- 更新日 : 2025年9月2日
勤怠管理システムのメリット・デメリットを徹底解説!選び方のポイントも紹介
勤怠管理システムの導入を検討していませんか?勤怠管理システムは、業務効率化やコスト削減はもちろん、コンプライアンス強化にもつながる多くのメリットがあります。しかし、知っておくべきデメリットも存在します。
この記事では、勤怠管理システムのメリット・デメリットから、基本的な機能、自社に合ったシステムの選び方、導入で失敗しないためのポイントまで、詳しく解説します。
目次
勤怠管理システムの導入で得られるメリット
勤怠管理システムの導入は、単にタイムカードをデジタル化するだけではありません。経営者から人事・労務担当者、そして現場の従業員まで、企業全体に多くのメリットをもたらします。具体的にどのような効果が期待できるのか見ていきましょう。
勤怠管理に関わる業務の効率化
手作業での勤怠管理では、タイムカードの回収、記載漏れや間違いの確認、Excelへの入力、残業時間や休暇日数の計算など、多くの時間と手間がかかります。特に月末や月初は、担当者の業務がこの作業に集中しがちです。
勤怠管理システムを導入すれば、打刻データは自動でシステムに記録され、労働時間や残業時間もリアルタイムで集計されます。これにより、手作業による集計や転記作業が不要になり、担当者の業務負担の軽減が期待できます。
人件費や管理コストの削減
業務効率化により、勤怠管理にかけていた担当者の残業時間が減るだけでなく、生まれた時間をより生産的なコア業務に充てることができます。
また、タイムカードや申請用紙といった物理的な消耗品が不要になるペーパーレス化も実現可能です。紙の保管場所や管理コストも削減できるため、間接的なコストカットにもつながります。
人的ミスの防止と正確性の向上
手作業による勤怠管理では、タイムカードからの転記ミス、Excelの計算式のエラー、残業時間の集計間違いなど、さまざまな人的ミスが発生する可能性があります。これらのミスは、給与の未払いや過払いといった金銭的なトラブルに直結し、従業員との信頼関係を損なう原因にもなりかねません。
勤怠管理システムは、打刻から集計までを自動化することでヒューマンエラーを最小限に抑え、正確で信頼性の高い勤怠管理につながります。
正確な労働時間の把握とコンプライアンス強化
従業員の自己申告やタイムカードの打刻では、押し忘れや代理打刻といった不正、あるいは意図しない記録ミスが起こる可能性があります。勤怠管理システムでは、PCのログやGPS、生体認証など多様な打刻方法により、客観的で正確な労働時間の記録が可能です。
この正確なデータは、知らないうちに法律違反を犯してしまうリスクを防ぎます。時間外労働の上限規制や有給休暇の取得義務といった複雑な労働基準法への対応も、システムが自動で管理・警告してくれるため、管理職の是正措置や36協定管理と併用することで、コンプライアンス強化につながるでしょう。
法改正への対応を自動化して労務リスクを軽減
労働基準法などの関連法規は、社会情勢の変化に合わせて頻繁に改正されます。その都度、担当者が内容を理解し、手作業の集計方法やExcelの計算式を修正するのは大変な労力であり、ミスの原因にもなるでしょう。
主要なクラウド型の勤怠管理システムは、法改正が行われると提供会社がシステムを自動でアップデートしてくれます。企業側は特別な作業をすることなく、常に最新の法律に準拠した勤怠管理が可能になるため、安心して運用を続けることができます。
ただし、法改正への対応スピードや方法はベンダーによって異なります。そのため、導入前に法改正時の具体的な対応方針や過去の対応実績を確認し、信頼できるベンダーを選ぶことが重要です。サービス品質保証(SLA)に関連の記述があるかどうかも確認しましょう。
多様な働き方への柔軟な対応
テレワークやリモートワーク、フレックスタイム制、時短勤務など、現代の働き方は多様化しています。オフィス以外の場所で働く従業員の勤怠を、従来のタイムカードで管理するのは困難です。
勤怠管理システムは、スマートフォンやPCから簡単に打刻できるため、場所を選ばずに正確な勤怠管理が可能です。これにより、企業は柔軟な働き方を導入しやすくなり、従業員満足度の向上にもつながるでしょう。
従業員の生産性向上
システムによって自分の労働時間や残業時間が可視化されると、従業員一人ひとりの時間管理に対する意識が高まります。長時間労働が常態化している部署や個人を特定し、業務配分の見直しや改善指導を行うきっかけにもなります。
健全な労働環境を整えることは、従業員のモチベーション維持や集中力アップにつながり、結果として組織全体の生産性向上に貢献するでしょう。
勤怠管理システム導入のデメリットと対策
多くのメリットがある一方で、勤怠管理システムの導入にはいくつかのデメリットも存在します。事前に把握し、対策を講じることで、スムーズな導入と運用が可能になります。
導入・運用コストの発生
