- 作成日 : 2025年12月11日
合同会社に役員を追加するには?必要な手続き・書類・費用などを解説
合同会社の経営体制強化や事業拡大に伴い、新たな経営メンバーを加えたいと考える場面は少なくありません。合同会社に役員を追加するには、株式会社とは異なる法的な手続きを理解する必要があります。
この記事では、合同会社で役員追加を行うための具体的な流れ、必要となる書類、そして費用や税金について詳しく解説します。合同会社の社員増員を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
そもそも合同会社の役員とは?
合同会社における役員追加とは、法的には出資者である「社員」を追加し、その人を会社の「業務執行社員」または「代表社員」に指定することを指します。株式会社の役員とは立場が異なるため、まずその違いを理解することが重要です。
株式会社の「役員」と合同会社の「社員」の違い
株式会社の役員は経営の専門家であるのに対し、合同会社の社員は出資者兼経営者である点が異なります。
- 株式会社:会社の所有者(株主)と経営者(取締役などの役員)が分離しているのが原則です(所有と経営の分離)。
- 合同会社:会社の所有者(出資者)と経営者(業務執行者)が一致しているのが原則です(所有と経営の一致)。
法律上、合同会社の出資者のことを「社員」と呼び、この社員全員が原則として会社の業務を執行する権利と義務を持ちます。
合同会社の役員追加は社員追加を意味する
合同会社で一般に役員追加と呼ばれる手続きは、法的には「業務執行社員」または「代表社員」という社員を増員することを指します。
合同会社では、定款で定めることにより、社員の中から特に業務を執行する権限を持つ「業務執行社員」を限定できます。さらに、業務執行社員の中から会社を代表する「代表社員」を定めることも可能です。
したがって、合同会社で役員を追加する場合、最も一般的なのは新たに出資者を社員として加え、その人を業務執行社員とするケースです。
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合同会社に役員を追加する手続きは?
合同会社に新たな業務執行社員を追加(増員)するには、既存の社員全員の同意を得て定款を変更し、新たな社員が出資を履行した後、法務局で変更登記を行うのが基本的な流れです。
1. 定款の確認と変更
まず、新たな社員(役員)を迎えるために、既存の社員全員の同意を得て定款を変更します。
合同会社が新たな社員(出資者)を迎えることは、会社の根本規則である定款の変更にあたります。会社法上、定款の変更は原則として「総社員の同意」が必要です。後の登記申請やトラブル防止のため、必ず「総社員の同意書」または「定款変更に係る同意書」といった書面を作成し、既存の社員全員が記名押印します。
2. 新たな社員による出資の履行
次に、新たに参加する社員は、定められた出資額を会社の口座に払い込む「出資の履行」を完了させる必要があります。
株式会社の設立時とは異なり、金融機関の「払込金保管証明書」は不要です。通常は、合同会社の銀行口座に、新社員が自身の名義で出資金を振り込みます。この振り込み履歴がわかる通帳のコピーなどが、後の登記申請で「出資の履行を証する書面」の根拠となります。
3. 法務局への変更登記申請
最後に、社員の加入と出資の完了から2週間以内に、管轄の法務局で変更登記申請を行います。
合同会社の登記事項には「社員の氏名・住所」や「業務執行社員の氏名・住所」が含まれています。これらに変更が生じたため、登記簿を最新の状態に更新する義務があります。この2週間の期限を過ぎると過料の対象となる可能性があるため、迅速な手続きが求められます。
合同会社の役員追加に必要な書類は?
合同会社の役員追加登記で法務局に提出する書類は、主に「変更登記申請書」「総社員の同意書」「出資を証する書面」です。
特に申請書の書き方を間違えたり、添付書類が不足したりすると手続きが遅れるため、一覧で確認しましょう。以下は、新たな社員(出資者)が加入し、その人が業務執行社員となる場合の一般的な必要書類です。
- 変更登記申請書
法務局のWebサイトにある雛形を参考に作成します。変更内容(社員の加入、業務執行社員の就任など)と登録免許税額を記載し、法務局届出印(会社実印)を押印します。 - 総社員の同意書
既存の総社員が新たな社員の加入に同意したことを証する書面です。 - 定款
総社員の同意により変更された、最新の定款です。法務局の運用により不要な場合もありますが、準備しておくと確実です。 - (新たな社員の)就任承諾書
新たに追加される人が「業務執行社員」または「代表社員」に就任することを承諾した書面です。個人の実印押印と印鑑証明書が求められるのが一般的です。 - (新たな社員の)印鑑証明書
上記「就任承諾書」に押印した実印の印鑑証明書です。 - 出資の履行を証する書面
出資(払込み)があったことを証明する書面(払込証明書)と、その根拠となる銀行口座の通帳コピーなどです。 - 登録免許税貼付台紙
登記にかかる登録免許税(後述)分の収入印紙を貼り付けた台紙です。 - 委任状
司法書士などの代理人に登記申請を依頼する場合に必要です。
※新たな社員が「代表社員」になる場合は、上記に加えて個人の印鑑証明書や、会社実印の「印鑑(改印)届書」が別途必要になることがあります。
合同会社の役員追加にかかる費用は?
役員追加にかかる主な費用は、法務局に納める登録免許税と、専門家に依頼する場合の報酬です。
登録免許税
登録免許税は、登記申請の際に国に納める税金です。合同会社の役員(社員)追加に関する登記費用は、資本金の額によって変動します。
- 資本金が増加しない場合:1万円
※ただし、同時に複数の変更(例:本店移転など)を行う場合は、その分も加算されます。 - 資本金が増加する場合:増加した資本金の額 × 1,000分の7
※ただし、上記で計算した額が3万円に満たない場合は、一律3万円となります。
司法書士への依頼費用
これらの手続きを司法書士に依頼する場合、別途報酬が発生します。司法書士報酬の相場は、一般的に3万円〜8万円程度ですが、定款変更の複雑さや書類作成の範囲などによって変動します。
合同会社の役員追加の手続きは自分でできる?
合同会社の役員追加手続きは、費用を抑えるために自分で行うことも可能ですが、司法書士に依頼すると時間と手間を大幅に削減できるメリットがあります。
自分で手続きを行う場合の注意点
自分で登記申請を行う最大のメリットは司法書士報酬がかからない点ですが、書類の書き方を調べたり、法務局と何度もやり取りしたりする手間が発生します。
法務局の窓口は平日の日中しか開いていないため、本業の時間を割く必要があります。また、書類の不備で補正(修正)を指示され、2週間の申請期限に間に合わなくなるリスクも考慮しなければなりません。
専門家に依頼するメリット
司法書士に依頼すれば、法的に正確な書類作成から登記申請までを迅速に代行してもらえるため、経営者は本業に集中できます。
登記の専門家であるため、手続きの正確性と迅速性が担保されます。また、役員追加は定款変更を伴うため、将来の経営体制を見据えた定款全体の見直しや法務アドバイスも併せて受けられる点が大きなメリットです。
合同会社の役員追加は総社員の同意と登記が必須
合同会社の役員追加は、会社の成長や体制変更において重要な手続きです。その基本は、「総社員の同意」「定款の変更」「出資の履行」「2週間以内の登記申請」というステップを確実に実行することです。
特に、登録免許税の計算や登記申請書類の準備は専門的な知識を要します。もし自分で手続きを行うことに不安がある場合や、本業に集中したい場合は、登記の専門家である司法書士に相談するのが賢明です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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