• 作成日 : 2025年12月11日

害獣駆除は儲かる?ビジネスモデルや収入源、独立開業の方法、必要な資格などを解説

害獣駆除の仕事は、深刻化する害獣被害を背景に「儲かる仕事」として注目されています。都市部でのネズミやハクビシン、農村部でのイノシシやシカといった有害鳥獣による被害は社会問題となっており、専門家への需要は年々高まっています。しかし、害獣駆除で安定した収入を得る方法は一つではありません。

この記事では、害獣駆除で高収入を得るための主要な2つのビジネスモデル、具体的には「防除・施工」と「捕獲・狩猟」、それぞれの収益源(施工費、報奨金、ジビエ販売など)、独立開業の方法、必要な資格である狩猟免許、そしてビジネスとしての将来性について詳しく解説します。

害獣駆除ビジネスは本当に儲かる?

害獣駆除は「防除・施工」と「捕獲・狩猟」の2つの異なるビジネスモデルがあり、どちらも高い専門性と社会的な需要に支えられているため、儲かる可能性を秘めた仕事です。ただし、収益の上げ方や求められるスキルは大きく異なります。

害獣被害は都市部・農村部を問わず継続的に発生し、景気にも左右されにくい安定した需要があります。その一方で、専門技術や資格、許可が必要となるため参入障壁が一定あり、適正な価格設定がしやすいビジネスです。

1. 防除・施工(都市部・住宅地)

主に都市部や住宅地で、ネズミ、ハクビシン、イタチ、アライグマ、コウモリ、シロアリなど、家屋に侵入する害獣、害虫に対処するビジネスです。

  • 主な作業:被害状況の調査、侵入経路の特定、追い出し、清掃・消毒、そして最も重要な侵入口の封鎖(再発防止施工)です。
  • 収益源:一般家庭、飲食店、不動産管理会社といった顧客からの施工費・技術料です。

このビジネスモデルは、利益率(粗利率)が高い傾向にあります。これは、薬剤や資材の原価よりも専門知識や技術料の割合が大きいためです。確実な再発防止施工を提供できれば顧客満足度が高まり、高単価・高利益率を維持しやすいのが特徴です。

2. 捕獲・狩猟(農村部・山林)

主に農村部や山林で、イノシシ、シカ、サル、アライグマなど、農作物被害を引き起こす中型から大型の有害鳥獣に対処するビジネスです。

  • 主な作業:わな(罠)や銃を使用した捕獲が中心となります。
  • 収益源
    • 報奨金:自治体から支払われる捕獲のインセンティブ。
    • 獲物の販売:捕獲したイノシシやシカをジビエとして食肉処理施設に販売。
    • 委託費:自治体や法人から事業として駆除作業を委託される。

このビジネスモデルは、捕獲技術、すなわち狩猟スキルが直接収入に結びつくのが特徴です。収益源が複数ある反面、報奨金や獲物の販売だけでは収入が不安定になりがちな側面もあります。

害獣駆除(捕獲・狩猟)が儲かる仕組みは?

捕獲・狩猟ビジネス、いわゆる有害鳥獣駆除の主な収入源は、「報奨金制度」「獲物の販売(ジビエ)」「自治体からの事業委託」の3つです。特に専業ハンターとして安定収入を目指す場合、3つ目の事業委託が非常に重要になります。

なぜなら、報奨金やジビエ販売は成果報酬型であり、天候や獲物の状況によって収入が大きく変動するからです。一方、自治体からの事業委託は、安定した業務量と対価が期待できます。

1. 報奨金制度の活用

国や地方自治体は、農作物被害などを減らす目的で、対象の害獣を捕獲した場合に報奨金、いわゆる捕獲報奨金を支払う制度を設けています。

捕獲した証拠(自治体の規定による尻尾や写真など)を提出することで、1頭あたり数千円から数万円の報奨金が支払われます。

注意点
  • 金額の地域差:報奨金の金額は、地域(都道府県・市町村)や害獣の種類によって大きく異なります。
  • 支払いルート:多くの場合、報奨金は個人に直接ではなく、所属する「猟友会」を通じて支払われ、そこから分配されるのが一般的です。
  • 不安定性:捕獲できなければ収入はゼロであり、予算の都合で制度が変更・終了する可能性もあります。報奨金だけに依存する収入モデルは危険です。

