- 更新日 : 2025年3月19日
内部統制を外注する際の注意点!外部委託リスクとメリットを解説
昨今の事業活動において、すべて自社で運用するのは難しいと言えます。内部統制もそのひとつで、専門知識やノウハウ・実績を持った専門業者やコンサルタントへ外注する企業も増えています。
しかし、内部統制を外注する場合、メリットだけでなくデメリットやリスク、具体的な依頼可能範囲を正しく理解しておく必要があります。
本記事では、内部統制の外注を検討している上場企業の担当者や経営者向けに、内部統制における外注した際のメリットやデメリット、リスクなどを解説します。
目次
内部統制における企業の悩み
内部統制を実施することで担当者の業務量の増加により負担がかかったり、内部統制による対応や共有に時間を割く暇がないなど、内部統制の実施において多くの課題が懸念されます。
内部統制における企業の具体的な悩みとして、以下が挙げられます。
- 内部統制のためのチームを編成するなどリソースを割く必要があるが、通常業務に加えて負担がかかりすぎる
- 内部統制のノウハウの共有が従業員同士でできていない
- J-SOXの3点セットの資料の作成に時間や手間がかかる
- 運用状況評価作業にリソースが割けない
- 自社の海外支社がJ-SOXの対象で、早急な対応を求められている
- どのようにアウトソーシングできるのかわからない
これらの企業側の悩みについて解決方法と解説をしていきます。
内部統制については以下の記事も参考にしてみてください。
内部統制するリソースが割けない
内部統制を実施するには相応の作業時間や対応人員を割く必要があります。
内部統制には以下の6つのプロセスをすべて業務に組み込む必要があり、そのために業務フローの見直しや担当者との情報共有をしなければいけません。
- 統制環境
- リスクの評価と対応
- 統制活動
- 情報と伝達
- モニタリング(監視活動)
- ITへの対応
さらにJ-SOXにおける3点セット(フローチャート・業務記述書・リスクコントロールマトリックス)の作成にも時間や労力がかかってしまいます。
通常業務に加えて内部統制の実施・運用にかなりのリソースがかかることを考えるとなかなか実行に移せないという課題が考えられます。
内部統制を外注する3つのメリット
内部統制を自社で運用するのが困難な場合、外注するという方法も可能です。内部統制を外注したときの3つのメリットをご紹介します。
各メリットについて、以下で詳しく解説します。
1.人件費や労力が削減できる
メリットの一つ目は、人件費や労力を削減できる点です。
内部統制を自社で運用する場合、内部統制専門のプロジェクトチームを作り、各部署・部門に各業務の担当者へそれぞれヒアリングする工程が出てきます。
その分従業員の労力や人件費がかかり、通常業務に上乗せした業務となるため個々の負担増になります。
外注した場合、一連の工程を委託できるため、自社の従業員に人件費や時間を割く必要がありません。結果として人件費や労力の削減が可能となります。
2.通常業務に専念できる
人件費や労力を削減し、時間を生み出すことができれば、その分従業員には通常業務やコア業務に集中させることが可能です。
コア業務とは企業にとって利益を生み出す直接的な業務のことで、本来の従業員の役割である会社の利益創出に専念できれば、事業活動の活発化、成長につなげることができます。
3.専門知識を得られる
内部統制を外注することにより、社内で専門知識を得られる点もメリットです。
内部統制を実施する際、内部統制に関する専門知識が必要になる場面が多々出てきます。都度調べながら実施することも可能ですが、その分時間や手間がかかります。
専門知識を有する委託業者に任せれば、スムーズで効率的な運用が叶います。またそこから知見や知識を学ぶこともできるので、事業活動が続く限り委託業者に一任するのではなく、
将来的には自社で内部統制の運用を完結させたいと考えている企業は、最初だけ業務委託を選択することも可能です。
自社にない知識や知見を吸収する機会を得ることは大きなメリットといえます。
内部統制を外注する2つのデメリット
内部統制を外注する場合にはデメリットも考えられます。外注することで併発する2大デメリットはランニングコストがかかることと、従業員の内部統制に関する知識・スキルが育ちにくいことです。それぞれ詳しく解説しましょう。
1.長期的に見ると委託コストがかかる
内部統制を外注する場合には業務委託料が発生してしまいます。
内部統制の実施には、運用における初期投資に加え、日々のモニタリングや確認作業、定期的な監査など毎月のランニングコストが発生します。
一般的な内部統制のコンサルティング費用は1時間あたり1~2万円程度が相場です。自社の従業員の人件費が発生しない分、委託料としてコストが発生します。
2.従業員の内部統制に関する知識やスキルが育たない
専門的な委託業者から専門知識を得られるのはメリットでもありますが、反面、従業員の内部統制に関する知識やスキルが育ちにくいという環境を生み出すことになりがちです。
将来的に内部統制を自社で自走したいと考えている経営者や担当者からすると、従業員にも内部統制の実施のスキルを身につけてもらい、効率的な運用ができる方が良いと考えています。
各従業員が積極的に専門知識を身につけられる講習を受講するなども考えられますが、各個人の時間を割くことに変わりありません。
専門知識を持った人材を中途採用することも視野に入れておくことが大切です。
内部統制を業務委託するリスク
内部統制に限らず、あらゆる業務において外部への委託を考えている企業は、内部統制上のふたつのリスクについて正しく理解しておく必要があります。
業務委託する場合、内部統制上のリスクが考えられます。以下では、2つのリスクについて、それぞれ問題点を解説します。
情報漏えい対策を直接実施できない
外部へ委託をする際、情報漏えい対策が難しくなる点がリスクです。
外注した場合、委託先の社員の行動ひとつひとつを常に監視することはできません。実際に取り扱う情報をどう管理しているのかなどを直接目にすることは不可能なため、不安が残ります。
社内の人間であれば、社外秘の機密情報や顧客リストなどの個人情報などの情報漏えいを未然に防ぐための対策が直接的に実施・管理できますが、外注では管理が難しくなってしまいます。
仮に情報漏えいが発生してしまった場合、委託先の過失だった場合にも管理方法を直接指導することができないのはデメリットといえます。
業務効率化が担保できない
業務効率化のために外部へ委託することを決定したにも関わらず、実際に運用されるまで業務効率化を担保することはできません。
業務の有効性や効率性は、確実とは言い切れないためです。
さらに委託先が、成果が見込めない業務や不要な業務を繰り返している場合など、逆に費用対効果が低下していることに委託元が気が付かないなんてことも起こりえます。
それほど業務が必ず効率的に遂行できるという確信が持てない点も外部への委託を躊躇してしまう要因の一つといえます。
内部統制はどこまで外注できる?
