- 更新日 : 2025年7月10日
労働保険の一般拠出金とは
労働保険では、2007年4月1日から「一般拠出金」についての申告および納付を行うことになっています。この「一般拠出金」は、「石綿による健康被害の救済に関する法律」に基づいたものです。石綿はアスベストという名で知られており、アスベストを使用した建築物等による健康被害が報告されてきました。一般拠出金は、そういった場合の救済に利用されます。
目次
労働保険の一般拠出金の申告および納付について
事業主が労働保険の一般拠出金を申告および納付する際には、原則として労働保険料の申告および納付と同じ方法で行います。
事業主は、労働保険の一般拠出金の申告および納付に関して、労働局への新たな事務手続きが必要となることはありません。
労働保険の一般拠出金の対象
労働保険の一般拠出金は、原則として労災保険が適用される事業を営んでいるすべての事業主から徴収されます。石綿(アスベスト)の製造や販売に関係する事業に限りません。
これは、どの事業であっても業務を行う施設や設備、使用している機材において石綿(アスベスト)が広範囲にわたって使用されてきたことをふまえての措置です。
ただし、労災保険に特別加入している場合や、雇用保険のみの適用を受けている事業主は除きます。
労働保険の一般拠出金の申告および納付方法
労働保険の一般拠出金の申告は、労働保険の年度更新手続きに併せて行います。納付も同時に行います。口座振替で労働保険の確定保険料を納付している場合は、事務手続きを新たに行う必要はありません。事業が終了したり、事業を廃止した際の申告も、労働保険の申告と併せて行います。
なお、労働保険の一般拠出金の納付手続きは、確定納付のみになります。概算納付や、分割して延納する方法はありません。
労働保険の一般拠出金の料率
2014年4月1日より一般拠出金の料率が変更されました。該当時期によって料率が違うため、注意が必要です。2014年4月1日以降に事由が発生した場合の料率は0.02、2007年4月1日から2014年3月31日の場合には0.05となります。
労働保険の一般拠出金の料率は一律です。これは業種を問わず、すべて同じ料率となります。割増や割引を受けている事業(労災保険におけるメリット制適用対象事業場)の場合でも同じです。
労働保険の一般拠出金の申告および納付が必要な事業の期間
労働保険の一般拠出金の申告および納付における対象事業所は、まず、その事業開始が2007年4月1日以降である場合に該当します。有期事業も2007年4月1日以降に開始した事業(工事)の分を申告・納付します。
単独有期事業の場合
事業(工事)終了時に、労働保険の確定保険料と併せて申告・納付します。
一括有期事業の場合
2007年度の年度更新(確定保険料)は2007年3月31日までに終了した事業(工事)が対象となるため、一般拠出金の申告・納付の必要はありません。(2008年度の年度更新より申告・納付します。)
事業を廃止した場合
事業廃止が年度末でなかった場合には、その時点までに支払った賃金総額を基にして納付手続きを行います。なお、労働保険料において還付金が発生する場合には、希望すれば還付金を一般拠出金へ充当することができます。還付金の一般拠出金への充当は、労働保険料の「還付請求書」の提出時に行います。
労働保険の一般拠出金の算定方法
労働保険の一般拠出金の金額は、年度中に支払った千円未満を切り捨てた賃金総額に一般拠出金率を掛けて求めます。
賃金の総額が1,000万円の場合(2014年4月1日以降に発生した事由に関するもの)は、1,000万円×0.02/1,000=200円となります。
まとめ
「石綿による健康被害の救済に関する法律」が制定されるまでは、石綿(アスベスト)が原因とされる健康被害は特定が難しく、特殊であるとして、労災補償の対象が限られていました。
法律の施行によって救済の範囲が広がり、その財源として徴収されることになったのが、労働保険の「一般拠出金」です。「石綿による健康被害の救済に関する法律」に基づいて支給される医療費に必要な財源はこの「一般拠出金」のほか、国からの交付金、地方公共団体からの拠出金があてられています。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
男性の育休とは?期間や給付金、法改正に伴う企業の取り組みを解説
男性の子育て支援を目的に、産後パパ育休の新設などさまざまな法改正が行われているため、企業の担当者は育休に関する諸制度や法改正を正しく理解することが重要です。 本記事では、男性の育休について解説します。育休の種類や期間、育休中の給与や従業員向…
詳しくみる社会保険未加入の問題点は?加入が義務づけられる条件や罰則について解説
会社は従業員を社会保険に加入させる義務があります。ただし、条件によっては義務とならない会社もあります。この記事では、社会保険に加入する義務がある会社の条件や未加入の場合の罰則などについて説明します。 この記事で人気のテンプレート(無料ダウン…
詳しくみる入社時の社会保険加入手続き|必要書類から期限、中途採用やパートの対応まで解説
新入社員の入社に伴う社会保険の手続きは、期限が定められており、必要書類も多岐にわたるため、複雑に感じられるかもしれません。 この記事では、入社時の社会保険手続きについて、基本的な流れから具体的な必要書類、間違いやすいポイントまでわかりやすく…
詳しくみる労災の症状固定とは?補償の対応方法や再発、後遺症が残った場合を解説
労災(労働災害)で治療を続けている最中、「そろそろ症状固定ですね」と言われて戸惑った経験はありませんか?症状固定とは、これ以上の治療効果が見込めない状態を指しますが、「治っていないのに治療が終わるのか」「補償はどうなるのか」「働けないままだ…
詳しくみる厚生年金基金とは?制度や解散について解説
厚生年金基金とは、企業自らが運用する年金制度です。国が運用している公的年金は、全国民に加入が義務付けられている「国民年金」と、会社員や公務員などが加入する「厚生年金保険」の2階建て方式となっています。厚生年金基金は3階部分に該当する確定給付…
詳しくみる労災認定とは?基準・保険給付の金額・会社が被るデメリット4つを解説
労災認定とは、労働災害によって発生した怪我や病気に対して、労災保険の認定を受けることです。対象の従業員が申請し、要件を満たしていれば各種の保険給付を受け取れる仕組みになっています。労災保険の保険料は全額事業主負担であるため、どのような条件に…
詳しくみる