2. 獲物の販売(ジビエ)

捕獲したイノシシやシカなどを、食用、すなわちジビエとして販売するルートです。

適切に処理された食肉は、報奨金とは別に、比較的高い価格で取引されます。特に質の良いジビエはレストランなどで需要があり、短期間でまとまった収入を得る手段となり得ます。

ただし、これには高いハードルがあります。

  • 処理技術:肉質は、捕獲後の血抜きや運搬を迅速かつ適切に行う「止め刺し・処理技術」によって大きく左右されます。
  • 販売ルート:個人で販売するには「食品衛生法」に基づく食肉処理業などの許可が必要で、ハードルが非常に高いです。現実的には、地域の「ジビエ処理加工施設」と契約し、そこに獲物を持ち込む形になります。

3. 認定鳥獣捕獲等事業者

報奨金やジビエ販売の不安定さを補い、専業の猟師として安定収入を得るために最も重要なのが、この「認定鳥獣捕獲等事業者」の制度です。

  • 制度の概要:「鳥獣保護管理法」に基づき、一定の基準(技術、安全性、法令遵守)を満たした法人や個人事業主を、都道府県が認定する制度です。
  • メリット:認定事業者になると、自治体(市町村など)から鳥獣の捕獲や防除の事業を委託される対象となります。
  • 収入の安定化:成果報酬である報奨金ではなく、委託事業として業務に対する対価(日当や年間契約料)が支払われるため、収入が大幅に安定します。専業ハンターとして高い年収を得ている人の多くは、この認定事業者として活動しています。

参考:認定鳥獣捕獲等事業者制度|環境省

害獣駆除(防除・施工)が儲かる仕組みは?

防除・施工ビジネスは、原価率が低く技術料、つまり利益を乗せやすいため、儲かる仕組みになっています。年収の目安は、会社員で300万円から600万円、独立開業して経営が軌道に乗れば1,000万円以上も可能です。

このビジネスの主なコストは人件費と技術料であり、薬剤や資材費といった原価の割合は比較的低いです。確実な施工で信頼を得れば、1件あたり10万円から数十万円の受注が可能であり、高い粗利率(例:60%から80%)を維持できます。

料金は主に「調査費」「駆除作業費」「清掃・消毒費」「再発防止施工費」で構成され、この中で最も重要なのが「再発防止施工費」です。

ハクビシン駆除(15万円)の料金例
  • 原価(薬剤、封鎖材、交通費など):3万円
  • 粗利益(技術料・人件費):12万円
  • 粗利率:80%

このように、物販と違って仕入れ原価が低く、専門技術、すなわち侵入口を見抜き確実に塞ぐ技術そのものに価値があるため、高い利益率が設定可能です。

会社員(正社員)の場合

未経験スタートの場合、年収300万円から400万円程度からが一般的です。経験を積み、現場責任者になったり、「防除作業監督者」などの資格を取得したりすると、年収450万円から600万円程度が目安となります。

独立開業・経営者の場合

独立した場合の収入は「売上」から「経費」を引いた利益次第です。最大の課題は集客であり、安定して月数件から十数件の施工を受注できれば、年収1,000万円を超えることも現実的です。ただし、集客できなければ会社員時代より収入が下がるリスクもあります。

害獣駆除ビジネスの将来性は?

