• 更新日 : 2025年7月14日

離職率の計算方法とは?3年以内離職率の計算例も分かりやすく紹介

離職率とは一定の期間に会社を離れた従業員の割合のことで、会社の働きやすさを表す指標となります。

実際に離職率を求めようとしている人の中には「離職率の計算方法や具体的な計算例を知りたい」「3年以内離職率を算出したい」などと考えている人もいるでしょう。

そこで本記事では、離職率の計算方法や計算例を丁寧に解説します。離職率を計算する際の注意点や日本の平均離職率などもまとめています。

離職率の定義

離職率とは、会社に在籍する従業員のうち一定の期間に退職した従業員の割合のことです。

一般的に離職率は、会社での働きやすさを表す指標として使用されます。離職率が高い=働きにくい、離職率が低い=働きやすいとイメージされることが大半です。

また離職率は、従業員の流動性や定着度などを把握するのにも役立ちます。離職率をもとに従業員の満足度を測ったり、社内制度や働き方の改善を検討したりする会社もあります。

退職率や定着率との違い

離職率、退職率、定着率の定義は以下の通りです。

  • 離職率:自己都合や会社都合を問わず、特定の期間に会社を離れた従業員の割合
  • 退職率:自己都合で退職した従業員や定年退職した従業員の年齢ごとの割合
  • 定着率:特定の期間内に働き続けている従業員の割合

離職率には自己都合だけでなく会社都合で離職した人も計算に含めますが、退職率には懲戒解雇のような会社都合で離職した人は計算に含みません。

また、離職率は会社を離れた人の割合を求めるのに対し、定着率は会社に残っている人の割合を求めます。

一般的に、離職率と定着率は採用ページで公表したり従業員の満足度を測ったりする際に、退職率は退職給付債務を計算する際に使用されます。

離職率の計算方法

離職率の計算方法を、厚生労働省の計算方法と一般的な企業の計算方法に分けて紹介します。

厚生労働省の計算方法

厚生労働省の『雇用動向調査』では、以下の計算式が使用されています。

離職率=離職者数÷1月1日現在の常用労働者数×100

雇用動向調査は毎年行われており、1年間の離職者数を調査対象の年の1月1日時点における常用労働者で割ることで離職率を求めています。

上記の計算式の「離職者数」には、自己都合退職した人だけではなく解雇された人や他社へ出向した人なども含まれていますが、同じ企業内で転出した人は含まれていません。

また「常用労働者数」には、無期雇用の従業員や1ヶ月以上の期間を定めて雇用されている従業員が含まれています。なお、離職率は一般労働者とパートタイム労働者に分けて算出されています。

参考:調査の結果|厚生労働省

一般的な企業の計算方法

一般的な離職率の計算方法は以下の通りです。

離職率=起算日から一定期間の間に離職した従業員数÷起算日の従業員数×100

一定期間の間に離職した従業員数を、起算日時点での従業員数で割ることで離職率を求められます。

上記の計算式における「起算日」「一定期間」「従業員数」などは、統一された数値や定義がありません。それぞれの企業が自由に設定可能です。

もし「一定期間」を2024年4月1日~2025年3月31日と設定すると「起算日」は2024年4月1日「起算日の従業員数」は2024年4月1日時点での従業員数となります。

そして、2024年4月1日~2025年3月31日までに離職した従業員が3人、2024年4月1日時点での従業員が50人であった場合、以下のような計算式となります。

離職率=起算日から一定期間の間に離職した従業員数÷起算日の従業員数×100

=3人÷50人×100=6%

離職率は6%と算出できます。なお、一定期間の間に入社して退職した人は計算に含まないため注意してください。例でいうと、2024年4月1日~2025年3月31日の間に入社して退職した従業員は計算から除外します。

離職率の計算例

3年以内離職率と全従業員の離職率の計算例を紹介します。

3年以内離職率の計算例

3年以内離職率は、以下の計算式で算出できます。

3年以内離職率=対象の年度に入社した新卒社員のうち、3年以内に離職した人数÷対象の年度に入社した新卒社員の人数×100

例として、2023年4月~2025年3月の3年以内離職率を計算してみましょう。

2023年度に入社した新卒社員のうち3年以内に離職した人数が11人、2023年度に入社した新卒社員が65人であった場合、計算式は以下のようになります。

3年以内離職率=11人÷65人×100=16.9230…

上記の計算式により、3年以内離職率は約17.0%と算出できます。

全従業員の離職率の計算例

全従業員の離職率は、以下の計算式で算出可能です。

全従業員の離職率=1年間で離職した従業員数÷起算日の全従業員数×100

例として、2022年1月1日~12月31日の全従業員の離職率を計算します。

1年間で離職した従業員数が7人、2022年1月1日時点での全従業員数が86人であった場合、計算式は以下のようになります。

全従業員の離職率=7人÷86人×100=0.08139…

上記の計算により、全従業員の離職率は約8.1%と算出できます。

離職率を計算するときの3つの注意点

離職率を計算するときの注意点を3つ紹介します。

1. 一定期間の間に入社して退職した人数は計算に含まない

離職率=起算日から一定期間の間に離職した従業員数÷起算日の従業員数×100

上記の計算式で離職率を算出する場合、一定期間の間に入社して退職した従業員数は計算に含みません。

たとえば、一定期間を2019年4月1日~2020年3月31日としたとき、2019年6月1日に入社して2020年1月31日に退職した人は含めずに離職率を計算する必要があります。

