化に気づきやすくなります。

たとえば、「負担に感じていること」「やりがいに感じること」などを丁寧に聞くことで、日常会話だけではわからない本音を把握できます。

面談ですり合わせをしたうえで、目標や仕事の意味を一緒に確認すると、前向きな気持ちを取り戻せるでしょう。

2.1on1の面談を行う

1on1面談によって、セルフモチベーションを高めることも可能です。

会社の方針と、個人の目標をすり合わせることで、仕事の目的がはっきりします。結果として、双方が納得感をもって働けるでしょう。目標を共有していると、メンバー同士の協力もしやすくなります。

また、一度決めた目標を見直せる仕組みにすると、プレッシャーだけが残る状態を避けられます。成長や環境の変化に合わせて目標を調整できれば、前向きな気持ちを保つことも可能です。

3.ワークライフバランスを大切にする

ワークライフバランスは、セルフモチベーションを高めるうえで不可欠です。

休む時間が十分にあると、頭と体の疲れがリセットされ、集中力が戻りやすくなります。一方、長時間労働が続くと疲れがたまり、やる気の低下や判断ミスが多くなりがちです。

さらに、企業側がワークライフバランスを重視することで、社員は「大切にされている」という安心感をもつでしょう。安心感は企業への信頼や愛着につながり、セルフモチベーションの安定にもつながります。

ワークライフバランスに関しては、関連記事でも詳しく解説しています。

4.心理的な安全性を担保する

心理的な安全性とは「意見や失敗を正直に伝えても、人格を否定されない安心感」のことです。安心感が確保されていると、社員は叱られる心配より、挑戦したい気持ちを優先しやすくなります。

リモートワークが広がった現代では、会議中一人ひとりに意見を求める工夫も欠かせません。会議を「ミスを責める場」ではなく「次の一手を一緒に考える場」として使うことで、セルフモチベーションを維持しやすくなります。

心理的安全性について詳しく知りたい方は、関連記事もご覧ください。

5.セルフモチベーション研修を実施する

セルフモチベーションを学び、実践する場として、研修を実施するのも効果的です。研修は、単純な精神論に頼る場ではありません。個々人が前向きになれる理由や行動しにくい状況を洗い出すことで、自分と向き合うきっかけを作るものです。

かつては、「やる気は根性で出す」といった精神論が定着していました。しかし、仕事の内容や関わり方、フィードバックの受け取り方など、環境との相性によってセルフモチベーションは大きく変わります。

精神論に頼らず、「やる気」の源泉を見つけるワークは、セルフモチベーションを高める機会となるでしょう。


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