基本的には内部統制の構築から評価手続きの一式を請け負ってもらうことも、業務の一部のみを委託することも可能です。
例えば、内部統制の構築支援サービスでは全体の計画立案をはじめ、決算・財務報告プロセスに係る内部統制の把握と評価単位・評価範囲の決定や役員や各部署における内部統制責任者を対象とした講習・研修の実施なども可能です。
評価支援サービスでは、評価実施における内部統制の整備状況や運用状況の評価、また監査対応における内部統制報告書の作成まで請け負ってくれることも可能です。
一部からすべてまで|ポイントは委託先が自社に合っているか
内部統制を外注する場合、委託業者が自社に合っているかどうかで判断しましょう。委託業者は以下の3タイプに分かれます。
タイプ | 特徴 |
---|---|
全部請負型 | 構築・評価作業のすべてを請け負う |
部分請負型 | 作業の一部のみを請け負う |
要員派遣型 | 繁忙期の時にだけ専門家や経験者を派遣する |
自社でどの程度、どの範囲の業務を委託するかによって求める委託先が異なります。
委託前にどんな業務を委託するのかや業務プロセスなどの評価範囲を選定しておくことで、スムーズな委託先選びが可能となります。
内部統制の委託先選びのポイントと注意点
委託先を選択する際のポイントと注意点を解説します。内部統制に限らず、信頼関係が築ける企業を選ぶことは大前提ですが、内部統制の業務委託においてはさらに注意する点がいくつかあります。
また、本格的に委託する前に依頼業務ごとに委託先選定基準を定めておきましょう。
依頼業務に関する十分な知見・実績・会社規模があるか
依頼業務ごとに委託先選定基準を設定しておく際には、依頼内容に対して十分な知見や実績があるか、会社の規模感が相応かを確認しておきましょう。
内部統制に詳しい外部委託業者はさまざまで、各社の特性を見て判断する必要があります。
対応してほしい業務が複数ある場合、それぞれに得意とする専門性の高い業者へ委託したり、実績値から任せる範囲を決定しましょう。
また、会社の規模感を確認するのは、委託する業務量をきちんと納期厳守できるかは委託先の会社規模にも関係するためです。納期までに業務が未完だったり、低クオリティのまま完了される恐れがあるためです。
費用対効果が期待できるか
委託するならコストパフォーマンスを重視することも大切です。
安ければ安いほどいいわけでなく、委託料に対して十分な実績を発揮してくれるのかを確認する必要があります。
委託先の実績や担当者のスキル、委託するべき内容について考慮する必要があります。
外部委託する場合には費用対効果がきちんと得られるかを重視して、委託先を選定しましょう。
コンプライアンス意識が十分か
業務委託する場合の懸念点にもなるのが、委託先のコンプライアンス意識です。コンプライアンス(法令・規制の遵守)違反が発生すると、委託先だけが法的処分を受けるだけにとどまらず、委託した側にも多くの影響が生まれます。
例えば、情報漏えいによる損害やその対処に追われたりするほか、企業イメージの低下によって社会的信用の喪失につながる恐れがあります。
委託先のミスによって、自社が損害を被ってしまうのを防ぐためにも、コンプライアンス意識の持った委託先選びが大切になります。
セキュリティ対策は十分か
委託業者のセキュリティ対策は十分に確認しましょう。
セキュリティ意識や具体的なセキュリティ対策などは企業ごとにちがいがあるため、委託先と自社でセキュリティ水準に大きく差があると、サイバー攻撃などの情報管理のリスクが高まる可能性があります。
自社が求めるセキュリティ水準や意識、万全の対策がきちんと整備されているかなどをきちんと確認しましょう。
コミュニケーションが問題なく取れるか
内部統制の業務委託に限らず、外部企業へ業務を依頼する際には、コミュニケーションに問題がないかを確認することが大切です。
コンスタントに連絡が取れ、依頼内容の修正や確認の連絡・報告などがスムーズに問題なく取れることは重要なポイントとなります。
トラブルが発生した場合にすぐに相談してこなかったり、委託先で勝手に決めた対応でさらに問題が広がるなどに発展するなどがないよう、ビジネスコミュニケーションが取れる委託先を選びましょう。
内部統制の内製化なら「マネーフォワード」
業務を外部業者へ委託する場合には、内部統制上のデメリットや課題を解決しておく必要があります。可能な限り自社でできる業務範囲は内製化を選択し、部分請負型や要員派遣型による内部統制も可能です。
内部統制を内製化するなら、マネーフォワードのワークフローシステムがおすすめです。ペーパーレス化やリアルタイム処理、自動化によるミス防止など多くのメリットで企業の内部統制における課題を解決します。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
最後に、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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