- 更新日 : 2025年11月25日
脱毛サロンの開業に許認可は必要?資格や届出の手続きを解説
脱毛サロンの開業に特別な営業許可は原則不要ですが、提供するサービス内容によっては国家資格や医療法上の手続きが必須になります。
たとえば、顔のシェービングは原則として理容師の業務であり、実施には理容師免許に加え理容所の開設(保健所届出)が必要です。また、毛根等を破壊するレーザー脱毛や針脱毛は医療行為に当たるため医師(または医師の指示下の看護師)しか行えず、医療法に基づく診療所開設届(保健所)等の手続きが伴います。これらの区分を誤ると法令違反のリスクになり得ます。
この記事では、脱毛サロンの施術内容によって異なる許認可や資格、税務署への開業届の提出方法、そして失敗しないための注意点まで、開業に必要な手続きをわかりやすく解説します。
目次
脱毛サロン開業に営業許可は必要ない?
一般的な光脱毛(美容脱毛)のみを行う脱毛サロンを開業する場合、飲食店や理美容室のような特定の「営業許可」は原則として不要です。ここでいう光脱毛は、毛根等を破壊しない減毛・抑毛の範囲に限られます。
法律上、営業許可は公衆衛生や安全確保のために特定の業種に義務付けられているものであり、医療行為に該当しない光脱毛サービスはこれに該当しないと整理されています。ただし、これはあくまで「許可」が不要というだけで、事業者として果たすべき税務上の手続きが免除されるわけではありません。個人事業主として開業する際は、必ず税務署へ「開業届」を提出しましょう。
また、施術のあとに、お客様にお茶やお水を出すこともあると思います。ペットボトルなど、ふたが閉まった飲み物を無料で渡すだけなら、基本的に営業許可はいりません。
一方、有償での提供やスムージー作り等の「調理」行為を伴う場合は、食品衛生法上の「飲食店営業」に該当し得るため、飲食店営業許可が必要になる可能性があります。迷う場合は、図面や運用実態を用意のうえ、管轄の保健所に事前相談しましょう。
税務署への開業届はすべての事業者に必須
事業を開始した際は、所得税法に基づき、事業開始の事実を税務署に申告する「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を開始から1か月以内に提出します。
提出しないことによる罰はありませんが、青色申告の適用手続きが遅れると税務メリットを受けにくくなり、事業用口座や融資でも不利になりかねません。開業届の提出と青色申告の適用手続きはセットで早めに進めるのがおすすめです。
脱毛サロンの施術内容により許認可や資格が必要になるケースとは?
脱毛サロンといっても、提供するサービス内容は多岐にわたります。どの施術を行うかによって、必要となる許認可や資格が全く異なります。特に注意すべきは、「理容師法・美容師法」および「医師法・医療法」が関わるケースです。自身のサロンがどのケースに該当するのか、開業前に正確に把握しておきましょう。
自身のサロンがどのケースに該当するのか、開業前に正確に把握することがトラブルを避ける上で不可欠です。
必要な許認可・資格の一覧表
脱毛サロンで提供したいサービスとそれに伴う許認可・資格の関係性を表で確認しましょう。
| 施術内容 | 必要な資格・免許 | 必要な届出・許可 | 関連法規 |
|---|---|---|---|
| 光脱毛(美容脱毛)のみ | 原則不要 | 開業届(税務署) | 所得税法 |
| ワックス脱毛 | 原則不要 | 開業届(税務署) | 所得税法 |
| シェービング(顔そり等の剃刀を用いる剃毛) | 理容師免許 | 理容所開設届(保健所) | 理容師法 |
| まつ毛エクステ、まつ毛パーマ | 美容師免許 | 美容所開設届(保健所) | 美容師法 |
| レーザー脱毛・ニードル脱毛(毛根等の破壊) | 医師免許 | 診療所の開設手続き・開設届(医療法/保健所) | 医師法・医療法 |
光脱毛のみなら資格は不要
光脱毛(フラッシュ/IPL等)は、毛根等を破壊しない減毛・抑毛の範囲であればエステの領域とされ、施術者に国家資格は求められません。ただし、安全管理や皮膚の基礎知識は不可欠です。医療行為に当たる出力・方法に踏み込まないことが前提です。
ただし、安全な機器の取り扱いや皮膚理論に関する正しい知識、トラブル発生時の対応力が求められます。
シェービングやまつ毛エクステの場合
剃刀を用いる顔そり等のシェービングは理容の業務であり、理容師免許+理容所が必要です。まつ毛エクステやまつ毛パーマは美容師法上の美容に該当し、美容師免許+美容所での実施が必須です。無資格・無届での実施は法令違反となるため、メニュー化の前に必ず要件を確認してください。
参照:美容師法概要|厚生労働省
参照:美容所|東京都保健医療局
医療脱毛との違い(医師法違反を防ぐ)
レーザー脱毛や針脱毛のように毛根組織を破壊する行為は医師のみが行えます。実施には医療法に基づく診療所の開設手続きが伴います。エステで「永久脱毛」等の表現や医療機器の使用は行わないよう、線引きを厳格に守りましょう。
医療脱毛クリニックとの違いと医師法違反のリスクは?
