- 更新日 : 2025年6月19日
勤怠管理をする際の7つの注意点!トラブルを避けるための運用ルールを解説
「打刻ミスが多い」「残業の申請ルールが曖昧」「有給管理に自信がない」
上記のような勤怠管理に関する悩みを抱えていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。
勤怠管理は単なる出退勤の記録だけでなく、法令遵守や人件費の適正管理、労使トラブルの予防など、企業運営の根幹に関わる重要な業務です。
しかし、現場では、紙やExcelでの管理ミス、ルールの不整備、テレワークへの対応不足など、見落とされがちなリスクも少なくありません。
本記事では、勤怠管理で注意すべき7つのポイントをはじめ、導入プロセスや社内ルールの整備方法までわかりやすく解説します。
勤怠トラブルを未然に防ぎ、安心して働ける職場づくりのためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
勤怠管理とは従業員の出勤等を記録・管理する業務
勤怠管理とは、従業員の出勤や退勤時間、労働時間、休憩時間、残業、休日取得などを記録・管理する業務のことです。
企業が労働基準法や関連法令を遵守し、従業員の労働状況を正確に把握・管理するために欠かせない業務といえます。
従来は紙の出勤簿やExcelなどによる手作業での管理が一般的でしたが、記録ミスや不正改ざんの可能性も低くありません。
一方、クラウド型の勤怠管理システムを導入すれば、自動集計やリアルタイムでの状況把握が可能となり、管理の正確性と効率が大きく向上します。
勤怠管理の重要性
勤怠管理は、労働基準法第32条や安全衛生法第66条、厚生労働省が発表している各種ガイドラインにもとづき、企業が取り組むべき義務です。
適切な勤怠管理を行うことで、以下のようなメリットがあります。
- 人件費の適正管理
- 従業員の健康管理・メンタルケア
- 労使トラブルの防止
勤怠管理は単なる「出退勤の記録業務」ではなく、コンプライアンスの遵守と従業員の働きやすさを両立するための経営戦略の一部ともいえるでしょう。
勤怠管理における7つの注意点
勤怠管理は、単に出退勤を記録するだけでなく、法令を遵守し労使トラブルを防止するための重要な業務です。
ここでは、勤怠管理において注意すべき7つのポイントを紹介します。
1. 労働基準法に即した労働時間を守る
労働基準法では、1日8時間、週40時間を超える労働は時間外労働です。
指定の時間を超える場合は36協定の締結と労働基準監督署への届出が必要です。
時間外労働には月45時間・年360時間の上限があり、特別条項を設けた場合でも以下のような制限があります。
- 年間の時間外労働は720時間以内
- 単月の時間外+休日労働の合計は100時間未満
- 複数月平均で80時間以内
上限を超えた労働が常態化すると、企業は是正勧告や行政指導の対象になるだけでなく、過労死リスクや訴訟リスクを抱えることにもなります。
2. 残業・休憩時間を正確に管理する
残業は原則、事前申請制とし、都度管理者が承認するルール整備が重要です。
口頭の合意や黙認による残業は、後にトラブルの原因になることがあります。
休憩時間も労働時間に応じて法律で定められています。
- 6時間を超え8時間以下の勤務:45分以上の休憩
- 8時間を超える勤務:少なくとも1時間の休憩
休憩なしで従業員を働かせると、労働基準法違反に該当します。
さらに、申請されていないサービス残業や打刻漏れを放置すると、未払い賃金の請求や是正勧告につながる可能性があります。
3. 勤怠記録の改ざん・不正打刻を防止する
勤怠管理において注意すべきなのが、勤怠記録の改ざんや不正打刻です。
以下は、現場で起こりがちな勤怠を正しく記録できていないケースです。
- タイムカードの代理打刻
- 手書きによる修正
- 勤務時間の虚偽申告
不正行為が発覚すると、企業は信頼を大きく損なうだけでなく、労基署からの調査・是正指導、場合によっては労働訴訟に発展するリスクもあります。
そのため、以下のような不正防止機能のあるシステム導入が有効です。
- ICカードや顔認証・指紋認証などの生体認証
- GPS打刻による勤務場所の記録
- 打刻ログの改ざん履歴管理機能
システムを活用して証拠性の高い記録を残すことが、不正抑止とトラブル防止につながります。
4. テレワークやフレックス勤務など多様な働き方に対応する
近年は、在宅勤務やサテライトオフィスなど、時間や場所に縛られない柔軟な働き方が急速に広がっています。
テレワーク勤務においても、企業に「始業・終業時刻の把握義務」が課されており、業務の開始や終了を正確に記録できる仕組みが必要です。
チャットでのあいさつだけでは不十分で、打刻システムやログの記録が求められます。
