- 更新日 : 2025年7月7日
育休は何ヶ月取れる?制度ごとに何日取得できるかを解説
育児休業は、子育てと仕事の両立を支援し、労働者が安心して育児に取り組めるようにするための重要な制度です。
この記事では、「育休は何ヶ月取れるのか」という基本的な疑問から、育児休業の期間、延長条件、関連する給付金、社会保険料の扱い、そして2025年施行の最新の法改正ポイントまで解説します。
目次
育休は何ヶ月取れる?
育児休業は、子どもを養育するために取得できる法定の休暇制度であり、その期間や対象者は法律で明確に定められています。
原則「子どもが1歳になるまで」の12ヶ月
育児休業は、原則として子どもが1歳に達する日(誕生日の前日)までの期間、子どもを養育するために取得できます。これは育児・介護休業法で定められた労働者の権利であり、勤務先の就業規則に育児休業に関する定めがなくても取得が可能です。
女性の場合、出産後8週間は労働基準法に基づく産後休業として働くことが禁止されています。育児休業は産後休業が終了した翌日から開始されるため、実質的な育休期間は産後約10ヶ月間となります。一方、男性は子どもの誕生から1歳の誕生日の前日までの最大12ヶ月間、育児休業を取得することが可能です。
育児休業を取得できる労働者の範囲
育児・介護休業法に基づき、すべての無期雇用労働者には育児休業を取得する権利が認められています。
契約社員やパートタイマー、アルバイト、嘱託社員など、期間を定めて雇用される有期雇用労働者も育児休業を取得できます。2022年4月1日以降、継続雇用期間1年以上の要件が撤廃され「子が1歳6ヶ月に達する日までに労働契約の期間が満了することが明らかでないこと」のみが要件となりました。
ただし、労使協定が締結されている場合、以下の労働者は育児休業の対象から除外されることがあります。
- 継続して雇用された期間が1年に満たない労働者
- 育児休業の申出の日から1年以内(延長の場合は6ヶ月以内)に雇用関係が終了することが明らかな労働者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
配偶者が専業主婦(夫)である場合でも、労働者自身が育児休業を取得することは可能です。
育児休業の分割取得
2022年10月1日以降の育児・介護休業法改正により、育児休業は原則2回まで分割して取得できるようになりました。これにより、労働者は仕事や家庭の状況、子どもの成長段階に合わせて、より柔軟な休業計画を立てることが可能になりました。
後述する「産後パパ育休(出生時育児休業)」も2回まで分割取得が可能なため、産後パパ育休と通常の育児休業を合わせると、男性は子が1歳になるまでに最大4回まで育児休業を取得できます。これは、男性の育休取得率向上や、出産直後の母親の負担軽減、父親の育児参加促進を狙った施策です。
育休は何日間延長できる?
育児休業は原則1歳までですが、特定の事情がある場合には期間を延長することが可能です。
1歳6ヶ月および2歳までの延長条件
原則1歳までの育児休業は、以下のような特定の事情がある場合に限り、1歳6ヶ月まで延長が可能です。1歳6ヶ月に達した時点で同様の事情が継続している場合に、再度申し出ることにより、育児休業期間を最長2歳まで再延長することができます。
- 保育所への入所を希望しているが、入所できない場合。
- 配偶者の死亡、負傷、疾病、離婚などにより、子どもの養育が困難になった場合。
延長が認められる特別な事由
- 保育所に入所できない場合
子どもが1歳になる日の翌日(誕生日)時点で保育所などの利用ができる見込みがない場合に延長が認められます。このとき、1歳の誕生日の前日までに保育所などへの入所申込みを行っていること、自宅から片道30分以上かかる施設しか利用できないという状況に合理的な理由がないこと、さらに入所内定を辞退していないことなどが要件となります。 - 配偶者が育児を担当できなくなった場合
配偶者の死亡、負傷、疾病、離婚などにより、子どもの養育が困難になった場合も延長事由となります。 - 育児休業中に次の子どもを妊娠・出産した場合
継続して育児が必要と認められるため、延長が可能です。 - パパ・ママ育休プラス
父母ともに育児休業を取得する場合に利用できる特例制度です。子どもが1歳に達する日までに夫婦それぞれが育児休業を取得し、一定の条件を満たすと、子が1歳2ヶ月に達するまでの間の1年間、育児休業期間を延長できます。ただし、父母それぞれの育児休業取得可能期間は、産後休業を含め最大1年間です。