脱毛サービスは、大きく「エステ脱毛(美容脱毛)」と「医療脱毛」に分かれます。この二つの違いを正しく理解していないと、意図せず法律に抵触してしまう危険性があります。
両者の最大の違いは、毛根組織を破壊できるかどうか、すなわち医療行為に該当するかにあります。
毛根組織の破壊は医療行為
厚生労働省の通知は、レーザー光線等を毛根部に照射して毛乳頭・皮脂腺開口部等を破壊する行為や針脱毛を、医師のみが行える医療行為と明確に位置付けています。
したがって、レーザー脱毛・ニードル脱毛は医師が実施するのが原則で、看護師が携わる場合でも医師の指示下に限られます。
エステサロンでこれらの機器を用いたり、「永久脱毛」といった医療的効能を標榜したりすることは、医師法違反となるおそれがあります。エステ脱毛は減毛・抑毛の範囲にとどめ、この境界を明確に運用することが不可欠です。
参照:医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて|厚生労働省
セルフ脱毛サロンの注意点
セルフ脱毛サロンは、顧客自身が機器を操作するため法的な資格要件は通常求められませんが、事業者には機器の安全な使用方法の説明、衛生管理、事故時の対応などの安全配慮義務があります。火傷などの肌トラブルが発生し、説明・管理が不十分と判断されれば、損害賠償責任を問われる可能性があります。
実務上は、取扱説明・禁忌事項の明示、出力上限・年齢制限の設定、同意書・記録様式の整備、緊急時フローと医療連携先の明示等を徹底しましょう。
脱毛サロン開業の手続きの流れとは?
脱毛サロンを開業するための手続きは、提供するサービス内容によって異なります。ここでは、最も一般的な「光脱毛のみ」の場合と、「シェービング(顔そり等)やまつ毛施術を含む」場合の2パターンに分けて、具体的な流れを解説します。
STEP1:事業計画の策定
どのようなサービスを提供するサロンでも、まず初めに行うのが事業計画の策定です。
- コンセプト設定:誰に、どのような価値を提供するのかを明確にします。
- サービス内容の確定:脱毛部位、料金プラン、オプションメニュー(シェービングの有無など)を決めます。この段階で必要な許認可が決まります。
- 資金計画:開業資金(物件取得費、内装工事費、脱毛機購入費、広告宣伝費)と運転資金を算出し、自己資金や融資の計画を立てます。
- 収支計画:売上目標と経費を予測し、利益が出るまでの計画を立てます。
STEP2:保健所への事前相談(理容所/美容所が関わる場合)
顔そり等のシェービング(剃刀による剃毛)をメニュー化する場合は「理容」に該当するため、理容所としての構造設備基準に適合させる必要があります。まつ毛エクステ・パーマ等の美容行為は「美容所」としての基準が必要です。
いずれも物件契約や内装工事の前に、管轄保健所で図面を持参して事前相談するのが確実です。
STEP3:税務署へ「開業届」を提出する
事業を開始したら、1か月以内に納税地を管轄する税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。
STEP4:保健所の施設検査と営業開始(理容所/美容所が関わる場合)
内装工事が完了したら、理容所または美容所の「開設届」を保健所へ提出します。その後、保健所職員による施設の立入検査が行われ、基準に適合していることの確認が取れれば営業開始できます。検査日程の調整や交付までに日数を要するため、オープン日から逆算して余裕ある工程にしましょう。
脱毛サロンで取得したい民間資格はある?