害獣駆除ビジネスの将来性は非常に高いです。害獣の生息域拡大、社会の高齢化、空き家の増加といった要因により、害獣駆除の需要は今後も増加し続けると予測されます。

被害が減る要因が見当たらないため、専門家の必要性は増す一方です。主な理由は以下の通りです。

  • 野生動物の都市部進出:ハクビシンやアライグマなどが都市環境に適応し、定着しています。
  • 高齢化と空き家の増加:管理が行き届かない家屋が害獣の温床となり、周辺地域へ被害を拡大させています。
  • 担い手不足(特に捕獲):猟師の高齢化が進み、捕獲の担い手が不足しているため、専門事業者への委託ニーズが高まっています。
  • 衛生意識の高まり:害獣による感染症リスクなどへの意識が高まり、専門家による確実な駆除が求められています。

ただし、需要が高い一方で競合も存在するため、技術力だけで儲かるわけではありません。成功の鍵は、専門技術に加え、地域社会の信頼と集客を両立させることです。

参考:https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/higai_zyoukyou.html

害獣駆除を始める前に必要な資格と許可は?

害獣駆除の業務、特に捕獲を行う場合は「狩猟免許」が必須です。また、日本の法律(鳥獣保護管理法)ではほとんどの野生鳥獣が保護対象であり、無許可・無免許での捕獲は厳しく罰せられるため、法律の知識が不可欠です。

1. 必須の資格・許可

業務として捕獲を行う場合、以下の資格や許可が必須となります。

狩猟免許(都道府県知事)
  • わな猟免許:わな(箱わな、くくりわな等)を使用して捕獲する場合に必要です。イノシシ、シカ、アライグマ、ハクビシンなど、住宅地・農村部問わず多くの害獣駆除で必要となる、最も重要な免許です。
  • 第一種銃猟免許:装薬銃や空気銃を使用する場合に必要です。
  • 第二種銃猟免許:空気銃のみを使用する場合に必要です。

銃砲所持許可(公安委員会)

銃猟免許とは「別」に、猟銃(散弾銃、ライフル銃、空気銃)を所持・使用するために、警察(公安委員会)の許可が必要です。

参考:狩猟免許を取得する|狩猟の魅力まるわかりフォーラム|環境省

2. 信頼性を高める資格

開業自体に必須ではありませんが、技術力と信頼性の証明として、特に法人や行政の仕事を受注する際に役立つ資格です。

  • 防除作業監督者:建築物衛生法に基づく国家資格です。
  • ペストコントロール技術者:公益社団法人日本ペストコントロール協会の民間資格で、害虫・害獣防除の総合的な知識を証明します。
  • しろあり防除施工士:シロアリ駆除も手掛ける場合に有効です。

3. 遵守すべき法律

資格以上に重要なのが法律の遵守です。

ほとんどの野生鳥獣(ネズミ類や一部例外を除く)は、「鳥獣保護管理法」すなわち鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律で保護されています。

たとえ害獣(例:ハクビシン、アライグマ、コウモリ)が家屋に侵入し被害を出していても、許可なく捕獲・殺傷することは違法です。実際の業務では、被害の相談を受けたら、まず自治体に「有害鳥獣捕獲許可」を申請し、許可が下りてから捕獲作業を開始するのが正しい手順です。

参考:捕獲許可制度の概要|野生鳥獣の保護及び管理|環境省

害獣駆除で独立開業するまでの流れは?

害獣駆除ビジネスで独立するには、まず実務経験を積み、資格を取得し、必要な機材と資金を準備して開業するのが一般的な流れです。知識や技術なしでの開業は、再発によるクレームや法律違反のリスクが非常に高く、成功は困難です。

防除・施工で独立開業する場合

  1. 既存の害獣駆除業者に就職し、最低3年から5年は実務経験(調査、施工、見積もり、顧客対応)を積みます。
  2. 並行して関連資格(わな猟免許、防除作業監督者など)を取得します。
  3. 事業計画を立て、資金を準備し、個人事業主または法人として開業します。

捕獲・狩猟で独立開業する場合

  1. まず狩猟免許(わな猟、銃猟)を取得します。
  2. 地元の猟友会に参加します。これは、ベテラン猟師から捕獲技術、地域の特性(獣道など)、法律、安全管理を学ぶために非常に重要です。
  3. 自治体の「有害鳥獣捕獲隊」などに参加し、実績を積みます。
  4. 技術と信頼が認められれば、「認定鳥獣捕獲等事業者」を目指し、専業として独立します。

害獣駆除で独立開業する費用の目安は?

