• 更新日 : 2025年12月23日

デジタルウェルビーイングとは?企業が実践すべき健康的な働き方を解説

スマートフォンやPCなどのデジタル機器は、私たちの働き方や生活に欠かせない存在となりました。一方で、常時接続による疲労やストレス、集中力の低下など、心身への影響も深刻化しています。こうした課題に対応する新たな視点が「デジタルウェルビーイング」です。

本記事では基本的な考え方から、企業が取り組むべき実践方法、活用できるツールなどを解説します。

目次

デジタルウェルビーイングとは?

テクノロジーを活用した働き方が進む中、企業では「社員が健やかに働き続けられる環境づくり」が問われています。デジタルウェルビーイングは、その実現に向けて必要不可欠な視点として注目を集めています。

デジタルとの適切な関係を築き心身の健康と幸福感を保つ考え方

デジタルウェルビーイングとは、スマートフォンやPCといったデジタル機器と上手に付き合いながら、心身の健康や生活の質を維持するための概念です。現代では仕事や生活の多くがテクノロジーに依存しており、利便性の一方でストレスや依存といった課題も増えています。この考え方は「使わない」のではなく、「どう使うか」に焦点を当て、無理なく健全にテクノロジーと共存することを目指します。

デジタルデトックスとの違いは「断つ」か「付き合い方を整える」か

デジタルデトックスは、意識的にデジタル機器から離れることで一時的に心身をリセットする方法です。対してデジタルウェルビーイングは、日常的に使い続けることを前提としながら、通知や使用時間を管理し、疲労やストレスを抑えることを重視します。このように、テクノロジーを完全に排除するのではなく、持続可能な形で上手に活用する姿勢が、デジタルウェルビーイングの本質です。

企業においても、導入しやすく、継続的な取り組みとして位置づけやすい点が強みとされています。

企業でデジタルウェルビーイングが重要な理由は?

デジタルツールが不可欠な現代の働き方において、心身の健康を守る取り組みは企業の持続的成長に直結します。リモートワークや情報過多による疲労が深刻化する中、社員が安心して働ける環境づくりが求められています。

デジタル疲労は健康不調や離職リスクを高める

長時間の画面作業や常時オンラインの状態が続くと、目の疲れや集中力の低下、不安感といった心身の不調が現れやすくなります。こうした「テクノストレス」は、放置すると休職や離職の原因にもなります。若手社員において、長時間のスクリーンタイムが精神的負荷の増加と強く関連しているという調査結果も出ており、対策を講じないことによる企業側の損失も無視できません。

健康を軽視すれば生産性や意欲が下がる

体調不良が続けば仕事の効率は落ち、通知や業務連絡に追われる環境では集中力が削がれます。その結果、創造性は鈍り、社員のエンゲージメント(仕事への愛着心)も下がってしまいます。業務が私生活にまで入り込むようになればモチベーションが低下し、離職にもつながりかねません。経営者の多くが、社員のウェルビーイングが生産性向上や人材の定着に効果があると実感しており、企業経営上の必須課題となりつつあります。

デジタルウェルビーイングに取り組むメリットは?

デジタルウェルビーイングを導入することは、働き方改善にとどまらず、従業員の健康と企業の競争力を同時に高める施策です。心身の安定やモチベーションの向上、離職率の低下など、組織全体にポジティブな効果をもたらします。

ストレス軽減と集中力向上につながる

業務のデジタル化が進む中、通知の多さや情報過多によって社員が疲弊しやすくなっています。デジタルウェルビーイングに取り組むことで、過剰な接続や作業負荷を抑え、ストレスを軽減する効果が期待されます。その結果、心身の安定が得られ、集中力や創造性が高まりやすくなります。社員の幸福感が向上することで、仕事への満足度が高まり、仕事の質そのものも底上げされます。

業務効率と生産性が向上する

社員が心身ともに健康である状態は、パフォーマンスの向上にも直結します。過労やメンタルヘルス不調による欠勤や生産性低下が減ることで、結果的に企業全体の業務効率が向上します。医療費や労務リスクの抑制にもつながり、経営的なコストの削減にも貢献します。

社員の定着率が上がり、企業イメージも向上する

デジタル環境の見直しによって、従業員エンゲージメントが高まり、会社への信頼やロイヤリティが向上します。実際に、社内コミュニケーションの改善により、離職率が低下した企業事例もあります。このような取り組みは「健康経営」や「働き方改革」の一環としても評価され、企業ブランドの向上や人材確保の面でも有利に働きます。

企業がデジタルウェルビーイングを推進する方法は?

社員の健康と生産性を守るには、職場環境・ルール・教育体制など多方面からの施策が求められます。以下では、企業が実践できるデジタルウェルビーイング推進の方法を紹介します。

デジタル利用に関するガイドラインの整備

社内でのコミュニケーションルールを明確にし、就業時間外の連絡を原則制限することで、社員が常に即対応を求められる負担感を軽減できます。こうしたガイドラインは、仕事と私生活の境界を保つ土台となり、ワークライフバランスや社員のロイヤリティ向上にもつながります。欧州の「つながらない権利」のような考え方も参考に、日本企業における制度整備が求められています。

デジタルデトックスの導入

業務の合間にPCやスマートフォンから意図的に離れる時間を設けることで、脳や感覚をリセットし、集中力や思考力を回復させる効果があります。1日数回15分程度のスクリーンオフを推奨したり、専用のリフレッシュスペースを設けるといった施策が挙げられます。日本マイクロソフトでは瞑想室や仮眠ブースを設置し、社員の発想力やイノベーションを支える環境づくりを進めています。

