- 更新日 : 2025年6月2日
独立時の融資ではいくら借りられる?個人事業主が審査に通るコツなどを解説
独立・開業に必要な資金は、融資で調達可能です。個人事業主であっても、日本政策金融公庫や銀行融資などが活用できますし、実際に多くの事業者は融資により独立資金を準備しています。
ただし審査に通らなければ融資はしてもらえません。本記事にてコツ・ポイントなどを解説しておりますので、個人事業主としての独立を考えている方はぜひチェックしてください。
目次
独立には融資を受けた方がよい?
独立開業するときは資金調達のため融資を検討するとよいでしょう。開業費用がごく低額で済むなら自己資金だけで賄えるかもしれませんが、融資を受けて調達するのが一般的です。
うまくいけば、融資によってまとまった資金を一度に調達することができ、事業計画をスムーズに進めることが可能となるでしょう。
ただし返済義務が発生するため、毎月の返済の負担も考慮した収支計画を立てなくてはなりません。
独立に受けられる融資の金額はどのぐらい?
独立時に受けられる融資の金額を一概に示すことはできません。なぜなら、融資金額は事業計画の内容や金融機関によっても大きく異なるからです。
一般的には「自己資金の3倍程度」という目安が用いられますが、これはあくまで目安であり、実際に融資を受けられる金額はさまざまな要因によって変動します。
例えば次のような要因が影響すると考えられます。
- 事業計画の実現可能性…市場調査のデータや競合分析などを盛り込んだ、説得力のある事業計画書を作成できれば、実現可能性が高いとして融資額を上げられるかもしれない。
- 事業の収益性の高さ…事業から大きな利益が出る見込みがある、安定的に利益を生み出せる見込みがある、という場合には大きな額が認めてもらいやすい認められる大きな額も出してもらいやすい。
- 担保や保証人の有無…担保や保証人の設定を行うと、その分、貸し手のリスクは下げられ、より多くの融資を受けやすくなる。
また、各金融機関の審査基準によっても結果は変わってきます。同じ事業者が同じ額を求めても、金融機関Aでは融資に成功し、金融機関Bでは融資に失敗する、ということも起こり得るのです。
いくら融資を受けられるか知る方法
融資を受けられる金額を把握するなら、「融資の申請を行う金融機関に直接相談する」のが一番です。
それ以外の方法としては、例えばWebサイト上で公開されている「融資のシミュレーションサービスを利用する」こと、あるいは「資金調達の支援実績が豊富な専門家に相談する」ことも有効です。
また、利用する融資制度によってはあらかじめ上限額が設定されているものもありますので、その場合はある程度の予測を立てることはできるでしょう。
独立時に融資を受けられる金額の平均相場
日本政策金融公庫では新規開業に係る実態調査を行っており、事業者に対するアンケートから、資金調達の平均額などもまとめられています。
そして2023年度新規開業実態調査によると、開業時の資金調達額は平均で「1,180万円」であると示されています。
※中小企業などの比較的規模の小さな事業者を対象とした調査であり、個人企業が大半を占めている。
さらに、その調達先のうちもっとも高い割合を占めていたのは「金融機関などからの借入」で、平均「768万円」です。これは平均調達額の65%以上の値で、次点で多いのが自己資金の平均「280万円」でした。
あくまで平均値ですので、どの事業者でも800万円近く借りることができる、ということはできません。しかしながら、このあたりの金額なら相場から大きく外れておらず成功の可能性も十分に考えられるでしょう。
独立時に利用できる融資とは?
融資にもさまざまな種類があり、それぞれに特徴が異なります。ここで、個人事業主でも利用できる主な融資について紹介していきます。
日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫は、政府系金融機関として、創業や中小企業の経営を支援するための融資制度を多く展開しています。
特徴を整理すると次のようにまとめることができます。
- 創業間もない事業者、規模の小さな事業者でも利用しやすい
- 低金利で返済の負担を小さく抑えられる
- 無担保・無保証人での融資も可能
- 経営相談やセミナーなどのサポートが充実している
- 審査は比較的厳しいとされている
地方自治体の制度融資
各エリアの地方自治体も、地域経済の活性化や雇用創出などを目的に、独自の融資制度を設けています。これらの制度は、地域の実情に合わせた設計となっており、金利や融資条件も多種多様です。
特徴を整理すると次のようにまとめられます。
- 地域の特性に合った融資が利用できる
- 金利が低く設定されていることが多い
- 地域の金融機関と連携したサポートが期待できる
- 対象者や融資条件は自治体により大きく異なるため正確な情報をつかむことが大事
銀行の融資
銀行は、民間金融機関として、事業者に対する融資も行っています。銀行による融資では、日本政策金融公庫や地方自治体の制度融資に比べると金利が高くなる傾向にありますが、高く評価され審査に通ると、大きな資金を得られます。
特徴を整理すると次のようにまとめられます。
- 融資限度額が高くまとまった資金を調達できる傾向にある
- 融資条件や返済方法などに関して柔軟に対応してもらえる場合がある
- メインバンクとして、事業の成長に合わせた継続的なサポートが期待できる
- 担保や保証人の設定を求められる場合がある
- 金利は日本政策金融公庫や自治体の制度融資よりも高い傾向にある
日本政策金融公庫から融資を受ける方法