フレックスタイム制を導入する場合、以下の制度設計上の要件を明記しておく必要があります。
- 清算期間の設定
- コアタイム(必ず勤務する時間帯)の有無
- 1日8時間労働の扱いと総労働時間の計算方法
柔軟な働き方を実現するには、制度の整備と勤怠管理の仕組みの両立が欠かせません。
関連記事:テレワークの勤怠管理の方法は?注意点やシステムの選び方、導入事例を解説
5. 年次有給休暇を制度に則って取得する
2019年4月から施行された法改正により、企業は年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年5日の年次有給休暇を必ず取得させる義務があります。
年次有給休暇のルールは正社員だけでなく、一定日数勤務するパート・アルバイトにも適用されます。
企業側は、対象者を把握したうえで、確実に取得を支援する体制を整えなければいけません。
また、有休を取得しにくい雰囲気や制度不備があると、職場の満足度や定着率が下がり、結果的に採用コストや離職リスクの増加につながる可能性があります。
6. 管理者・従業員間のルールを整備する
勤怠管理では運用ルールを明文化し、全社的に統一しておくことが重要です。
具体的には以下の通りです。
- 出退勤の打刻方法
- 残業・休日出勤の申請フロー
- 有給休暇・特別休暇の取得ルール
- 遅刻・早退の報告手順
就業規則や勤怠マニュアルに明記し、定期的な説明会や研修、社内掲示などでの周知徹底が求められます。
ルールの可視化と継続的な運用が、勤怠トラブルの未然防止に直結します。
7. 運用ルールの属人化を防止する
勤怠管理業務が特定の担当者に依存している場合、担当者が不在・退職した際に業務がストップしたり、チェック漏れや運用ミスが発生するリスクがあります。
属人化を防ぐためには、業務の見える化と平準化が不可欠です。
- 承認・修正・締め作業のフローを文書化
- マニュアルの作成・更新
- 複数の管理者によるチェック体制
クラウド型の勤怠管理システムでは、管理者権限の分担設定や、業務引き継ぎの簡素化が可能なため、属人性を排除しつつ効率的な運用が可能となります。
業務のブラックボックス化を避けるためにも、体制整備は早めに着手すべきポイントです。
勤怠管理のトラブルを防止するためのおすすめツール
勤怠管理は、記録ミスや不正、集計漏れなどのヒューマンエラーが起きやすい業務です。
ここでは、勤怠管理の代表的なツールとして「タイムカード」「Excel」「クラウド型勤怠管理システム」の3つを紹介します。
タイムカードを導入する
紙や口頭で勤怠管理を行っている企業にとって、タイムカードの導入は最初に取り組むべきおすすめのツールです。
打刻による記録を残すことで、出退勤の証拠性が高まり、不正や記録漏れのリスクを軽減できます。
タイムカードにはいくつかの種類があり、企業の規模や運用方針に合わせて選ぶことが可能です。
- ICカード式:交通系ICなどを使った非接触型で、打刻ログの電子管理がしやすい
- 磁気カード式:シンプルな操作で、比較的導入コストが低い
- 打刻印字式:紙に打刻時間を記録し、視認性に優れる
手書きの勤怠表から脱却したい企業や小規模事業所には導入しやすい選択肢といえるでしょう。
Excelでまとめる
初期コストをかけたくない中小企業や、社内に一定のExcelスキルをもつ人材がいる場合には、Excelを使った勤怠管理も有効な選択肢のひとつです。
- 勤務時間や残業時間の入力表を作成
- 関数を使って月次の労働時間を自動計算
- 条件付き書式でエラーや残業時間超過を視覚化
また、マクロやVBAを組み込めば、ある程度の自動化も可能です。
記録システムをすぐに導入できない場合におすすめの選択肢です。
勤怠管理システムを導入する
勤怠の精度・効率・法令対応すべてを高めたい場合は、クラウド型勤怠管理システムの導入もおすすめです。
システムを導入することで、手作業の煩雑さや属人化を解消し、トラブルの未然防止につながります。
主な機能には以下があります。
- スマートフォンやPCによる打刻
- 打刻忘れ・遅刻アラート通知
- 勤務時間の自動集計・グラフ表示
- 残業上限の自動警告
- 年休の自動付与・残日数管理
- テレワーク・フレックス勤務への対応
- ICカードやGPSとの連携打刻
複数拠点や在宅勤務・フレックスタイム制など多様な勤務形態を導入している企業においては、システム化により勤怠ルールの統一・トラブル防止・業務効率化が大きく進みます。
初期導入費はかかるものの、中長期的に見れば大きなコスト削減とリスク軽減につながる投資といえるでしょう。
関連記事:2025年最新 – 勤怠管理システムおすすめ比較!機能・料金・クラウド対応など
社内で勤怠管理をする際に確認すべき5つのルール
勤怠管理をスムーズに行うためには、社内でのルール整備が不可欠です。
