- 更新日 : 2025年3月27日
内部統制を意識した現金管理のポイント6つ|現金を取り扱うリスクとは
内部統制において現金管理は非常に重要です。どんなに少額であっても不正が起きる可能性があることは変わらず、体制作りは必須とされています。では具体的にどのように管理をすればよいのでしょうか。本記事では、内部統制における現金管理の重要性と不正が起きる原因、現金管理を行うポイントを解説します。自社の内部統制強化の一環としてぜひ取り組んでください。
目次
内部統制における現金管理の重要性
内部統制において現金管理を強化すると、以下のような効果を見込むことができます。
- 不正を防止できる
- 税務調査に備えられる
現金管理とどのような関係があるのか、詳しく見てみましょう。
不正を防止できる
現金管理を内部統制において行うと、不正を防止できるメリットがあります。現金管理を怠ったばかりに発生した不正には着服があり、いずれも金庫にあった現金を抜き取ったり、架空請求で得た経費を不正に受け取ったりすることで発生しているのです。
内部統制において金庫管理や経費のチェック体制を整えることで、これらの不正を未然に防ぐことができます。
税務調査に備えられる
現金の特性として、動きが激しく詳細に流れを記録しなければならないという課題があります。これが税務調査において標的になりやすく、記録している証憑書類などが細かくチェックされてしまうのです。仮に不正がなかったとしても、現金管理が不完全であれば、税務調査時に指摘が入る可能性があります。
日頃から内部統制を整備することで、税務調査に対しても万全の体制で臨むことができるようになるでしょう。
現金管理で不正が起こる原因
現金管理で不正が起こる原因はいくつかありますが、考えられるのは経営者が個人で現金管理を行っている、もしくは担当者が一人しかいないために発生する点です。経営者が管理していると、会社と私用の現金の区別があいまいになる可能性があります。一方の担当者が一人の場合も、会社の財務を長期間担当することで不正が起こる可能性が高くなるでしょう。
これとは別に、子会社において現金管理に関係する不正が報告されることもあります。子会社であるため本社の目が届きにくく、内部統制が構築できていない可能性が考えられます。海外子会社にも同様のことが言えるため、現金管理は本社だけではなく子会社を含めた全社で取り組んでいかなければなりません。
内部統制を意識した現金管理のポイント
内部統制を意識した現金管理を実施する際は、次の6つのポイントに注目しましょう。
できているものもあればできてない項目もあるでしょう。すでに体制を整えている企業も、今一度仕組みが形骸化していないかを確認するようにしてください。
管理担当と記帳担当を兼任しない
管理担当とは出納業務を行う人物を、記帳担当とは会計を行う人物を指します。この両者は原則として分離して、兼務しないようにしておきましょう。同じ人間が管理担当と記帳担当を兼務してしまうと、架空経費計上や残高操作ができてしまうためです。いかに信頼できる人物であったとしても、現金管理においては兼務させないようにしましょう。
人材確保が難しい中堅・中小企業では、別の役職者が管理もしくは記帳の業務を兼務するか、あらかじめ現金を渡す日を決めて現金や帳簿の管理を決めておくなどの対策で対応できます。2名以上いることで牽制機能も有効になります。
出金時はダブルチェックをする
牽制機能という点では、出金時には必ずダブルチェックを行うのも有効です。2名で出金チェックを行うことで、仮にどちらかが不正を働こうと思ってもできない状況を作り出すことができます。
管理体制を整えるには、現金支払い承認申請書を作成するのも有効です。その際決裁権の範囲を記載しておくと、チェック人数が増えても処理が停滞せずにスムーズに完了します。
現金の実査を毎日行う
小口現金を確認する実査は、毎日決まった時間に行うようにしましょう。業務時間終了後に実査を行うことで、早いタイミングで不正に気が付けます。小口現金出納帳と会計ソフトを突き合わせて、実際の残高と帳簿の残高が一致しているかどうかを調べる作業です。
管理担当と記帳担当が分かれている場合は記帳担当者が行うのがベストです。分かれていない場合は担当外の人物を含めた第3者で実施するようにしてください。