独立開業する場合、初期費用として最低でも100万円から300万円程度は見込まれます。以下は、開業に必要な費用の目安です。

  • 車両費:軽トラック、軽バン(中古)で50万〜150万円程度。防除・施工、捕獲・狩猟ともに必須です。
  • 狩猟道具:わな、銃、弾薬、ナイフなどで10万〜50万円程度。捕獲・狩猟では必須、防除・施工では(わな)のみ必要な場合があります。
  • 専門機材:高所作業具、噴霧器、ファイバースコープなどで30万〜100万円程度。防除・施工では必須ですが、捕獲・狩猟では基本的に不要です。
  • 資格取得費:狩猟免許、講習会、銃所持許可などで5万〜20万円程度。防除・施工、捕獲・狩猟ともに必須です。
  • 訓練費用:射撃訓練、わな講習など。捕獲・狩猟では必須、防除・施工では一部必要な場合があります。
  • 広告宣伝費:Webサイト、名刺、チラシなどで10万〜50万円程度。防除・施工では必須、捕獲・狩猟では一部必要です。
  • 登録・維持費:猟銃登録料、猟友会費、車両維持費、保険料などで年間数万円程度。防除・施工、捕獲・狩猟ともに必須です。

これらの結果、初期費用の合計目安は、防除・施工ビジネスで100万〜300万円、捕獲・狩猟ビジネスで100万〜250万円程度となります。

害獣駆除ビジネスで成功するためのポイントは?

害獣駆除ビジネスで成功、すなわち儲かるためには、選択するビジネスモデルによって重要なポイントが異なります。

捕獲・狩猟のポイント

最も重要なのは地域の信頼です。猟友会や自治体、地域住民との関係構築を最優先し、「あの人に任せれば安心だ」という信頼を得ることが、安定収入につながる委託事業(認定事業者)への道を開きます。

防除・施工のポイント

最も重要なのは集客です。「今すぐ屋根裏の音を止めたい」といった緊急性の高い顧客に見つけてもらうため、インターネットでの集客は必須です。

具体的な手法としては、自社Webサイトの運営、SEO対策、リスティング広告、SNSなどを活用し、実績を積み上げて公開することが重要です。

害獣駆除ビジネスを副業として始める場合の注意点は?

捕獲・狩猟は、まず副業からキャリアをスタートする人も多いです。ただし、副業として始める場合は以下の点に注意が必要です。

  1. 就業規則の確認:勤め先(本業)の就業規則で副業が禁止されていないか、許可が必要かを確認してください。
  2. 安全管理の徹底:特に銃を扱う場合、安全管理は最優先事項です。副業であっても、その責任は専業と全く同じです。
  3. 地域貢献の視点:まずは地域の有害鳥獣捕獲隊などに参加し、「地域貢献」として活動しながら技術と信頼を築くことが、将来的な収益化(儲け)につながります。

害獣駆除で安定した儲けを目指すために

害獣駆除で設けることは可能ですが、その道筋は一つではありません。

  • 防除・施工の場合:高い専門技術力を身につけ、Webマーケティングを駆使して都市部の需要を的確に掴めば、高い利益率を維持し、年収1,000万円以上を目指せる可能性があります。
  • 捕獲・狩猟の場合:報奨金やジビエ販売だけでは収入が不安定です。しかし、狩猟免許を取得し、猟友会で技術と信頼を磨き、「認定鳥獣捕獲等事業者」として自治体からの安定した委託を受けられるようになれば、社会に貢献しながら専業として高い収入を得る道が開けます。

どちらの道を選ぶにしても、害獣の生態、建築構造、関連法規、特に鳥獣保護管理法に関する深い専門知識が求められます。また、過酷な現場(汚染環境や死骸の処理)に対応する覚悟と、顧客や地域の信頼を得るための継続的な努力が不可欠です。


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