参考:ハイブリッドワークで多様性のある働き方を目指す、日本マイクロソフトの実践|日本マイクロソフト株式会社

メンタルヘルス支援の強化

ストレスへの気づきと対処を促すために、マインドフルネスやストレスマネジメント研修の実施が有効です。呼吸法や瞑想などの手法を学ぶことで、自己調整力が高まり、心理的安全性が確保されます。加えて、EAPや社内カウンセリング窓口の設置により、必要なサポートを迅速に受けられる環境を整えることも重要です。

デジタルリテラシー向上のための教育

社員がテクノロジーに振り回されず、自律的に働くためには、スクリーンタイム管理や業務の優先順位づけに関する研修が効果的です。休憩リマインダーやスマホの機能設定など、実践的なツールの活用方法を学ぶことで、業務効率と集中力を両立させるスキルが身につきます。社員が自発的にウェルビーイングを維持できるようになれば、組織全体の健全性が向上します。

効果測定と改善サイクルの運用

施策を形骸化させないためには、定期的なアンケートや1on1面談による現場の声の把握が不可欠です。その結果をもとに、ルールや支援策を柔軟に見直し、社員の実態に合った改善を繰り返すことで制度の定着を図ります。あわせて、ITツールの最適化や会議文化の見直しといった業務負荷の軽減策も併せて進めることで、継続的に働きやすい職場環境を構築できます。

デジタルウェルビーイングマネジメントのポイントは?

組織全体でデジタルウェルビーイングを推進するには、現場の管理職がその重要性を理解し、日常のマネジメントに反映することが不可欠です。部下の状態を的確に把握し、過重労働やストレスの兆候に早期対応する役割が求められます。

働き方のロールモデルとして行動する

管理職自身の行動が、部下にとっての“常識”となるため、まずはリーダーが「つながりすぎない働き方」を体現することが必要です。深夜や休日のメール送信、即時返信の強要などは、知らず知らずのうちに部下にプレッシャーを与えます。勤務時間内に仕事を完結させる姿勢を見せることで、チーム全体のワークライフバランス意識も高まります。

メンタルヘルスの早期把握と配慮

部下の様子や業務量に日々目を配り、小さな変化や違和感に気づける感度が求められます。定期的な1on1面談や雑談の中で、発言や表情、声のトーンなどから心身の状態を把握する力も重要です。加えて、長時間残業やメールの深夜送信といった「行動データ」もサインとなるため、ツールを活用した可視化と併せた対応が効果的です。

チーム内コミュニケーションの最適化

ウェルビーイングの観点からは、過剰な会議や常時接続型のチャット文化も見直し対象となります。管理職は、報告・相談の仕方やタイミング、情報共有の頻度など、コミュニケーション全体のバランスを整える役割も担います。必要に応じてガイドラインを設け、チーム内で「休むこと」への遠慮をなくす文化づくりが求められます。

デジタルウェルビーイングに活用できるツールは?

企業が従業員の心身の健康と生産性を両立させるためには、デジタルウェルビーイングを支える適切なツールの導入が欠かせません。使用時間の可視化、通知制御、休憩促進など、多様な機能を持つツールを活用することで、従業員がもっと健やかに働ける環境づくりを支援できます。

スクリーンタイム管理と集中モード支援ツール

社内で従業員が自身のデジタル機器やアプリ使用状況を把握し、通知やアプリ使用を自律的に制御できるツールがあります。ウェブサイトやアプリの使用を制限する「ブロッカー」ソフトウェアや、一定時間だけ通知をオフにして深い集中を可能にするフォーカスモード機能付きツールです。これらのツールは、従業員が意図的にデバイスから距離を置くことや、作業時間と休息時間の切り替えを促進することに役立ちます。

参考:Digital Wellbeing|Android 集中モード|iPhone

ウェアラブル・健康管理アプリとデータ連携ツール

従業員の身体や睡眠、活動量などの健康指標を計測できるウェアラブル端末やスマートフォンの健康管理アプリもデジタルウェルビーイングを支える有力なツールです。こうしたツールは個人の生活習慣を可視化し、例えば睡眠不足や運動不足が続いている場合にアラートを出したり、休憩を促すリマインダーを送ったりする機能があります。こうして健康状態を早期に把握・対応することで、メンタルや身体の不調を未然に防ぐことができます。

参考:Awarefy|株式会社Awarefy

メンタルヘルス・マインドフルネス支援プラットフォーム

デジタル疲労やストレスを軽減するためには、心のケアも重要です。そこで、社員が簡単にアクセスできるメンタルヘルス・マインドフルネス支援のデジタルプラットフォームが有効です。瞑想・呼吸法の音声ガイドやセルフチェック機能、1on1相談予約機能を持つアプリなどがあります。こうしたプラットフォームを導入することで、社員が自分のストレス状態に気づきやすくなり、必要なサポートを受けやすくなります。

参考:MELON|株式会社Melon

デジタルウェルビーイングの実践で社員も企業も健やかに

デジタルウェルビーイングの推進は、社員の心身の健康とワークライフバランスを守り、企業の生産性やエンゲージメントを高める上で欠かせない取り組みです。IT化が進む現代だからこそ、社員一人ひとりがテクノロジーと良好な関係を築けるよう企業が環境を整えることが求められます。テクノストレスを軽減できれば、結果的に従業員満足度が上がり組織全体の活力も増すでしょう。

デジタルウェルビーイングに配慮した職場づくりは人材定着や企業イメージ向上にもつながり、長期的には企業の競争力を強化します。


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