実査結果の報告は経理部長に提出し、承認を受けなければなりません。実査を行う際には金種表を作成し、そこに記入するようにしましょう。なお、現金実査の頻度は事業規模や業種により異なります。現金の動きがほとんどない場合は頻度を減らすなど、適切なタイミングで実施をするようにしてください。
小口現金の上限を設定する
社内の金庫で保管する小口現金の上限を設定し、超過した分は銀行口座に預金として入金するようにするといいでしょう。多額の現金が金庫にあるとわかると、着服や外部による窃盗につながる可能性もあります。
現金は必要最低限を残し、法人カードやキャッシュレスという形に切り替えることが重要です。なお小口現金の上限額は企業によって異なります。過去の精算実績などを見て、小口現金の上限額を決定しましょう。
経費の精算規定を作成する
経費の精算規定を作成するのも現金管理を強化する方法のひとつです。経費の精算規定をすでに設けている場合は、現状に則しているものかどうかをチェックし、必要に応じて修正するようにしましょう。
精算規定がなかったり古かったりすると、その抜け穴を使って経費の不正請求が発生する可能性もあります。経費精算の承認を上司などから得るようにし、直接現金管理者の手元に経費精算が渡らないような体制づくりをすることも効果的です。
領収書を確認して精算する
精算を行う際は領収書をもとに精算を実施してください。領収書は商品やサービスを購入したことを証明するための公的な書類です。経費の不正請求を防ぐためにも。領収書の提出は必ず義務付けるようにしてください。
提出された領収書は、以下の観点で内容が正しいかどうか、経費で精算できるかどうかを確認しておきましょう。
- 題と日付
- 宛名
- 但し書き
- 金額
- 収入印紙(5万円以上の支払いがあった場合)と消印
- 発行者住所・氏名
受け取った会計担当者は領収書に連番で番号を振り、出納帳に該当の番号を記載してください。のちに照合する際にかかる時間を大幅にカットできます。
小口現金を廃止するのもひとつの手
現金管理が煩わしければ、小口現金を廃止してしまうこともできます。やり方は複雑ですが以下の順序通りです。
- 取引すべてを口座振替とする
- 法人用クレジットカードを作成する
- 立替精算の実施日までに従業員に制度について周知する
- 立替経費として給与精算にする、大金は仮払金とする
- 法人カード・経費精算システムを導入する
実際に実施するには企業全体での共有と新ルールの徹底、理解が必要です。特に、今まで経費精算をその場で行っていた場合は、精算タイミングが遅くなることに反感を覚える従業員も出てくる可能性もあります。なぜ実施することになったのかからきちんと説明し、従業員全員の理解を得ていきましょう。
まとめ
現金管理の徹底は内部統制を強化する上でも重要な項目です。現金が社内にあることで不正のリスクが高いのであれば、小口現金を廃止してしまうやり方も検討してください。お金の流れが明確になれば、不正にいち早く気が付くことができるほか、税務調査などに引っかかってしまうこともなくなるでしょう。企業全体で現金管理に取り組んでいくことが重要です。
当社が提供する経費精算システム「マネーフォワード クラウド経費」や「マネーフォワード ビジネスカード」を活用することで、管理工数を大幅に削減し、紛失や不正のリスクを低減することが可能です。
下記の資料で、マネーフォワード クラウドを活用して小口現金からの脱却に成功した先行事例をご紹介していますので、小口現金の管理にお悩みの企業様はぜひご覧ください。
よくある質問
現金管理に潜むリスクは?
現金管理を社内で行うと、不正や横領の温床となる可能性があります。また、会計担当者による架空請求などの発生を助長してしまうリスクも潜んでいます。
内部統制を意識した現金管理のポイントは?
内部統制を意識した現金管理は、次の6つのポイントを意識しましょう。
- 管理担当と記帳担当を兼任しない
- 出金時はダブルチェックする
- 現金の実査を毎日行う
- 小口現金の上限を設定する
- 経費の精算規定を作成する
- 領収書を確認して精算する
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