設定した期間の長さにもよりますが、短期離職者は計算に含まれないため離職率では測れないことがあります。前述の例のように、1年経たずに退職した人がいても離職率には反映されません。

2. 離職者や従業員の範囲を決める必要がある

離職率を計算するときは、事前に離職者や従業員の範囲を決めておく必要があります。

たとえば、離職理由には自己都合の退職、契約満了、解雇、定年退職などがあるため、どの離職理由に該当する人を離職者として計算に含めるのか決めなければなりません。

また従業員も、正社員、パート、契約社員、アルバイトなどの雇用形態があるため、どの雇用形態を含めて離職率を算出するのか事前に定めておく必要があります。

従業員のうちパートタイム労働者の占める割合が大きい場合は、フルタイムの社員とパートタイム労働者を分けて離職率を計算するという方法もあります。

それぞれの会社の特色を考慮して、離職者や従業員の範囲を決めましょう。迷った場合は、さまざまなパターンで離職率を算出してみるのも一つの手です。

3. 競合と比較する場合は条件を揃える必要がある

企業によって一定期間の長さ、退職者や従業員の範囲、起算日などが異なるため、競合他社と比較する場合は条件を揃える必要があります。

条件を揃えた方が、競合と比較しやすくなったり業界全体で見たときの自社の離職率について捉えやすくなったりするためです。

また、求職者が企業分析や業界分析をする際に離職率を比較することも想定して、なるべく条件は揃えた方が良いでしょう。

競合や業界全体で比較されたときに、条件が異なるせいで他社より離職率が高くなってしまうと、働きにくい会社だと思われる可能性があります。

自社の離職率を計算する前に、他社の設定した一定期間の長さや従業員の範囲などを簡単にでも調べておきましょう。

日本の離職率の現状

日本の離職率の現状について、全年代の平均離職率と3年以内離職率を紹介します。

全年代の平均離職率

厚生労働省の令和5年の『雇用動向調査』をもとに、全年代の平均離職率を以下の表にまとめました。

雇用形態一般労働者の離職率パートタイム労働者の離職率
入職率12.1%27.5%
離職率12.1%23.8%
入職超過率0.0ポイント3.7ポイント

平均離職率は、一般労働者よりもパートタイム労働者の方が高いことが分かります。また入職超過率については、一般労働者は差分がない状態でパートタイム労働者は入職超過の状態です。

なお、直近3年は一般労働者もパートタイム労働者も離職率が上がり続けています。よって今後も離職率は上昇し続けることが予想されます。

参照:厚生労働省『雇用動向調査 結果の概要』

3年以内離職率

厚生労働省の『新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します』をもとに、学歴別の3年以内離職率を以下の表にまとめました。

年度中卒者の
3年以内離職率
高卒者の
3年以内離職率
大卒者の
3年以内離職率
平成31年57.8%35.9%31.5%
令和2年52.9%37.0%32.3%
令和3年50.5%38.4%34.9%

平成31年から令和3年の3年間で、3年以内離職率が上がっていることが分かります。

以前から「七五三現象」が問題視されてきましたが、中卒者と高卒者の離職率はそれぞれ5割強・4割弱と改善されてきたように見えます。

ただ、大卒者の離職率は改善されたとは言えず、平成22年からずっと3割を超えている状態です。最近は退職代行も注目されているため、大卒者の3年以内離職率はさらに上がることも考えられます。

参照:厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します』

平均離職率の調べ方

厚生労働省の『雇用動向調査』や総務省統計局の『労働力調査』などで離職率や完全失業率を調べられます。また、四季報や民間の人材サービスが発信している情報で調べるという方法もあります。

それぞれの調査ごとに得られる情報を以下の表にまとめました。

厚生労働省『雇用動向調査』入職率、離職率、入職超過率など
厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況』学歴別の3年以内離職率、産業別の3年以内離職率など
総務省統計局『労働力調査』就業率、完全失業率、完全失業者数など
東洋経済新報社『就職四季報』企業ごとの離職率、離職者数、3年後離職率など
民間の人材サービスによる独自調査転職率、転職理由、転職後の年収など

調査や媒体によって得られる情報はさまざまです。平均の離職率を知りたいときは『雇用動向調査』、企業ごとの離職率を知りたいときは『就職四季報』のように、参考にする媒体を使い分けると良いでしょう。

離職率を公表する場合に気をつけるべき点

離職率を公表する前に、日本の平均離職率や業界別の平均離職率を調べておきましょう。なるべく最新の情報であることが望ましいです。

もし会社の離職率が平均よりも高すぎると、働きにくいというイメージを持たれて応募を敬遠される可能性があるためです。離職率が平均より高い場合は公表を控えるか、働き方や社内制度の改善を検討すると良いでしょう。

「日本の離職率の現状」で紹介した全年代の平均離職率や3年以内離職率を下回っていれば、優良企業と認識される傾向にあります。業界によっても離職率は異なるため、自社の業界の離職率も併せて調べることをおすすめします。


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