エステ脱毛の施術に国家資格は不要ですが、顧客に安心してサービスを受けてもらうためには、知識や技術力を客観的に証明する民間資格の取得が有効です。法的な義務はありませんが、体系的な学習を通じて安全管理・衛生・皮膚理論・法令理解が強化され、カウンセリングの質やトラブル時の適切な対応にもつながります。
資格取得がサロンの信頼性を高める
脱毛サロンに関連する民間資格は、複数の協会や団体が認定しています。これらの資格を取得することは、サロンの信頼性や専門性をアピールする上で大きな武器となるでしょう。
- 認定美容ライト脱毛エステティシャン:日本エステティック振興協議会(JEPA)が認証する資格。
- 認定電気脱毛士(CPE):日本スキン・エステティック協会(JSA)などが教育を行う、電気脱毛に関する国際的な資格。
- AEA認定エステティシャン:日本エステティック業協会(AEA)が認定する資格。
これらの資格を取得しているスタッフが在籍していることは、他店との差別化につながり、顧客がサロンを選ぶ際の重要な判断材料となるのではないでしょうか。
参照:認定美容ライト脱毛エステティシャン|一般社団法人日本エステティック工業会
参照:美容ライト脱毛|内閣府
参照:CPE(認定電気脱毛士:Certified Professional Electrologist)になるために|一般社団法人日本スキン・エステティック協会
参照:AEAエステティシャン資格取得について|AEA
脱毛サロンの許認可以外の開業準備のポイント
脱毛サロンの許認可や届出の手続きは、あくまで開業のスタートラインに立つための準備です。サロン経営を成功させ、継続していくためには、ほかにも押さえておくべき重要なポイントがいくつかあります。
特に、資金計画、集客戦略、そして安全管理の3点は、事業の成否を分けるといっても過言ではありません。
綿密な資金計画と資金調達
脱毛サロンの開業には、高額な業務用脱毛機の購入費をはじめ、物件取得費、内装工事費、広告宣伝費など、まとまった初期投資が必要です。自己資金だけでまかなうのが難しい場合は、融資を検討することになります。
- 日本政策金融公庫:個人事業主や小規模事業者向けの融資制度が充実しています。
- 制度融資:自治体、金融機関、信用保証協会が連携して提供する保証付融資で、比較的低金利で借りやすいのが特徴です。
- 補助金・助成金:国や自治体が提供する返済不要の資金です。創業に関する補助金などを活用できないか調べてみましょう。
融資を受けるには、説得力のある事業計画書の提出が不可欠です。なぜこの事業が成功するのか、どのように返済していくのかを具体的に示せるよう、しっかりと準備を進めましょう。
ターゲットを明確にした集客戦略
どれだけ優れた技術や最新の機器を導入しても、お客様が来なければ経営は成り立ちません。開業当初は特に、サロンの存在を知ってもらうための集客活動が重要です。
- オンライン集客:ホームページや予約サイトの開設、SNS(Instagram、 Xなど)での情報発信、リスティング広告の出稿。
- オフライン集客:チラシのポスティング、フリーペーパーへの掲載、近隣店舗との提携。
大切なのは、「誰に」来てほしいのか、ターゲット顧客を明確にすることです。ターゲット層のライフスタイルや情報収集の方法に合わせて、最適な集客チャネルを選ぶことで、広告宣伝費を効率的に活用できます。
賠償責任保険への加入
細心の注意を払っても、火傷や皮膚トラブル、契約に関する紛争などのリスクはゼロではありません。エステ向け賠償責任保険への加入は必ず検討し、説明同意書・施術記録・禁忌事項の掲示・機器の出力上限・衛生手順・緊急時フローを整備しましょう。
脱毛エステに関する消費生活相談は多く報告されており、セルフ系でも相談増が指摘されています。リスクを前提に、事故予防・初動対応・補償の三層で備えることが継続経営の鍵です。
脱毛サロン開業の許認可は施術内容で決まる!事前の確認を
脱毛サロン開業の成否は、提供するサービス内容を正確に把握し、それに合った法的な手続きを適切に行えるかにかかっています。
一般的な光脱毛のみであれば、主な公的手続きは税務署への開業届等に限られますが、顔そり等のシェービングを独立メニューとして提供する場合は、これは理容に該当するため、理容師免許の保有と保健所への理容所(開設)届が前提になります。
一方、レーザー脱毛や針脱毛のように毛根組織を破壊する行為は医療行為に当たり、医師(看護師は医師の指示下)しか行えません。エステサロンでこれらを実施したり「永久脱毛」を標榜したりすることは、医師法違反となるリスクがあります。
こうした区分を正しく理解し、理容/美容/医療のどれに当たるかを事前に確認することが、お客様の安全と信頼を守り、長期的にビジネスを続ける土台になります。開業前には、自身の計画がどのケースに該当するのかを所管の保健所や専門家に相談し、要件(資格・施設・届出)を満たした上でスタートしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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