ここでは、社内で勤怠管理を導入・運用する際に確認すべき5つのルールを解説します。
1. 勤怠打刻のタイミングと方法を明確にする
出退勤や休憩時間などの打刻タイミングを明確にルール化しておくことで、打刻漏れや二重打刻の防止につながります。
一般的に決めておくべき打刻のタイミングは以下の通りです。
- 出勤時
- 退勤時
- 休憩開始時
- 休憩終了時
また、打刻手段の統一も重要なポイントです。
以下のような方法から選び、原則的な手段を明示しておくと混乱を防げます。
- ICカードによる打刻
- PCログイン・ログアウトでの自動記録
- スマートフォンアプリでの打刻
打刻漏れが発生した場合の報告方法や訂正申請のフローもあらかじめ決めておくことで、ルール違反の未然防止が可能になります。
2. 残業申請・承認フローを整備する
残業は原則として「事前申請・上長承認制」とすることが、労務管理上の基本です。
事前申請なしの残業を許容すると、サービス残業や残業代未払いのリスクが高まるため、明確な申請・承認フローの整備が求められます。
以下のような内容を明文化し、社内で共有しましょう。
項目 | 具体例 |
---|---|
申請方法 | 勤怠管理システム/紙ベースの申請書/チャットツール(Slackなど) |
承認者の範囲 | 直属の上司/部門長/チームリーダー |
申請・承認の期限 | 前日まで/当日午前中まで/◯日前まで |
また、緊急業務による事後申請を許可する場合は、条件や報告期限も明記し、濫用されないようにルール設計を行う必要があります。
承認がなければ残業と認めない運用を徹底することで、労働時間の抑制とトラブル防止につながります。
3. 有給・代休・欠勤の取得・申請ルールを統一する
休暇制度の運用ルールが曖昧な場合、従業員の不満にもつながります。
そのため、有給や代休・欠勤の取得に関しては、申請フローを統一しておくことが重要です。
以下の点を明確にしておきましょう。
- 何日前までに申請が必要か(例:3営業日前まで)
- 申請方法(例:システム申請/メール連絡)
- 誰に申請するか(例:直属の上司、総務部など)
有給休暇は、労働基準法により年5日の取得義務があります。
対応するためには、計画的付与や勤怠管理システムでの残日数の管理・取得状況の可視化も求められます。
また、代休制度を設けている場合は、以下のポイントも明文化しましょう。
- 対象となる休日出勤の条件
- 代休取得の期限(例:翌月末まで)
- 未取得時の対応(例:自動で消滅/翌月に振替 など)
休暇制度の適正運用は、働きやすい職場づくりとコンプライアンス対応の両面で重要です。
4. 管理者と従業員の役割と責任を明確にする
勤怠管理を正しく運用するためには、従業員と管理者それぞれの役割と責任を明確に定めておくことが不可欠です。
役割分担が不明確だと、打刻漏れや承認遅れ、未処理申請などが発生しやすくなり、給与計算や労務トラブルの原因になります。
基本的な役割は以下のとおりです。
区分 | 主な役割 | 責任・義務の内容 |
---|---|---|
従業員 | 勤怠の記録・申請 | 出退勤、休憩、残業、休暇などの情報を正しく打刻・申請する責任 |
管理者 | 勤怠データの確認・承認・記録の管理 | 従業員の申請内容を確認し、承認・記録する義務 |
また、勤怠データのミスや申請漏れが発覚した場合には、どの部署・誰が対応責任をもつのかも社内で明確にしておくべきです。
以下のようなルールを決めておくのがよいでしょう。
- 勤怠トラブルの初期対応担当者(例:直属の上司)
- 修正や問い合わせの窓口(例:労務部門や人事部)
- 最終責任者(例:勤怠管理責任者)
トラブル発生時の責任所在を明示しておくと、対応の属人化を防ぎ、混乱を最小限に抑えられます。
5. 勤怠データの保管・改ざん防止体制を構築する
勤怠データは、単なる記録ではなく、労働時間の証拠となる重要な情報です。
労働基準法第109条では、勤怠に関する記録は最低3年間の保存が義務付けられています。
そのため、適切な保管体制と、改ざん防止のためのセキュリティ対策を講じることが必要です。
紙やExcelによる管理では、手書きの修正や履歴不明な上書きが容易に行えてしまうため、不正リスクが高まります。
クラウド型勤怠管理システムを活用すれば、万一トラブルが発生した際もログをもとに検証が可能であり、不正抑止の効果も高まります。
勤怠データの正確な保存と改ざん防止は、法令順守だけでなく、企業の信頼性維持にも直結する極めて重要な項目です。
初期段階から体制を整備しておくことが、長期的なトラブル防止に役立ちます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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