勤怠管理システムを利用するには、初期費用や月額の利用料がかかります。特に高機能なシステムや、カスタマイズを行う場合はコストが高くなることもあるでしょう。
対策としては、まず複数のシステムを比較検討し、自社の規模や必要な機能に見合った料金プランを選ぶことが重要です。多くのシステムが提供している無料トライアルを活用して費用対効果を見極めたり、IT導入補助金などの制度(条件あり)を利用したりすることも有効な手段です。
従業員への説明と運用の浸透
新しいシステムを導入する際は、従業員からの反発や戸惑いが予想されます。「使い方が分からない」「面倒くさい」といった理由で、なかなか浸透しないケースも少なくありません。
これを防ぐためには、なぜシステムを導入するのか、導入によって従業員にもどのようなメリットがあるのかを丁寧に説明することが不可欠です。説明会を実施したり、分かりやすいマニュアルを用意したりして、導入から運用まで手厚くサポートする体制を整えましょう。
システムが自社の運用に合わないリスク
「多機能だから」「有名だから」といった理由で選んでしまうと、自社の就業規則や業務フローに合わず、かえって業務が煩雑になることがあります。たとえば、特殊なシフト制度や休暇ルールに対応できず、結局手作業での修正が必要になるケースです。
対策としては、導入前に自社の勤怠管理における課題や必要な機能を洗い出すことが重要です。その上で、自社のルールに合わせたカスタマイズが可能か、必要な機能が備わっているかを確認しましょう。
情報漏洩・システム障害のリスク
システム、特にクラウド型の場合は、自社の外に勤怠データという重要な個人情報を預けることになります。そのため、提供事業者のセキュリティ対策が不十分だと、サイバー攻撃による情報漏洩のリスクが伴います。
また、インターネット経由で利用するため、通信障害などが発生するとシステムにアクセスできなくなる可能性もあります。
まずセキュリティ対策として、提供事業者がプライバシーマークやISMS認証などを取得しているかを確認します。これにより、個人情報を安全に管理する体制があるかを判断できます。
次に通信障害への対策として、オフラインでも打刻できる機能の有無は必ず確認しましょう。インターネットに接続できない状況でも、一時的に打刻データを端末に保存し、復旧後に自動で同期する機能があれば、業務への影響を最小限に抑えられます。加えて、障害発生時の復旧時間や補償について定めたSLA(サービス品質保証)の内容も、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。
勤怠管理システムの基本機能と種類
ここで改めて、勤怠管理システムの基本的な仕組みについておさらいしておきましょう。自社に合うシステムを選ぶためにも、基本的な知識は不可欠です。
勤怠管理システムの主な機能
多くの勤怠管理システムには、以下のような基本的な機能が備わっています。
打刻機能
PC、スマートフォン、ICカード、生体認証などで出退勤時刻を記録します。
自動集計機能
記録された打刻データをもとに、労働時間、残業時間、深夜労働時間などを自動で計算します。
申請・承認機能
残業や休暇、休日出勤などの各種申請をシステム上で行い、上長が承認できます。
データ出力機能
集計した勤怠データをCSVなどの形式で出力し、給与計算ソフトと連携させることができます。
アラート機能
時間外労働の上限を超えそうな場合や、打刻漏れがある場合に管理者や本人に通知します。
代表的な打刻方法の種類
ICカード打刻
社員証や交通系ICカードを専用のリーダーにかざして打刻します。最も一般的な方法の一つです。
生体認証打刻
指紋や静脈、顔などで本人確認を行うため、不正打刻を防止する効果が非常に高い方法です。
PC・スマートフォン打刻
Webブラウザや専用アプリから打刻します。テレワークや直行直帰の多い職種に適しています。GPS機能と連携して位置情報を記録することも可能です。
提供形態の違い(クラウド型・オンプレミス型)
クラウド型
インターネット経由でサービスを利用する形態です。サーバーの購入や管理が不要で、比較的低コストで迅速に導入できます。法改正時のアップデートも自動で行われるため、現在はこちらが主流です。
オンプレミス型
自社内にサーバーを設置してシステムを構築する形態です。カスタマイズの自由度が高い反面、初期費用が高額になり、保守・管理も自社で行う必要があります。
なぜ今、勤怠管理システムが必要とされるのか
多くの企業で勤怠管理システムの導入が進んでいる背景には、社会的な要請や企業が抱える課題があります。
複雑化する労働関連法規への対応
2019年から企業規模や業種に応じて段階的に施行された働き方改革関連法により、時間外労働の上限規制など、企業が遵守すべきルールはより厳格かつ複雑になっています。これらの法規を手作業で正確に管理し続けるのは非常に困難です。
勤怠管理システムは、法改正に対応した設定で労働時間を自動管理するため、コンプライアンス違反のリスクを低減させるサポートをしてくれます。