延長申請の手続きと必要書類
育児休業の延長申請は、1歳6ヶ月までの延長の場合は1歳の誕生日の2週間前まで、2歳までの延長の場合は1歳6ヶ月に達する翌日の2週間前までに、勤務先を通じてハローワークに行う必要があります。
必要書類として、「育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書」のほか、保育所等の入所不承諾通知書、世帯全員の住民票の写し、母子健康手帳のコピー、配偶者の状態を証明する医師の診断書などが挙げられます。
2025年4月からの厳格化
保育所に入所できないことを理由とする育児休業給付金の延長申請において、手続きが厳格化されています。改定後は、以下の3つの書類が必要となりました。
- 「入所保留通知書」(市区町村が発行する保育所などの利用ができない旨の通知)
- 「育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書」(ハローワークに支給期間の延長事由を認定してもらうための申告書)
- 「保育所などの利用申し込み時の申し込み書の写し」(全ページのコピーが必要)
ハローワークでは、これらの書類をチェックし、要件を満たしているかを厳しく判定します。不正受給を行った場合、給付金の返還や罰金が科される可能性があります。
育休の延長について詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。
産後パパ育休は何ヶ月取れる?
男性の育児参加を促進するため、通常の育児休業とは別に、子の出生直後に特化した休業制度が設けられています。
制度の概要と取得日数
「産後パパ育休」は、正式名称を「出生時育児休業」といい、2022年10月に創設された新たな育児休業制度です。
この制度は、子の出生後8週間以内に、父親(養子などの場合には女性も取得可能)が最大4週間(28日間)まで取得できる休業です。休業の申出期限は原則として休業開始の2週間前までですが、労使協定を締結している場合は1ヶ月前までとすることも可能です。
通常の育休との併用と分割取得
産後パパ育休は、通常の育児休業とは別に取得可能であり、併用することで、父親は子どもが原則1歳になるまでに最大4回まで分割して育休を取得することが可能となります。
産後パパ育休自体も、初めにまとめて申し出れば2回まで分割して取得できます。
休業中の就業について
産後パパ育休期間中に、労使協定を締結し、かつ労働者が合意した範囲であれば、一部就業することが可能である点が特徴です。
休業期間中の就業日数は、最大10日(10日を超える場合は就業した時間数が80時間)以下が上限となります。休業期間が28日より短い場合は、その日数に比例して上限も短くなります。
男性が育休取得をためらう大きな理由の一つに「収入の減少」が挙げられます。産後パパ育休が通常の育休とは別に取得可能であることや、休業中に一部就業が認められることは、この収入減の懸念を軽減し、男性が育休を取得しやすくするための具体的なインセンティブとなります。
産後パパ育休について詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。
取得できる期間や制度を理解して、育休を取得しよう
この記事では、育児休業の基本期間、延長制度、男性も取得しやすい「産後パパ育休」について解説しました。特に、2025年施行の育児・介護休業法の改正点や、新たな経済的支援である「出生後休業支援給付金」の創設は、育児休業を取り巻く環境が大きく変化していることを示しています。
育児休業は、単なる休暇ではなく、子育てとキャリアを両立するための戦略的なツールです。制度は複雑に見えるかもしれませんが、その目的は労働者が安心して育児に専念し、その後円滑に職場復帰できるよう支援することにあります。
育児休業制度は、少子化対策として、そして労働者のワークライフバランスを向上させるために、今後も柔軟な見直しが続けられると予想されます。この変化の時代において、制度を正しく理解し、積極的に活用することが、個人にとっても企業にとっても、持続可能な未来を築く上で不可欠であると言えます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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