日本政策金融公庫は、創業予定の方や独立後間もないため実績が十分にない方でも利用しやすい制度を多く設けています。そのため独立を目指す個人事業主もまずは日本政策金融公庫からの融資を考えてみるとよいでしょう。
融資制度を選ぶ
一般的な流れとしては、まず、専門家や日本政策金融公庫に対する相談を行います。そこで申込みをする融資制度を選定しましょう。
どんな融資制度があるのかを知り、ご自身に合ったものとはどれかを判断、その融資制度での条件などを確認していきます。詳しい情報は日本政策金融公庫の相談ダイヤルを使って電話相談も可能ですし、オンラインでの相談も受け付けています。
必要書類を準備・提出する
申込む融資制度を決めた後は、必要書類の準備を進めましょう。
必要書類の詳細は日本政策金融公庫にて確認しておくことが大事ですが、一般的には次の書類を準備しておく必要があります。
※法人なら「履歴事項全部証明書」または「登記簿謄本」も必要。
※インターネット申込みなら各書類の電子データを準備。
これらの書類を、創業予定地の近くにある支店に提出してください。
審査を受ける
続いて、面談が実施されます。資金の使い方や事業計画書に関する質問を受けますので、的確に回答できるよう備えておきましょう。
また、この面談時には事業計画書に関連する資料や、資産・負債のわかる資料も持っていきます。これら資料があると説明もやりやすくなり、正確な情報を相手方に伝えることができます。
そして事業計画などを多角的に検討したうえで、融資の判断が下されます。
地方自治体の制度融資を受ける方法
地方自治体の制度融資を利用する場合、まずは最新情報を調査し、「応募ができる状態にあるのか」「どんな制度が使えるのか」「条件を満たせるのか」という点を確認していきましょう。各自治体窓口にて直接相談できますし、オンラインでも調べられます。
申請書類の準備、申請、審査へと手続きを進めていきます。この点に関しては、一般的な銀行融資や日本政策金融公庫による融資制度と大きな違いはありません。ただし利用する制度によっては申込期間が短かったり、オンラインでの申請を受け付けていなかったりする可能性もあるため、注意してください。
なお、審査期間は自治体や融資制度によって異なりますが、一般的には数か月程度を要すると考えておきましょう。スケジュールに不安がある場合は事前に相談しておくと安心です。
銀行の融資を受ける方法
地方自治体の制度融資に関しては利用できる方の幅が限られていますので、その対象に入っていない方は民間の金融機関と取引を行い、融資の申込みを行う必要があります。
手続きの流れについてはこれまでの内容と基本的には同じです。
①銀行の選定、②銀行での相談、③必要書類の準備、④申込書類の提出と審査、という流れです。普段から取引のある銀行であれば、コミュニケーションも取りやすく、比較的スムーズに手続きを進行させられるでしょう。
ただし審査から融資の実行までにはやはり数か月程度は見ておきたいところで、事業計画書の作成から取り掛かるとなれば、さらに長い期間が必要になるでしょう。あまり時間をかけられない場合は専門家を頼って、質の高い事業計画書を効率的に作成できる体制を整えておくべきです。
個人事業主が融資の審査を通すポイント
個人事業主が融資の審査を通過し、希望金額を調達するためには、次のポイントを押さえておくことが大事です。
審査に通るためのポイント | |
---|---|
質の高い事業計画書 | 審査において特に重要な存在が事業計画書。事業内容、ターゲット市場、競合分析、収支計画、資金計画などを具体的に記載し、データに関しては根拠も示すことが大事。 |
返済能力のアピール | 成長性などもチェックされるが、融資を行う相手方としては第一に「約束通りの返済をしてくれるかどうか」で評価する。 安定的な利益が出せていると返済能力の高さをアピールしやすいが、独立時、独立間もないタイミングだとこのアピールが難しい。そこで記載する売上高や利益の見込みに関して、実現可能性が高いと評価してもらえる書き方をする必要がある。 |
経営者としての実績 | 事業計画書の内容により説得力を持たせるには、開業を行う方自身の能力や実績が重要。過去に経営の経験があったり管理業務の経験があったりすると、印象もプラス。 |
自己資金の準備 | 自己資金の割合が高いと、事業に対する本気度もうかがえ、金融機関からも信頼を得やすくなる。 |
専門家の活用 | 税理士や中小企業診断士などの専門家も積極的に活用する。プロの視点を交えて事業計画書を作成することでよりクオリティーも上がる。 |
これらのポイントを踏まえてしっかりと準備を進めることで、個人事業主でも審査を通過し、独立開業に近づけるでしょう。
個人事業主としての独立でも融資は可能!
独立時、個人事業主でも融資を受けることは可能です。ただしそれは自己資金の準備や事業計画書の作成ができているなど、適切な備えができていることが前提です。
日本政策金融公庫や地方自治体の制度融資、銀行融資など、さまざまな選択肢があってそれぞれに要件は異なりますが、いずれの場合も返済能力の有無や事業の継続性などがチェックされますので、この点に関して心配がないことをアピールできなければいけません。
「まず何から着手すべきだろう」と迷うときは、金融機関に相談する、もしくは専門家に相談するなどして、現状を把握することに努めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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