- 更新日 : 2024年12月20日
マテリアリティとは?重要性や特定するプロセス、事例を解説
マテリアリティとは、企業経営における「重要課題」を指し、気候変動や人口減少などの社会問題がこれに当たります。主にSDGsやESG投資などの場面で重視される非財務指標でもあるため、マテリアリティを特定・開示することで投資家や消費者から高い評価を得やすくなります。本記事では、マテリアリティの意味や重要性、特定のプロセス、事例について紹介します。
目次
マテリアリティとは
マテリアリティとは、企業経営や投資判断で重要とされる課題を指す用語です。一般的には、気候変動や人権問題、労働環境などをはじめとした社会的な課題が対象となります。
主にサステナビリティ報告書の作成や投資家にESG投資を促す目的で活用され、投資家や労働者、取引先などの利害関係者に対して、「どのような理由で、どのような社会課題を認識し、解決に取り組んでいるのか」を伝えます。
マテリアリティの特定は、企業の持続可能な成長と社会的責任を果たすための重要なステップです。
マテリアリティの重要性
非財務指標を重視する風潮が社会全体で強まっていることに伴い、マテリアリティの重要性も高まっています。
従来は「どのくらい大きな利益や売上を生み出せるか、成長できるか」のみが企業に求められていました。しかし近年は、地球温暖化や人口の著しい変化、人権侵害など、さまざまな課題が世界中で表面化していることに伴い、そうした課題への取り組みも企業に求められるようになっています。
多くの投資家がSDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境、社会、企業統治)を重視する企業を高く評価し、積極的に投資先として選んでいます。三菱総合研究所の報告によると、2015年と2021年を比較した場合、欧州やアジア太平洋、北米を中心にESG投資額が急増していることからも明らかです。
また消費者庁の調査結果によると、エシカル消費(社会や環境などに配慮されて作られた商品を選んで消費すること)の認知度も、2016年度から2023年度にかけて6.0%から29.3%まで増加しています。
以上の背景やデータより、社会問題を考慮して資金を支出する投資家や消費者は増えていると考えられます。企業側の視点で見ると、自社に投資してもらったり自社商品を購入してもらったりする上で、社会問題の解決への取り組みやその内容を開示することはメリットの大きい施策となるでしょう。
これらのことから、戦略的にマテリアリティを特定・開示する動きが広まっています。
※参照:
三菱総合研究所「世界と日本のESG投資動向」
消費者庁「令和5年度第3回消費生活意識調査結果について」
マテリアリティを特定するプロセス
一般的に、マテリアリティは以下の流れで特定します。
- 課題抽出
- 課題の分析
- マテリアリティの特定
- 判断結果の確認
以下では、プロセスに沿ってマテリアリティを特定する方法を解説します。
ステップ1:課題抽出
はじめに、想定される社内外の課題を一通り洗い出します。課題のリストアップに際しては、バリューチェーンの全体を俯瞰することや、多種多様なステークホルダー(顧客や投資家、従業員、取引先など)を考慮することが求められます。
またリストアップする項目は、国際的な基準をベースにすることも重要です。具体的には、主に下記が挙げられます。
- SDGs
- ISO26000
- 国連グローバルコンパクトの10原則
- GRIスタンダード
- コーポレートガバナンス・コード
上記はあくまで一例です。幅広い視点から多様な意見を収集し、包括的な課題リストを作成しましょう。
ステップ2:課題の分析
次に、各課題の重要度を分析します。
重要度の分析では、「社会やステークホルダーへの影響度合い」と「自社事業にとっての影響度合い」という2軸からなる図(マテリアリティ・マトリックス)を用いることが一般的です。
社会・ステークホルダーへの影響度に関しては、「気候変動などの社会問題」や「投資家」、「従業員」といった尺度をもとに判断します。問題が顕在化した場合の損失や、未然に対処することによるベネフィットが大きいほど、影響度が高いといえます。
一方で自社事業への影響度に関しては、主に売上や利益などの財務指標をもとに判断します。こちらも、損失や利益の大きさをもとに影響度を検討します。
各課題を図形式でマッピングすることにより、優先度の高い課題を可視化できます。なおこのプロセスでは、経営陣とステークホルダーの双方の視点をバランス良く反映させることや、長期的なビジョン・経営戦略との整合性を重視することも求められます。
ステップ3:マテリアリティの特定
次に、分析内容をもとに各課題に優先度を設定します。基本的には、社会・ステークホルダーへの影響度合いが高く、かつ自社事業にとっての影響度合いも高いものを優先すべきだと判断します。
特に優先度の高い課題が、その企業にとってのマテリアリティとなります。マテリアリティを特定したら、その対応戦略や施策(具体的に行うこと)、および効果を測定するための指標(KPI)も同時に検討します。
ステップ4:判断結果の確認
最後に、特定されたマテリアリティが適切かどうかを確認します。これは主に取締役会や経営会議、ESG担当部門などによって行われます。
内容に問題がなければ、施策と併せて正式にマテリアリティとして対外的に開示します。そうすることで、投資家や消費者などからの評価獲得につながります。
継続的なマテリアリティの見直しも重要
市場や政治動向、経済などの変化により、重視すべきマテリアリティも変わってきます。そのため、一度特定・開示して終わりではなく、継続的にマテリアリティを見直し、必要に応じて再設定することが重要です。
マテリアリティを再設定する際には、投資家や顧客などのステークホルダーからの意見を聞き、そのフィードバックを踏まえることが重要です。そうすることで、企業の経済合理性に偏ったマテリアリティを策定するといった事態を防げるでしょう。
マテリアリティの事例
マテリアリティの開示事例として、富士通株式会社と味の素株式会社を紹介します。
富士通株式会社
富士通株式会社は「自社」と「ステークホルダー」という2軸で評価を実施し、マテリアリティを「①必要不可欠な貢献分野」と「②持続的な発展を可能にする土台」という2つのカテゴリーに分類しています。
①に関しては、地球環境問題の解決やデジタル社会の発展などがマテリアリティとされています。②に関しては、リスクマネジメントや経済安全保障対応などが挙げられています。
2023年に策定されたマテリアリティの結果は、全社のリスクマネジメントで活用されています。また、エグゼクティブを対象とした人事評価制度にも、マテリアリティ関連の取り組みが持ち込まれています。
全社的に経営戦略の一環としてマテリアリティを盛り込んでいる点で、お手本といえる事例です。
※参照:富士通株式会社「マテリアリティ」
味の素株式会社
味の素株式会社は、社会情勢やステークホルダーの意見を踏まえて、継続的にマテリアリティを見直しています。2021年に内容を更新した際には、具体的なマテリアリティとして「食と健康の課題解決への貢献」や「フードロスの低減」、「持続可能な原材料調達」などが挙げられています。
また、、マテリアリティをもとに機会とリスクを抽出し、それらに取り組むことで価値創出を図っています。
自社事業(食品)との関連性が高いマテリアリティを特定している点で、実践的な参考事例だといえるでしょう。
※参照:味の素株式会社「味の素グループのマテリアリティ」
まとめ
さまざまな社会問題が顕在化している昨今、マテリアリティの特定は企業価値を維持および向上させる上で有用な手段です。マテリアリティを公表し、かつ経営戦略に組み込むことで、変化に強い企業体質を構築することができます。
ただし、環境は日々変化していくため、投資家などのステークホルダーの意見を踏まえながら継続的に見直していくことが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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