働き方改革の推進
働き方改革の目的は、単に労働時間を短縮するだけでなく、多様で柔軟な働き方を選択できる社会を実現することにあります。テレワークやフレックスタイム制を導入し、従業員のワークライフバランスを向上させるためには、場所や時間にとらわれない勤怠管理の仕組みが不可欠です。
人手不足と生産性向上の課題
多くの業界で人手不足が深刻化する中、限られた人材で高い成果を出すためには、業務の効率化が急務です。勤怠管理のような間接業務をシステム化することで、担当者をより付加価値の高いコア業務に集中させることができます。これは、企業全体の生産性向上につながるでしょう。
勤怠管理システム選びで注意すべき5つのポイント
ポイント1. 導入の目的を明確にする
最初に、「なぜシステムを導入するのか」を明確にしましょう。「残業時間を20%削減したい」「給与計算までの時間を半分にしたい」など、具体的な目標を立てることで、どのような機能が必要かが見えてきます。目的が曖昧なままでは、最適なシステムを選ぶことはできません。
ポイント2. 企業の規模や業態に合っているか
従業員が数名の会社と数百名の会社では、必要な管理機能が異なります。また、飲食店のように複雑なシフト管理が必要な業態や、建設業のように現場への直行直帰が多い業態など、自社のビジネスモデルに特化した機能があるかも重要な判断基準です。
ポイント3. 現場が必要な機能とコストのバランス
多機能なシステムは魅力的ですが、使わない機能が多ければコストの無駄になります。ポイント1で明確にした目的に沿って、自社に必要な機能を洗い出しましょう。その上で、複数のシステムの料金体系を比較し、最も費用対効果の高いシステムを選定します。
ポイント4. 無料トライアルで操作性を確認する
導入後に「使いにくい」とならないために、必ず無料トライアルやデモを活用しましょう。特に、毎日使う従業員や管理者の視点で、打刻のしやすさや管理画面の見やすさなどを実際に触って確かめることが、導入後のスムーズな運用につながります。
ポイント5. 導入後のサポート体制は十分か
導入時の設定支援や、運用開始後に不明点やトラブルが発生した際のサポート体制も必ず確認しましょう。電話やメール、チャットなど、どのような方法で問い合わせができるのか、対応時間は自社の営業時間と合っているかなどを事前にチェックしておくと安心です。
勤怠管理システムの導入をスムーズに進める5つのステップ
システムを導入すると決めた後、実際に社内で運用を開始するまでの具体的なプロセスを5つのステップで解説します。
ステップ1. 導入計画の策定と詳細な運用ルール作り
選定時に明確にした目的に基づき、具体的な導入スケジュールと、詳細な運用ルールを策定します。打刻を忘れた場合、直行直帰や出張の場合の対処法、残業や休暇の申請・承認プロセスなど、あらゆる場面を想定してルールを決めておくことが、導入後の混乱を防ぐ鍵となります。
ステップ2. システムの初期設定とテスト運用
策定した運用ルールに従って、従業員情報や労働時間、休暇などの各種設定をシステムに行います。いきなり全社で導入するのではなく、まずは人事担当者や一部の部署でテスト運用を実施し、設定に漏れがないか、ルール通りに運用できるかを確認しましょう。
ステップ3. 従業員への説明とトレーニングの実施
本格導入の前に、全従業員を対象とした説明会やトレーニングを実施します。なぜシステムを導入するのかという背景から、具体的な操作方法、新しい運用ルールまでを丁寧に説明し、従業員の理解と協力を得ることが、スムーズな移行に不可欠です。
ステップ4. 全社一斉での本格運用開始
テスト運用で洗い出した問題点を改善し、マニュアルなどを整備した上で、全社での本格運用をスタートします。導入初期は問い合わせが増えることを見越し、担当部署でのサポート体制を整えておくと安心です。
ステップ5. 定期的な効果測定と改善活動
導入して終わりではなく、効果を最大化するためには定期的な見直しが重要です。最初に設定した目的(残業時間の削減率など)が達成できているかをデータで確認したり、従業員から使い勝手についてアンケートを取ったりしながら、より良い運用を目指して改善を続けていきましょう。
勤怠管理システムのメリットを最大限に活かすために
勤怠管理システムを正しく理解し、自社に合ったものを選ぶことで、そのメリットを最大限に引き出すことができます。日々の勤怠管理業務が効率化されるだけでなく、従業員の労働環境が改善され、結果として企業全体の生産性向上につながります。
本記事で解説したメリット・デメリット、選び方のポイントを踏まえ、客観的な視点で自社への導入を検討することが、持続的な企業成長の第一歩となるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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